上 下
5 / 24

こんぱいら?

しおりを挟む
※本話は内容に偏りがあります。



お菊さんは武に原子を操作する方法を説明し始めた。

「まず、この世界には魔法なんていう非科学的なものは存在しないの」

「この前まで、自分のことを雪女とか妖怪とか言ってた人のセリフとは思えない・・・」
武はボソッと言った。

「仕方ないでしょ。説明するのが面倒だったから。悪気は無かったのよ」
そう言って、お菊さんは『ごめんね』のポーズをした。

「別にいいよ。それで、原子の操作はどうするの?」

「そうね。水を作る場合は、水素原子2つと酸素原子1つを合成するよね?」

「そうだね」

「原子を操作する時に必要なのは大きく2つ。1つ目は、水素原子と酸素原子の情報」

「だろうね」

「2つ目は、水を生成するためのプログラムね」

「プログラム?」

「ええ、プログラム。例えば、水を作る場合、チマチマと水素原子2つと酸素原子1つを合成しても、大した量を作れない」

「水素原子2つと酸素原子1つを合成してできるのは水の分子1つだけ。そういうこと?」

「そうよ。1グラムの水を作るのに、水素原子2つと酸素原子1つを何回合成しないといけないと思う?」

「急に難しい問題を出してくるなー」

「頭の体操よー」お菊さんは楽しそうだ。

武はお菊さんの出した問題の答えを考え始めた。
水素原子の原子量が1、酸素原子の原子量が16。だから、水(H2O)の原子量は18だ。

「水18gで1molだ。アボガドロ数(6×10^23)を使うと、(6×10^23)÷18だな。だから、1gの水を作るためには、3.3×10^22回の合成が必要?」

武は計算結果をお菊さんに確認する。

「そうね。330垓(がい)回ね。普通の人は一生掛かっても水1g作れないわね」

「僕の人生はそんなに短いのか・・・」武はしみじみと言った。

「だから、水を生成するためのプログラムを使うのよ」

「どうやるの?」

「一番簡単な方法はコンパイラを使うの」

※コンパイラ(compiler)とは、人間が書いたコンピュータプログラムをコンピュータが実行や解釈できる形式に変換するソフトウェア。

「こんぱいら? あの、コンパイラ?」

「そうよ。見せた方が早いわね」

お菊さんはそう言うと、武の目に手をかざした。
すると、武には簡単なコード(下記)が見えた。

<水の生成>
==========
$j = 10 // 回数
$a = H; // 水素原子の情報
$b = O; // 酸素原子の情報
$x = $a * 2 + $b; // 水分子

for ($i = 1; $i <= $j; $i++) {
 $x .= $x;
}
print $x;
==========


「え? これコードだよね?」

「そうよ。これは水素原子2つと酸素原子1つを合成して水の分子を作って、それを2^10回繋げているの」

「じゃあ、水を出すのはprint?」

「そうよ。無詠唱の魔法みたいでしょー」お菊さんは得意そうに言った。

「分かるよ。分かるんだけど、ファンタジーのイメージが崩れていくなー」

武は少しショックを受けている。
お菊さんはガッカリした武を見かねて言った。

「試しに、これで水を出してみようか?」

― これで水がでるの?

武の科学者のクローンだ。一気に機嫌が直った。

「うん!」武は勢いよくお菊さんに言った。

「いくよー」お菊さんはそう言うと、手を上げた。

“じわっ”

お菊さんの手が湿った。
2^10個の水分子ではこれくらいだろう・・・

「手が湿ったね!」武はテンションが上がっている。

「回数を増やせばもっと水が出るんだけど、ここだと危ないから・・・」
お菊さんは申し訳なさそうに言った。

「別にいいよ。原子操作のイメージが分かったし。原子の情報とプログラムかー」

「原子を構成している陽子・電子・中性子も同じ理屈で操作できるわ。でも、処理する内容が原子よりも複雑になるから、処理速度が速くないと使い物にならないね」

「パソコンのCPUみたいだな。じゃあ、扱える原子量はパソコンのメモリみたいなもの?」武はお菊さんに聞いた。

「いい例えね。その通りよ。実行するまでの間、作成した原子量を保持しないといけないから。スペックが重要なのよね」とお菊さんは説明した。

スペックか・・・
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

うちの息子はモンスター

島村春穂
現代文学
義理の息子と一線を越えてしまった芙美子。日ごとに自信をつける息子は手にあまるモンスターと化していく。 「……も、もう気が済んだでしょ?……」息子の腕にしがみつく芙美子の力は儚いほど弱い。 倒錯する親子の禁戒(タブー)は終わりを知らない。肉欲にまみれて二人はきょうも堕ちていく。

校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話

赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)

処理中です...