第4王子は中途半端だから探偵することにした(の続き)

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回顧録4

遅れてきた反抗期(その3)

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(3)神童の両親は神童を意識させようとする

 ルイーズとダニエルは高校生になった。成績トップの2人の進学先はジャービス王立第1高校だった。ジャービス王国は成績順に進学する学校が割り振られる。だから、当然のことながら2人は同じ学校に進学する。

 ジャービス王立第1高校では、入学試験の順位によって生徒会への参加が要請された。ルイーズとダニエルは1年生から生徒会に参加するようになり、一緒に過ごす時間が増えてきた。
 高校生になったルイーズは母親に似て美人になった。サラの話では、ルイーズは学校で男子生徒から何度か告白されたようだ。ただ、これは父親としては複雑な心境だ。
 娘が男子生徒から人気なのは嬉しいことだが、どこの馬の骨か分からない男と交際するのは喜べない。

 また、サラの話ではダニエルも女子生徒に人気が出てきたようだ。元々身長は高かったのだが、顔立ちが男らしくなってきた。厳密にはイケメンとは言えないものの、それっぽく見えることからダニエルは「雰囲気イケメン」と高校では呼ばれているらしい。

 私は冷静になって考えてみた。ダニエルは娘のライバルだが『どこの馬の骨か分からない男』ではない。ジャービス王国のれっきとした第4王子だ。ルイーズと学年トップをずっと争っているくらいだからバカ王子ではない。
 ルイーズがどこの馬の骨か分からない男と交際するくらいなら・・・

―― ダニエルの方がマシなんじゃないか?

 私はそう思うようになった。

 だから、私はこのことをサラに相談した。

「ルイーズに変な虫が付くくらいなら、ダニエルと付き合えばいいと思うんだ。どう思う?」

「あらー、面白そうね。急にどうしたの?」

「今まではダニエルを敵だと考えてきた。生意気なクソガキで、ルイーズのライバルだからな」

「そうね」

「でも、お前から『ルイーズが同級生に告白されたことがある』と聞いて、そろそろ考えを改めた方がいいと思ったんだ」

「どういう風に?」

「よく『どこの馬の骨か知らない男』と言うだろ。そんな奴とルイーズが交際するのは反対だ」

「ダニエルはいいの?」

「いいわけではない。いいわけではないが、ジャービス王国の王子だ。身元はしっかりしている」

「へー」

「私の言いたいことは、どこの誰か知らない他の男と付き合うくらいなら、ダニエルの方がマシだということだ。この際、ダニエルでいいんじゃないか?」

「あ、そう。でも、本人たちの気持ちが一番重要じゃないかしら?」

「それはそうなんだが・・・。その辺のことは聞いてないか?」

「うーん、二人とも何とも思ってないんじゃないかな」

「何とも思っていない? うちのルイーズは美人じゃないか!」

「そうだとしても、要は、二人とも異性として意識していないのよ」

「異性として意識していない? じゃあ、意識させればいいのか?」

「そうね。異性として意識したら、可能性はあると思うわ」

「どうしたら、意識すると思う?」

「そうねー。こういうのはどうかしら?」

 サラはそう言うと、思い付いた『体育館の裏で待ってます作戦』の概要を笑顔で話し始めた。

「ルイーズとダニエルのロッカーに同じ手紙を入れるの」

「同じ手紙?」

「そう。その手紙には『今日の午後4時、体育館の裏で待ってます』と書いておくの」

「誰かが告白するのに呼び出す手紙だな」

「そうよ、愛の告白。いたずらの可能性もあるけど」サラはいたずらっぽく言った。

「いたずらの可能性はあるな・・・。でも、私だったら体育館の裏に行くかな?」

「そうでしょ。いたずらかも知れないけど、行くでしょ。手紙を受け取った二人は、異性から告白されると思い込んで体育館の裏に行く。そこでダニエルとルイーズが会ったらどう思う?」

「向こうが呼び出したと思うな・・・」

「そう! お互いに『ダニエルは私のことが好きなんだ』、『ルイーズは僕のことが好きなんだ』と勝手に思い込んでくれるのよ!」

「これは異性として意識するなー」

「でしょ?」

「お前、凄いな!」

 こうして、私はサラの考えた『体育館の裏で待ってます作戦』を決行することにした。

<続く>
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