上 下
6 / 24

Don’t Feel. Think!

しおりを挟む

お菊さんの説明を聞いて、武は水の分子をお菊さんがどう生成しているかを理解した。
お菊さんが理論的に説明してくれたから、科学者のクローンである武には分かり易かったようだ。

水の生成手順が分かったとしても、武が今すぐに使える訳ではない。
武が能力を使うためには、原子情報の取得方法とプログラムの実行方法を習得する必要がある。

武は原子の操作方法を習得するために、お菊さんに質問した。

「お菊さん、水素原子と酸素原子の情報を取得する方法を教えてよ!」

「いいわよ。少しコツがいるんだけど・・・」
お菊さんはそう言うと、武とお菊さんの間の空間を凝視した。

「そこに水素原子が大量にあるんだけど、見えるかな?」
お菊さんは武の前にある空間を指さした。

武は全神経を集中して、お菊さんの指した空間を凝視した。

「ダメダメ。水素原子の形をイメージできる?」

「ええっと、水素原子は陽子1個の周りを電子1個が回っている単純な形だよね?」

「そうよ。武くんの前の空間に、その形をした原子は見える?」

武は自分のイメージした水素原子と近い形を探した。

――あった!

武は水素原子を見つけることができた。

酸素原子も同じ方法で探してみる。
陽子8個、中性子8個が中心に集まっていて、その周りを電子8個が回っている原子だ。

――あった!

酸素原子も見つけることができた。

武はテンションが上がってお菊さんに言った。
「見つかったよ! 酸素原子も見つけた!」

「呑み込みが早いわねー」

「ありがとう。有名な武術の達人が『Don’t think. Feel!(考えるな、感じろ!)』って言ってたけど、実際には逆だね。『Don’t feel. Think!』が正解だよ」

武はブルース・リーが大好きだ。有名なセリフを言ってみた。

「詳しいことは分からないけど、その武術の達人は『考えなくてもできるくらい練習しろ!』って言いたかったんじゃないかな?」

武は少しがっかりした。
お菊さんはブルース・リーを知らないらしい・・・。

仕方ないから、プログラムの実行方法をお菊さんに聞くことにした。

「お菊さん、プログラムの実行はどうやるの?」

「この前私が見せたコンパイラは出せる?」

武はお菊さんが見せてくれた画像をイメージした。

“ポン”

――何か出てきた・・・
――これかな?

武は不安に思いながらも、試しにお菊さんが見せてくれたコードを書いてみた。

「何か出てきた。そこにお菊さんのコードを書いてみた。それからどうするの?」と武は聞いた。

「変数に水素原子と酸素原子のイメージを入れてみて」

――大雑把だな・・・

武はそう思ったものの、さっき見つけた水素原子と酸素原子の形をイメージした。
『変数にイメージを入れる』がよく分からないのだが、画面を見ながらそれっぽいことをしてみた。
これで変数に水素原子と酸素原子のイメージが入ったのではないだろうか。

「その次は?」武はお菊さんに聞いた。

「△のボタンあるでしょ。押してみて」

武は言われるがまま、目の前のコンパイラにある『再生ボタン』のような△マークを押した。

“じわっ”

武の手が湿った。
どうやら成功したようだ。

「できたー! 掌(てのひら)が湿ったよ!」

武はよろこんでお菊さんに抱きついた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

変人しかいないアパートにて。不毛すぎるアタシの毎日

コダーマ
青春
【うちに突然、桃太郎が住みつきだした!】  家に帰ると何かいる。  チョンマゲ結って、スーツにピンクのネクタイ。  ワラジを履いたメガネ男。  「桃太郎」と名乗ったソイツは、信じられないことにアタシの部屋に居座る気だ。  高校受験に失敗したリカが住むのは、完璧美人の姉が経営するアパート(ボロ)。  キテレツな住人たちを相手に、リカは関西人のサガで鋭いツッコミを入れまくる。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

教え子に手を出した塾講師の話

神谷 愛
恋愛
バイトしている塾に通い始めた女生徒の担任になった私は授業をし、その中で一線を越えてしまう話

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

冬の水葬

束原ミヤコ
青春
夕霧七瀬(ユウギリナナセ)は、一つ年上の幼なじみ、凪蓮水(ナギハスミ)が好き。 凪が高校生になってから疎遠になってしまっていたけれど、ずっと好きだった。 高校一年生になった夕霧は、凪と同じ高校に通えることを楽しみにしていた。 美術部の凪を追いかけて美術部に入り、気安い幼なじみの間柄に戻ることができたと思っていた―― けれど、そのときにはすでに、凪の心には消えない傷ができてしまっていた。 ある女性に捕らわれた凪と、それを追いかける夕霧の、繰り返す冬の話。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する野球ドーム五個分の土地が学院としてなる巨大学園だ しかし生徒数は300人程の少人数の学院だ そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語である

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

処理中です...