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第10回活動報告:借地権の争いを解決しろ!
底地ファンドを調査しろ(その1)
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(4)底地ファンドを調査しろ
俺は今回の事件について考えてみた。探偵の設定だから推理くらいしてもいいだろう。
まず、俺のプロファイリングによれば、ジョーダン親子はケチだ。
ケチだから、自分たちの金を使いたくない。
ケチだから、他人のお金で底地を買おうとするはず。
つまり俺の推理によれば、
―― MJは底地の取得資金を外部調達している!
そう思った俺は、IFA3人娘(エマ、ミア、ソフィア)に連絡を取ることを考えた。IFA3人娘への依頼内容は「底地ファンドの発行要項を集めてほしい」だ。IFA3人娘に連絡をしたところで、きっとターニャが一緒にやって来るだろう。それなら、最初からターニャに先に連絡した方が、信頼関係にヒビが入らなくていい。
ターニャへの連絡はいつもミゲルに頼んでいるのだが、残念ながら今回ミゲルはジャービス警察に捜査協力していて内部調査部にいない。だから、ロイに頼んでターニャ経由で社債の発行要項の収集をお願いした。
きっと、社債の発行要項が集まったら、高級店でIFA3人娘とターニャに会うことになる。捜査のために、俺はお金を下ろしに銀行のATMへ向かった。
***
ロイが連絡した翌日には「社債の発行要項が手に入った」とターニャから連絡があった。ターニャからの連絡を受けて、俺とロイはターニャが指定した高級焼肉店に向かった。
ジャービス王国には2種類の焼肉店がある。日式焼肉(日本式焼肉)と韓式焼肉(韓国式焼肉)だ。日式焼肉は牛肉を焼いて食べるのがメインで、韓式焼肉はいろんな種類の肉を食べる。今回訪問したのは日式焼肉店だ。言うまでもなく、値段は日式焼肉店の方が高い。
“ジュー ジュー”
俺たちが高級焼肉店に到着すると、先に来たターニャたちが肉を焼いている音が聞こえた。ターニャが手を振って俺とロイを席に呼ぶ。
「ここのランチはお得なのよ! ランチコースは1人6,000JDだけど、夜のコースだと1人15,000JDはするわ!」とターニャがどうでもいい情報を俺に教えてくれた。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
俺の推理が正しければ、ターニャは『お得なランチにしてあげたのだから感謝してほしい!』と俺にアピールしている。
「ふーん、そうなんだ」と俺は素っ気なく返答した。
お昼ご飯はまだだったから、席に着いた俺たちはターニャたちと同じランチコースを注文した。
俺は友達がいないから、焼肉店ではいつも一人焼肉をしている。だから、みんなで焼き肉を食べるものは子供の時以来だ。問題は全員の会計36,000JDを俺が払うことだが、情報提供料として割り切ることにする。
しばらくしたら、みんな焼肉を食べ終わったようだ。タイミングを見計らって俺は話を切り出した。
「それで、底地ファンドの発行要項は手に入ったんだよね?」
「もちろんです!」IFA3人娘の一人ミアが自信満々に言った。
ミアはテーブルをおしぼりで拭いてから、社債の発行要項を出した。焼肉の後のテーブルは脂ぎっているから、そのまま置くと発行要項が脂でベタベタになる。
社債の発行要項にはダブリン証券の文字が入っているから、この社債もダブリン証券が販売している。ジョーダンもマイケルも表に出てこないから、証券会社としてこの社債を販売するのは問題ないのだろう。だが、ダブリン証券は全容を理解している確信犯だ。
ミアから受け取ったMJの社債発行要項のうちの1つの発行条件は図表10-9の通りだった。発行総額が3億JD、社債金利は3%、償還期限は5年後だ。
【図表10-9:社債の発行条件】
次に、底地の取得価格は3億JDだ。だから、社債で調達した3億JDのみで底地を購入している。自分ではお金を出さないジョーダンとマイケルのスタンスは今回も健在だ。
MJが取得する土地は底地であるが、参考情報として更地価格10億JDが記載されていることから借地権割合は70%。
ジャービス王国の固定資産税は土地評価額の2%であるから年間2,000万JD(10億JD×2%)、地代はその3倍である年間6,000万JDに設定されている。
【図表10-10:底地に関する情報】
ちなみに、地代(年額)は固定資産税(および都市計画税)の3倍とする場合が実務上多い。特に根拠はないのだが、慣習的にそう取り扱われている。だから、固定資産税の2倍が地主の純収益となる。
※日本においても、地代は固定資産税額の3~4倍とする慣習があります。
ただし、この方法で計算すると地代があまりにも低くなる場合があります。この場合、権利金として土地契約時に一時金を支払って、年間地代の安さを補います。
ちなみに、日本における固定資産税は、東京都を例にすると(固定資産税は地方税のため)、原則、固定資産税率は土地評価額の1.4%、都市計画税は土地評価額の0.3%です。
なお、宅地や農地の税額の計算においては、土地評価額から減額した課税標準額をもとにして計算するため、大きな金額にはなりません。
<続く>
俺は今回の事件について考えてみた。探偵の設定だから推理くらいしてもいいだろう。
まず、俺のプロファイリングによれば、ジョーダン親子はケチだ。
ケチだから、自分たちの金を使いたくない。
ケチだから、他人のお金で底地を買おうとするはず。
つまり俺の推理によれば、
―― MJは底地の取得資金を外部調達している!
そう思った俺は、IFA3人娘(エマ、ミア、ソフィア)に連絡を取ることを考えた。IFA3人娘への依頼内容は「底地ファンドの発行要項を集めてほしい」だ。IFA3人娘に連絡をしたところで、きっとターニャが一緒にやって来るだろう。それなら、最初からターニャに先に連絡した方が、信頼関係にヒビが入らなくていい。
ターニャへの連絡はいつもミゲルに頼んでいるのだが、残念ながら今回ミゲルはジャービス警察に捜査協力していて内部調査部にいない。だから、ロイに頼んでターニャ経由で社債の発行要項の収集をお願いした。
きっと、社債の発行要項が集まったら、高級店でIFA3人娘とターニャに会うことになる。捜査のために、俺はお金を下ろしに銀行のATMへ向かった。
***
ロイが連絡した翌日には「社債の発行要項が手に入った」とターニャから連絡があった。ターニャからの連絡を受けて、俺とロイはターニャが指定した高級焼肉店に向かった。
ジャービス王国には2種類の焼肉店がある。日式焼肉(日本式焼肉)と韓式焼肉(韓国式焼肉)だ。日式焼肉は牛肉を焼いて食べるのがメインで、韓式焼肉はいろんな種類の肉を食べる。今回訪問したのは日式焼肉店だ。言うまでもなく、値段は日式焼肉店の方が高い。
“ジュー ジュー”
俺たちが高級焼肉店に到着すると、先に来たターニャたちが肉を焼いている音が聞こえた。ターニャが手を振って俺とロイを席に呼ぶ。
「ここのランチはお得なのよ! ランチコースは1人6,000JDだけど、夜のコースだと1人15,000JDはするわ!」とターニャがどうでもいい情報を俺に教えてくれた。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
俺の推理が正しければ、ターニャは『お得なランチにしてあげたのだから感謝してほしい!』と俺にアピールしている。
「ふーん、そうなんだ」と俺は素っ気なく返答した。
お昼ご飯はまだだったから、席に着いた俺たちはターニャたちと同じランチコースを注文した。
俺は友達がいないから、焼肉店ではいつも一人焼肉をしている。だから、みんなで焼き肉を食べるものは子供の時以来だ。問題は全員の会計36,000JDを俺が払うことだが、情報提供料として割り切ることにする。
しばらくしたら、みんな焼肉を食べ終わったようだ。タイミングを見計らって俺は話を切り出した。
「それで、底地ファンドの発行要項は手に入ったんだよね?」
「もちろんです!」IFA3人娘の一人ミアが自信満々に言った。
ミアはテーブルをおしぼりで拭いてから、社債の発行要項を出した。焼肉の後のテーブルは脂ぎっているから、そのまま置くと発行要項が脂でベタベタになる。
社債の発行要項にはダブリン証券の文字が入っているから、この社債もダブリン証券が販売している。ジョーダンもマイケルも表に出てこないから、証券会社としてこの社債を販売するのは問題ないのだろう。だが、ダブリン証券は全容を理解している確信犯だ。
ミアから受け取ったMJの社債発行要項のうちの1つの発行条件は図表10-9の通りだった。発行総額が3億JD、社債金利は3%、償還期限は5年後だ。
【図表10-9:社債の発行条件】
次に、底地の取得価格は3億JDだ。だから、社債で調達した3億JDのみで底地を購入している。自分ではお金を出さないジョーダンとマイケルのスタンスは今回も健在だ。
MJが取得する土地は底地であるが、参考情報として更地価格10億JDが記載されていることから借地権割合は70%。
ジャービス王国の固定資産税は土地評価額の2%であるから年間2,000万JD(10億JD×2%)、地代はその3倍である年間6,000万JDに設定されている。
【図表10-10:底地に関する情報】
ちなみに、地代(年額)は固定資産税(および都市計画税)の3倍とする場合が実務上多い。特に根拠はないのだが、慣習的にそう取り扱われている。だから、固定資産税の2倍が地主の純収益となる。
※日本においても、地代は固定資産税額の3~4倍とする慣習があります。
ただし、この方法で計算すると地代があまりにも低くなる場合があります。この場合、権利金として土地契約時に一時金を支払って、年間地代の安さを補います。
ちなみに、日本における固定資産税は、東京都を例にすると(固定資産税は地方税のため)、原則、固定資産税率は土地評価額の1.4%、都市計画税は土地評価額の0.3%です。
なお、宅地や農地の税額の計算においては、土地評価額から減額した課税標準額をもとにして計算するため、大きな金額にはなりません。
<続く>
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