小金井は八王子に恋してる

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十六話

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 リハビリはフロムAから始まる。
 「なかなかいいのないなあ………」
 冊子のページと真剣に睨めっこする。
 両ページはぎっしりコマ割りされその中に募集要項や時給が詳細に記されている。
 前かがみに顔を近付けつぶさに検証するもなかなかこれはというものが見つからない。
 ずりおちた眼鏡を押し上げ次のページを開く。
 「これなんかいいじゃね」
 隣から太平楽な声とともにすっと指がのび右端の枠をさす。
 コンビニのバイト募集の告知。
 「初心者はここらへんが無難。お手軽だし」
 「いやですよ、コンビニのバイトなんかしたら人が来るじゃないですか!?」
 「そりゃ来るさ、コンビニだもん。便利だし」
 小金井が枠をちょんとつつき気軽に言う。余計なお世話、いらぬお節介。
 横からうるさく口出し手出しするヒモに反感を持ち、ページにおかれた手を邪険に払う。
 「だってお客さんにおつり渡すときとか間違えたりおとしちゃったらどうするんですか、殺されますよ」
 「そんなバイオレンスなお客いないって、滅多に」
 「滅多にってことはいくらかいるんですね、全体の一割くらいはいるんですね!?ほら見ろやっぱコンビニのバイトはなし、こんな危険な仕事とんでもないです、やりきる自信がありません、危険手当が付いたってお断りです!ちがうのさがしますちがうの」
 小金井のアドバイスを激しく首振り断固として拒否、加速した手付きでページを次々開く。
 こうしてみると世の中には本当にいろんな仕事があるなあと感心する……って、呑気に感心してる場合じゃない。探さなきゃ仕事。眼鏡ごしの目をこらし非常な集中力をもって片っ端から募集要項をチェック、時間帯と時給を確認、あーでもないこーでもないと選り好みして頭を悩ませるぼくの横で小金井は胡坐をかきゲームに耽溺。コントローラーを叩き今しも春麗自慢の脚線美で敵を悩殺、必殺の蹴りを一閃してあざやかに倒す。
 ひとが真面目に仕事を選んでる横でこの男は。
 「小金井さんうるさいから静かにしてくださいよ、集中できないじゃないですか!」
 痺れを切らし注意するも小金井は馬耳東風、「へーい」といい加減な返事をしてまたゲームに戻る。
 反省の色がかけらもない態度に苛立ちつつ上から下へ右から左へと目を移動させ理想の……は無理でも、妥協できる線のバイトをさがす。小金井は無難だと言うが初っ端からコンビニのバイトはきつい、なにせ八年のブランクがあるのだ。対人恐怖症をいまだ克服できない身にはハードルが高すぎる。
 コントローラーの棒をぐりぐりいじくりまわし順調に勝ち進みながら小金井が聞く。
 「東ちゃんはさーどんなバイトがいいの?」
 「できるだけ人に会わない仕事、うちで出来るのがベスト。あ、これなんかいいかも」
 新たなページの真ん中あたりに掲げられた告知に目がとまる。募集要項と仕事内容を精読し、確認と兼ね合いをかね、ひとり真面目くさって頷く。 
 「どれどれ」
 「ダイレクトメールを折り畳んで封筒に入れる仕事。あ、封筒の内職もいいなあ」
 「………地味」
 小金井がぼそり呟く心ない一言というか率直な感想に傷付く。まあ、事実ではあるんだけど。
 ぼくの手元を覗き込んだ小金井がなんとも言えない顔をする。
 「東ちゃんさー、それじゃ全然進んでないよ。せめて外出ようよ。ダイレクトメールを封筒に入れる仕事とか家でも出来るじゃんさ。もうちょい積極的にひとと関わりにいこうって」
 「だってそんな、いきなりハードル高すぎですよ。ろくにしゃべれもしないのに接客業なんて出来ないし、まかり間違ってファーストフードの中の人にでもなったら注文復唱のたび噛みまくりだし、お釣り銭渡すときにひたっと指が触れちゃったらどうするんですか!」
 襖ごしの対話から一週間が経過した。
 あれからぼくは小金井に導かれゆっくり少しずつ変わる努力をし始めた。
 立川・八王子版フロムAを読むのはその一環だ。
 前は週に一度、深夜人目を避けるようにして最寄りのコンビニに買出しにいくのが関の山だったが、最近は小金井の積極性に感化されーというか引きずられーいやいや不承不詳昼間でも外出するようになった。小金井は根っから活動的な性質で、家の中にこもってる時と外を歩いてる時とじゃまるで表情が違う。
 外出の用件は食材の買出しだったり単なる散歩だったり様々だ。
 小金井と出会う前は、月に一度の秋葉原遠征を除いて外に出ることなく部屋にこもりっきりだった。秋葉原遠征時は貪欲なるおたくの業で対人恐怖症を克服していた。できることなら外に出ず人に会わず済ませたいがそうもいかない哀しきかなおたくのさが、ことフィギュアに関しては現物にじかに触れて接してみないとわからないという信念がある。フィギュアにかける情熱プラス新刊フラゲの誘惑と対人恐怖症を秤にのせたら、ほんの少しだけ前者に傾く。
 前日まで怖くない怖くないとイメージトレーニングを積み重ね暗示をかけ、そうまでしてもヤワな心臓と胃が耐えきれず、極度の緊張とストレスによる腹痛に見舞われ当日になって秋葉原行きを断念した経験も少なくない。一度など本気で神経性胃炎を疑ったほどだ。
 外に出るという行為はぼくにとってそれほどまでにプレッシャーを伴う。
 小金井が来てからほんの少し外への恐怖が薄まった。玄関の敷居は相変わらず高いけど、ものすごく頑張ればこえられないほどじゃあない。
 ぼくがたっぷり十秒間葛藤し、運命の一歩を踏み出す決断に至るまでの間、小金井は傍らでじっと見守ってくれる。
 せかさず、茶化さず、ゆっくりと。
 じれったいほどとろくさくて優柔不断なぼくを自然な素振りで待っててくれる。
 まあそれはそれこれなこれなわけで。
 「ガンプラ作りで鍛えた手先にはちょっと自信あるんで。細かい作業得意だし、あんま苦になんないし、これなんかいいとおもうんだけどなあ」
 実際バイトを選ぶ段に至って重視するのはシフトよりも時給よりもなにより、なるべく人と会わず関わらず済ませられる仕事という一点。
 消極的な消去法。外出頻度こそ増えたものの、人との接触はまだ怖い。接客なんてとんでもない、想像しただけでいやな汗をかく。
 そんなぼくがこなせる仕事といったら外に出ず人に会わず在宅で出来る内職に限られるわけで、造花を作ったり封筒を糊付けしたりダイレクトメールをひたすら折り畳み封筒にいれ折り畳みいれ封筒にいれての反復作業なら慣れ次第でなんとか……
 「ネガティブ思考禁止」
 小金井の能天気な声が憂鬱を吹き払う。
 ゲームに飽きてコントローラーを放り出した小金井がごろんと寝返りを打ち、ぼくの読む冊子を覗きこむ。
 「東ちゃんがそれでいいならいいけどさ、延々ダイレクトメール折る作業も単調で疲れるよー」
 「小金井さんやったことあるんですか」
 「いんや、ないけど」
 小金井がぼくの手からフロムAを奪う。あっと叫び取り返そうとするも、小金井はすでにフロムAを顔の前にかざし、ふむふむと読み始めていた。
 「恋愛も仕事もAから……どうしたの東ちゃん、なに赤くなってんの?まさかこの程度で照れてンの?童貞っぽいなあ」
 「うるさいな、関係ないです。返してくださいよそれ、読んでるのに」
 このフロムAは先日出かけたコンビニで無料配布されてたのを貰ってきたもので、イメージトレーニングをかねもう何十回も読み返している。
 意地悪くにやつく小金井の手からフロムAをひったくり、栞がわりにページの端を折り曲げる。
 残念ながらいまだイメージトレーニングどまりで面接の予約電話をかける決心がつかない。つくづく弱気な自分が情けない。
 いじいじ三角にページの端を折り曲げ落ち込むぼくの背後で、唐突に小金井が立ち上がる。
 「もうこんな時間か。買出し行ってくる」
 「あ、ぼくも……」
 行きますと続けようとした時には小金井はすでに軽い足取りで玄関に向かっていた。
 玄関に脱ぎ散らかした靴に足をもぐらせ、鍵を開錠し振り返る。
 「東ちゃんは気がすむまでフロムAと睨めっこしてなさい」
 「え」
 「んじゃいってきまーす」
 さしのべた手を引っ込めようかどうしようか迷うぼくを置き去り、ひとりさっさと出かけていく。
 ドアが閉じ、小金井の背中が視界から消える。
 漫画アニメラノベゲームが散乱し堆積する爆心地のような部屋に取り残され、呟く。
 「………なんだよ、あれ」
 付いてこなくていいって何だよ。
 安堵と同時に釈然としない気持ちを抱く。
 外に出なくてすんだ安心感にもまして、単身留守を任された疑問が膨れ上がる。
 ひょっとして、挙動不審なぼくと一緒に歩くのが恥ずかしくなったんだろうか。
 買出しに行くコンビニでは会計が終わるまできょろきょろそわそわ落ち着かなくて、いい年した男二人連れが平日の昼間にコンビニに来るなんて珍しくて目立ちまくりで、散歩がてら公園に寄れば井戸端会議に集う主婦が明らかにこっちを見てひそひそ噂していて、つまりそれはぼくに嫌気がさしたってことで 
 まさか、このまま出て行くつもりじゃないだろうな。
 「……………っ………」
 ぼくがあんまりぐずでうざいから、変わりたいとか口先だけで実際はフロムAと睨めっこしてるだけ面接の電話もかけられない究極のへタレビビリだから、愛想が尽きてしまったんだろうか。
 買い物は口実で、出ていったきりもう帰ってこないんじゃないか?
 胸の内で膨れ上がるどす黒い不安。
 暗澹たる想念が渦巻き、思考がネガティブな方へ急傾斜していく。
 おかしい、なんでこんな不安なんだろう。
 小金井なんかいついなくなったっていいじゃないか。もとから招かれざる客、疫病神の居候だ。
 ぼくの日常にずかずか土足で上がりこんだ無礼極まるヒモなんかとっとと消えてくれたほうが……
 小金井がいなくなった部屋はやけに殺伐と広く空疎に感じる。落ち着かない気持ちに駆られ、ぐるりと部屋を見回せば、おもむろにそれがとびこんでくる。
 「あ」
 小金井の財布。
 「……サザエさんじゃないんだから」
 定番すぎ。
 小金井は肝心の財布を持たず出かけてしまった。イマドキ財布を忘れて買い物にでかけるなんてベタな失敗をやからす人間がいるなんて驚きだ。
 ひとり突っ込みをいれ拾い上げた財布を掴み、いそいそ玄関へ向かい、ドアを開くー
 ドアを細めに開け、隙間から外を覗き、咄嗟に閉じる。
 小金井は階段の途中にいた。だれかと話してる。だれと?ぼくのよく知る人物……
 兄さん。
 なんで兄さんがここに?またいやがらせにきたのか?
 アパートの廊下に生活費をばらまかれ拾わされた屈辱的な思い出がよみがえる。
 十分警戒しつつ、階段の半ばで立ち話するふたりの様子をドアの隙間からうかがう。
 「お兄さん、なんで」
 「ちょうどよかった。話がある」
 「東ちゃんなら部屋に」
 「君にだ」
 え?
 予想外の台詞に狼狽。小金井も怪訝な顔。
 背広で決めた兄さんは尊大な態度で小金井を身なりを観察し、先に立って階段をおりだす。ついてこいの意思表示。
 「立ち話もなんだな。近くに公園があったろう、そこへいこう」
 「いっすよ」
 小金井が軽く応じる。ふたりして階段をおりる。ドアの隙間から背中を見送り混乱をきたす。
 なんで兄さんが?ぼくに用があるんじゃないのか?小金井に何の話だ?
 気付けば財布を掴む手がじっとり汗ばんでいた。慎重にドアを開け、小金井と兄さんを追って階段をおりる。
 十分距離を空け尾行を開始、電柱を隠れ蓑にしつつ後を追う。外は怖いとか人に会うのが怖いとかさんざんぼやいていたくせに、好奇心に負ける。
 じき公園に到着する。小金井と兄さんが前後して公園に入っていくのを確かめぐるり迂回し、反対側の入り口からこっそり忍び込む。
 公園はそこそこ賑わっていた。ベンチのそばでは近所の主婦が井戸端会議を開き、子供たちを目の届く範囲で遊ばせている。
 元気に駆け回りはしゃぎまわる子供の歓声で満ち溢れた公園の隅、兄さんが寂れたベンチに腰掛け、小金井に座るよう促す。
 目配せを受けた小金井が軽く会釈し、隣に座る。ぼくは……ええと、どうしよう。いつまでも立ち尽くしてたらあやしまれる、尾行がばれてしまう。
 所在なくあたりを見回し、中腰の姿勢で頭を低め忍び歩き、遊具の陰から陰へと身を隠しつつ中央をめざす。
 公園のちょうど真ん中あたり、お椀を伏せたようなドーム型に、ロッククライマーの練習壁に似た凹凸が穿たれた謎の物体がある。
 遊具に分類していいのか非常に判断がむずかしい外観で、遠目には不時着した未確認飛行物体のようにも見える。
 コンクリートの小山の基底部にトンネルが掘り抜かれている。無邪気に遊ぶ子供たちに紛れ、壁に沿って後ろに回り、トンネルをくぐる。子供の体格なららくに通り抜けられるだろうが、大人は身を屈めねば通れない。
 窮屈なトンネルをじりじり這い進み、可能な限りベンチに近付く。天井は異様に低く圧迫感がある、油断すると頭をぶつけそうだ。
 トンネルはドームの東西南北四箇所あり、中で交差し、声がよく響く設計になっていた。まさかこの年になって子供の目線を体感するはめになるとはおもわなかった。暗いトンネルのむこうから光が漏れる。終点の光をめざし進む。コンクリートトンネルの中、外の喧騒が独特のこもった反響を帯びて響く。
 ベンチに並んで腰掛ける兄さんと小金井。ちょうど出口の斜め前あたりにベンチが置かれている。距離はそれほど離れてない、普通の声ならぎりぎり聞こえる程度だ。兄さんは膝の上で手を組み俯いている。物思いに耽っているようにも重大な話を切り出そうとしているようにも見え、口の中が乾く。
 「あ」
 兄さんと小金井が座るベンチの前を小さな男の子がふたり駆けて行く。
 一人が転び、派手に投げ出す。小金井がすぐさまポケットから手を抜き、助けおこす素振りをする。兄さんの目にも一瞬躊躇の光が宿る。手を貸すべきか貸すまいか逡巡し、浅く腰を浮かせ固まる兄さんの思惑をよそに、もう一人の男の子が引き返してくる。
 おそらく兄弟だろう。
 べたんと地面に突っ伏し号泣する幼児といえる年齢の男の子を、年嵩の子が「泣くなよ、かっこ悪い」と叱咤し、腕を掴んで立たせてやる。
 小金井が手をひっこめる。
 ぶっきらぼうな言葉とは裏腹に甲斐甲斐しく膝の砂汚れを払い、優しさを見せた照れ隠しだろうか、やや乱暴にその腕を引っ張って連れて行く。
 再び駆け出した幼い兄弟を見送り、ベンチへと戻る。
 兄さんが懐かしそうに目を細める。
 「……東もなにもないところでよく転んだ」
 「今の子たちみたいにふたりでよく遊んだんですか」
 「昔の話だ。弟の遊び相手といったらたいてい俺だった。昔から人見知りが激しく情けないやつだった。隣家の飼い犬に吠えられて泣く、砂場でトンネルを掘って生き埋めになる、転んでは泣く、母親が作った弁当を残してごめんなさいと泣く。……世話ばかり焼けた」
 「仲よかったんですね」
 「……くさっても兄貴だからな。しかたなく尻拭いをしてた」
 「何歳はなれてるんですか」
 「六つだ」
 沈黙が漂う。小金井と兄さんは不思議とリラックスした表情で大して広くもない公園を眺める。
 子供たちが無邪気に遊び主婦が談笑し木漏れ日がちらちら地面に舞う。
 「………」
 昼下がりの日差しを浴びベンチに安らうふたりと対照的に、ぼくは暗く狭いコンクリートのトンネルにこもりきり、ばれないよう息を潜めている。
 兄さんがおもむろに口を開く。
 「東はアンパンマンで泣く子供だった」
 小金井が振り向く。
 ぼくも顔を上げる。
 「バイキンマンが負けてばかりで可哀想、一回くらい勝たせてあげればいいのにって……そういういやになるほど優しいヤツなんだ、あいつは」
 兄さんのこんな感傷的な声を聞くのは何年ぶりだろう。
 ぼくが知る兄さんはいつもいつでも堂々として、こんな湿った声を出すような人じゃなかった。
 砕けた私服の小金井はともかく、背広姿の兄さんは周囲から浮く。会社をサボって公園で暇を潰す会社員と誤解されかねない。多忙なスケジュールを何とかやりくりし病院から脱け出してきたのだろう証拠に体からうっすら消毒液の匂いが漂う。
 「お兄さんと東ちゃん、よく似てます」
 兄が緩慢な動作で顔を上げる。
 小金井は飄々と続ける。
 「素直じゃないところが特に……どっちもしんどい生き方してるなってのが感想です」 
 「ふん。君になにがわかるんだ」
 「わかる……っていったら傲慢かもしれねーけど、お兄さんと東ちゃん見てたら、すれ違いって切ないなと思います」
 知ったかぶった口をきく小金井に、兄さんが皮肉げに鼻を鳴らす。
 「……君は一緒に暮らし始めてたかだか一ヶ月かそこらだろう。俺は八年間東のダメさ加減を見てきたんだ」
 そんな兄さんの態度をしれっと受け流し、小金井がほくそえむ。
 「やっぱり。お兄さん、あれからもたびたびアパートに来てましたよね」
 え?
 小金井の思わぬ発言に目を丸くする。
 図星を突かれ兄さんがたじろぐ。
 「部屋に直接こなかったのはやっぱこないだのこと気にしてるんですか?毎回アパートの近くまで来るのに」
 「東は相変わらずか。はたちすぎて漫画だのゲームだの子供の遊びにかまけてるのか?」
 「ちょっとだけ変わりました。いや、ちょっとじゃないかな……出会ったころに比べればすごく変わった」
 「どんなふうにだ」
 「よく外に出るようになりました……つっても、頑張って週三が限度だけど。この公園とかコンビニとか、行く場所もたいてい決まってるけど。身だしなみにも気を付けるようになったし……あ、そうだ、ボディソープとシャンプー買ったんです。ちゃんと体と髪洗いたいからって。前はちびた石鹸ひとつ使いまわしてたのに」
 「そうか。きみたちは日中何してるんだ?」
 「ゲームしたりガンプラ作ったり漫画読んだりパソコンしたり……ぐうたらすごしてます」
 「社会人失格だな」
 「自覚してます」
 「東は、その……やせてないか。吐いたりしてないか、最近」 
 不器用に聞く兄さんに小金井が小さく笑う。
 「逆にちょっと太りました。東ちゃんやせすぎだからちょうどいいです。東ちゃん、料理作るようになったんですよ」
 「カップラーメン以外に調理ができるのか」
 「自分でもやってみたいって言い出して、弟子入り志願。俺も料理はそこそこ腕に覚えがあるし、部屋におかせてもらってる礼に暇をみて教えてるんだけど、東ちゃんもとから手先が器用だから結構上手いんですよね。最初のころは油がはねるのが怖くて、フライパンをできるだけはなしてもって、おっかなびっくりフライ返しを使うもんだから見てるこっちがひやひやしたけど……目玉焼きとかチャーハンとか、今は簡単なものなら自分で作れるようになりました」
 襖ごしの一夜が明けてから自発的な意志で小金井に料理を習い始めた。
 せめて自分が食べるものくらい作れるようになりたい。
 ひとに甘えっぱなし、頼りっぱなしの現状から脱け出したい。
 小金井はぼくの頼みを快く引き受け、素人にもできる簡単な料理をいくつか教えてくれた。
 最初のころはフライパンを扱う手付きも危なっかしく、油がとんでは大騒ぎして「東ちゃん、コンロの火とめて!」と小金井に泡を食わせたが、最近やっと要領が飲み込めフライパンの扱い方に安定感がでてきた。
 小金井の手料理より若干味はおちるし、見た目もこげていたりくずれていたりお世辞にもいいとは言えないが、自分で苦労して作ったものはなぜかとても美味しく感じる。自然食欲が出て箸が進み、最近少しだけ体重が増えた。
 「………そうか」
 兄さんがふしぎと和やかに相槌を打ち、小金井を見る。
 「君は……東の何なんだ?友達なのか。どこで知り合った」
 「一ヶ月前、秋葉原で東ちゃんが絡まれてたとこ偶然助けたんです。俺、ちょうどその時元カノんち追い出されて困ってたところで」
 「東のお人よしにつけこんで転がりこんだのか」
 「まあそんなとこです」
 小金井が頬をかく。兄さんはため息を吐く。
 「………あいつに友達ができたなんていまだに信じられん」
 「頬つねってあげましょうか」
 「いい、余計な事はするな。言葉のあやだ」
 兄さんが少し慌てる。
 「冗談ですよ」と指を引っ込め笑う小金井に憮然とする。
 小金井が両手をズボンの尻ポケットにさしこみ、企み顔に笑みを含む。
 「お兄さんはさっき出会って一ヶ月の人間になにがわかるって言いましたけど、ニブイ俺にもわかることありますよ」
 「なんだ」
 「廊下に生活費ぶちまけて拾わせたの、単なるいやがらせじゃなくってちゃんとワケあるんでしょ」
 「…………あいつは金の有り難味を思い知るべきだ」
 「東ちゃんの前に現れなかったのはこないだの事気にして?」
 「会いたくないだろう、東は」
 暗いトンネルに隠れ、二人の会話を盗み聞く後ろめたさに心臓が高鳴る。
 兄さんの声はどこか普段とちがう。ぼくが知る兄さんは、こんな寂しげな声を出したりしない。
 「……一年間会いにこなかった理由もうっすら察しがつきます。ライオンを気取ったんだ」
 「獅子は自分の子を千尋の谷へと突き落とす」
 「そして上ってきた子だけを育てる。……ホントなら谷底に見にきちゃいけなかった、ずっと知らんぷりしてなきゃいけなかった。心配で我慢できなかった、ちがいますか」
 「一年会わずにいれば多少は変わってるかもと期待したんだが、買いかぶりすぎだった」
 失望のため息を吐く。やりきれなさに顔が歪む。ぼくはまた、兄さんをがっかりさせてしまった。
 一体何度ひとの期待を裏切れば気がすむんだろう。
 「そりゃそっすよ、お兄さんが千尋の谷に突き落としたのはライオンの子供じゃなくて生まれたてのバンビだったんです」
 「言いえて妙だな」
 ………意気投合されても。
 小金井がフォローする。 
 「バンビだけど、がくがくしながら立ち上がろうとしてます」
 「俺の目から見ても東は変わった。すべては君と出会ってからだ」
 兄さんが訥々と言う。
 「俺や両親が八年かかって出来なかったことが、たった一ヶ月の間になしとげられた。最近、東は明るくなった。随分マシな顔をするようになった。昔は……八年前は、あんなふうに笑えなかった。君と一緒にコンビニや公園に出かけるとこを何度か見かけたか……楽しそうだった」
 「あちゃ、見られてたんだ」
 「すまん」
 兄さんが素直に詫び、ふいに口を閉ざし、憂いに満ちた顔を伏せる。
 「………八年前、東がひきこもるきっかけを作ったのは俺なんだ」
 「え?」
 「中二の時、あいつは酷いいじめにあった。なにをされたのか、とうとう自分の口から詳しく語らなかったが……症状と傷を見ればおのずと察しがつく。酷いものだった。一時期は家族にさえ怯えていた。朝おきて、飯を食べて、制服に着替えて、いざ学校へ行こうと玄関へ出るたび吐いてしまう。俺は、それを甘えだと決め付けた。うちは……父が院長で、俺は外科志望で、恥ずかしい話、心の病気方面にはおそろしく疎かったんだ。何も事情を話さず部屋にひきこもる東の態度は逃げているとしか映らなかった。俺は一方的に怒鳴り散らすばかりで、苦しみを理解しようともしなかった」
 『どれだけ母さんに迷惑かければ気がすむ!』
 『ここを開けて出て来い東!』
 兄さんが息を吸う。ひとつひとつ言葉を絞るたび、伴う苦痛に顔が歪む。
 「なら一生ひきこもってろ、みっともないから外に出るな……八年前、俺が言った台詞だ」
 兄さんがこぶしを噛むようにして俯く。
 「ずっと後悔してたんですか」
 「責任の取れない言葉を口にすべきじゃなかった」
 「お兄さんは東ちゃんに嫌われ憎まれ続けることで責任をとろうとしてる。ちがいますか」
 「東がひきこもりになったのは、俺のせいだ」
 「生活費を廊下にぶちまけて拾わせたのも東ちゃんの事を本当に考えてたからで、いやがらせなんかじゃなかった」
 ぼくは。
 ずっと、八年間ずっとずっと勘違いしていた。
 兄さんに嫌われてると思い込んでいた。
 周囲の人の優しさに甘え依存してなんとか生かしてもらってるのに、全然気付かなかった。
 兄さんは贖罪をかね憎まれ役を演じた。
 あの時感情的に怒鳴った一言がきっかけでぼくがひきこもりになったと思い込んで、ずっと苦しんでいた。
 確かに兄さんの言葉は、ぼくがひきこもる一因となった。だけど、おおもとの原因はぼくにある。ぼくがもう少し強ければ、もう少しだけ強ければ、兄さんは八年も自分を責め続けずにすんだのに。兄さんはずっとずっと自分が引き金を引いた自責の念に苛まれ苦しんで苦しみぬいて、ぼくに冷たく当たったのは立ち直らせたい一心で、廊下に生活費をぶちまけ拾わせたのもいやがらせじゃなくって、金の有り難味を思い知らせたいがための苦渋の決断だった。
 なのにぼくは、八年間ずっと、兄さんの本心に気付けずにいた。
 自分は嫌われてると思い込んで、勝手にコンプレックスを育んで、なにをやらせても完璧な兄さんに羨望と嫉妬と憎悪の入り混じった暗い感情を抱き続けていた。
 ぼくは、本当にどこまで
 「お兄さん、本当は東ちゃんが心配なんだ。東ちゃんが大好きなんだ」
 どこまで、ばかなんだ。
 思い出した。むかしのぼくはかっこよくてなんでもできるお兄ちゃんが大好きだった。しょっちゅう兄さんのあとをついてまわっていた。
 兄さんは怒ると怖いけど、ぼくが砂場でいじめっ子に山を蹴り崩され泣いてたら血相かえて飛んできて、傷だらけで戦ってくれた。
 何もないところでよく転ぶ弟に手を貸さず、「立て」と命令し、こみ上げる涙と擦り剥いた膝の痛みを堪え立ち上がったら偉いぞと褒めてくれた。
 「くさっても弟だからな」
 思い出す。部活でくたくたに疲れきって、帰ったら真っ先にベッドに倒れこみたいのに、兄さんは毎回ぼくの部屋に足を運んでくれた。
 思い出す。負けてばかりのバイキンマンが可哀想と泣く弟を、「アンパンマンとバイキンマンはほんとは仲良しなんだ、バイキンマンはいじめられてるわけじゃないんだ。今度こそは勝ってやるって、がんばって研究して、色んな道具を発明したりいたずらを考えるのを楽しんでるんだよ。だってさ、アンパンマンに勝ったらそこで終わっちゃうだろ。そしたらきっとつまんないよ、すぐあとはよくたってライバルがいなきゃ張り合いないよ」と懸命になぐさめてくれた。
 兄さん。
 兄さん。
 「………ッ………!」
 ごめんなさい。
 トンネルの中、通路の壁に背中を預け、膝を抱え込む。
 兄さんは八年間ずっと嫌われ者の役割を演じてくれた、憎まれ役になりきってくれた、バイキンマンに徹してくれた。
 イースト菌のハンドルネームはぼくが自分でつけた。
 中学時代の蔑称をそのまま受け継いだ自虐的な名前をあえて選んだのは、八年前から一歩も進んでないぼくにはその名前こそふさわしいと思ったからだ。
 ぼくは八年前から全然変わってない。兄さんもまた、八年前のあの日に心の一部を置き去りにしたままだった。
 
 一生ひきこもってろ、みっともないから外に出るな。
 ぼくを切り刻んだ言葉は、同時に兄さんをも傷付けた。
 いや。
 ぼくのように逃避も依存もせず、現実と戦ってきた兄さんこそ一番辛かったのかもしれない。

 ぼくの心は八年前、十四歳の時点で成長をやめてしまった。
 二十二歳の体に十四歳の心の子供は、身近な人の苦しみを想像すらしなかった。

 「……やっぱよく似てる。兄弟そろってツンデレだ」
 「は?ツン……なんだ?」
 「ツンデレっていうんですよ、そういうの。東ちゃんの受け売りだけど」
 頭の上をふたりの会話が流れていく。まだ顔を上げられない。
 自分が情けなくて恥ずかしくて、兄さん母さん父さん、八年間ぼくを包んでくれた家族に対し、さまざまな感情が湧き上がって、喉が詰まって。
 食事にラップをかけ毎日欠かさず部屋の前においてくれた母さん。
 毎日ドアを叩いた兄さん。
 実家を出る前日、荷造りするぼくを眺め、「……手伝おうか」と言い出した父さん。
 なんでもっと、ちゃんと話してこなかったんだろう。
 今だ顔を上げる勇気は出ず、抱え込んだ膝に顔を埋めたまま、兄さんの声だけを聞く。
 「……東は優しいヤツなんだ。子供のころ、いじめっ子に砂山を蹴り崩されて泣いていたところに偶然通りかかって追い払ってやったが、そしたらもっと泣くんだ。どうしたのかって聞いたら、何も言わず、プラスチックのバケツをもって水汲み場にとんでいって……水をばちゃばちゃこぼしながら戻ってきて。小さな手で一生懸命すくって、俺の膝にかけるんだ。いじめっこに転ばされて、擦り剥いた膝に。殆ど指のあいだからこぼれてしまったが……」
 ぼくが覚えてない小さい頃の思い出を、兄さんはちゃんと覚えていた。
 「……あんなに思いやりがあって優しいヤツが、ダメなはずがない」
 「直接言えばいいのに」
 小金井が含み笑いでからかう。兄さんが息を吐く。
 「……正直、よく知りもせん相手にこんなことを言うのはどうかと思う。思うが……君が来てから、東がいい方向に変わってきてるのは事実だ。八年間同じ場所にいたあいつがほんの少しずつ前に進んでるんだ。おそらく君の背中を手本にして」
 「前に立つんじゃなくて隣を歩くんです」
 小金井が穏やかな顔で言う。
 「たぶん東ちゃんに必要なのは、前に立って歩く人じゃなくて、隣を歩く人じゃないかな。遅くたっていいんですよ。回り道したから見えてくるものやわかることきっといっぱいあるし……あー、バカだからうまく言えねー。言えないけど、ダメな自分を自覚して、そこからちょっとでも進もうって足掻いてる人に必要なのは過干渉な手助けでも突き放す優しさでもなくって……」
 語彙の少なさと説明の拙さを恥じるように一呼吸おき、吹っ切るようなとびっきりの笑顔でてらいなく言う。
 「……少なくとも俺は、見苦しく足掻いてる今の東ちゃんが大好きです。すンげー人間臭くって」
 大好きです。
 その言葉を聞いた瞬間、頬が燃え上がる。
 「そういえば君は何の用で外にでたんだ」
 「これから買い物にいくんです」
 「東は一緒じゃないのか?」
 「秘密っすよ?」
 小金井がいたずらっぽく人さし指をたて、兄さんのほうへと体をずらし、こっそり打ち明ける。
 「今日は東ちゃんと出会ってから一ヶ月と一週間記念日なんです」
 え?
 予想外の台詞に面食らう。兄さんも同様らしく、理解不能といった顔。小金井はひとり嬉々として続ける。
 「ホントは先週が一ヶ月記念だったんだけど色々あって祝うどころじゃなかったから、一ヶ月と一週間目にリベンジでドッキリパーティーっす。一緒に買出しにいったら献立わかってお楽しみ半減じゃないですか、てなワケで東ちゃんにはお留守番してもらってます。あー何がいっかな、やっぱブナンに鍋かなー。パーティーの醍醐味つったらやっぱ鍋っすよね、でもただの鍋じゃ芸がないから闇鍋かな、でも鍋はふたりだと盛り上がらないんだよなー。そうだ、よかっらお兄さんも一緒に」
 「遠慮しておく」
 兄さんが柔和に苦笑しベンチを立つ。平和な陽射し注ぐ公園に子供たちの歓声がこだまする。
 小金井も腰を上げ、兄さんと向き合い立つ。
 兄さんが物言いたげに小金井を見詰める。小金井もまた気負わず見返す。
 兄さんが意を決し顔を引き締め、小金井に対し、深々と頭をさげる。
 「弟をよろしくお願いします」
 兄さんが人に対し腰を折るのを見るのは、これが初めてだった。
 丁寧に一礼された小金井はといえば、いつもどおりだらしない姿勢で笑みを浮かべ請け負う。
 「わかりました」
 兄さんが去っていく。公園を突っ切る途中、砂場で遊ぶ先の兄弟をちらり一瞥し、眩げに目を細める。
 楽しげにじゃれあう幼い兄弟に何を思ったのか、それきり振り返らず公園を出て、道を歩いて去っていく。
 兄さんがいなくなるのを待ってコンクリートトンネルを出、小金井に気付かれぬよう、遊具に隠れつつ移動する。
 「あれ?財布どこやったっけ」
 「小金井さん、これ!」
 ズボンのポケットをさぐり困惑する小金井に、いかにもたった今追い付いたといった具合に、公園の外から声をかける。
 「東ちゃん」
 小走りに駆け寄り財布を渡す。
 「サンキュ」
 礼を言って受け取った小金井がちょっとだけ気まずげにぼくを見る。悪戯が仕掛けの段階で発覚したような顔。
 ぼくはあえて知らぬ存ぜぬふりを選ぶ。
 「じゃ、帰りますね」
 「え?せっかく外でたのに買い物行かないの」
 「ついてきてほしいんですか」
 「あ、いや、そういうんじゃねーけど……じゃなくて、別に東ちゃんが来ちゃ悪いとかじゃなくって、そりゃ一緒のが楽しいんだけどさ」
 珍しくうろたえる小金井がすごく面白い。
 「帰ります。ゲーム途中なんで」
 きっぱり言うなり身を翻し、来た道を駆け出す。背後から小金井の声が追っかけてくるも吹っ切って、アルファルトの道を軽快に蹴りアパートへと急ぐ。
 本音を言えば、これ以上小金井の顔を見てるのがいたたまれなくて。
 平静を装う自信がなくて。
 
 『俺は東ちゃんが大好きです』

 小金井が何気なく放った台詞が耳の中で響いて、心臓の音がうるさくそれを圧して、頬に上った血が顔全体を火照らせる。
 他愛ない言葉に、なんでこんなに動揺してるんだろう。
 耳朶まで熱くし、一散に道を駆けながら、脳裏でぐるぐると同じ言葉が回り同じ情景が再生される。


 ひとに好きだなんて言われたのは生まれて初めてだ。
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