僕と猫とゲートキーパー ー 勝手に他人の半生を書いてみた(第3章)

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人質に当たるけど撃っていいかな?

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武は『レールガン(電磁砲)』が格好いいと思っていた。
少年の心には刺さるネーミングだ。響きが恰好いい。

でも、実戦では使えない・・・。

さっきは死にそうになったから、武は不用意に電流を流すのは止めようと思った。
それに、武の場合はリチウム弾の方がよほど効率的だ。

武は次の作戦を考えることにしたのだが、今しがたお菊さんに怒られたばかりだ。
あまりに無謀な作戦だとお菊さんに怒られるだろう。
それに、一応は反省している姿勢を見せておかないといけない。

武は念のためにお菊さんの意向を聞いてみることにした。

「お菊さん。次の作戦を考えてるんだけど・・・、禁止事項はある?」と武はお菊さんに尋ねた。

「禁止事項ねー。自分や周りに危害を加えることは止めた方がいいわ」

「例えば?」

「核兵器は禁止よ。被曝すると死亡したり後遺症が出たりする。それに、周辺が核汚染されてしまうから」とお菊さんは言った。

核兵器がダメなのは武でも分かる。
戦後に生まれたとはいえ、広島や長崎での惨状は伝え聞いている。

――核兵器以外ならオッケー?

想像していたよりもお菊さんのハードルは低そうだ。
武は念のためにお菊さんに確認する。

「あとダメなのは?」

「そうねー。高価なものを壊すのは止めた方がいいわね」

「あのビルを真っ二つにするとか?」

「そうよ。壊したら弁償させられるかもしれないでしょ」

「でもさ。あのビルはピーチ・ボーイズが銃撃したから壊れてるよ。少しくらい壊してもバレないんじゃないかな?」

「確かに、銃弾で壊れるレベルの破壊だったらいいか・・・」

「じゃあ、真っ二つはダメだけど、壁がボロボロになるくらいならオッケーだね」

「そうね・・・」

武はお菊さんの意図を汲み取った。

――ビルの半壊までは大丈夫だ!

武はリチウム弾の威力を試してみたかったから、気が楽になった。

テロリストを倒すには1ミリ弾を100発発射すればいいことは分かった。
だから『壁をぶち抜いてテロリストを倒すためには何発必要か?』を実験することにした。

武は人質を取っていないテロリストがいる部屋の裏側にまわった。
正面から発射すると、武がビルを破壊しているのを警察に見られてしまうからだ。
お菊さんは心配だから武の後を着いてきた。

武はお菊さんに合図してから、壁に向かって1ミリ弾を1,000発発射した。

“シュシュシュドン”

ビルの壁の一部は剝がれたが、壁は完全には破壊できなかった。
武がお菊さんの方を向くと「もう一回!」と言っている。

武は壁に向かって1ミリ弾を10,000発発射した。

“シュシュシュボン”

今度は壁が吹っ飛んだ。
中にいたテロリストは壁が吹っ飛んだ衝撃で倒れている。

「やったじゃない!」お菊さんは弟子の成長を喜んでいる。

武とお菊さんがハイタッチをしていると、破壊音を聞きつけたピーチ・ボーイズの最後の一人が部屋にやってきた。
人質の前鬼に銃口を向けて武たちを睨んでいる。

前鬼は武たちがいることに気付いたようだ。
武は前鬼に手を振ったが、前鬼は振り返してくれない。

武は最後のテロリストにリチウム弾を撃ち込むことを考えた。
ただ、テロリストを正確に狙ったとしても前鬼に当たる可能性がある。
もし前鬼に当たってケガすると、お菊さんに怒られるかもしれない。
武はお菊さんに確認することにした。

「ここから撃ったら、おじさんに当たるよね?」

「そうね・・・」とお菊さんは答えた。

武はお菊さんの返答をどう解釈したものか考えている。

武の質問の仕方が悪かったのだろうか?
お菊さんは『撃て』とも『撃つな』とも測り兼ねる返答をした。

武はもう少し具体的に聞いてみた。

「おじさんに当たるけど撃っていいのかな?」

「死ななければ、撃っていいよ」とお菊さんは答えた。

“シュウゥ”

武は1ミリ弾を100発テロリストに向けて発射した。
テロリストと前鬼は壁まで吹っ飛んで動かなくなった。
2人とも血は出ていないから、死んでいない。

お菊さんは動かなくなったテロリストから自動小銃を取り上げると、ビルの外に放り投げた。
次にお菊さんは前鬼のところへ行った。
気絶した前鬼の頬を何度かビンタすると、前鬼は目を覚ました。

「俺ごと撃ちましたね?」前鬼は目の前のお菊さんに言った。

「死んでないじゃない。それに撃ったのは私じゃないわよ。武くんだよ」

そう言うと、お菊さんは武を指さした。

――あ、裏切った・・・

大人は怖いと武は思った。

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