第4王子は中途半端だから探偵することにした(の続き)

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第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!

底地ファンドを調査しろ(その3)

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(4)底地ファンドを調査しろ <続き>

 俺は民事不介入で良いと思ったものの、一応、内部調査部のメンバーに意見を聞いてみることにした。俺は庶民派ではあるものの、王族だし大臣だから俺の感覚がジャービス王国の大多数の国民とズレているかもしれない。それに、隠れた問題点があるかもしれない。
 だから、俺は内部調査部のメンバーを会議室に集めた。

「今回の件について意見を聞きたいんだ。内部調査部もしくはジャービス政府として、借地権者と底地権者の揉め事にどこまで介入する必要があると思う?」と俺はメンバーに質問した。

 俺の質問に対して「部長はどう思っていますか?」とスミスが言った。

 質問に質問で返された俺・・・
 そう思うものの、『人に名を尋ねるときは先ずは自分から名乗れ』と同じロジックだ。人の意見を聞くときは先ずは自分の意見を言え、そりゃそうだ。

「そうだなー。俺個人としては、今回は民事不介入でいいと思ってる」

「民事不介入ですか。ちなみに、理由は何ですか?」とスミスが尋ねた。

「まず、ロバートたち元地主に関しては、不動産会社の節税スキームに引っかかっただけだ。元地主は土地を賃貸したことによって価値が下がったものの、取引自体に違法性はない。さすがにジャービス王国が介入する問題じゃない。この点はいいよね?」

「それはそうですね」とスミスは言った。
 他のメンバーも反対意見はないようだ。

「次に、借地権者、例えばエドガーは『地主が譲渡承諾しないリスク』を考慮してコンドミニアムを購入したと俺は考えている」

「リスクを考慮して、ですか?」

「そう。借地権付区分所有建物の価格は、完全所有権の区分所有建物よりも明らかに安い。コンドミニアムの価格が安いのは何か理由があるはずだと思うのが自然だし、借地権者はコンドミニアムを購入する時に、譲渡承諾リスクと安い価格を比較衡量して、最終的に安い価格を選択したと思うんだ」

「譲渡承諾リスクは認識していたかもしれません。でも、実際に地主が譲渡承諾しない事態になるとは考えていなかったと思います。このままでは、エドガーたちはコンドミニアムを売却できませんよね?」

「そうだね。MJに譲渡承諾させるか、底地を購入するかしない限りコンドミニアムは売却できない。コンドミニアムを売却するために、MJと訴訟でもするかな?」

「訴訟ですか? 借地権者は素人ですよ?」

「素人だけど、借地権者は譲渡承諾されないリスクを理解していた。だから、地主が譲渡承諾しなかったとしても、借地権者は織り込み済みといえないかな?」

「それはそうですけど・・・」とスミスが言い難そうに言ったら、ガブリエルが「ちょっといいですか?」と挙手した。

「どうしたの?」

「部長の言いたいことは分かるのですが、問題の本質はそこじゃないと思うんです」

―― 問題の本質はそこじゃない?

 なかなか興味深い発言だ。『犯人は別にいる!』的な発言に俺は興味を持った。

「どういうこと?」

「今回はMJと借地権者が揉めているから調査をしました。実際に、ジャービス王国には借地がたくさんありますから、借地権者と底地権者の揉め事は数えきれないくらいあると思います。言ってみれば、今回調査したのは氷山の一角です」

「そうだろうね」

「大金持ちでもない限り、一般庶民にとって借地権付区分所有建物(コンドミニアム)や借地権付建物(戸建て)は大きな買い物です。ジャービス国民の中には『マイホームを買うのが夢!』と考えている人が大勢いるでしょう」

「まあね、為替対策した時に『マイホームが買えない』デモがあったしね」

※詳しくは『第7回活動報告:通貨危機を回避しろ』をご覧下さい。


「個人が借地権付区分所有建物(コンドミニアム)を購入する時、販売する不動産会社からは「そうは言っても、売却時には地主に譲渡承諾してもらえますよ!」と言われているでしょう」

「あり得るな・・・」

「それに、購入する個人は不動産取引のプロではありませんから、『地主が譲渡承諾しないリスク』を正しく理解しているとは思えません」

「そうかもしれないけど、それを言い出すと借地権制度自体を否定することにならないかな?」

「部長の言っていることは分かります。分かりますけど、借地権付区分所有建物(コンドミニアム)や借地権付建物(戸建て)の購入者は素人です。何か救済手段を用意してあげてもいいと思うんです」

「救済手段ね・・・」と俺は小さく呟いた。

<続く>
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