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第8回活動報告:銀行の経営破綻を食い止めろ
銀行の国有化(その1)
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(6)銀行の国有化
チャールズの記者会見から1日経った。
俺は家族会議に出席している。家族会議はこれまでに何度か出てきているのだが、念のために説明しておこう。
ジャービス王国では王族(国王とその息子4人)が政府主要機関を兼ねており、王族の家族の会議で重要事項が決定される。その会議の出席者が国王とその息子4人なので、その会議は陰で『家族会議』と呼ばれている。いい意味ではない。
今回の家族会議の議題は『経営不振の銀行の救済』についてだ。
家族会議が始まると、国王が第一声「銀行を国有化するのか?」とチャールズに尋ねた。
どうやら国王は昨日の記者会見を見ていたようだ。
チャールズはレポーターに「検討中です」と答えていたのだが、ニュース番組ではキャスターや専門家が「今の回答は肯定と受け取ってもいいでしょうね」と解説していた。マスコミは自分たちの都合の良いように発言を使うから、ジャービス政府は銀行の国有化することが既成事実として報じられている。
新聞報道によれば、ジャービス国内で経営破綻候補とされている銀行は2つ。セレナ銀行とロサリオ銀行だ。
セレナ銀行は俺たちが調査に入った地方銀行だから説明の必要はないだろう。
ロサリオ銀行も同じく地方銀行だがセレナ銀行よりも資産規模が小さい。規模でいうとセレナ銀行の半分くらいの銀行だ。
国王はニュース番組で銀行の国有化することを前提にした報道を見た、とチャールズは考えたようで言い訳を考えている。
「いくつかのニュース番組で昨日の私の会見が報道されていたのは知っています。昨日、私は記者の質問に『検討中です』と答えました。これ以上の意味合いはありません」とチャールズは国王に言った。
「でも、ニュースキャスターは『セレナ銀行とロサリオ銀行の国有化はほぼ確定だろう』と言っていたぞ。実際、内務省ではどのように進めようと思っているんだ?」
「実際には、セレナ銀行とロサリオ銀行の他にも経営危機の銀行があります。内務省では、危険度の高い銀行から順次調査を行っている段階です。その結果をもとにして最終的に方向性を判断します」
「調査をするのはいいのだが、ニュース番組では『セレナ銀行とロサリオ銀行の破綻は秒読み』と言っていたぞ。そんな悠長なことを言っていて大丈夫なのか?」
「時間的な猶予が十分にないのは理解しています。ただ、ジャービス国内の銀行がどういう状況にあるかを把握しておかないと、何度も同じような対応をしないといけなくなります」
「1つの銀行を助けても、次から次へと救済が必要な銀行が出てくる。そういうことか?」
「そうです」
「まあ、言いたいことは分かる」
「それに、銀行の連鎖倒産を食い止めるための対応策は考えています」
「対応策はあるのか? ちなみに、どういう策なのだ?」と国王はチャールズに聞いた。
「対応策ですが・・・」
チャールズはそう言うと俺の方をチラッと見た。
俺は『俺が教えたあの案か』と思いながら、チャールズに『どうぞ、どうぞ』のジェスチャーをした。
「ダニエルから説明を聞いてください」チャールズは小さく言った。
―― また、裏切った・・・
俺がチャールズを睨むと『ゴメンね!』のポーズをしている。
チャールズは俺の案を自分で進めるのはリスクが高過ぎると思っている。
国王は急に俺の名前が出てきたので「なぜダニエルから説明なのだ?」とチャールズに尋ねる。
―― いいぞ、よく言った!
俺は心の中で国王を褒めた。
一方のチャールズはどう返答するか考えている。
「内務省の人手が足りなくて、ダニエルの内部調査部にセレナ銀行の調査をしてもらったんです。そうしたら、セレナ銀行の調査結果とセットで解決方法を提案されまして・・・」とチャールズは答えた。
―― 俺が提案したことになっている?
実際にはチャールズに聞かれたから解決方法を教えてあげただけ。
でも、国王は俺が銀行救済策をチャールズに提案したと理解したようだ。
「そうか。ダニエル、どういう内容なのだ?」
国王は俺に説明を求めたから、俺はしかたなく状況を説明することにした。
「まず、私たちが調査したのはセレナ銀行だけです。ロサリオ銀行は調査していません。なので、セレナ銀行の調査結果から、どのような原因で経営危機に陥ったかをまず説明し、その後に対応策を説明します」
「分かった」
「まず、セレナ銀行が経営危機に陥った理由は、政策金利を1%から4%に引上げた際に発生した含み損と不良債権の増加です・・・」
そういうと、俺は参加者に説明を始めた。
<続く>
チャールズの記者会見から1日経った。
俺は家族会議に出席している。家族会議はこれまでに何度か出てきているのだが、念のために説明しておこう。
ジャービス王国では王族(国王とその息子4人)が政府主要機関を兼ねており、王族の家族の会議で重要事項が決定される。その会議の出席者が国王とその息子4人なので、その会議は陰で『家族会議』と呼ばれている。いい意味ではない。
今回の家族会議の議題は『経営不振の銀行の救済』についてだ。
家族会議が始まると、国王が第一声「銀行を国有化するのか?」とチャールズに尋ねた。
どうやら国王は昨日の記者会見を見ていたようだ。
チャールズはレポーターに「検討中です」と答えていたのだが、ニュース番組ではキャスターや専門家が「今の回答は肯定と受け取ってもいいでしょうね」と解説していた。マスコミは自分たちの都合の良いように発言を使うから、ジャービス政府は銀行の国有化することが既成事実として報じられている。
新聞報道によれば、ジャービス国内で経営破綻候補とされている銀行は2つ。セレナ銀行とロサリオ銀行だ。
セレナ銀行は俺たちが調査に入った地方銀行だから説明の必要はないだろう。
ロサリオ銀行も同じく地方銀行だがセレナ銀行よりも資産規模が小さい。規模でいうとセレナ銀行の半分くらいの銀行だ。
国王はニュース番組で銀行の国有化することを前提にした報道を見た、とチャールズは考えたようで言い訳を考えている。
「いくつかのニュース番組で昨日の私の会見が報道されていたのは知っています。昨日、私は記者の質問に『検討中です』と答えました。これ以上の意味合いはありません」とチャールズは国王に言った。
「でも、ニュースキャスターは『セレナ銀行とロサリオ銀行の国有化はほぼ確定だろう』と言っていたぞ。実際、内務省ではどのように進めようと思っているんだ?」
「実際には、セレナ銀行とロサリオ銀行の他にも経営危機の銀行があります。内務省では、危険度の高い銀行から順次調査を行っている段階です。その結果をもとにして最終的に方向性を判断します」
「調査をするのはいいのだが、ニュース番組では『セレナ銀行とロサリオ銀行の破綻は秒読み』と言っていたぞ。そんな悠長なことを言っていて大丈夫なのか?」
「時間的な猶予が十分にないのは理解しています。ただ、ジャービス国内の銀行がどういう状況にあるかを把握しておかないと、何度も同じような対応をしないといけなくなります」
「1つの銀行を助けても、次から次へと救済が必要な銀行が出てくる。そういうことか?」
「そうです」
「まあ、言いたいことは分かる」
「それに、銀行の連鎖倒産を食い止めるための対応策は考えています」
「対応策はあるのか? ちなみに、どういう策なのだ?」と国王はチャールズに聞いた。
「対応策ですが・・・」
チャールズはそう言うと俺の方をチラッと見た。
俺は『俺が教えたあの案か』と思いながら、チャールズに『どうぞ、どうぞ』のジェスチャーをした。
「ダニエルから説明を聞いてください」チャールズは小さく言った。
―― また、裏切った・・・
俺がチャールズを睨むと『ゴメンね!』のポーズをしている。
チャールズは俺の案を自分で進めるのはリスクが高過ぎると思っている。
国王は急に俺の名前が出てきたので「なぜダニエルから説明なのだ?」とチャールズに尋ねる。
―― いいぞ、よく言った!
俺は心の中で国王を褒めた。
一方のチャールズはどう返答するか考えている。
「内務省の人手が足りなくて、ダニエルの内部調査部にセレナ銀行の調査をしてもらったんです。そうしたら、セレナ銀行の調査結果とセットで解決方法を提案されまして・・・」とチャールズは答えた。
―― 俺が提案したことになっている?
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でも、国王は俺が銀行救済策をチャールズに提案したと理解したようだ。
「そうか。ダニエル、どういう内容なのだ?」
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「まず、私たちが調査したのはセレナ銀行だけです。ロサリオ銀行は調査していません。なので、セレナ銀行の調査結果から、どのような原因で経営危機に陥ったかをまず説明し、その後に対応策を説明します」
「分かった」
「まず、セレナ銀行が経営危機に陥った理由は、政策金利を1%から4%に引上げた際に発生した含み損と不良債権の増加です・・・」
そういうと、俺は参加者に説明を始めた。
<続く>
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