第4王子は中途半端だから探偵することにした(の続き)

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第8回活動報告:銀行の経営破綻を食い止めろ

銀行の国有化(その4)

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(6)銀行の国有化 <続き>

 俺は考えている。
 国王の言う『派手なこと』に、どこまで取り合うべきだろうか?

 国王の戯言(ざれごと)に真剣に付き合うほど、俺たちの手間暇が掛る。
 俺は『派手なこと』の落としどころを探すための(兄弟の)作戦会議が必要だと判断した。

「議論が長くなりそうですし、10分くらい休憩しませんか?」と俺は国王に提案した。

 国王は俺の提案に応じて「売店に行ってくる」と部屋から出て行った。
 あの感じだと、ガリガリ君を買いに行ったはずだから20分は戻ってこない。

 国王が退室した後、俺は兄弟4人で作戦会議をすることにした。

「どこまで『派手なこと』に付き合えばいいと思う?」と俺は3人の兄弟に聞いた。

 すると、「お前たちに任せるよ」とジェームスとアンドリューは早々に議論から離脱した。
 ジェームスたちの言う『お前たち』とは俺とチャールズのことだ。仕方なく2人で対応策を考えることにする。

「そうだよなー。さじ加減が難しいよな」とチャールズは言った。

「真剣に付き合うほど、時間もコストも掛かるしね。国王には達成感を味わってもらいつつ、あまり関係者に負担のない対応にしないといけない」

「賛成だな。リーマン・ショックのドキュメンタリーに影響されているとしたら、民間銀行を説得してセレナ銀行を救済させたいのかな?」とチャールズは俺に聞いた。

「うーん。そうだったとしても、民間銀行を説得するのは難しいでしょう。民間銀行が2兆JDの債務超過(純資産がマイナスの状態)の銀行を買収すると思いますか?」

※JD(ジャービス・ドル)はジャービス王国の法定通貨です。1JD=1円と考えて下さい。

「そうだよな。純資産が2兆JDを超えるような銀行はジャービス王国にはない。現実的に民間銀行が買収するのは難しいな・・・」

「それに、民間銀行がセレナ銀行を買収したら、セレナ銀行はその銀行の連結子会社になる。政策金利の引下げ前に決算日が到来したら、グループ全体が債務超過に陥ります。債務超過になると上場廃止基準にも抵触する可能性がある」

「そうだよな。政策金利を引下げれば債務超過は解消されるとはいえ、債務超過の決算を提出しないといけなくなると、民間銀行は嫌がるよなー」チャールズは概ね俺の意見に同意しているようだ。

「でしょうね」

「それに、連結決算の債務超過を避けるために、政府保証とかいろいろ要求してくるかもしれないし、民間銀行に依頼すると面倒ごとが増えるだけのような気がする」

「民間銀行にセレナ銀行の買収を依頼するくらいであれば、ジャービス政府がセレス銀行に出資した方が早いし楽でしょうね。ジャービス政府には銀行を連結して決算報告する必要がありませんから」

 俺とチャールズの意見は、民間銀行にセレナ銀行の救済を依頼するのは難しい点で一致した。後は、国王の希望する『派手なこと』をどこまで用意するかだ。

「ダニエルはどの辺りが落としどころだと思う?」とチャールズは俺に聞いた。

「うーん、難しいところですね。でも、まずは優先的に対応しないといけないことを整理した方がいいでしょう」

「例えば?」

「ジャービス国債と米国債は政策金利を引下げれば含み損は解消されますよね? 要は、ジャービス国債と米国債に関して言えば、預金の払い戻しのために売却せずに最終的に償還まで持ち切ることができれば、実現する損失額は少なくて済みます」

「そうだな。ジャービス国債と米国債はいま売却すると損失額が膨らむだけだから、何とか売らずに凌ぎたいな」

「でも、不良債権化した貸出金は別です。返済期限に返ってこないでしょうし、保有していても不良債権比率が高止まりするだけです。また、債権の管理コストも掛かるから、不良債権を継続保有しておく必要はありません。だから、セレナ銀行とファンドの貸出金のうち、不良債権については早めに外部に売却して処分する。この不良債権処理は国王の『派手なこと』の一つになると思うんです」

「そうだな。不良債権はさっさと処分してしまわないと、銀行の経営破綻を払拭できないし・・・。買取りのためのファンドでも用意した方がいいのかな?」

 チャールズは俺に言った。


<続く>
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