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第9回活動報告:SDGs詐欺師を捕まえろ
詐欺被害者に会いに行こう!(その2)
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(3)詐欺被害者に会いに行こう! <続き>
工場の屋根に設置された太陽光発電施設を確認した俺たちは、その後、ジョヴァンニに太陽光発電施設に関する資料を見せてもらった。ジョヴァンニの話ではジョーダンではなく、息子のマイケルがノヴァーラへの提案(プレゼン)にやってきたようだ。
ルイーズが言っていた『ジョーダンが息子を使ってSDGs詐欺をしている』という情報は間違ってはいないようだ。
ジョヴァンニが見せてくれた書類は『MJ』のロゴが入った提案資料だった。ジョーダンたちの会社名は株式会社MJらしい。そして、表題には『CO2排出量の削減のご提案』と書いてある。
―― MJか・・・
MJはいろんな人のイニシャルに使われている。
①マイケル・ジョーダン
②マイケル・ジャクソン
③松本潤
当然のことながら今回は①だと俺は推理している。
それにしても、ミゲルが見たら爆笑しそうなロゴだ。ミゲルを連れてこなくて良かった、と俺は胸をなでおろす。
ジョヴァンニが見せてくれた資料を確認すると、ノヴァーラの本社工場の屋根6,000㎡に2MWの太陽光発電施設を設置することが提案されていた。そして、太陽光発電施設はMJが設立したSPC(特別目的会社)がオペレーティング・リース契約でノヴァーラに貸し出す提案だ。リース契約の内容は、リース料は年間1億JD、リース期間が10年間であるから、リース料総額は10億JDだ。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
提案資料においては、太陽光発電施設の耐用年数が17年に対してリース期間が10年であるから経済的耐用年数基準を満たしており、また、太陽光発電施設の適正な時価は15億JDであるから現在価値基準も満たしていると説明されている。
※オペレーティング・リース取引に該当するか否かは、現在価値基準(90%基準)と経済的耐用年数基準(75%基準)によって判断します。
現在価値基準によれば、リース料総額の現在価値がリース物件の時価の概ね90%未満であればオペレーティング・リースと見做されます。
経済的耐用年数基準によれば、リース契約の解約不能期間がリース物件の経済的耐用年数の概ね75%未満であればオペレーティング・リースと見做されます。
これらの要件を満たさない場合、当該リース取引はファイナンス・リース取引に該当します。
なお、内部調査部で事前に上場しているインフラファンドの売買事例を調べたところ、発電出力1MW当りの取得価格は約5億JDだった。インフラファンドが売買する太陽光発電施設はFIT(固定価格買取制度)による買取価格が現在よりも高い物件が多いため、ノヴァーラが設置した太陽光発電施設と単純に比較はできない。そうだとしても、ノヴァーラが時価よりも高値で購入しているのは明らかだ。
ノヴァーラが設置した太陽光発電施設の発電出力が0.5MWだとすると、インフラファンドの売買事例に当てはめた時価は2億5,000万JDだ。ノヴァーラのリース料総額は10億JDだから、時価の約4倍のリース料を支払うリース契約で太陽光発電施設を賃借していることになる。
俺はこの状況をジョヴァンニに伝えるべきか迷っていたのだが、スミスが「伝えた方がいいです」というから説明することにした。
「本日、太陽光発電施設の概要資料と工場の屋根に設定された現物を見せていただきました。それで、2点ほど気付いた点があります」
俺はそう言うと、工場の屋根には発電出力0.5MWの太陽光発電施設しか作れないこと、リース料総額が太陽光発電施設の時価の4倍になっていることをジョヴァンニに伝えた。
「え? そうなんですか?」
「それと、もう一つお伝えしておいた方がいいことがあります。御社にCO2排出量の削減を提案したマイケルですが、先日、ジャービス王国から逃亡したジョーダンの息子です」
「楽器ケースに隠れて逃亡したジョーダンですか?」
「ええ、そのジョーダンです。逃亡したジョーダンが詐欺まがいの行為をしていると内部告発ホットラインに情報提供があったので、私たち内部調査部で調べていました。実は御社の他にも2社ほど同様の被害に遭っている会社がありそうです」
「そうですか・・・」
ジョヴァンニはショックを隠せない。
「ところで、マイケルから提案があった時に、他社に相見積もりは取らなかったのですか?」
「それが・・・相見積もりは取っていません」
「え? そうなんですか? 太陽光発電施設を販売する会社はジャービス国内たくさんありますよね?」
「そうなんですが、提案にやってきたマイケルが『他社の場合は太陽光発電施設を買取る必要があるから、オペレーティング・リースとしてオフバランスできるのは当社だけだ』と言っていました。だから、他社に聞いてもオペレーティング・リースで対応してくれないと思ったのです」
きっとマイケルは、他社に相見積もりを取られると相場の何倍かで太陽光発電施設を売りつけようとしているのがバレると思ったのだろう。他社にコンタクトさせないように、オペレーティング・リースを使うとは、なかなか優秀な詐欺師だ。
「それでは、ESG対応とオペレーティング・リース取引の合わせ技で契約した、ということですか?」
「そういうことですね・・・」
ノヴァーラに訪問して、ジョーダンの手口を把握することができた。
これ以上の情報は得られないと判断し、俺たちはジョヴァンニに礼を言ってノヴァーラを後にした。
工場の屋根に設置された太陽光発電施設を確認した俺たちは、その後、ジョヴァンニに太陽光発電施設に関する資料を見せてもらった。ジョヴァンニの話ではジョーダンではなく、息子のマイケルがノヴァーラへの提案(プレゼン)にやってきたようだ。
ルイーズが言っていた『ジョーダンが息子を使ってSDGs詐欺をしている』という情報は間違ってはいないようだ。
ジョヴァンニが見せてくれた書類は『MJ』のロゴが入った提案資料だった。ジョーダンたちの会社名は株式会社MJらしい。そして、表題には『CO2排出量の削減のご提案』と書いてある。
―― MJか・・・
MJはいろんな人のイニシャルに使われている。
①マイケル・ジョーダン
②マイケル・ジャクソン
③松本潤
当然のことながら今回は①だと俺は推理している。
それにしても、ミゲルが見たら爆笑しそうなロゴだ。ミゲルを連れてこなくて良かった、と俺は胸をなでおろす。
ジョヴァンニが見せてくれた資料を確認すると、ノヴァーラの本社工場の屋根6,000㎡に2MWの太陽光発電施設を設置することが提案されていた。そして、太陽光発電施設はMJが設立したSPC(特別目的会社)がオペレーティング・リース契約でノヴァーラに貸し出す提案だ。リース契約の内容は、リース料は年間1億JD、リース期間が10年間であるから、リース料総額は10億JDだ。
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
提案資料においては、太陽光発電施設の耐用年数が17年に対してリース期間が10年であるから経済的耐用年数基準を満たしており、また、太陽光発電施設の適正な時価は15億JDであるから現在価値基準も満たしていると説明されている。
※オペレーティング・リース取引に該当するか否かは、現在価値基準(90%基準)と経済的耐用年数基準(75%基準)によって判断します。
現在価値基準によれば、リース料総額の現在価値がリース物件の時価の概ね90%未満であればオペレーティング・リースと見做されます。
経済的耐用年数基準によれば、リース契約の解約不能期間がリース物件の経済的耐用年数の概ね75%未満であればオペレーティング・リースと見做されます。
これらの要件を満たさない場合、当該リース取引はファイナンス・リース取引に該当します。
なお、内部調査部で事前に上場しているインフラファンドの売買事例を調べたところ、発電出力1MW当りの取得価格は約5億JDだった。インフラファンドが売買する太陽光発電施設はFIT(固定価格買取制度)による買取価格が現在よりも高い物件が多いため、ノヴァーラが設置した太陽光発電施設と単純に比較はできない。そうだとしても、ノヴァーラが時価よりも高値で購入しているのは明らかだ。
ノヴァーラが設置した太陽光発電施設の発電出力が0.5MWだとすると、インフラファンドの売買事例に当てはめた時価は2億5,000万JDだ。ノヴァーラのリース料総額は10億JDだから、時価の約4倍のリース料を支払うリース契約で太陽光発電施設を賃借していることになる。
俺はこの状況をジョヴァンニに伝えるべきか迷っていたのだが、スミスが「伝えた方がいいです」というから説明することにした。
「本日、太陽光発電施設の概要資料と工場の屋根に設定された現物を見せていただきました。それで、2点ほど気付いた点があります」
俺はそう言うと、工場の屋根には発電出力0.5MWの太陽光発電施設しか作れないこと、リース料総額が太陽光発電施設の時価の4倍になっていることをジョヴァンニに伝えた。
「え? そうなんですか?」
「それと、もう一つお伝えしておいた方がいいことがあります。御社にCO2排出量の削減を提案したマイケルですが、先日、ジャービス王国から逃亡したジョーダンの息子です」
「楽器ケースに隠れて逃亡したジョーダンですか?」
「ええ、そのジョーダンです。逃亡したジョーダンが詐欺まがいの行為をしていると内部告発ホットラインに情報提供があったので、私たち内部調査部で調べていました。実は御社の他にも2社ほど同様の被害に遭っている会社がありそうです」
「そうですか・・・」
ジョヴァンニはショックを隠せない。
「ところで、マイケルから提案があった時に、他社に相見積もりは取らなかったのですか?」
「それが・・・相見積もりは取っていません」
「え? そうなんですか? 太陽光発電施設を販売する会社はジャービス国内たくさんありますよね?」
「そうなんですが、提案にやってきたマイケルが『他社の場合は太陽光発電施設を買取る必要があるから、オペレーティング・リースとしてオフバランスできるのは当社だけだ』と言っていました。だから、他社に聞いてもオペレーティング・リースで対応してくれないと思ったのです」
きっとマイケルは、他社に相見積もりを取られると相場の何倍かで太陽光発電施設を売りつけようとしているのがバレると思ったのだろう。他社にコンタクトさせないように、オペレーティング・リースを使うとは、なかなか優秀な詐欺師だ。
「それでは、ESG対応とオペレーティング・リース取引の合わせ技で契約した、ということですか?」
「そういうことですね・・・」
ノヴァーラに訪問して、ジョーダンの手口を把握することができた。
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