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ハロウィンなので仮装します
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「今帰ったぞ」
「おかえりっす」「おかえりなさい」
「なんだそのトンチキな衣装は」
「ハッピオアトリトー、お菓子くれなきゃイタズラします」
「みはなちゃんみはなちゃん混ざって大渋滞してるっす、トリックオアトリートかハッピーハロウィーンに決めるっすよ!」
「無視するな、その珍妙な衣装はなんだと聞いている。愉快なコスプレ趣味に目覚めたのか」
「やだなー誠一さん、今日が何の日か忘れちゃったんすか?町にやたらカボチャがゴロゴロしてたっしょ、テレビも大盛り上がりだし」
「きょうはハロウィンですよ、そんなことも知らないんですか」
「もちろん知っている。10月31日は馬鹿が馬鹿騒ぎをくり広げるハロウィンだ、おかしな仮装をした非常識な連中が道に溢れかえって危うく帰宅難民になるところだった、歩行者天国じゃないんだぞ」
「わー今のジェネレーションギャップ感じたっす、若い頃はホコテンでブイブイ言わせてたクチっすか」
「それは親父の世代だし、ブイブイなんて擬音を使うヤツに年寄り扱いされくない。話が脱線しまくってるが、俺の認識が正しければハロウィンはモンスターの仮装をする日だよな?寝室の白いカーテンをわざわざ剥がした上にぐるぐる身体に巻き付けてなにがしたいんだお前」
「失敬っすね、俺は光の大魔法使いっすよ!その者白き衣を纏いてワックスでぴかぴかに磨き抜いた玄関先に降り立っちゃうと伝説に唄われる高貴なる存在っす、背中のオーラが見えないんすか?そっか見えねーか欲にまみれた一般人には」
「頭は大丈夫か?」
「本当は真っ白いおヒゲを付けて威厳をだしてほしかったんですけど、えっちゃんはこれが限界でした」
「酷っ!?」
「これでもがんばったんです、許してあげてください」
「毒舌!?いやだって光の魔術の使い手の大魔法使いは純白のローブを羽織るってのがお約束じゃねっすか、キメ時はバサアッ!てやるんすよ、大志がむかしハマってたRPGとかちょっと前にすんげー流行った剣と魔法のファンタジー映画、ソードオブザリングもそうだったし!帽子だってホラ見てくださいっす、手に入れるの苦労したんすよー。黒いトンガリ帽子はドンキにたくさんあったけど白いのはレアもんで」
「ドンキホーテで買ったのか」
「ハロウィングッズたくさんありました。みはなのお洋服もドンキホーテさんで買いました」
「どうりで……一瞬悦巳の手作りかと思ったが、それにしてはホツレもないし縫製がちゃんとしてる。まぎれもない大量生産の既製品だな」
「どーゆー意味っすか」
「料理はまあまあマシになったが裁縫は致命的というイヤミだ。マシになったとはいえジャガイモに芽が生えた程度だが」
「芽はこそいで食えるっす、ソラニン豊富で栄養たっぷりっす」
「正気か着様、ジャガイモの皮や芽に含まれるソラニンは神経毒だぞ?成人はおよそ 200–400 mg、子供ならその約10分の1程度の量で中毒を引き起こし死に至るが、まさかみはなに食わせてないだろうな?」
「そうなんすか!!!!?やっべー俺ってばワイルドだろってじゃがバタ皮ごと食ってました!?あ、みはなちゃんにはちゃんと皮剥いたの食わせてるから安心してくださいっす、俺の作るりんご入りポテトサラダ大の好物っすから」
「いい笑顔で親指立てるな」
「りんごが入ってると甘くてシャリシャリしておいしいです。今日のオヤツはミィフィーーのかたちに切ってくれようとして指を怪我してました」
「しーっみはなちゃんしーっ!」
「なるほど、それで指に大量の絆創膏を貼り付けてるのか。俺はまた針と糸でみはなの衣装を手作りしようとしたのかと」
「まっさかーいくら俺だってンな無謀な挑戦しねっす、やるとしても足踏みミシン使いますって!あっそだ、ばあちゃんちにあった足踏みミシン貰っちゃってもいいっすかね?みはなちゃんの手提げ鞄作ってあげてーし、小学校上がるとほら、色々物入りっしょ?」
「フードの襟を安全ピンでとめていばるなエセ魔術師」
「光の大魔術師って言ってくださいっす、子どもの夢壊す誠一さんはイケズっす!」
「ファー付きもこもこ白スリッパで言われてもな」
「しかたねっしょ衣装にあうのこれっきゃなかったんすよ。ってか俺はいいから、今日の主役に注目してあげてくださいっす」
「世界一かわいい魔女さんだな」
「えへへ」
「な……デレ!?唐突なデレっすかなんなんすか反則っすよもー、なんでそれ俺に発揮してくんないんっすかツン9割還元セール中っすか!?確かにトンガリお帽子黒マントちび魔女コスのみはなちゃん最ッ高にかわいいし、肩にのっかってるジジリスペクトの黒猫ぐるみもすっげかわいいし、ジャックオランタンも爆発四散してパンプキンパイが出来上がるかわいいの波状攻撃でやべーっすけどね!!」
「落ち着いてくださいえっちゃん、カボチャは爆発してもパンプキンパイにはなりません、ばらばらになるだけです」
「爆発してみなきゃわかんないじゃねっすか、オーブンの中ならワンチャン」
「ほうきはおうちのです。肩にのっかってるこの子は幹子おばさんが編んでくれて」
「幹子さんが……電話で礼を言わなければな」
「さっきかぼちゃタルト持ってきてくれたんですよ、みんなで召し上がれって。幹子おばさんと楓さん、お菓子作りのプロなんです。も少しおっきくなったらみはなにもケーキの焼き方教えてくれるって約束で」
「みはなちゃん誠一ちゃん?無視されると寂しいんすけどおーい」
「誰か来たぞ」
「玄関に突っ立てるなら自分で開けりゃいいのに」
「なんか言ったか?」
「なんもー?はいはい今出ますよー」
「「トリックオアトリート、お菓子くれなきゃイタズラするぞ」」
「ちっす大志アンディ、狼男のコックさんとフランケンシュタインの仮装すげー気合入ってんじゃん、モノホンかと思った」
「……お前さー。っとにそー思ってんならもちょっと驚けっての、ひゃーとか」
「ひゃー」
「あ゛?馬鹿にしてんの?やるか?」
「どーどー大志、ほんのジョークだよお茶目のアメリカンハロウィンジョーク胸ぐら掴むのやめてろって、みはなちゃん完全に固まってガン見してっから。てゆーかそのシェフ帽と白衣どこで手に入れん、本物みてーだけど」
「本物で借り物だよ、いまバイトしてるイタ飯屋の人に無理言ったんだ。汚ェ手でさわんじゃねーぞ」
「似合ってんじゃん、男前だ。今のお前ならフライパンでホットケーキひっくり返すの余裕っぽい」
「実演してやろうか?狼耳としっぽは……シェフの仮装じゃ味けねーし、景気付けってことで」
「オオカミ男のコックさんっすねー。みはなちゃん、気ィ付けないとパパッと料理されて食べられちゃうっすよ」
「食べないでください!食べないでください!みはなは小さいからあんまり食べるとこありません、えっちゃんの先っぽあげますから許してください!」
「先っぽ……先っぽ!?」
「小指の……」
「あ……あーーそっちの意味っすね、一瞬ビビりました」
「頭ン中にエロいことしか詰まってねーのか。これだからバカップルは」
「社長と悦巳は新婚なんだ、大目に見てやれ」
「アンディやべーハマりまくりっすね、もともとデカくてゴツくて彫りが深ェからあっちのホラー映画に出てくるモンスターみてェで……なんてっか、夢にでそーな迫力……大肌は特殊メイクっすか、時間かかったっしょ」
「迷彩メイクは得意だからな」
「ジャングルじゃねえよ」
「ハロウィンの群衆に紛れ可及的速やかに社長宅に急行するのが本日のミッションだ。みはな様は大変おかわいらしいな」
「魔女のコスプレか。ちゃんとほうき持って細けェな、使い魔の黒猫もいるし」
「やるからには徹底的にってお父さんが言ってました」
「勝手に盛り上がるんじゃない。どういうことだこれは、うちに集合するなんて聞いてないぞ」
「イエーイサプライズっす、びっくりしたっすか?誠一さん仲間はずれのさびしんぼっちでいい気味いててててて、ちょ耳引っ張るのマジやめてくださいっす痛てーっす!?」
「えっちゃんがお父さんびっくりさせようってはりきって、ずっと玄関で待ち構えてたんですよ」
「なんだまだ言ってねーのか悦巳、商店街のスタンプラリー行くんだろ」
「初耳だぞ」
「中学生以下の子供が仮装していくとお菓子サービスしてもらえるんす、でもみはなちゃん1人じゃ心細いから俺たちが一緒に」
「大人まで仮装する必要あるのか?」
「もーノリわりぃなーーー、大人は仮装必須じゃねーけど親子連れならやっぱペアでキメたいっしょ?」
「みはなもおそろいがいいです。アンディさんと大志さんのおばけのかっこ見たかったし、みんなで行った方が楽しいですよ。お菓子も余計おまけしてもらえるかもしれませんし」
「みはな、反面教師という言葉を知ってるか」
「知らないです」
「意地汚さまで悦巳をまねなくていいんだぞ、コイツはティーパックを三回使い回す男だ。ポッキーは必ずチョコが付いてる方から食べるし、なんなら中身が詰まってるトッポ派だ」
「このうち来てからティーパックでズルしてねーっしょ、捏造すんのやめてくださいよ!」
「俺と住んでた頃はしてたけどな」
「お前どっちの味方だよ!?」
「ということで、誠一様にプレゼントです」
「……おい安藤、なんだこれは」
「私がさる筋のツテを使って手に入れた吸血鬼のコスチュームです。マント、ドレスシャツ、リボンタイ、一式揃っております。足元は革靴になさいますかブーツになさいますかどちらがお好みかはかりかねたので両方磨いておきましたが」
「吸血鬼ならオールバックは譲れねっすね、ポマードの準備は整ってるっす!まかせてください誠一さん、御影に初めて挨拶行くとき大志の髪ばっちり整えてやったの俺っすからヘアメイクは完璧に」
「その名前をだすんじゃない。……まさか俺に着ろというのか」
「仲間外れは寂しいもんな」
「お前はただ面白がってるだけだろ、自分の毛を咽喉に詰めて窒息しろ狼男もどきが。そもそも狼男でシェフとは、厨房の衛生管理は大丈夫なのか?抜け毛が混入したら店の信用問題、下手したら民事だぞ」
「えーーー誠一さんの吸血鬼ぜってー似合うとおもうのにーーー見てえなーーー伯爵コスしてほしいなーーーー」
「みはなもかっこいいお父さん見たいです」
「悦巳はどうでもいいですがみはな様もこうおっしゃられておりますし、何卒ご英断を」
「さりげに酷くね?アンディ俺になんか恨みある?」
「どうすんだよ誠一さん、断んの?可愛い娘がめちゃくちゃ楽しみにしてるってのに……見ろよあの一点の汚れもねーキラキラした目、絶対やってくれるって信じこんでる」
「茶化すな大志、誠一さんはみはなちゃんのこと大っ好きなんだ、猫なで可愛がりで可愛がってんだ、一人娘の期待を裏切るような外道働くわけねーだろ」
「人がよすぎるぜ悦巳、全然変わってねーな。お前勘違いしてんだよ、コイツは年に一度のハロウィン楽しみにする子供の気持ちよかテメェの見栄を優先するカッコ付けなんだって、その証拠にぶすっと突っ立ってせっかくアンディが用意した衣装にさわろーともしねーだろ」
「誠一様はそんなお人ではない、本当は誰より優しい人だ。少しばかり体面を重んじなさるだけだ」
「……来い悦巳」
「そーくると思ったっすよ誠一さん、ヘアメイクはまかしてくださいっす、血を吸われてーランキングぶっちぎりナンバー1のイケメン吸血鬼に仕上げたげるっす!」
「おかえりっす」「おかえりなさい」
「なんだそのトンチキな衣装は」
「ハッピオアトリトー、お菓子くれなきゃイタズラします」
「みはなちゃんみはなちゃん混ざって大渋滞してるっす、トリックオアトリートかハッピーハロウィーンに決めるっすよ!」
「無視するな、その珍妙な衣装はなんだと聞いている。愉快なコスプレ趣味に目覚めたのか」
「やだなー誠一さん、今日が何の日か忘れちゃったんすか?町にやたらカボチャがゴロゴロしてたっしょ、テレビも大盛り上がりだし」
「きょうはハロウィンですよ、そんなことも知らないんですか」
「もちろん知っている。10月31日は馬鹿が馬鹿騒ぎをくり広げるハロウィンだ、おかしな仮装をした非常識な連中が道に溢れかえって危うく帰宅難民になるところだった、歩行者天国じゃないんだぞ」
「わー今のジェネレーションギャップ感じたっす、若い頃はホコテンでブイブイ言わせてたクチっすか」
「それは親父の世代だし、ブイブイなんて擬音を使うヤツに年寄り扱いされくない。話が脱線しまくってるが、俺の認識が正しければハロウィンはモンスターの仮装をする日だよな?寝室の白いカーテンをわざわざ剥がした上にぐるぐる身体に巻き付けてなにがしたいんだお前」
「失敬っすね、俺は光の大魔法使いっすよ!その者白き衣を纏いてワックスでぴかぴかに磨き抜いた玄関先に降り立っちゃうと伝説に唄われる高貴なる存在っす、背中のオーラが見えないんすか?そっか見えねーか欲にまみれた一般人には」
「頭は大丈夫か?」
「本当は真っ白いおヒゲを付けて威厳をだしてほしかったんですけど、えっちゃんはこれが限界でした」
「酷っ!?」
「これでもがんばったんです、許してあげてください」
「毒舌!?いやだって光の魔術の使い手の大魔法使いは純白のローブを羽織るってのがお約束じゃねっすか、キメ時はバサアッ!てやるんすよ、大志がむかしハマってたRPGとかちょっと前にすんげー流行った剣と魔法のファンタジー映画、ソードオブザリングもそうだったし!帽子だってホラ見てくださいっす、手に入れるの苦労したんすよー。黒いトンガリ帽子はドンキにたくさんあったけど白いのはレアもんで」
「ドンキホーテで買ったのか」
「ハロウィングッズたくさんありました。みはなのお洋服もドンキホーテさんで買いました」
「どうりで……一瞬悦巳の手作りかと思ったが、それにしてはホツレもないし縫製がちゃんとしてる。まぎれもない大量生産の既製品だな」
「どーゆー意味っすか」
「料理はまあまあマシになったが裁縫は致命的というイヤミだ。マシになったとはいえジャガイモに芽が生えた程度だが」
「芽はこそいで食えるっす、ソラニン豊富で栄養たっぷりっす」
「正気か着様、ジャガイモの皮や芽に含まれるソラニンは神経毒だぞ?成人はおよそ 200–400 mg、子供ならその約10分の1程度の量で中毒を引き起こし死に至るが、まさかみはなに食わせてないだろうな?」
「そうなんすか!!!!?やっべー俺ってばワイルドだろってじゃがバタ皮ごと食ってました!?あ、みはなちゃんにはちゃんと皮剥いたの食わせてるから安心してくださいっす、俺の作るりんご入りポテトサラダ大の好物っすから」
「いい笑顔で親指立てるな」
「りんごが入ってると甘くてシャリシャリしておいしいです。今日のオヤツはミィフィーーのかたちに切ってくれようとして指を怪我してました」
「しーっみはなちゃんしーっ!」
「なるほど、それで指に大量の絆創膏を貼り付けてるのか。俺はまた針と糸でみはなの衣装を手作りしようとしたのかと」
「まっさかーいくら俺だってンな無謀な挑戦しねっす、やるとしても足踏みミシン使いますって!あっそだ、ばあちゃんちにあった足踏みミシン貰っちゃってもいいっすかね?みはなちゃんの手提げ鞄作ってあげてーし、小学校上がるとほら、色々物入りっしょ?」
「フードの襟を安全ピンでとめていばるなエセ魔術師」
「光の大魔術師って言ってくださいっす、子どもの夢壊す誠一さんはイケズっす!」
「ファー付きもこもこ白スリッパで言われてもな」
「しかたねっしょ衣装にあうのこれっきゃなかったんすよ。ってか俺はいいから、今日の主役に注目してあげてくださいっす」
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「えへへ」
「な……デレ!?唐突なデレっすかなんなんすか反則っすよもー、なんでそれ俺に発揮してくんないんっすかツン9割還元セール中っすか!?確かにトンガリお帽子黒マントちび魔女コスのみはなちゃん最ッ高にかわいいし、肩にのっかってるジジリスペクトの黒猫ぐるみもすっげかわいいし、ジャックオランタンも爆発四散してパンプキンパイが出来上がるかわいいの波状攻撃でやべーっすけどね!!」
「落ち着いてくださいえっちゃん、カボチャは爆発してもパンプキンパイにはなりません、ばらばらになるだけです」
「爆発してみなきゃわかんないじゃねっすか、オーブンの中ならワンチャン」
「ほうきはおうちのです。肩にのっかってるこの子は幹子おばさんが編んでくれて」
「幹子さんが……電話で礼を言わなければな」
「さっきかぼちゃタルト持ってきてくれたんですよ、みんなで召し上がれって。幹子おばさんと楓さん、お菓子作りのプロなんです。も少しおっきくなったらみはなにもケーキの焼き方教えてくれるって約束で」
「みはなちゃん誠一ちゃん?無視されると寂しいんすけどおーい」
「誰か来たぞ」
「玄関に突っ立てるなら自分で開けりゃいいのに」
「なんか言ったか?」
「なんもー?はいはい今出ますよー」
「「トリックオアトリート、お菓子くれなきゃイタズラするぞ」」
「ちっす大志アンディ、狼男のコックさんとフランケンシュタインの仮装すげー気合入ってんじゃん、モノホンかと思った」
「……お前さー。っとにそー思ってんならもちょっと驚けっての、ひゃーとか」
「ひゃー」
「あ゛?馬鹿にしてんの?やるか?」
「どーどー大志、ほんのジョークだよお茶目のアメリカンハロウィンジョーク胸ぐら掴むのやめてろって、みはなちゃん完全に固まってガン見してっから。てゆーかそのシェフ帽と白衣どこで手に入れん、本物みてーだけど」
「本物で借り物だよ、いまバイトしてるイタ飯屋の人に無理言ったんだ。汚ェ手でさわんじゃねーぞ」
「似合ってんじゃん、男前だ。今のお前ならフライパンでホットケーキひっくり返すの余裕っぽい」
「実演してやろうか?狼耳としっぽは……シェフの仮装じゃ味けねーし、景気付けってことで」
「オオカミ男のコックさんっすねー。みはなちゃん、気ィ付けないとパパッと料理されて食べられちゃうっすよ」
「食べないでください!食べないでください!みはなは小さいからあんまり食べるとこありません、えっちゃんの先っぽあげますから許してください!」
「先っぽ……先っぽ!?」
「小指の……」
「あ……あーーそっちの意味っすね、一瞬ビビりました」
「頭ン中にエロいことしか詰まってねーのか。これだからバカップルは」
「社長と悦巳は新婚なんだ、大目に見てやれ」
「アンディやべーハマりまくりっすね、もともとデカくてゴツくて彫りが深ェからあっちのホラー映画に出てくるモンスターみてェで……なんてっか、夢にでそーな迫力……大肌は特殊メイクっすか、時間かかったっしょ」
「迷彩メイクは得意だからな」
「ジャングルじゃねえよ」
「ハロウィンの群衆に紛れ可及的速やかに社長宅に急行するのが本日のミッションだ。みはな様は大変おかわいらしいな」
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「やるからには徹底的にってお父さんが言ってました」
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「イエーイサプライズっす、びっくりしたっすか?誠一さん仲間はずれのさびしんぼっちでいい気味いててててて、ちょ耳引っ張るのマジやめてくださいっす痛てーっす!?」
「えっちゃんがお父さんびっくりさせようってはりきって、ずっと玄関で待ち構えてたんですよ」
「なんだまだ言ってねーのか悦巳、商店街のスタンプラリー行くんだろ」
「初耳だぞ」
「中学生以下の子供が仮装していくとお菓子サービスしてもらえるんす、でもみはなちゃん1人じゃ心細いから俺たちが一緒に」
「大人まで仮装する必要あるのか?」
「もーノリわりぃなーーー、大人は仮装必須じゃねーけど親子連れならやっぱペアでキメたいっしょ?」
「みはなもおそろいがいいです。アンディさんと大志さんのおばけのかっこ見たかったし、みんなで行った方が楽しいですよ。お菓子も余計おまけしてもらえるかもしれませんし」
「みはな、反面教師という言葉を知ってるか」
「知らないです」
「意地汚さまで悦巳をまねなくていいんだぞ、コイツはティーパックを三回使い回す男だ。ポッキーは必ずチョコが付いてる方から食べるし、なんなら中身が詰まってるトッポ派だ」
「このうち来てからティーパックでズルしてねーっしょ、捏造すんのやめてくださいよ!」
「俺と住んでた頃はしてたけどな」
「お前どっちの味方だよ!?」
「ということで、誠一様にプレゼントです」
「……おい安藤、なんだこれは」
「私がさる筋のツテを使って手に入れた吸血鬼のコスチュームです。マント、ドレスシャツ、リボンタイ、一式揃っております。足元は革靴になさいますかブーツになさいますかどちらがお好みかはかりかねたので両方磨いておきましたが」
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「その名前をだすんじゃない。……まさか俺に着ろというのか」
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「えーーー誠一さんの吸血鬼ぜってー似合うとおもうのにーーー見てえなーーー伯爵コスしてほしいなーーーー」
「みはなもかっこいいお父さん見たいです」
「悦巳はどうでもいいですがみはな様もこうおっしゃられておりますし、何卒ご英断を」
「さりげに酷くね?アンディ俺になんか恨みある?」
「どうすんだよ誠一さん、断んの?可愛い娘がめちゃくちゃ楽しみにしてるってのに……見ろよあの一点の汚れもねーキラキラした目、絶対やってくれるって信じこんでる」
「茶化すな大志、誠一さんはみはなちゃんのこと大っ好きなんだ、猫なで可愛がりで可愛がってんだ、一人娘の期待を裏切るような外道働くわけねーだろ」
「人がよすぎるぜ悦巳、全然変わってねーな。お前勘違いしてんだよ、コイツは年に一度のハロウィン楽しみにする子供の気持ちよかテメェの見栄を優先するカッコ付けなんだって、その証拠にぶすっと突っ立ってせっかくアンディが用意した衣装にさわろーともしねーだろ」
「誠一様はそんなお人ではない、本当は誰より優しい人だ。少しばかり体面を重んじなさるだけだ」
「……来い悦巳」
「そーくると思ったっすよ誠一さん、ヘアメイクはまかしてくださいっす、血を吸われてーランキングぶっちぎりナンバー1のイケメン吸血鬼に仕上げたげるっす!」
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