オレオレ御曹司

まさみ

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四十二話

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 密着した裏地が蒸れて暑苦しく息苦しい。
 目を開けても閉じても濃淡の度合いが変わるだけで、闇に塗り潰された扁平な視界では忍び寄る人影はおろか物の輪郭さえも捉えられない。
 固く冷たい床が背中にあたる。
 ガムテープでがんじがらめにされた手首がむずがゆい。
 周囲にたむろう猥雑な気配と軽薄に飛び交う私語、加えて酷薄なせせら笑いが闇を不穏にざわめかせる。
 「こいつどうする」
 「御影さんは好きにしろって」 
 「遊んでやっか」
 咄嗟に反転、使えない手の代わりに膝と肘で這って逃げだす。
 ドアはどっちだ?
 確かこっちのはず、玄関までたどり着けば助かる、大声で助けを呼ぼう。
 必死に逃げる悦巳を若者たちが笑いながら小突き回す、不恰好に突き上げた尻を蹴飛ばし肘をくじきよってたかって妨害する。慰みもの嬲りもの、そういう表現が似合う扱いだ。
 あれから何時間たったのだろう。どれくらい気を失っていたのだろう。御影はいないらしいと会話から判断し安堵するも束の間、留守を任され退屈しきった下っ端たちにストレス発散のおもちゃにされる。
 たかが布一枚で阻まれた盲目の闇がささくれた神経を削り取る。方向感覚が狂う暗闇を彷徨うさなか耳裏の血流の音と鼓動がドクドク鳴り響く。
 目隠しの裏を過ぎる大事な人の記憶、誠一とみはなの面影に縋りついて崩壊寸前の精神の均衡をとるも、裂傷を負った下肢はちょっと動くだけでずきずきし、全身を襲う虚脱感が気持ちを萎えさせる。
 肛門から出血してるのだろうか、それともぬるりと窄まりを伝って内腿にまで伝い落ちるこれは注がれた精液の残滓か、ガムテープで手を縛められ掻き出せなかったものが括約筋の収縮に伴って排泄されてるのか……
 生渇きの下着がごわついて気持ち悪い。上着にもズボンにも白濁が飛び散って斑の染みができている。
 糊のように乾いた精液がこびりついた下着が肌と擦れ合う感触はえもいえず、情けなさと惨めさで涙が滲む。
 ずっ、ずっと音がたつ。
 束縛された両手で自重を支えるのではなく、両腕で自分の体を引きずるようにして這う悦巳の足を誰かが力づくで掴みひきずりもどす。
 「逃げるなよ、みんなでマワして可愛がってやっからさあ」
 「大志と御影さんだけってのはずりーよなあ、分け前もらわねーと」
 「さわんじゃねえよ気色わりィ、はなせ、はなせってば!てめえら変態かよ、俺の貧相な体さわってなにが楽しい!!」
 塊が喉に詰まって抗議の声が上擦る、悲鳴じみて甲高い声で罵倒し身をよじってもがくもたちどころに押さえつけられ抵抗を封じられる、悦巳の貧相な体に薄い胸板に細い腰に手がじゃれつく、目隠しの向こう側で何が起きてるか知りたくもないのに過敏になった触覚がいやというほどの生々しさでそれを伝えてくる、上に乗っかる男を蹴りどかそうと足をばたつかせるも違う手によって固定され胴に跨る男の生臭い吐息がすぐ近くに迫る。
 上着の裾を一気に捲り上げる。
 「っ!!」
 汗でべとつく手が痩せた腹筋に沿う。
 視姦の恥辱と複数の男の手によって蹂躙される恐怖で全身を鳥肌が覆う。
 「おい見ろよ、こいつの乳首ピンク色だ!マジウケんですけど、風俗嬢みてえ!」
 「!っ、あ、痛っで……」
 強く乳首をつねられ噛み殺しきれない悲鳴をもらす。
 悦巳の反応に気を良くした男が重点的に乳首をいじくりはじめる。
 薄く貧相な胸板の突起を人さし指で弾いたかとおもいきや爪を使ってほじって抉り、しぼりだすようにこねまわして刺激する。
 「感じてんの?顔赤いじゃん」
 「乳首も勃ってきた勃ってきた」
 「強姦で感じちまうなんて超淫乱じゃん」
 「おまっ、男に淫乱て超ウケんだけど!」
 男たちが馬鹿笑い。粘着質な乳首責めに次第に息が上擦り始める。
 目隠しの向こうで浮かれ騒ぐ男たちの耳障りな嬌声と下劣な揶揄、尖り始めた乳首をねちっこく責める手、かとおもえば腹筋に忍んだ手が柔肉を揉みしだいて性感帯をさがし違う手が首筋をなぞり後ろにまわりこんだ手がズボンの上から窄まりをぐりぐり指圧。
 「あっ、うあ、ひあぐっ」
 目が見えないせいで次どこに来るか心の準備ができず、無防備な体をさらけだす恐怖に駆られ、往生際悪く蹴立てる足で床を掻く。
 仰向けに転がされた悦巳の体を興奮に逸った男たちが息を荒げて見詰める。
 御影と大志が悦巳をもてあそぶ情景を見せつけられ自制がきかなくなっている。
 すでに御影のお許しは貰ってる、どうしようが勝手だ、楽しまなければ損。
 暇潰しで強姦に加わる者、この機会に男で試してみようと思い立ったものも少なからずいる。
 悦巳はそんな事情など知らない、大志と入れ代わるようにして殺到してきた男たちにめちゃくちゃに蹂躙され理性がはじけ飛ぶ。
 「大志……どこだよ大志返事しろよ!」
 親友に助けを請うも返事は返らず、若者たちの失笑を買う。
 「大志ならいねえよ、御影さんについてった。俺たちはおるすばんってわけ」
 大志がいない?
 そんな馬鹿な、冗談だろ?
 俺を見捨てて、見殺しにして逃げたのか?
 自分を強姦した親友にそれでもまだ心のどこかで抱いていた期待を、残酷な宣告が完膚なきまでに打ち砕く。
 「うそだ……大志が……」
 信じられないといった調子で呆然と呟く。最後に見た大志の顔が瞼の裏に焼きつく。
 悲哀と憤りに歪む苦渋の表情。
 「諦めろ、お前のことなんかだあれも助けちゃくんないぜ」
 どうしてこんな事に?畜生俺がなにしたってんだ、どうして大志は俺をおいてった置き去りにした俺がおまえになにしたってんだ、ずっとずっといいダチでやってきたつもりだったのに
 頭の中がぐちゃぐちゃだ。大人しくなった隙をついてズボンに手がかかる「!まっ、」拒む暇もなくずりおろされ剥き出しの下半身が曝される。
 「ははっ、びびって竦みあがってんじゃん可哀想」
 「慣らす?」
 「いいっていいって、そのままぶちこんじまえ。大志が丁寧にやってたから必要ねーよ」
 「肉便器に情けは無用だな」
 「ひでー」
 飛び交う口笛と熱を伴う不躾な視線に全身が燃え立ち、慌てて膝を閉じようとするもあっさりこじ開けられ、赤ん坊にオムツをあてがうような開脚ポーズで固定される。
 股を開いて大胆に尻を突き出す悦巳を若者たちがはやし立てる。
 「さわんな、はなせ……いい加減にしろよ悪ふざけは、調子にのってんじゃねえよ!!」
 「うるせえよ」
 低く嘲りを返し、ぐっと腰を抱え込み赤黒く勃起したペニスを添える。
 「!―っあ、あああああっ、ああああ」
 凶器のように固く張った亀頭が肉を目一杯に押し広げて窄まりにめりこみ残留した精液を潤滑油代わりにして抽送を開始、凶悪に尖った肉の槍が内臓を圧迫しへその裏を擦りたてる。
 大志が唾を塗し丹念に慣らしたため挿入の抵抗はさほどでもなかったが、ひとつ大志と決定的に違うのは悦巳を気遣う優しさがどこにも見当たらないこと。
 最悪壊してしまってもいいと居直る加減を知らない扱い方。
 抽送の律動に乗じてズッズッと体がせり上がっていく。
 顔にへばりつくヘアバンドが滴る涙と汗を吸い変色、突っ込んでは引き抜く反復運動に腹筋がひくひく痙攣、仰向いた顔に悲痛な表情がちらつく。
 「いっ、痛っあぐ、あっ」
 「ちゃんと押さえとけ!」
 抉りこむように腰を回す。男のペニスはカリが張り太さ長さも十分な代物で、乱暴な抽送で直腸を削るたび、新たな裂傷が生まれ激痛が走る。
 狭窄した直腸が男の動きに合わせ断続的にうねり収縮、複雑に練りこまれた襞に異物が馴染んでいく。
 拒む心と裏腹に追い上げられた体は悩ましく疼き、もっともっととねだるような貪欲さで体内の性器を締め付け搾り上げ、不規則な収縮が理性をドロドロに蕩かす快感を生む。
 「あっ、あくっ、あっあっあっ」
 大量の汗を吸ったぐしょ濡れのヘアバンドが顔に張り付く。
 風圧にばらけた前髪がヘアバンドを掠ってまた跳ね、だらしなく弛んだ口から涎を振り撒く。
 「せい、さ、たい、し、やっ、うあ、あふっ」
 ぱくつく唇から嗚咽と喘ぎの交じり合う嬌声がひっきりなしに迸り、上気した体が弓なりに撓って跳ね、一際深く激しく奥まで貫かれ緊張した背筋がびくびく仰け反る。
 「こっちもらおっと」
 「!?んぶっ、」
 頭髪を鷲づかみにされ起こされた顔に近づく発酵した匂い。
 酸っぱいような饐えたような独特の匂いが鼻腔をつき、反射的に顔を背けるも許されず、指で引っ張って目一杯こじ開けられた口に生臭い肉の塊を突っ込まれる。
 「んー!んー!」
 「しゃぶれ。歯あ立てたら殺すぞ」
 首を振って抗う、払う。
 反抗的態度が気に食わず前髪を掴み揺さぶりを開始、ペニスの先端が喉を突きたまらずえずく、下から上から同時に突き上げられ体が律動的に弾む、吐き出そうと頑張れば鼻をつままれ酸欠の苦しみを味わう。
 仕方なく、おずおずと舌を這わす。
 技巧なんてあったもんじゃないが、こみ上げる嫌悪を抑圧し舌を使う必死さこそ嗜虐の極みとも言える倒錯的な痴態を引き立てオスの欲望を煽る。
 両手を縛られた上目隠しされた青年が下から激しく貫かれながらつたなくもたつく舌づかいでフェラチオを行う光景に生唾を飲み悦巳を挟んで嬲る男の肩を叩いて交代、残る舎弟が陵辱の仲間に加わる。
 自分の番が回って来るまで待てずズボンと下着をおろししごき始めるもの、悦巳の乳首を引っ張り遊ぶもの、頭髪に指を絡めてからかうもの、耳朶をしゃぶりだすもの……
 「あっ、痛ッふ!?」
 耳朶を噛まれて甘い悲鳴を上げたそばから乳首をきゅっと抓られ収縮、耳の穴を舌でほじられぞくぞくする、悪寒と紙一重の快感、苦痛と紙一重の快感が脊髄を駆け抜けていく。
 固く太いペニスがごりごりと中を削り前立腺を直撃、口の中のペニスが脈打ち一回り太さを増す、待ちきれずしごきはじめた男が誘うように上気した頬にいきりたついちもつをなすりつけそれと競うように別の男が首筋にかぶりつく。
 「んんんんんん――――ッ!!!」
 首筋を噛まれる痛みにくぐもった悲鳴を上げ仰け反れば、きゅうっと窄まった体内に熱い粘液が広がる。
 挿入した男が爆ぜると同時に頬と口腔でも白濁がぶちまかれ悦巳を汚す。
 「次俺ね。うわ、中ぐちゃぐちゃのドロドロ!きったねえ」
 「お掃除フェラだ、気合いれていけよ」
 休ませても貰えない。
 入れ代わりに違う男が突き入れ突き上げ始め、白濁の糸引き抜かれたペニスに代わりそれまで悦巳の体内にあったペニスが口の中へ。
 男たちは早々と射精したが、後ろへの刺激だけでまだ達する事ができない悦巳は渦を巻いて体内を煮溶かす淫蕩な熱を持て余したまま、中途半端に勃ち上がり先走りを滲ませはじめたペニスをしごきたくてもしごけないもどかしさにのたうち回る。
 前をおもいっきり掻き毟りたいそれさえできればほかになにもいらない、誰かお願いだからガムテープをとってしごかせてくれイきたくてイきたくてどうかしちまいそう。
 誠一の顔、声、手、最悪な状況を凌ぐ為にそれらを思い出す。
 いま自分を責める手が誠一のそれならいい、あの人ならガマンができる……
 「こいつ自分で腰振ってら」
 「エロい顔。気分だしてきたじゃん」
 「じゃあ俺もサービスしちゃおっかね」
 「尻の穴きつくねえか?」
 「すっげえあったかくて気持ちい、女とは違った締め付けで癖になりそ。口ん中は?」
 「最ッ高」
 体積と硬度を増したペニスが感じやすい肉襞を巻き込み直腸を滑走、挿入の角度がよりいっそう深まって奥まで抉られ喉を突き破りそうな恐怖に慄く。
 「あっぐ、あうっ、あ、んぐ」
 「さぼるなよ。ちゃんとしゃぶれ」
 顎を掴み乱暴に揺すられる。
 イマラチオの真似事に喉が詰まり吐き気が襲うもどうにか耐え、ぐちゃぐちゃと唾液を捏ねて舌を絡ませる。
 体前に回った手が胸板をまさぐり飽かず乳首を虐め、人さし指と親指で挟んできゅっきゅっと絞る。
 突起をねぶる指によって意地悪く気をそらされ舌の動きが鈍れば、サボった事に腹を立てた男が頬を叩いて催促し、待ちきれず自分でペニスを捧げ持ち悦巳の唇をぬちぬち捏ね回す。
 「んく、ああっあや、あっひうん、や!」
 へその裏がむずがゆくて矢も盾もたまらず、肉襞の奥に隠された一点を激しく突かれるたび今まで体験したこともない快感が湧きあがり、男と繋がった下半身が勝手に跳ね回る。振りたくる尻に大臀筋が浮かび、肉と肉がぶつかりあう乾いた音に合わせて汗が飛び散る。
 「目隠し、とって、ひ!」
 舌を噛みつつ願うも無視される。
 三人目、四人目。
 裏返され表返され上から下から斜めから、若く絶倫な男たちがビデオで見た体位を面白半分に実践する。
 誠一に調教され大志に押し開かれた体が今またケダモノじみた男たちによって食い散らかされる。
 五人目の男が胡坐をかいて抱え上げ垂直に突き入れる。
 「!あぅぐぅっ、あっあ」
 肛門を圧してめりこんだペニスが腸を串刺しにし上下運動を開始、腫れ上がった前立腺を連続で叩く。 
 「すっげえ締まる……イイ感じ」
 「もうすぐ後ろだけでイケそうじゃん。がんばれー」
 「あふ、ああっあっああっふあっ」
 下腹を裏漉しされ、いまや完全に勃ち上がったペニスから濃い粘液が滲みだす。
 口の中は生臭い肉で埋め尽くされ下もまた貫かれ、ねっとりと揉みしだかれ割り開かれた尻肉の窄まり、生きた杭との結合部と付近の微細な皺まで暴かれて。
 両側から挟みこむようにしてつきつけられた二竿のペニスが頬をやすりがける。
 「あっ、ああっ」誠一さん「ぶ、あぐ、あっあああっあ」大志「―んっ、ぐぅ」体内で暴れ回るペニスが加速、頬を擦っていたペニスが生き物の如く脈打つ、口の中のペニスが熱を持つ「ああああああっ………」
 大量の白濁が濃霧の如く降り注ぐ。
 髪に顔に肛門に口の中に男たちがそれぞれ狙い定めての射精。
 独特の臭気がむせ返るように充満する。
 大量の白濁を浴びて弛緩した体からずるりと糸引きペニスが抜け、その衝撃でようやく吐精を伴う絶頂を迎える事ができた。
 輪姦は何時間続いたのだろう。
 都合何人に犯されたのだろう。
 解放された時、悦巳はボロ人形と化していた。
 「意外とよかったぜ」
 「また使わせてくれよ」
 勝手にすっきりした男たちが挨拶代わりに頬を叩いて立ち去り、ドアを開閉する音を最後に漂白したような静寂が満ちる。
 下っ端たちは楽しむだけ楽しんで後始末もせず去っていった。
 剥きだしの下半身が寒い。
 手を縛られていては下着を穿くことすらできない。




 寒い。





 「ばち……あたったのかな………」
 

 明けない夜に溺れ虚ろにひとりごちる。
 遥か遠くでドアが開き、また閉まり、何者かがこちらにやってくる。
 性急な足音に続いてリビングのドアが開け放たれ、惨状を目の当たりにした何者かが愕然と立ち竦む。
 「悦巳……」
 大志だった。
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