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回顧録4
遅れてきた反抗期(その5)
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(5)神童は就職する
ジャービス王立大学でのルイーズの卒業時の順位は4位、ダニエルは3位だった。
ジャービス王立大学を卒業したルイーズは総務省に就職した。一方のダニエルは政府機関ではなく民間のコンサルティング会社に就職した。
ちなみに、1位と2位の卒業生が就職したのは王国軍と内務省だ。
私はルイーズの就職先がダニエルと同じでなかったことに少しガッカリしたものだ。
ルイーズとダニエルが大学生の時も、私とサラは『異性として意識させる作戦』を実行していた。でも、サラから聞く限り、2人が付き合っているわけではなさそうだった。
ダニエルがルイーズと別のところに就職してしまうと、『異性として意識させる作戦』を実行するのが難しくなるだろう。それに、ダニエルが就職した先でどこの馬の骨か分からない女と知り合って、結婚するかもしれない。そうなると、私たちのこれまでの努力が無駄になる。面倒なレベル上げをしていたスマホゲームが、急にサービスを終了してしまうようなイメージだ。
ルイーズが幸せになってくれることが私とサラにとって一番重要なはずだ。
だが、その時の私の心境としてはルイーズの幸せよりも、私たちの努力を無駄にしないことを優先していた。つまり、私は『異性として意識させる作戦』のクリアに意地になっていたようだ。
ルイーズがどこの馬の骨か分からない男と結婚するくらいなら、ダニエルの方がマシ。
私はダニエルのことが好きでも嫌いでもない。ベストではないが、セカンドベストみたいない感じだ。
親心とは複雑だ・・・
ルイーズが就職してから数年が経ち、ダニエルが総務省にやってきた。ジャービス王国の王子だから総務大臣になったようだ。コネ就職のコネ大臣だ。
ダニエルが戻ってきてしばらくしたら、国王の発案で内部調査部を設置することになり、ルイーズはその部署に配属された。ダニエルはルイーズが幼馴染だから内部調査部の仕事を頼みやすかったのだろう。
ルイーズに聞いたところでは、内部調査部の業務はなかなか大変そうだった。ダニエルとルイーズはいろんな事件を解決し、二人が一緒にいる時間が増えた。
すると、二人の様子を見た周りの職員はこう噂した。
“あの二人、付き合ってるんじゃない?”
私は内部調査部が立ち上がった頃にはジャービス中央銀行の総裁に就任していたのだが、部外者の私のところまでその噂は届いた。
―― え? 付き合ってるの?
私は驚いた。私とサラがどれだけ外堀を埋めようとも、恋愛関係に発展しなかった二人。
私が知らない間に交際していたとは・・・
そのことをサラに伝えたら「良かったじゃない。そのうち、うちに挨拶に来るんじゃない?」と嬉しそうに私に言った。
―― そのうち挨拶にやってくる・・・
私はいい言葉だと思った。秋の晴れた日、紅葉の中を散歩するような清々しさがあった。
ただ、以前とは違う点が一つあった。
内部調査部が立ち上がったくらいから、私はルイーズとコミュニケーションを取るのが難しくなった。そう、あれがやってきたのだ。
―― 反抗期・・・
ルイーズは子供のころから私たちの言うことを聞くいい娘だった。私たちとルイーズの関係はずっと良かったと思う。他の家とは違って、ルイーズは思春期でも私に暴言を吐くようなことはしなかった。
その反動が今になってやってきた。
一般的に反抗期は子供が大人になる成長の過程、すなわち、思春期の間に起こる一時的な現象とされている。つまり、思春期が終われば反抗期は終わるのだ。
ルイーズは思春期に反抗期がなかった。
ルイーズの反抗期は大人になってから来ている。
整理して考えてみると、こういうことだ。
ルイーズは思春期でないから、反抗期は終わらない。
つまり、
―― エンドレス反抗期・・・
伝説的ロックバンドの曲みたいだな。
私はそう思った。
<続く>
ジャービス王立大学でのルイーズの卒業時の順位は4位、ダニエルは3位だった。
ジャービス王立大学を卒業したルイーズは総務省に就職した。一方のダニエルは政府機関ではなく民間のコンサルティング会社に就職した。
ちなみに、1位と2位の卒業生が就職したのは王国軍と内務省だ。
私はルイーズの就職先がダニエルと同じでなかったことに少しガッカリしたものだ。
ルイーズとダニエルが大学生の時も、私とサラは『異性として意識させる作戦』を実行していた。でも、サラから聞く限り、2人が付き合っているわけではなさそうだった。
ダニエルがルイーズと別のところに就職してしまうと、『異性として意識させる作戦』を実行するのが難しくなるだろう。それに、ダニエルが就職した先でどこの馬の骨か分からない女と知り合って、結婚するかもしれない。そうなると、私たちのこれまでの努力が無駄になる。面倒なレベル上げをしていたスマホゲームが、急にサービスを終了してしまうようなイメージだ。
ルイーズが幸せになってくれることが私とサラにとって一番重要なはずだ。
だが、その時の私の心境としてはルイーズの幸せよりも、私たちの努力を無駄にしないことを優先していた。つまり、私は『異性として意識させる作戦』のクリアに意地になっていたようだ。
ルイーズがどこの馬の骨か分からない男と結婚するくらいなら、ダニエルの方がマシ。
私はダニエルのことが好きでも嫌いでもない。ベストではないが、セカンドベストみたいない感じだ。
親心とは複雑だ・・・
ルイーズが就職してから数年が経ち、ダニエルが総務省にやってきた。ジャービス王国の王子だから総務大臣になったようだ。コネ就職のコネ大臣だ。
ダニエルが戻ってきてしばらくしたら、国王の発案で内部調査部を設置することになり、ルイーズはその部署に配属された。ダニエルはルイーズが幼馴染だから内部調査部の仕事を頼みやすかったのだろう。
ルイーズに聞いたところでは、内部調査部の業務はなかなか大変そうだった。ダニエルとルイーズはいろんな事件を解決し、二人が一緒にいる時間が増えた。
すると、二人の様子を見た周りの職員はこう噂した。
“あの二人、付き合ってるんじゃない?”
私は内部調査部が立ち上がった頃にはジャービス中央銀行の総裁に就任していたのだが、部外者の私のところまでその噂は届いた。
―― え? 付き合ってるの?
私は驚いた。私とサラがどれだけ外堀を埋めようとも、恋愛関係に発展しなかった二人。
私が知らない間に交際していたとは・・・
そのことをサラに伝えたら「良かったじゃない。そのうち、うちに挨拶に来るんじゃない?」と嬉しそうに私に言った。
―― そのうち挨拶にやってくる・・・
私はいい言葉だと思った。秋の晴れた日、紅葉の中を散歩するような清々しさがあった。
ただ、以前とは違う点が一つあった。
内部調査部が立ち上がったくらいから、私はルイーズとコミュニケーションを取るのが難しくなった。そう、あれがやってきたのだ。
―― 反抗期・・・
ルイーズは子供のころから私たちの言うことを聞くいい娘だった。私たちとルイーズの関係はずっと良かったと思う。他の家とは違って、ルイーズは思春期でも私に暴言を吐くようなことはしなかった。
その反動が今になってやってきた。
一般的に反抗期は子供が大人になる成長の過程、すなわち、思春期の間に起こる一時的な現象とされている。つまり、思春期が終われば反抗期は終わるのだ。
ルイーズは思春期に反抗期がなかった。
ルイーズの反抗期は大人になってから来ている。
整理して考えてみると、こういうことだ。
ルイーズは思春期でないから、反抗期は終わらない。
つまり、
―― エンドレス反抗期・・・
伝説的ロックバンドの曲みたいだな。
私はそう思った。
<続く>
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