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Advent calendar
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今年もクリスマスが近付き、アンデッドエンドの住人は浮足立っている。
それはまるでオーブントースターの中のケーキがだんだんと膨らんでくみたいに、祝祭の前兆を孕んだ空気は日々熱を帯び、弾ける瞬間を待ち構えている。
世界が季節を忘れて久しいが、お祭り騒ぎの口実にはとりあえずのっかってみるのが人情なのかもしれない。
気持ちはよくわかる、俺も楽しいことは大好きだ。
母さんはクリスマスは人に優しくなれる季節なのよと言っていた。すれちがうひとみんなが誰かに少しだけ優しくなれる、そんな季節。俺はそう教えてくれた母さんが大好きだ。
「完成だ」
分厚いミトンを嵌めた両手でオーブンからプレートを出す。
型に投入した生地は三割成功七割そこそこ、へこんだり形が崩れてるものも多い。まあいい、肝心なのは味だ。味さえよければ他は目を瞑れる。
粗熱をとったカップケーキに青いアイシングを塗り付け、絞り袋で生クリームをトッピングし、仕上げにカラフルなスプリンクルを散らし見栄えをよくする。
背後で物音が立った。開いたドアからぐうたら入ってきたのは生あくびのスワロー……今起きたみたいだ。全くいいご身分だ、俺が働いてる間にソファーで高鼾をかいて……
スワローがしかめ面で鼻をヒク付かせる。
「甘ったりぃ匂い。何作ってんの」
「カップケーキだよ」
「青一色の?食欲失せる」
「可愛くていいじゃないか、子どもは喜ぶ」
「どうだかな。色彩センスのなさに引くんじゃね」
「俺のほうが子どもの気持ちがわかってる、だてに孤児院に半年居候してないよ。でっかい子どもみたいな弟もいるしね」
「祝い事?だれかの誕生日だっけ」
スワローがとぼけたことをのたまい散らかったキッチンを徘徊する。コイツ完全に忘れてるな……というか聞いてすらなかったな?
無関心な事柄にはまるで記憶力が働かない弟にあきれ返り、親指に付いたクリームをなめなめクリスマスの予定を思い出させてやる。
「こないだ言ったろ、教会のチャリティバザーにケーキを持ってくって」
「ボランティアかよ暇人め、また神父サマに媚売りに行くの?」
「先生やシスターたちには色々よくしてもらってる、少しでも役に立ちたいからね」
「あのくそうるせえ牝鶏チキンにして持ってったほうが喜ばれるぜ」
「キャサリンは食べ物じゃない」
今年のクリスマスは俺も埋まってる、先生にバザーを手伝ってくれないか頼まれたのだ。もちろんオーケーした。どうせ暇だし、もとい人の役に立てるのは素晴らしい。
「去年は先生が街角に立って募金を呼びかけたけど、なんでか牛を連れ帰ってシスターたちに怒られたんだよ。だから今年から路線変更」
「牛?なんで?トナカイならまだわかるけど」
「知らない、迷子になってたんじゃないか」
「ミルクタンクヘブン直送かよ」
「乳牛だから毎朝新鮮なミルクを提供してもらえて助かるって言ってたよ、料理にも使えるし。子どもたちが当番制で乳搾りしてる、名前はカウベル」
「死ぬほどどうでもいい情報どうも」
スワローは全然興味を示さない。コイツはとんでもないへそ曲がりだ、俺が教会や先生の話を持ち出すと途端に機嫌を悪くする。俺はカップケーキを袋に詰めながら提案する。
「お前も売り子しないか」
「なんで?」
「顔だけはいいし」
「客寄せパンダになれってのか」
「ジャイアンの方がかわいいよ」
スワローが鼻白む。弟に背中を向け、カップケーキを入れた小袋の口を紐でくるくる縛っていく。
「あのヤング・スワロー・バードが売り子したらきっと評判になる、お客がいっぱい来て盛り上がったら有難い。俺はほら、知名度低いからさ……バザーの売り上げは教会の修繕にあてる他、恵まれない人たちに還元するんだ。年に一度のクリスマス、この時期くらい人助けしてもバチあたらないぞ。日頃の行いの償いをする絶好のチャンス、逃したらもったいない」
「日頃の行いの償いってもって回った言い方すんな、俺はいもしねえ神様に恥じるような心当たりねーよ」
「どの口で……」
盛大にため息を吐いて振り返る。カップケーキが一個消えていた。素知らぬ顔のスワローに思わず目をやる。
「盗み食いしたな」
「は?弟を泥棒扱いか」
「ここにあったのは?」
「窓から入った鳩がかっさらってった。テメェが餌付けしてっから意地汚くなったんだよ、反省しろ」
「べーしろ、べー」
あくまでしらをきる弟に業を煮やして舌を出す。スワローが怪訝な顔で見せた舌は真っ青に染まっていた。
「やっぱりお前が犯人じゃないか!」
「ひっかけはずりーぞ!」
人さし指を突き付けて糾弾すれば何故か逆ギレされた。理不尽だ。すっかり慣れっこだけど……挙句堂々と腕を組んで開き治る始末。
「けちけちすんな、一個くらい減るもんじゃなし大目に見やがれ」
「恥を知れよ卑しい奴め」
「たいしてうまくもなかったし」
「今すぐ前言撤回しろ、俺が愛情こめたカップケーキに謝れ」
「俺が作る方が断然うまいね」
「そりゃそうだろうなお前はなにやらせたって完璧にこなす天才だから」
こっちも腹が立ってきた、スワローにくれてやる為に焼いたんじゃないのに……そもそも甘いもの好きじゃないのに何で食べるんだよ、いやがらせか?コイツに売り子を頼もうとした自分に愛想が尽き、わざと生き生き声を張り上げる。
「いいよもうまた焼けばすむ話だ。大家さんや劉、サシャやスイートにもお裾分けしよっと。特にスイートは甘いケーキが大好きだからわーサンタさんありがとーって大喜びするぞ、腕がなるなあ!」
語尾を調子っぱずれに上げて当て擦れば、案の定あまのじゃくのスワローが寄って来て、思いがけない交換条件を持ち出す。
「売り子引き受けたら何くれんの」
「ボランティア精神の概念ないのか」
「世の中ギブアンドテイクで回ってんだ、求めよさらば与えんってな。賞金稼ぎとして遥かに格上の俺様に物頼むなら相応の態度を示せよ、リトル・ピジョン・バード」
「ぐ」
イヤミったらしく稼ぎ名を呼ばれて張り倒したくなるが、ぐっと拳を握り込んで我慢する。前もこの展開あったっけ?
意地悪くニヤ付くスワローと相対して悶々と思い悩む。
正直すごいムカツクけど、バンチにひっぱりだこでアンデッドエンド中に顔と名前が売れてるヤング・スワロー・バードの集客力は侮れない。
チャリティーバザーに人が殺到したら先生やシスター、子どもたちも喜ぶし、教会の財政だって潤うのだ。そしたらみんな幸せで俺も嬉しい、最高の大団円じゃないか。俺さえケチなプライドをしまって頭を下げれば事は上手く運ぶ、イベントは大成功だ。
「さあどうするリトル・ピジョン・バード、てめぇのけちでちっぽけな見栄をとるか実利をとるか決めろ。自慢じゃねえが俺は今一番ノリにノッてる賞金稼ぎ、立ってるだけで女の入れ食いだ!アップタウンのマダム連中に大枚はたいてほしいんだろ、冬に備えてボロ屋根の隙間ふさがねーとガキどもが凍えちまうぜ」
スワローに追いうちをかけられ脂汗をたれながし苦渋の決断を下す。
「……そうだな。売り子引き受けてくれたら……その……」
「その?」
恥ずかしくて続かない。顔を火照らせ、手招きしたスワローの耳元でごにょごにょ囁く。次の瞬間、驚愕に目を見張ったスワローの顔がしてやったりと笑み崩れた。計画通り。
「マジか?絶対だな?忘れんなよ、取り消しはきかねーぞ」
「わかったよ」
ああ、俺は馬鹿だ。血を分けた弟の脅迫に屈して、最低最悪の約束をしてしまった。
頭を抱えて己の浅はかさを呪っていると、反省の色のないスワローが勝手に小袋を開け、二個目のカップケーキを頬張っていた。
「だからなんで食うのさ、甘いもの苦手だろ!?」
振り返りざま声を尖らせて罵れば、真っ青な舌を突き出したスワローが宣言する。
「いやがらせに決まってんじゃん、ぶぁーか」
「クリスマスの朝に目が覚めたら靴下に優しい弟入ってないかな」
「レタスに赤ん坊かくれんぼしてるのとどっこいな確率じゃね?キャベツだっけ」
「俺はコウノトリ派だったから」
「コウノトリが母さんに仕込んだのか、笑える。家系図が複雑になるな」
スワローが馬鹿食いしてるのに俺だけ我慢するのが馬鹿らしくなってカップケーキを貪る。見た目はいまいちでも味は悪くない……おいしいと自信をもって断言できないのがちょっと辛いけど。あっというまにたいらげたスワローが、どうでもよさそうに付け足す。
「売り子ならサシャとスイート、序でに劉にも声かけてみろよ」
「え?迷惑じゃないかな、劉はともかく風俗店は稼ぎ時だろ」
「スケベ男はミニスカサンタ大好きだろ」
「風邪ひいちゃうだろ」
ずれたツッコミを鼻で笑い、俺の首に両手を回してぶらさがったスワローが「んべ」と舌を出す。わけがわからないままおずおずと舌を見せれば、先端をぎゅむと摘ままれた。
「おそろいになったな」
「ひはひふはほー」
「舌の色変わるとキスの味も変わんのかな?ためしてみるか」
綺麗に整った顔が微笑む。男も女も虜にする上目遣い。悪ふざけにのってやる気分じゃないと拒むのも許されず、甘い唇が唇に被さり、青ざめた舌が絡んできた。
「ん」
バニラシュガーの味がするキス。青い舌と舌が互いをさぐりあい、口の中をくちゅくちゅ探検する。粘膜が蕩けるのに比例して足腰が萎え、息が上擦っていく。
一本に繋がった唾液の糸を引いて唇が離れた時、感じたのは安堵よりも物足りなさだった。
「ベロ見せてみ」
言われるがまま舌をだす。スワローが人さし指と親指でぐにと引っ張り、根元のほうを押さえて呟く。
「兄貴お手製のケーキとおなじでイロモノも悪かねェな、刺激的な味だよ」
そして俺は、今年もスワローとクリスマスを過ごすはめになったのである。
それはまるでオーブントースターの中のケーキがだんだんと膨らんでくみたいに、祝祭の前兆を孕んだ空気は日々熱を帯び、弾ける瞬間を待ち構えている。
世界が季節を忘れて久しいが、お祭り騒ぎの口実にはとりあえずのっかってみるのが人情なのかもしれない。
気持ちはよくわかる、俺も楽しいことは大好きだ。
母さんはクリスマスは人に優しくなれる季節なのよと言っていた。すれちがうひとみんなが誰かに少しだけ優しくなれる、そんな季節。俺はそう教えてくれた母さんが大好きだ。
「完成だ」
分厚いミトンを嵌めた両手でオーブンからプレートを出す。
型に投入した生地は三割成功七割そこそこ、へこんだり形が崩れてるものも多い。まあいい、肝心なのは味だ。味さえよければ他は目を瞑れる。
粗熱をとったカップケーキに青いアイシングを塗り付け、絞り袋で生クリームをトッピングし、仕上げにカラフルなスプリンクルを散らし見栄えをよくする。
背後で物音が立った。開いたドアからぐうたら入ってきたのは生あくびのスワロー……今起きたみたいだ。全くいいご身分だ、俺が働いてる間にソファーで高鼾をかいて……
スワローがしかめ面で鼻をヒク付かせる。
「甘ったりぃ匂い。何作ってんの」
「カップケーキだよ」
「青一色の?食欲失せる」
「可愛くていいじゃないか、子どもは喜ぶ」
「どうだかな。色彩センスのなさに引くんじゃね」
「俺のほうが子どもの気持ちがわかってる、だてに孤児院に半年居候してないよ。でっかい子どもみたいな弟もいるしね」
「祝い事?だれかの誕生日だっけ」
スワローがとぼけたことをのたまい散らかったキッチンを徘徊する。コイツ完全に忘れてるな……というか聞いてすらなかったな?
無関心な事柄にはまるで記憶力が働かない弟にあきれ返り、親指に付いたクリームをなめなめクリスマスの予定を思い出させてやる。
「こないだ言ったろ、教会のチャリティバザーにケーキを持ってくって」
「ボランティアかよ暇人め、また神父サマに媚売りに行くの?」
「先生やシスターたちには色々よくしてもらってる、少しでも役に立ちたいからね」
「あのくそうるせえ牝鶏チキンにして持ってったほうが喜ばれるぜ」
「キャサリンは食べ物じゃない」
今年のクリスマスは俺も埋まってる、先生にバザーを手伝ってくれないか頼まれたのだ。もちろんオーケーした。どうせ暇だし、もとい人の役に立てるのは素晴らしい。
「去年は先生が街角に立って募金を呼びかけたけど、なんでか牛を連れ帰ってシスターたちに怒られたんだよ。だから今年から路線変更」
「牛?なんで?トナカイならまだわかるけど」
「知らない、迷子になってたんじゃないか」
「ミルクタンクヘブン直送かよ」
「乳牛だから毎朝新鮮なミルクを提供してもらえて助かるって言ってたよ、料理にも使えるし。子どもたちが当番制で乳搾りしてる、名前はカウベル」
「死ぬほどどうでもいい情報どうも」
スワローは全然興味を示さない。コイツはとんでもないへそ曲がりだ、俺が教会や先生の話を持ち出すと途端に機嫌を悪くする。俺はカップケーキを袋に詰めながら提案する。
「お前も売り子しないか」
「なんで?」
「顔だけはいいし」
「客寄せパンダになれってのか」
「ジャイアンの方がかわいいよ」
スワローが鼻白む。弟に背中を向け、カップケーキを入れた小袋の口を紐でくるくる縛っていく。
「あのヤング・スワロー・バードが売り子したらきっと評判になる、お客がいっぱい来て盛り上がったら有難い。俺はほら、知名度低いからさ……バザーの売り上げは教会の修繕にあてる他、恵まれない人たちに還元するんだ。年に一度のクリスマス、この時期くらい人助けしてもバチあたらないぞ。日頃の行いの償いをする絶好のチャンス、逃したらもったいない」
「日頃の行いの償いってもって回った言い方すんな、俺はいもしねえ神様に恥じるような心当たりねーよ」
「どの口で……」
盛大にため息を吐いて振り返る。カップケーキが一個消えていた。素知らぬ顔のスワローに思わず目をやる。
「盗み食いしたな」
「は?弟を泥棒扱いか」
「ここにあったのは?」
「窓から入った鳩がかっさらってった。テメェが餌付けしてっから意地汚くなったんだよ、反省しろ」
「べーしろ、べー」
あくまでしらをきる弟に業を煮やして舌を出す。スワローが怪訝な顔で見せた舌は真っ青に染まっていた。
「やっぱりお前が犯人じゃないか!」
「ひっかけはずりーぞ!」
人さし指を突き付けて糾弾すれば何故か逆ギレされた。理不尽だ。すっかり慣れっこだけど……挙句堂々と腕を組んで開き治る始末。
「けちけちすんな、一個くらい減るもんじゃなし大目に見やがれ」
「恥を知れよ卑しい奴め」
「たいしてうまくもなかったし」
「今すぐ前言撤回しろ、俺が愛情こめたカップケーキに謝れ」
「俺が作る方が断然うまいね」
「そりゃそうだろうなお前はなにやらせたって完璧にこなす天才だから」
こっちも腹が立ってきた、スワローにくれてやる為に焼いたんじゃないのに……そもそも甘いもの好きじゃないのに何で食べるんだよ、いやがらせか?コイツに売り子を頼もうとした自分に愛想が尽き、わざと生き生き声を張り上げる。
「いいよもうまた焼けばすむ話だ。大家さんや劉、サシャやスイートにもお裾分けしよっと。特にスイートは甘いケーキが大好きだからわーサンタさんありがとーって大喜びするぞ、腕がなるなあ!」
語尾を調子っぱずれに上げて当て擦れば、案の定あまのじゃくのスワローが寄って来て、思いがけない交換条件を持ち出す。
「売り子引き受けたら何くれんの」
「ボランティア精神の概念ないのか」
「世の中ギブアンドテイクで回ってんだ、求めよさらば与えんってな。賞金稼ぎとして遥かに格上の俺様に物頼むなら相応の態度を示せよ、リトル・ピジョン・バード」
「ぐ」
イヤミったらしく稼ぎ名を呼ばれて張り倒したくなるが、ぐっと拳を握り込んで我慢する。前もこの展開あったっけ?
意地悪くニヤ付くスワローと相対して悶々と思い悩む。
正直すごいムカツクけど、バンチにひっぱりだこでアンデッドエンド中に顔と名前が売れてるヤング・スワロー・バードの集客力は侮れない。
チャリティーバザーに人が殺到したら先生やシスター、子どもたちも喜ぶし、教会の財政だって潤うのだ。そしたらみんな幸せで俺も嬉しい、最高の大団円じゃないか。俺さえケチなプライドをしまって頭を下げれば事は上手く運ぶ、イベントは大成功だ。
「さあどうするリトル・ピジョン・バード、てめぇのけちでちっぽけな見栄をとるか実利をとるか決めろ。自慢じゃねえが俺は今一番ノリにノッてる賞金稼ぎ、立ってるだけで女の入れ食いだ!アップタウンのマダム連中に大枚はたいてほしいんだろ、冬に備えてボロ屋根の隙間ふさがねーとガキどもが凍えちまうぜ」
スワローに追いうちをかけられ脂汗をたれながし苦渋の決断を下す。
「……そうだな。売り子引き受けてくれたら……その……」
「その?」
恥ずかしくて続かない。顔を火照らせ、手招きしたスワローの耳元でごにょごにょ囁く。次の瞬間、驚愕に目を見張ったスワローの顔がしてやったりと笑み崩れた。計画通り。
「マジか?絶対だな?忘れんなよ、取り消しはきかねーぞ」
「わかったよ」
ああ、俺は馬鹿だ。血を分けた弟の脅迫に屈して、最低最悪の約束をしてしまった。
頭を抱えて己の浅はかさを呪っていると、反省の色のないスワローが勝手に小袋を開け、二個目のカップケーキを頬張っていた。
「だからなんで食うのさ、甘いもの苦手だろ!?」
振り返りざま声を尖らせて罵れば、真っ青な舌を突き出したスワローが宣言する。
「いやがらせに決まってんじゃん、ぶぁーか」
「クリスマスの朝に目が覚めたら靴下に優しい弟入ってないかな」
「レタスに赤ん坊かくれんぼしてるのとどっこいな確率じゃね?キャベツだっけ」
「俺はコウノトリ派だったから」
「コウノトリが母さんに仕込んだのか、笑える。家系図が複雑になるな」
スワローが馬鹿食いしてるのに俺だけ我慢するのが馬鹿らしくなってカップケーキを貪る。見た目はいまいちでも味は悪くない……おいしいと自信をもって断言できないのがちょっと辛いけど。あっというまにたいらげたスワローが、どうでもよさそうに付け足す。
「売り子ならサシャとスイート、序でに劉にも声かけてみろよ」
「え?迷惑じゃないかな、劉はともかく風俗店は稼ぎ時だろ」
「スケベ男はミニスカサンタ大好きだろ」
「風邪ひいちゃうだろ」
ずれたツッコミを鼻で笑い、俺の首に両手を回してぶらさがったスワローが「んべ」と舌を出す。わけがわからないままおずおずと舌を見せれば、先端をぎゅむと摘ままれた。
「おそろいになったな」
「ひはひふはほー」
「舌の色変わるとキスの味も変わんのかな?ためしてみるか」
綺麗に整った顔が微笑む。男も女も虜にする上目遣い。悪ふざけにのってやる気分じゃないと拒むのも許されず、甘い唇が唇に被さり、青ざめた舌が絡んできた。
「ん」
バニラシュガーの味がするキス。青い舌と舌が互いをさぐりあい、口の中をくちゅくちゅ探検する。粘膜が蕩けるのに比例して足腰が萎え、息が上擦っていく。
一本に繋がった唾液の糸を引いて唇が離れた時、感じたのは安堵よりも物足りなさだった。
「ベロ見せてみ」
言われるがまま舌をだす。スワローが人さし指と親指でぐにと引っ張り、根元のほうを押さえて呟く。
「兄貴お手製のケーキとおなじでイロモノも悪かねェな、刺激的な味だよ」
そして俺は、今年もスワローとクリスマスを過ごすはめになったのである。
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