39 / 80
回顧録4
遅れてきた反抗期(その4)
しおりを挟む
(4)神童は神童を意識する
幸運にも私の大学時代の同級生がジャービス王立第1高校で教師をしていた。だから、私は同級生に『体育館の裏で待ってます作戦』の協力を依頼することにした。
依頼内容は極めてシンプルだ。私は同級生に「ダニエルとルイーズのロッカーにこの手紙を入れてほしい」とだけ頼んだ。その同級生は理由を聞かずに引き受けてくれた。いい奴だ。
手紙にはサラが言った通りに『今日の午後4時、体育館の裏で待ってます』と書いた。細かいことだが、ダニエル宛の手紙はサラが書いて、ルイーズ宛の手紙は職場の同僚に書いてもらった。男性が書いた手紙と女性が書いた手紙は違うから、ここでバレると元も子もない。
同級生に手紙をロッカーに入れてもらう日、私は有給休暇を取得した。急に休暇申請したから、理由は『体調不良で病院に行く』とした。もちろん仮病だ。いつも真面目に仕事しているのだから、これくらいの嘘は上司や同僚も許してくれるだろう。
ジャービス王立第1高校の体育館は国立公園から見える場所にあった。だから、サラと一緒に国立公園の体育館裏が見える場所に待機して、2人が来るのを双眼鏡で観察した。
私とサラはワクワクしながら2人が来るのを待っている。
ルイーズために『体育館の裏で待ってます作戦』はやっているはずなのだが、私とサラは夢中でこの作戦(いたずら?)を楽しんでいた。
私とサラが待っていると、午後3時55分ごろにダニエルが体育館の裏に現れた。
落ち着かない雰囲気で回りをキョロキョロ見渡している。
―― 誰かに告白される気満々だ・・・
私はダニエルが髪型とかをチェックしているのを見て楽しんでいた。
私も男だからダニエルの心境が分かる。
誰かが告白してくるだろうという期待が90%。
残り10%は誰かのいたずら。
もし、いたずらだったら「知ってましたけどー」と冷静に対応しないといけない。
そして、午後4時を少し過ぎたころルイーズが姿を現した。
―― ルイーズきたー!
私とサラはハイタッチをした。
二人が体育館裏にきた時点で、今回の『体育館の裏で待ってます作戦』は概ね成功したと言ってもいいだろう。
私たちは二人の様子を双眼鏡で観察した。
まず、ダニエルがルイーズに何かを言ったようだ。私の想像では「この手紙は君から?」と言ったのではないだろうか。さすがに盗聴器を仕掛けるわけにいかないから、そこは想像するしかない。
対するルイーズは手を横に振っている。「いやいや、私じゃないから」とルイーズは言ったのかな?
ルイーズはダニエルに同じ手紙を見せた。二人とも同じ手紙が届いたことから『誰かのいたずらでは?』と警戒している素振りがうかがえる。
私の印象としては、手紙が嘘だと知ってダニエルが少しガッカリしたように見えた。
一方のルイーズは表情を変えなかった。
その後、ルイーズとダニエルは話をしていた。私とサラはその様子を見ていた。
二人がお互いに異性として意識してくれることを期待しながら・・・
***
その後も、私とサラは事あるごとに二人を異性として意識させる作戦を決行した。
その一つを紹介すると『バレンタインデー・ホワイトデー作戦』だ。
まず、バレンタインデーにダニエルのロッカーに贈り物を入れる。そして、贈り物と一緒に『愛をこめて Lo』と手紙を入れておく。
単に『L』だとLouise(ルイーズ)かLayla(レイラ)かが分からないから『Lo』にした。
『Lo』だったとしても、Lola(ローラ)、Loretta(ロレッタ)、Loraine(ロレイン)がいるじゃないかというツッコミは止めてほしい。候補を減らすのが目的だから。
次に、ホワイトデーにはルイーズのロッカーに贈り物と手紙を入れる。手紙には『愛をこめて Da』と書いておく。
単に『D』だとDaniel(ダニエル)かDennis(デニス)なのか分からない。『Lo』と同様に贈り主の候補を減らすために『Da』にした。
※ここでは日本のバレンタインデーを前提に書いています。外国のバレンタインデーは男性から女性にプレゼントを贈るのが一般的です。日本の逆ですね。
この作戦はダニエルには有効だったかもしれない。なぜなら、私とサラがルイーズのロッカーに入れた『愛をこめて Da』とは別の『愛をこめて Da』がルイーズのロッカーに入っていたからだ。要は、ルイーズのロッカーには『愛をこめて Da』が2個入っていた。
私の推測では、ルイーズはダニエルのことをどう思っているか分からない。
でも、少なくともダニエルはルイーズを異性として意識していたはずだ。
私たちの作戦は完ぺきとはいかなかったが、神童(ダニエル)は神童(ルイーズ)を意識するようになったと思う。
でも、神童(ルイーズ)が神童(ダニエル)を意識していたかどうかは分からない。
私とサラの作戦はまだまだ続いたのだが、長くなるからこれくらいにしておこう。
いやー、面白かった・・・
<続く>
幸運にも私の大学時代の同級生がジャービス王立第1高校で教師をしていた。だから、私は同級生に『体育館の裏で待ってます作戦』の協力を依頼することにした。
依頼内容は極めてシンプルだ。私は同級生に「ダニエルとルイーズのロッカーにこの手紙を入れてほしい」とだけ頼んだ。その同級生は理由を聞かずに引き受けてくれた。いい奴だ。
手紙にはサラが言った通りに『今日の午後4時、体育館の裏で待ってます』と書いた。細かいことだが、ダニエル宛の手紙はサラが書いて、ルイーズ宛の手紙は職場の同僚に書いてもらった。男性が書いた手紙と女性が書いた手紙は違うから、ここでバレると元も子もない。
同級生に手紙をロッカーに入れてもらう日、私は有給休暇を取得した。急に休暇申請したから、理由は『体調不良で病院に行く』とした。もちろん仮病だ。いつも真面目に仕事しているのだから、これくらいの嘘は上司や同僚も許してくれるだろう。
ジャービス王立第1高校の体育館は国立公園から見える場所にあった。だから、サラと一緒に国立公園の体育館裏が見える場所に待機して、2人が来るのを双眼鏡で観察した。
私とサラはワクワクしながら2人が来るのを待っている。
ルイーズために『体育館の裏で待ってます作戦』はやっているはずなのだが、私とサラは夢中でこの作戦(いたずら?)を楽しんでいた。
私とサラが待っていると、午後3時55分ごろにダニエルが体育館の裏に現れた。
落ち着かない雰囲気で回りをキョロキョロ見渡している。
―― 誰かに告白される気満々だ・・・
私はダニエルが髪型とかをチェックしているのを見て楽しんでいた。
私も男だからダニエルの心境が分かる。
誰かが告白してくるだろうという期待が90%。
残り10%は誰かのいたずら。
もし、いたずらだったら「知ってましたけどー」と冷静に対応しないといけない。
そして、午後4時を少し過ぎたころルイーズが姿を現した。
―― ルイーズきたー!
私とサラはハイタッチをした。
二人が体育館裏にきた時点で、今回の『体育館の裏で待ってます作戦』は概ね成功したと言ってもいいだろう。
私たちは二人の様子を双眼鏡で観察した。
まず、ダニエルがルイーズに何かを言ったようだ。私の想像では「この手紙は君から?」と言ったのではないだろうか。さすがに盗聴器を仕掛けるわけにいかないから、そこは想像するしかない。
対するルイーズは手を横に振っている。「いやいや、私じゃないから」とルイーズは言ったのかな?
ルイーズはダニエルに同じ手紙を見せた。二人とも同じ手紙が届いたことから『誰かのいたずらでは?』と警戒している素振りがうかがえる。
私の印象としては、手紙が嘘だと知ってダニエルが少しガッカリしたように見えた。
一方のルイーズは表情を変えなかった。
その後、ルイーズとダニエルは話をしていた。私とサラはその様子を見ていた。
二人がお互いに異性として意識してくれることを期待しながら・・・
***
その後も、私とサラは事あるごとに二人を異性として意識させる作戦を決行した。
その一つを紹介すると『バレンタインデー・ホワイトデー作戦』だ。
まず、バレンタインデーにダニエルのロッカーに贈り物を入れる。そして、贈り物と一緒に『愛をこめて Lo』と手紙を入れておく。
単に『L』だとLouise(ルイーズ)かLayla(レイラ)かが分からないから『Lo』にした。
『Lo』だったとしても、Lola(ローラ)、Loretta(ロレッタ)、Loraine(ロレイン)がいるじゃないかというツッコミは止めてほしい。候補を減らすのが目的だから。
次に、ホワイトデーにはルイーズのロッカーに贈り物と手紙を入れる。手紙には『愛をこめて Da』と書いておく。
単に『D』だとDaniel(ダニエル)かDennis(デニス)なのか分からない。『Lo』と同様に贈り主の候補を減らすために『Da』にした。
※ここでは日本のバレンタインデーを前提に書いています。外国のバレンタインデーは男性から女性にプレゼントを贈るのが一般的です。日本の逆ですね。
この作戦はダニエルには有効だったかもしれない。なぜなら、私とサラがルイーズのロッカーに入れた『愛をこめて Da』とは別の『愛をこめて Da』がルイーズのロッカーに入っていたからだ。要は、ルイーズのロッカーには『愛をこめて Da』が2個入っていた。
私の推測では、ルイーズはダニエルのことをどう思っているか分からない。
でも、少なくともダニエルはルイーズを異性として意識していたはずだ。
私たちの作戦は完ぺきとはいかなかったが、神童(ダニエル)は神童(ルイーズ)を意識するようになったと思う。
でも、神童(ルイーズ)が神童(ダニエル)を意識していたかどうかは分からない。
私とサラの作戦はまだまだ続いたのだが、長くなるからこれくらいにしておこう。
いやー、面白かった・・・
<続く>
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

万永千年宇宙浮遊一万年後地球目指
Mar
経済・企業
一万年後の地球。想像できるだろうか。 長い年月が経ち、人類の痕跡はほとんど見当たらない地球かもしれない。もしかしたら、自然の力が再び支配する中で、新たな生命や文明が芽生えているかもしれない。 人間ではなく、きっと我々の知らない生命体。 それが一万年後に生きている人間かもしれない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

目が覚めたら囲まれてました
るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。
燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。
そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。
チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。
不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で!
独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる