68 / 80
第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!
底地ファンドを調査しろ(その4)
しおりを挟む
(4)底地ファンドを調査しろ <続き>
ガブリエルは借地権についての議論を続けた。
「今回のエドガーたちのケースは、被相続人(死んだ人)が土地所有者(地主)のままだったら(例えば、エドガーの父親が死んでいなかったら)特に問題なかったと思います」
「そうだね」
「元地主が死んで、相続人が第三者に売却したから、当初の地主とは譲渡承諾についてスタンスが180度変わりました。仮に、相続人が第三者に売却しなくても、相続人が譲渡承諾したくないと考えるケースがあります。さらに言うと、複数の相続人が共同相続する場合は底地を共有するので、もっと問題が複雑になります(図表10-12を参照)」
【図表10-12:相続による底地権者の異動】
「共同相続した場合か・・・確かに大変そうだね」
「例えば、10人が共同相続した場合、底地権は10人で共有します。もし建物所有者(借地権者)が建物を売却しようとして地主から譲渡承諾を取る場合、底地権は10人で共有されていますから、借地権者は底地権者10人全員の譲渡承諾が必要です」
「そうだね。10人に譲渡承諾してもらわないといけないな」
「さらに、10人の相続人が死亡した場合、底地権は次の相続人に移ります。10人の底地権共有者にそれぞれ5人の共同相続人がいたら、底地権は50人で共有します」
「50人は悲惨だなー。親戚付き合いもないかもしれないから、連絡が取れない底地権者が何人か出てくるだろうな・・・」
「それだけの相続人がいたら相続時の登記が全て行われないでしょうから、最終的には所有者不明土地が増えていきます。所有者不明土地が大問題になっている国があるらしいですよ」
※所有者不明土地とは土地の相続などの際に所有者についての登記が行われないなどの理由で、誰が所有者なのか分からない土地のことです。日本の場合、所有者不明土地の面積は国土の約22%(九州よりも広い)と言われています(内閣府広報より)。
「所有者不明土地か・・・。痛い所を突いてくるな。治安悪化や防災面でも問題になっているみたいだね」
「そうです。今のは地主の話ですが、借地権者(建物所有者)にも同じことが起こります。不動産売買を円滑に行えないと、老朽化されたコンドミニアムや戸建てが相続されて、登記されない借地権付区分所有建物や借地権付建物が大量発生するでしょう」
「老朽化したコンドミニアムの所有者が分からなかったら、取り壊しできない。崩壊寸前のコンドミニアムが放置されるのは問題だ。確かに、これは困る・・・」
「借地権者と底地権者の揉め事を放置してしまうと、最終的に所有者が分からない土地と建物が大量発生するのではないかと思うんです。ジャービス国内の不動産市場を阻害する要因になるのでは、というのが私の懸念です」とガブリエルは言った。
ガブリエルの説明は的を射ている。今回の相談案件は借地権者と底地権者の揉め事だが、不動産相続の危険性を考える機会になったのかもしれない。
実際に、世界では相続において所有者不明土地と空き家が大量に発生している。
例えば、日本における空家率の推移を示したものが図表10-13だが、年々空き家が増加し2018年時点で住宅総数の13.6%が空き家だ。人口が減少していく日本においても新規の住宅供給は行われるため、全体の住宅数は年々増加していく。一方、人口は減少していくから住宅が飽和化して空き家が増える。特に、高齢者が住んでいた住宅を相続した相続人は売却せずに空き家のまま置いておくケースが多く、これも空き家率を増加する要因となっている。
【図表10-13:日本における空家率の推移】
※出所:総務省統計局
ちなみに、国土交通省が実施したアンケート結果(令和元年空き家所有者実態調査)では、空き家のままにしておく理由として【物置として必要:60.3%】、【解体費用をかけたくない:46.9%】、【更地にしても使い道がない:36.7%】、【好きなときに利用や処分ができなくなる:33.8%】などが挙げられている。建物を取り壊すと固定資産税が高くなることも理由の一つだ。
―― たしかに面倒だな・・・
ジャービス王国として早めに対策をしておいた方がいい、と俺は考えた。
ガブリエルは借地権についての議論を続けた。
「今回のエドガーたちのケースは、被相続人(死んだ人)が土地所有者(地主)のままだったら(例えば、エドガーの父親が死んでいなかったら)特に問題なかったと思います」
「そうだね」
「元地主が死んで、相続人が第三者に売却したから、当初の地主とは譲渡承諾についてスタンスが180度変わりました。仮に、相続人が第三者に売却しなくても、相続人が譲渡承諾したくないと考えるケースがあります。さらに言うと、複数の相続人が共同相続する場合は底地を共有するので、もっと問題が複雑になります(図表10-12を参照)」
【図表10-12:相続による底地権者の異動】
「共同相続した場合か・・・確かに大変そうだね」
「例えば、10人が共同相続した場合、底地権は10人で共有します。もし建物所有者(借地権者)が建物を売却しようとして地主から譲渡承諾を取る場合、底地権は10人で共有されていますから、借地権者は底地権者10人全員の譲渡承諾が必要です」
「そうだね。10人に譲渡承諾してもらわないといけないな」
「さらに、10人の相続人が死亡した場合、底地権は次の相続人に移ります。10人の底地権共有者にそれぞれ5人の共同相続人がいたら、底地権は50人で共有します」
「50人は悲惨だなー。親戚付き合いもないかもしれないから、連絡が取れない底地権者が何人か出てくるだろうな・・・」
「それだけの相続人がいたら相続時の登記が全て行われないでしょうから、最終的には所有者不明土地が増えていきます。所有者不明土地が大問題になっている国があるらしいですよ」
※所有者不明土地とは土地の相続などの際に所有者についての登記が行われないなどの理由で、誰が所有者なのか分からない土地のことです。日本の場合、所有者不明土地の面積は国土の約22%(九州よりも広い)と言われています(内閣府広報より)。
「所有者不明土地か・・・。痛い所を突いてくるな。治安悪化や防災面でも問題になっているみたいだね」
「そうです。今のは地主の話ですが、借地権者(建物所有者)にも同じことが起こります。不動産売買を円滑に行えないと、老朽化されたコンドミニアムや戸建てが相続されて、登記されない借地権付区分所有建物や借地権付建物が大量発生するでしょう」
「老朽化したコンドミニアムの所有者が分からなかったら、取り壊しできない。崩壊寸前のコンドミニアムが放置されるのは問題だ。確かに、これは困る・・・」
「借地権者と底地権者の揉め事を放置してしまうと、最終的に所有者が分からない土地と建物が大量発生するのではないかと思うんです。ジャービス国内の不動産市場を阻害する要因になるのでは、というのが私の懸念です」とガブリエルは言った。
ガブリエルの説明は的を射ている。今回の相談案件は借地権者と底地権者の揉め事だが、不動産相続の危険性を考える機会になったのかもしれない。
実際に、世界では相続において所有者不明土地と空き家が大量に発生している。
例えば、日本における空家率の推移を示したものが図表10-13だが、年々空き家が増加し2018年時点で住宅総数の13.6%が空き家だ。人口が減少していく日本においても新規の住宅供給は行われるため、全体の住宅数は年々増加していく。一方、人口は減少していくから住宅が飽和化して空き家が増える。特に、高齢者が住んでいた住宅を相続した相続人は売却せずに空き家のまま置いておくケースが多く、これも空き家率を増加する要因となっている。
【図表10-13:日本における空家率の推移】
※出所:総務省統計局
ちなみに、国土交通省が実施したアンケート結果(令和元年空き家所有者実態調査)では、空き家のままにしておく理由として【物置として必要:60.3%】、【解体費用をかけたくない:46.9%】、【更地にしても使い道がない:36.7%】、【好きなときに利用や処分ができなくなる:33.8%】などが挙げられている。建物を取り壊すと固定資産税が高くなることも理由の一つだ。
―― たしかに面倒だな・・・
ジャービス王国として早めに対策をしておいた方がいい、と俺は考えた。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

万永千年宇宙浮遊一万年後地球目指
Mar
経済・企業
一万年後の地球。想像できるだろうか。 長い年月が経ち、人類の痕跡はほとんど見当たらない地球かもしれない。もしかしたら、自然の力が再び支配する中で、新たな生命や文明が芽生えているかもしれない。 人間ではなく、きっと我々の知らない生命体。 それが一万年後に生きている人間かもしれない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる