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第8回活動報告:銀行の経営破綻を食い止めろ
財務コンサルタント(その1)
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(7)財務コンサルタント
経営破綻の危機にあるセレナ銀行とロサリオ銀行の救済について、家族会議における国王の要望により民間銀行の意向を確認することになった。
最終的にジャービス政府が救済することになると俺は予想しているが、国王の言うように民間企業同士で解決できる問題であれば政府が介入する必要はない。可能性は低いが、民間銀行が興味を示すのであれば、民間銀行にやらせるべきだ。
ジャービス政府としても公的資金の注入は可能な限り避けたいし。
チャールズはセレナ銀行とロサリオ銀行を救済する候補として、国内大手銀行であるブルックス銀行の頭取ニック、ラングフォード銀行の頭取アーサーを内務省に招集した。併せて、今回の問題の争点となっているセレナ銀行の頭取ラリーとロサリオ銀行の頭取ハンターも内務省に呼んでいる。
銀行の経営破綻を食い止めるのは時間との戦いだ。だから、全員を呼んで議論してした方が効率的だとチャールズは考えたようだ。
会議は内務省で開催されているが、事務次官、財務官、主計局長など内務省の主要な役職者とその部下が参加している。内務省の参加者は20人くらいだろうか。
ジャービス中央銀行もセレナ銀行とロサリオ銀行に対して緊急融資をする可能性があるから、総裁のアドルフが会議に出席している。
そして、俺もチャールズに頼まれて会議に参加している。総務省は関係ないはずだが、この会議の結果を家族会議で報告しないといけないから、チャールズは俺を巻き込んでおきたいのだと思う。
俺は本件に片足を突っ込んでしまったから、仕方なくルイーズを誘って内務省にやってきた。ルイーズは部屋にアドルフがいることを確認すると舌打ちしていた。
理由は分からないが、この親子(父アドルフと娘ルイーズ)は仲が悪い。
さらに運悪くルイーズとアドルフは隣合せに着席している。内務省が議論を円滑に進めるために席順を割振ったはずだから、「席を替えてほしい」とも依頼しにくい。
―― 不安だな・・・
さすがにこの会議で親子喧嘩はしないとは思うのだが。
***
参加者が揃ったので、チャールズが会議の趣旨を説明し始めた。
「セレナ銀行とロサリオ銀行と経営破綻が噂されている。2行とも金融緩和の金余りの時に集めた預金の運用に失敗し、多額の含み損が発生して実質債務超過に陥っている。まずは、この2つの銀行について調査を行った結果を見てほしい」
チャールズはそう言うとセレナ銀行とロサリオ銀行の実態貸借対照表を参加者に示した。
【図表8-24:セレナ銀行の実態貸借対照表(再掲)】
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表8-30:ロサリオ銀行の実態貸借対照表】
チャールズは参加者が2行の実態貸借対照表を見ているのを確認してから説明を続けた。
「セレナ銀行は1兆8,900億JDの実態債務超過、ロサリオ銀行は7,000億JDの債務超過だ。ただし、この金額は大きいものを加味しただけだ。実際にはこれ以上の含み損が発生しているかもしれない」
参加者のブルックス銀行とラングフォード銀行からは「この規模でどうやったらこんな損失が出るんだ?」と声が聞こえてくる。
ジャービス王国の金融機関は規模がそれほど大きくないから、そう思うのは当然だ。
「債務超過の理由は何でしょうか?」ブルックス銀行のニックが質問した。
「理由は幾つかあるんだが、1つは低金利の時に購入したジャービス国債と米国債の評価損だ。もう一つは、不良債権の飛ばしだな」とチャールズが答えた。
「飛ばしですか?」
「2行ともダブリン証券が組成したファンドにLP出資し、そのファンドに不良債権を移して損失が発生するのを隠蔽していた」
「ダブリン証券ですか・・・。当行にも営業に来ていたような気がします」今度はラングフォード銀行のアーサーが言った。
それを聞いたブルックス銀行の参加者も「うちの銀行にも来たよな?」と話している。
2行の飛ばしはダブリン証券のファンドを利用しているのだが、ダブリン証券はジャービス国内の他の銀行にも営業しているようだ。
一連の飛ばしスキームはダブリン証券が主導しているようだが、いったい何行が使っているのだろうか?
<続く>
経営破綻の危機にあるセレナ銀行とロサリオ銀行の救済について、家族会議における国王の要望により民間銀行の意向を確認することになった。
最終的にジャービス政府が救済することになると俺は予想しているが、国王の言うように民間企業同士で解決できる問題であれば政府が介入する必要はない。可能性は低いが、民間銀行が興味を示すのであれば、民間銀行にやらせるべきだ。
ジャービス政府としても公的資金の注入は可能な限り避けたいし。
チャールズはセレナ銀行とロサリオ銀行を救済する候補として、国内大手銀行であるブルックス銀行の頭取ニック、ラングフォード銀行の頭取アーサーを内務省に招集した。併せて、今回の問題の争点となっているセレナ銀行の頭取ラリーとロサリオ銀行の頭取ハンターも内務省に呼んでいる。
銀行の経営破綻を食い止めるのは時間との戦いだ。だから、全員を呼んで議論してした方が効率的だとチャールズは考えたようだ。
会議は内務省で開催されているが、事務次官、財務官、主計局長など内務省の主要な役職者とその部下が参加している。内務省の参加者は20人くらいだろうか。
ジャービス中央銀行もセレナ銀行とロサリオ銀行に対して緊急融資をする可能性があるから、総裁のアドルフが会議に出席している。
そして、俺もチャールズに頼まれて会議に参加している。総務省は関係ないはずだが、この会議の結果を家族会議で報告しないといけないから、チャールズは俺を巻き込んでおきたいのだと思う。
俺は本件に片足を突っ込んでしまったから、仕方なくルイーズを誘って内務省にやってきた。ルイーズは部屋にアドルフがいることを確認すると舌打ちしていた。
理由は分からないが、この親子(父アドルフと娘ルイーズ)は仲が悪い。
さらに運悪くルイーズとアドルフは隣合せに着席している。内務省が議論を円滑に進めるために席順を割振ったはずだから、「席を替えてほしい」とも依頼しにくい。
―― 不安だな・・・
さすがにこの会議で親子喧嘩はしないとは思うのだが。
***
参加者が揃ったので、チャールズが会議の趣旨を説明し始めた。
「セレナ銀行とロサリオ銀行と経営破綻が噂されている。2行とも金融緩和の金余りの時に集めた預金の運用に失敗し、多額の含み損が発生して実質債務超過に陥っている。まずは、この2つの銀行について調査を行った結果を見てほしい」
チャールズはそう言うとセレナ銀行とロサリオ銀行の実態貸借対照表を参加者に示した。
【図表8-24:セレナ銀行の実態貸借対照表(再掲)】
※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。
【図表8-30:ロサリオ銀行の実態貸借対照表】
チャールズは参加者が2行の実態貸借対照表を見ているのを確認してから説明を続けた。
「セレナ銀行は1兆8,900億JDの実態債務超過、ロサリオ銀行は7,000億JDの債務超過だ。ただし、この金額は大きいものを加味しただけだ。実際にはこれ以上の含み損が発生しているかもしれない」
参加者のブルックス銀行とラングフォード銀行からは「この規模でどうやったらこんな損失が出るんだ?」と声が聞こえてくる。
ジャービス王国の金融機関は規模がそれほど大きくないから、そう思うのは当然だ。
「債務超過の理由は何でしょうか?」ブルックス銀行のニックが質問した。
「理由は幾つかあるんだが、1つは低金利の時に購入したジャービス国債と米国債の評価損だ。もう一つは、不良債権の飛ばしだな」とチャールズが答えた。
「飛ばしですか?」
「2行ともダブリン証券が組成したファンドにLP出資し、そのファンドに不良債権を移して損失が発生するのを隠蔽していた」
「ダブリン証券ですか・・・。当行にも営業に来ていたような気がします」今度はラングフォード銀行のアーサーが言った。
それを聞いたブルックス銀行の参加者も「うちの銀行にも来たよな?」と話している。
2行の飛ばしはダブリン証券のファンドを利用しているのだが、ダブリン証券はジャービス国内の他の銀行にも営業しているようだ。
一連の飛ばしスキームはダブリン証券が主導しているようだが、いったい何行が使っているのだろうか?
<続く>
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