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Punishment game 前
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最初は悪ふざけからはじまった。
「あー暇だー。なんかおもしれーことねー?」
「そこにゴム張ってベリーダンスもしたら?」
雑誌を顔に伏せリビングのソファーに寝そべるスワローをよそに、ピジョンは勤勉を絵に描いた態度でスナイパーライフルの手入れをしていた。
油の染みた布で銃身を磨いて艶を出し、顔を映して満足げに頷くピジョン。
「おい駄バト、ストリップしろ」
雑誌をずらして目だけ出したスワローが横柄に顎をしゃくり、せっかくのいい気分に水をさす。
「お前の暇潰しに一肌脱ぐほど暇じゃない。そもそも俺が脱いだって面白くないだろ」
「そこそこ笑えるし少しは暇が潰れる」
ピジョンは筋肉が付きにくい体質だ。
スナイパーライフルを支える為に腕力を鍛えているが、それもあまり反映されない。マッチョな賞金稼ぎの中に投げ込めば軟弱な坊やと小突き回されるのがオチだ。
雑誌を放り投げてピジョンに近寄ったスワローが意地悪い流し目をよこす。
「撫で肩だとライフル支えにくくね?」
「ほっとけ。暇なら踊りに行けばいいだろ、男女問わず遊び友達に事欠かないんだし」
「毎晩だと飽きちまった」
「贅沢な悩みだな」
「こちとら踵が擦り切れるまで踊り明かしたんだよ」
「踵に着火して空の果てまで飛んでいけばいいのに」
今晩、スワローは珍しく家にいた。
何をするでもなくゴロゴロと自堕落に過ごす弟に、ピジョンはすっかり苦りきる。
居なければ居ないで何をしでかすか不安だが、居たら居たで大いに邪魔だ。何かというとピジョンにちょっかいかけてくるくせに家事は一切しないのだ。
「ていうか自分の部屋帰れ」
「兄貴こそ巣ごもれ」
「ここは俺の家だぞ、俺がどこにいるかは俺が決める」
「家賃折半してんだからその言葉そっくり返すぜ」
「お前が?家賃を?よく言うよ、さんざん催促しなきゃ出さないのに。先月なんて足りない分俺が賄ったんだぞ、いい加減放蕩癖改めないと身を滅ぼす」
「スロットでラッキーセブン狙いとルーレット一点賭けは男のロマン」
「せっかく報酬入っても遊びで使いきるから意味がない、お前の辞書には計画性って単語ないのか?」
「オンナの生理周期を把握する程度の計画性はあるぜ」
「最低だな」
都会に出てから酷くなった弟の遊び癖と金遣いの荒さをなじれど、安普請の薄っぺらい壁を通し毎度同じような内容の痴話喧嘩を聞いているだけに忸怩たるものがある。
ピジョンがリビングにいると何故かスワローもやってくる。
トレーラーハウスを巣立っても甘えたがりは卒業できないのか、とくに用もないのにピジョンの近くに寝転がっては退屈そうにグラビアをめくったりナイフで曲芸したり堂々とおさわりしてくる。
なまじプライバシーのない環境で育ったせいで近くにいないと調子が狂うのか……考えすぎか。どうせリビングのテレビがめあてだ。
「大事なことじゃん」
反省の素振りなく大口開けて生あくびをかますスワローに、ピジョンはほとほとあきれ返る。
「……賞金稼ぎうちでも評判悪いぞお前。こないだもまた暴れたろ」
「どれだよ」
「どれかわからないほど前科があるのかよ」
「多すぎていちいち覚えてねェし覚えてる価値もねェ」
「賞金稼ぎのたまり場になってるバー。ラビットホール。これで思い出したか」
「あーアレな。アレは仕方ねーよ、ランディがビリヤードの賭け金ごまかしやがったからプッツンしちまって」
「キューで喉突くのはやりすぎ、最悪死ぬ」
「急所はずらしたって、よっぽど運が悪ィ時除いて即死はねえ」
「万一って事もある」
「上手く避けねえアイツが悪ィ」
「ビリヤード台に立って椅子ぶん投げたのは?店に苦情言われた、修理費も全部こっち持ち」
「ギャラリーは盛り上がってたぜ」
この手の苦情と慰謝料・修理費の請求は日常茶飯事だ。
スワローは基本自由気まま、勝手気ままに生きている。
好きな時に飲み食い暴れ、好きな時に女を抱くのが彼のスタイルだ。
スワロー曰く心配性、世間一般の価値観では常識人な兄がいくら苦言を呈した所で全く聞き入れようとはしないし、小一時間もお説教が続けば逆ギレする。
「ランディのクソ野郎、俺が目ェかけてた女のケツさわりやがったんだ」
「それが理由か」
「訂正、さわったんじゃねえ。揉みしだいた」
「彼女を助ける為に暴れたのか」
「三回ならただのセフレ」
「ヤることヤってんじゃないか」
ため息に暮れてスナイパーライフルを横におく。
「お前は血の気が多すぎる。挨拶がわりに中指を突き立てて、無差別に敵を作りまくるんだ」
「好きな時に中指突き立てられない人生に何の価値もねえ」
平行線を辿る不毛な話し合い。その時チャイムが鳴り響く。
「やっと来たか」
ピジョンの小言を適当に聞き流したスワローがさっさと玄関へ行く。
ドアが開き、誰かと話しているのが聞こえる。
やがて戻ってきたスワローの手にはピザの平箱が抱えられていた。
食卓に辿り着くまで待ちきれないのか、チーズがとろけた糸引く一切れにかぶり付く。
「ンめー」
「ピザとったのか。俺に無断で」
「ごちゃごちゃうるせえよ、食うのかよ食わねえのかよ」
「食わないなんて言ってないだろ」
「じゃー早くしろ、冷めたらまずい」
タイミングよく口論が中断、ピジョンは流しで手を洗ってからダイニングへ戻り椅子を引きスワローも同時に対面席に着く。
ピジョンは瞠目し、軽く手を組んで祈りを捧げる。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心とからだを支える糧としてください。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン」
「ジャンクフードに捧げる祈りか。逆に罰あたりだな」
口を開けて咀嚼し、飯がまずくなったと言わんばかりに興ざめな反応のスワロー。
ピザを一切れとって齧りピジョンは不満げに言い返す。
「サラミは豚からできてるし命の恵みに感謝するのは間違ってないぞ」
「へーへー」
スワローがピジョンの方へピクルスを弾いてよこす。
「おい!!」
「好きだろ?」
「野菜は血を綺麗にするから食えよ」
「ピザの添えもんを野菜と見なしてねえよ」
先に食事を終えたピジョンは皿をシンクに浸けて戻り、意地汚く指をなめまわす弟にウンザリする。
「ナプキンで拭けよ、行儀悪いな」
「えらく多いな」
「サービスなんじゃないか」
「どうせならチーズ増量しやがれ」
ナプキンの束を手に持ったスワローがにやける。
「ひらめいた」
ボールペンでナプキンに走り書きし、表返してまたシャッフル。
「ゲームしようぜ」
「どんなの」
「コイツを引いて書いてあることをやる」
「パスで」
やっぱりろくでもない。
悪ふざけに巻き込まれる前にさっさと退散しようと踵を返したピジョンを、肘を掴んで力ずくで引き戻す。
「どーせ暇だろ?なら付き合え」
「暇じゃない、読みたい本があるんだ。犯人あてに突入する前で栞挟んだから続きが気になる」
「貿易商を殺ったのはメイドのアンジェリーナ。動機は捨てられたお袋の復讐と禁断の恋に陥った異母兄に後を継がす為」
「どうしてバラすんだよ!!!!!!!」
本気でキレたピジョンがスワローの腕を振りほどき、真相を確かめに自室に引っ込み、殆ど泣きそうになりながらまた駆け戻る。手には一冊のペーパーブックが握られている。
「本当じゃないかポテチの屑挟まってるし、人の本ポテチ食った手で読むなよ馬鹿!!」
「エロいのかと思ったら全然濡れ場ねェし挿絵もねェしでガッカリ」
「ポルノ小説と推理小説をごっちゃにするな!!あーもうほんと最悪、誰が犯人か手書きの人物相関図まで作って検証してたのに」
「暇人こじらせすぎ」
「シットスワロー」
「言葉遣いが汚ェ。母さんが哀しむぜ」
「ナチュラルボーンダストだなお前って」
推理小説のネタバレは言語道断の禁じ手だ。常日頃品行方正なピジョンに不慣れな悪態を吐かせるほどに。
どのみちスワローはピジョンが首を縦に振るまで解放してくれそうにない、とことん気が済むまで悪ふざけに付き合わせる魂胆だ。
ならば受けて立とうじゃないか。
「そうこなくっちゃ」
うってかわって上機嫌なスワローがシャッフルの手を止め、切り雑ぜたナプキンを扇状に広げる。
「待てよ、俺にもやらせろ。お前に任すとイカサマする」
「チッ、信用ねえな。ほらよ」
思いかげずあっさりとピジョンにナプキンの束を渡す。
しかめ面でナプキンを切り雑ぜ、テーブルに広げたそれをランダムに並びかえて漸く満足したピジョンは、尖った目でスワローを睨む。
「順番は」
「先に譲る」
「随分と気前がいいじゃないか」
「サービスだよ。くじ運に見放された兄貴に花持たせてやる」
何を企んでるのだろうと警戒するが、ただ突っ立っているだけじゃ埒が明かない。
ゲームを進行させたいなら行動あるのみ。
憮然としたままナプキンに手を伸ばし、五枚あるうちの右端の一枚を捲る。
瞬間、真顔になる。
「…………『乳首責めで勃たす』」
スワローも真顔になる。
ナプキンの裏面に書かれた命令を見下ろし、ピジョンの顔がさもいやそうに歪む。
「お前……頭と股間が沸いてるな」
「……引きが強ェのか弱ェのか」
ぼそりと呟いたのを聞き逃さない。
ピジョンが初っ端これを引き当てるのはさすがのスワローも予想外だったのか、しばらく固まっていた顔が和らぎ、馬鹿にしきった薄笑いと口調で挑発。
「で、どうすンの?」
「どうするも何も……ゲスな発想だな」
本当はスワローがするはずだった。
ピジョンの服を捲り上げて押し倒し、乳首を吸い立て勃起させるはずだった。
が、なんたる運命の気まぐれか実行者はピジョンだった。
「勃たす自信なけりゃ棄権したっていいんだぜ、オンナの乳もろくすっぽ吸った事ねーもんな。ぜってー無理だって、ヤる前からわかりきってる」
スワローは泰然自若とした態度を崩さない、ピジョンのテクを完全になめてかかっている。
いや、そもそもが堅物な兄に破廉恥きわまる命令を実行する度胸などないと踏んでいるのか。
どちらにしろピジョンをなめきっているのは間違いない。
椅子にどっかりかけて足を組み、サディスティックな嘲笑を浴びせかける。
「乳首だけで勃っちまうとかマジありえねー。全身性感帯の淫乱早漏アニキと一緒にしてほしかねェな」
腹の底で沸々と怒りが煮え滾る。
このクソ憎たらしい笑みをめちゃくちゃにしてやりたい、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。凶暴な衝動が頭に居座る理性を押し流す。
ピジョンの乳首はすっかりスワローに開発されてしまった乳首だけじゃない身体のどこもかしこもコイツに調教されてしまったなのにコイツは悪びれもせずしゃあしゃあと
「……なあスワロー、俺が13でお前が11の時の事覚えてる?」
ピジョンが抑揚を欠いた声で唐突に質問、だらけて頬杖を付いたスワローが「あ゛?」と返す。
「お前の『悪ふざけ』だよ」
「さあね。心当たりが多すぎて絞りきれねえ」
「母さんの馴染みに色目使ったバツとか言って、手を縛って動けなくしてから乳首にマスタード塗りこんだろ」
結論から言うと、全て誤解だった。
毎度のことながらスワローの嫉妬から来る勘違いだ。
ピジョンは断じて母の馴染みに色目など使ってない、トレーラーハウスの前でちょっとした立ち話をしてたらスワローが言いがかりを付けてきただけだ。
「すごいヒリヒリしたよ。結局二時間も放置されて、翌日は腫れた」
「蜂蜜で蟻たからすほうがよかった?」
「泣いて謝ってもシカトしたよな」
「タバスコじゃねーだけ感謝しろ」
「なんで手を縛ったか覚えてるか?母さんのパンティーだよ」
「テメェが穿いてたクソだせーボクサーパンツ脱がして使やァよかった」
ピジョンの声が抑圧された怒りと不穏な気配を孕む。
「お前が引っ掻いたせいでキズにしみて痛かった」
「だから……」
ウンザリと何か言いかけたスワローの前に回り、黒いタンクトップを無造作に捲り上げる。
「!?なッ、にす」
「ゲームだよスワロー。そう言ったろ?」
別に縛ってはない。この言葉に効力はない。ピジョンは落ち着き払って淡々と指摘していく。
「怖くなったのか?ならまた暴れてめちゃくちゃにしろよ、テーブルに立って椅子投げればいい。でもな、お前が言い出したんだぞ。この悪趣味な遊びはお前がはじめたことだ。逃げるってことは勝てる自信ないから、負けるのが怖いからだよな?」
「はァ?俺様がテメェごときに負けるって正気でほざいてンの」
スワローが険悪に凄む。
「びびって逃げたらそうとる」
せいぜいイヤミに鼻で笑ってやったあと、曲げた人さし指でナプキンをトントン叩く。
「むきになるなよ。ただの遊びだろ?」
「……その言葉よーーーーっく覚えとけよ、あとでひんひん言わせてやる」
どうかしている、相手は血が繋がった弟だ。だからなんだ?自分がされたことを仕返すだけだ。
ピジョンはそっとロザリオを握り、それを外してポケットに滑り込ませる。
今からすることは神様に見られたくない。
「いい子だスワロー。肩の力を抜け」
これはゲーム、ただのゲームだ。
椅子に掛けた弟の正面に跪き、黒いタンクトップをまくり上げ、美しく鍛え抜かれた腹筋をさらす。
引き締まった細腰に片手を添え、まずは右の乳首にキスをする。続いて左の乳首を軽く吸い立て、窄めた舌先で突付く。
「テメェごときにちゅぱちゅぱやられても赤ん坊とおんなじ、くすぐってえだけだ」
「やりかたはお前が教えてくれた、いやってほどね」
右の乳首を吸っている間は手で左を愛撫、軽く抓って刺激を与え指のあいだから揉み搾る。
フニフニした感触が可愛くて気持ちいい。
自分のは触ってもよくわからないがスワローの乳首はグミのように柔く、淡く綺麗なピンク色でまるで誘っているように見える。
「ッ…………、」
スワローがこそばゆそうにし、だんだんと吐息が上擦り始める。腕力なら弟の方が上だ、ピジョンを振りほどくのは造作もない。それをしないのは歪んだ意地のせいか、一瞬でも兄に怯んだ既成事実を作りたくないのか。変な所で強情なのは誰に似たのか。
「ざけんな……」
「無口になってきたな。余裕がないのか?」
受け身に回ったスワローが新鮮で、吐息を上擦らせ赤らむ顔に嗜虐と紙一重の愛おしさが溢れる。
こんな風にしおらしければ可愛げあるのにと心の片隅で嘆き、スナイパーライフルの扱いに長けた繊細な指遣いで乳首をまめに可愛がる。
「してもらうばかりでいじってやれなかったもんな」
「!ッあ、んぅッく」
チュッ、チュッとわざと音をたてる。
唇で柔く食んで舌を絡め、その間も指で擦り立て刺激を送り続ける。
スワローの肌はしょっぱい汗の味がした。ピジョンより少し健康的に日焼けしてなめらかな張りがある。
スワローの舌遣いはよく覚えている、目を閉じていても思い出せる。何年もかけ徹底的に教え込まれたテクニックを逐一反芻、僅かに膨らみを増した乳首を舌でねぶり、吐息を荒げて囁く。
「軽く噛んだあとすぐ離して慰める……好きだろ、お前」
「調子のりくさりやがって……ぶっ殺すぞ」
殺したそうな目で睨まれても不思議と怖くない。
土壇場で踏ん張って感じないように見せている強がりが、かえって可愛い。いじらしいとさえ思ってしまうんだから重症だ。
「ッ、ぅッうく」
「赤ん坊みたいだぞスワロー」
「るっせ……ぬりぃ舌遣いで勘違いしてドヤんな」
乳首責めだけで勃たせる、それがピジョンへの要求。
股間に浮気するのは反則だ。
ピジョンは生真面目にルールを守り、乳首へのひたむきな刺激だけで感じやすい弟を高めていく。
快感を堪えて唇を噛むスワローに欲情し、その身体に溺れ、罰当たりな行為にのめりこんでいく。
どうやればいいか全部スワローが教えてくれた、捏ね回す指遣いもねぶり絡める舌遣いも精通をむかえる前からたっぷり仕込んでくれた。
弟をかわいがるのは悪い事じゃない、気持ちよくさせてやるのは悪い事じゃないとゲームの建前に甘え背徳を犯す自分に言い訳をし、唾液に濡れ光りしこる乳首を指圧がてら、ジーンズに包まれた股間に目をやる。
「どっちも膨らんできた」
「いちいち報告すンじゃねーよ……」
無意識だろうか、張り詰めた股間をさわってほしそうに腰を揺する。ピジョンは生唾を飲み、再び弟の身体にしゃぶり付く。
「あッあッ」
スワローが切ない声を上げる。
椅子を蹴立て逃げ出すのは時間の問題に思われたが、断固としてピジョンに白旗上げる弱みを作りたくないのか、凄まじい忍耐力と自制心を発揮して執拗な乳首責めを忍ぶ。
「声、我慢しなくていいよ」
「だッ、れがッ、」
「知ってるんだぞ、お前の弱点は俺と同じだ。乳首、感じやすいくせに……親指と人さし指で挟んでコリコリされるの好きだろ」
しきりに嫌がるスワローをなだめるように耳元で繰り返す。
神様は見ていない。
ポケットの中で眠ってる。
なら遠慮はいらない。
博愛なんてクソくらえだ、生まれてこのかたさんざん俺をコケにしてきたやんちゃなツバメさんを見返してやれ。
保身と衝動、理性と欲望のはざまで押さえこまれた嗜虐心が疼き、ピジョンを攻めの一手に駆り立てる。
「ッは、ふ」
ピンクゴールドの前髪をしどけなく額に纏わり付かせ、発情した小鳩が啄むような初々しいフラチさで、ピンクの突起を吸い転がし育てていく。
指と唇と舌による絶え間ない責めが甘美な痺れと疼きを生み、イエローゴールドの前髪に隠れた目尻が火照る。
「ッ、誰がテメェのテクでィくかのぼせあがんな駄バト」
「痛くされる方が好きなのか。悪い子だな」
スワローが喧嘩腰で叫ぶが、余裕を削られて覇気がない。
硬度と感度を増した乳首をいじくり回し、勃起した先端を舌で包み、唾液にぬかるんだ口腔で愛撫する。
「ッあ、くッぅ、ィ、しツっけ」
自分がされてきたこと言われてきたこと、味あわされた屈辱や馴らされた快楽、それを今この瞬間余さず仕返す覚悟で注ぎこみ、さんざんにじらされて切なく尖りきった弟の乳首を甘噛み。
「~~~~~~~~~~~~ッ!!」
ほんの少し強く噛まれた痛みにスワローが震え、ピジョンを引きはがそうと、あるいは縋り付こうと前のめりにその肩を掴む。
「―――勃ってる」
汗でしっとり濡れたイエローゴールドの髪の奥、やや虚ろな赤錆の目が瞬く。
物問いたげな弟の視線を受けたピジョンは、ジーンズのデニム地を押し上げる膨らみにあえて手も触れず、固くしこった乳首をタンクトップで隠してやる。
「第一ラウンドは俺の勝ちだな」
黒いタンクトップにくっきり形を浮かせる乳首の位置にじわりと唾液が染み、一段と色が濃くなった。
「あー暇だー。なんかおもしれーことねー?」
「そこにゴム張ってベリーダンスもしたら?」
雑誌を顔に伏せリビングのソファーに寝そべるスワローをよそに、ピジョンは勤勉を絵に描いた態度でスナイパーライフルの手入れをしていた。
油の染みた布で銃身を磨いて艶を出し、顔を映して満足げに頷くピジョン。
「おい駄バト、ストリップしろ」
雑誌をずらして目だけ出したスワローが横柄に顎をしゃくり、せっかくのいい気分に水をさす。
「お前の暇潰しに一肌脱ぐほど暇じゃない。そもそも俺が脱いだって面白くないだろ」
「そこそこ笑えるし少しは暇が潰れる」
ピジョンは筋肉が付きにくい体質だ。
スナイパーライフルを支える為に腕力を鍛えているが、それもあまり反映されない。マッチョな賞金稼ぎの中に投げ込めば軟弱な坊やと小突き回されるのがオチだ。
雑誌を放り投げてピジョンに近寄ったスワローが意地悪い流し目をよこす。
「撫で肩だとライフル支えにくくね?」
「ほっとけ。暇なら踊りに行けばいいだろ、男女問わず遊び友達に事欠かないんだし」
「毎晩だと飽きちまった」
「贅沢な悩みだな」
「こちとら踵が擦り切れるまで踊り明かしたんだよ」
「踵に着火して空の果てまで飛んでいけばいいのに」
今晩、スワローは珍しく家にいた。
何をするでもなくゴロゴロと自堕落に過ごす弟に、ピジョンはすっかり苦りきる。
居なければ居ないで何をしでかすか不安だが、居たら居たで大いに邪魔だ。何かというとピジョンにちょっかいかけてくるくせに家事は一切しないのだ。
「ていうか自分の部屋帰れ」
「兄貴こそ巣ごもれ」
「ここは俺の家だぞ、俺がどこにいるかは俺が決める」
「家賃折半してんだからその言葉そっくり返すぜ」
「お前が?家賃を?よく言うよ、さんざん催促しなきゃ出さないのに。先月なんて足りない分俺が賄ったんだぞ、いい加減放蕩癖改めないと身を滅ぼす」
「スロットでラッキーセブン狙いとルーレット一点賭けは男のロマン」
「せっかく報酬入っても遊びで使いきるから意味がない、お前の辞書には計画性って単語ないのか?」
「オンナの生理周期を把握する程度の計画性はあるぜ」
「最低だな」
都会に出てから酷くなった弟の遊び癖と金遣いの荒さをなじれど、安普請の薄っぺらい壁を通し毎度同じような内容の痴話喧嘩を聞いているだけに忸怩たるものがある。
ピジョンがリビングにいると何故かスワローもやってくる。
トレーラーハウスを巣立っても甘えたがりは卒業できないのか、とくに用もないのにピジョンの近くに寝転がっては退屈そうにグラビアをめくったりナイフで曲芸したり堂々とおさわりしてくる。
なまじプライバシーのない環境で育ったせいで近くにいないと調子が狂うのか……考えすぎか。どうせリビングのテレビがめあてだ。
「大事なことじゃん」
反省の素振りなく大口開けて生あくびをかますスワローに、ピジョンはほとほとあきれ返る。
「……賞金稼ぎうちでも評判悪いぞお前。こないだもまた暴れたろ」
「どれだよ」
「どれかわからないほど前科があるのかよ」
「多すぎていちいち覚えてねェし覚えてる価値もねェ」
「賞金稼ぎのたまり場になってるバー。ラビットホール。これで思い出したか」
「あーアレな。アレは仕方ねーよ、ランディがビリヤードの賭け金ごまかしやがったからプッツンしちまって」
「キューで喉突くのはやりすぎ、最悪死ぬ」
「急所はずらしたって、よっぽど運が悪ィ時除いて即死はねえ」
「万一って事もある」
「上手く避けねえアイツが悪ィ」
「ビリヤード台に立って椅子ぶん投げたのは?店に苦情言われた、修理費も全部こっち持ち」
「ギャラリーは盛り上がってたぜ」
この手の苦情と慰謝料・修理費の請求は日常茶飯事だ。
スワローは基本自由気まま、勝手気ままに生きている。
好きな時に飲み食い暴れ、好きな時に女を抱くのが彼のスタイルだ。
スワロー曰く心配性、世間一般の価値観では常識人な兄がいくら苦言を呈した所で全く聞き入れようとはしないし、小一時間もお説教が続けば逆ギレする。
「ランディのクソ野郎、俺が目ェかけてた女のケツさわりやがったんだ」
「それが理由か」
「訂正、さわったんじゃねえ。揉みしだいた」
「彼女を助ける為に暴れたのか」
「三回ならただのセフレ」
「ヤることヤってんじゃないか」
ため息に暮れてスナイパーライフルを横におく。
「お前は血の気が多すぎる。挨拶がわりに中指を突き立てて、無差別に敵を作りまくるんだ」
「好きな時に中指突き立てられない人生に何の価値もねえ」
平行線を辿る不毛な話し合い。その時チャイムが鳴り響く。
「やっと来たか」
ピジョンの小言を適当に聞き流したスワローがさっさと玄関へ行く。
ドアが開き、誰かと話しているのが聞こえる。
やがて戻ってきたスワローの手にはピザの平箱が抱えられていた。
食卓に辿り着くまで待ちきれないのか、チーズがとろけた糸引く一切れにかぶり付く。
「ンめー」
「ピザとったのか。俺に無断で」
「ごちゃごちゃうるせえよ、食うのかよ食わねえのかよ」
「食わないなんて言ってないだろ」
「じゃー早くしろ、冷めたらまずい」
タイミングよく口論が中断、ピジョンは流しで手を洗ってからダイニングへ戻り椅子を引きスワローも同時に対面席に着く。
ピジョンは瞠目し、軽く手を組んで祈りを捧げる。
「父よ、あなたの慈しみに感謝してこの食事をいただきます。ここに用意されたものを祝福し、わたしたちの心とからだを支える糧としてください。わたしたちの主イエス・キリストによって。アーメン」
「ジャンクフードに捧げる祈りか。逆に罰あたりだな」
口を開けて咀嚼し、飯がまずくなったと言わんばかりに興ざめな反応のスワロー。
ピザを一切れとって齧りピジョンは不満げに言い返す。
「サラミは豚からできてるし命の恵みに感謝するのは間違ってないぞ」
「へーへー」
スワローがピジョンの方へピクルスを弾いてよこす。
「おい!!」
「好きだろ?」
「野菜は血を綺麗にするから食えよ」
「ピザの添えもんを野菜と見なしてねえよ」
先に食事を終えたピジョンは皿をシンクに浸けて戻り、意地汚く指をなめまわす弟にウンザリする。
「ナプキンで拭けよ、行儀悪いな」
「えらく多いな」
「サービスなんじゃないか」
「どうせならチーズ増量しやがれ」
ナプキンの束を手に持ったスワローがにやける。
「ひらめいた」
ボールペンでナプキンに走り書きし、表返してまたシャッフル。
「ゲームしようぜ」
「どんなの」
「コイツを引いて書いてあることをやる」
「パスで」
やっぱりろくでもない。
悪ふざけに巻き込まれる前にさっさと退散しようと踵を返したピジョンを、肘を掴んで力ずくで引き戻す。
「どーせ暇だろ?なら付き合え」
「暇じゃない、読みたい本があるんだ。犯人あてに突入する前で栞挟んだから続きが気になる」
「貿易商を殺ったのはメイドのアンジェリーナ。動機は捨てられたお袋の復讐と禁断の恋に陥った異母兄に後を継がす為」
「どうしてバラすんだよ!!!!!!!」
本気でキレたピジョンがスワローの腕を振りほどき、真相を確かめに自室に引っ込み、殆ど泣きそうになりながらまた駆け戻る。手には一冊のペーパーブックが握られている。
「本当じゃないかポテチの屑挟まってるし、人の本ポテチ食った手で読むなよ馬鹿!!」
「エロいのかと思ったら全然濡れ場ねェし挿絵もねェしでガッカリ」
「ポルノ小説と推理小説をごっちゃにするな!!あーもうほんと最悪、誰が犯人か手書きの人物相関図まで作って検証してたのに」
「暇人こじらせすぎ」
「シットスワロー」
「言葉遣いが汚ェ。母さんが哀しむぜ」
「ナチュラルボーンダストだなお前って」
推理小説のネタバレは言語道断の禁じ手だ。常日頃品行方正なピジョンに不慣れな悪態を吐かせるほどに。
どのみちスワローはピジョンが首を縦に振るまで解放してくれそうにない、とことん気が済むまで悪ふざけに付き合わせる魂胆だ。
ならば受けて立とうじゃないか。
「そうこなくっちゃ」
うってかわって上機嫌なスワローがシャッフルの手を止め、切り雑ぜたナプキンを扇状に広げる。
「待てよ、俺にもやらせろ。お前に任すとイカサマする」
「チッ、信用ねえな。ほらよ」
思いかげずあっさりとピジョンにナプキンの束を渡す。
しかめ面でナプキンを切り雑ぜ、テーブルに広げたそれをランダムに並びかえて漸く満足したピジョンは、尖った目でスワローを睨む。
「順番は」
「先に譲る」
「随分と気前がいいじゃないか」
「サービスだよ。くじ運に見放された兄貴に花持たせてやる」
何を企んでるのだろうと警戒するが、ただ突っ立っているだけじゃ埒が明かない。
ゲームを進行させたいなら行動あるのみ。
憮然としたままナプキンに手を伸ばし、五枚あるうちの右端の一枚を捲る。
瞬間、真顔になる。
「…………『乳首責めで勃たす』」
スワローも真顔になる。
ナプキンの裏面に書かれた命令を見下ろし、ピジョンの顔がさもいやそうに歪む。
「お前……頭と股間が沸いてるな」
「……引きが強ェのか弱ェのか」
ぼそりと呟いたのを聞き逃さない。
ピジョンが初っ端これを引き当てるのはさすがのスワローも予想外だったのか、しばらく固まっていた顔が和らぎ、馬鹿にしきった薄笑いと口調で挑発。
「で、どうすンの?」
「どうするも何も……ゲスな発想だな」
本当はスワローがするはずだった。
ピジョンの服を捲り上げて押し倒し、乳首を吸い立て勃起させるはずだった。
が、なんたる運命の気まぐれか実行者はピジョンだった。
「勃たす自信なけりゃ棄権したっていいんだぜ、オンナの乳もろくすっぽ吸った事ねーもんな。ぜってー無理だって、ヤる前からわかりきってる」
スワローは泰然自若とした態度を崩さない、ピジョンのテクを完全になめてかかっている。
いや、そもそもが堅物な兄に破廉恥きわまる命令を実行する度胸などないと踏んでいるのか。
どちらにしろピジョンをなめきっているのは間違いない。
椅子にどっかりかけて足を組み、サディスティックな嘲笑を浴びせかける。
「乳首だけで勃っちまうとかマジありえねー。全身性感帯の淫乱早漏アニキと一緒にしてほしかねェな」
腹の底で沸々と怒りが煮え滾る。
このクソ憎たらしい笑みをめちゃくちゃにしてやりたい、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。凶暴な衝動が頭に居座る理性を押し流す。
ピジョンの乳首はすっかりスワローに開発されてしまった乳首だけじゃない身体のどこもかしこもコイツに調教されてしまったなのにコイツは悪びれもせずしゃあしゃあと
「……なあスワロー、俺が13でお前が11の時の事覚えてる?」
ピジョンが抑揚を欠いた声で唐突に質問、だらけて頬杖を付いたスワローが「あ゛?」と返す。
「お前の『悪ふざけ』だよ」
「さあね。心当たりが多すぎて絞りきれねえ」
「母さんの馴染みに色目使ったバツとか言って、手を縛って動けなくしてから乳首にマスタード塗りこんだろ」
結論から言うと、全て誤解だった。
毎度のことながらスワローの嫉妬から来る勘違いだ。
ピジョンは断じて母の馴染みに色目など使ってない、トレーラーハウスの前でちょっとした立ち話をしてたらスワローが言いがかりを付けてきただけだ。
「すごいヒリヒリしたよ。結局二時間も放置されて、翌日は腫れた」
「蜂蜜で蟻たからすほうがよかった?」
「泣いて謝ってもシカトしたよな」
「タバスコじゃねーだけ感謝しろ」
「なんで手を縛ったか覚えてるか?母さんのパンティーだよ」
「テメェが穿いてたクソだせーボクサーパンツ脱がして使やァよかった」
ピジョンの声が抑圧された怒りと不穏な気配を孕む。
「お前が引っ掻いたせいでキズにしみて痛かった」
「だから……」
ウンザリと何か言いかけたスワローの前に回り、黒いタンクトップを無造作に捲り上げる。
「!?なッ、にす」
「ゲームだよスワロー。そう言ったろ?」
別に縛ってはない。この言葉に効力はない。ピジョンは落ち着き払って淡々と指摘していく。
「怖くなったのか?ならまた暴れてめちゃくちゃにしろよ、テーブルに立って椅子投げればいい。でもな、お前が言い出したんだぞ。この悪趣味な遊びはお前がはじめたことだ。逃げるってことは勝てる自信ないから、負けるのが怖いからだよな?」
「はァ?俺様がテメェごときに負けるって正気でほざいてンの」
スワローが険悪に凄む。
「びびって逃げたらそうとる」
せいぜいイヤミに鼻で笑ってやったあと、曲げた人さし指でナプキンをトントン叩く。
「むきになるなよ。ただの遊びだろ?」
「……その言葉よーーーーっく覚えとけよ、あとでひんひん言わせてやる」
どうかしている、相手は血が繋がった弟だ。だからなんだ?自分がされたことを仕返すだけだ。
ピジョンはそっとロザリオを握り、それを外してポケットに滑り込ませる。
今からすることは神様に見られたくない。
「いい子だスワロー。肩の力を抜け」
これはゲーム、ただのゲームだ。
椅子に掛けた弟の正面に跪き、黒いタンクトップをまくり上げ、美しく鍛え抜かれた腹筋をさらす。
引き締まった細腰に片手を添え、まずは右の乳首にキスをする。続いて左の乳首を軽く吸い立て、窄めた舌先で突付く。
「テメェごときにちゅぱちゅぱやられても赤ん坊とおんなじ、くすぐってえだけだ」
「やりかたはお前が教えてくれた、いやってほどね」
右の乳首を吸っている間は手で左を愛撫、軽く抓って刺激を与え指のあいだから揉み搾る。
フニフニした感触が可愛くて気持ちいい。
自分のは触ってもよくわからないがスワローの乳首はグミのように柔く、淡く綺麗なピンク色でまるで誘っているように見える。
「ッ…………、」
スワローがこそばゆそうにし、だんだんと吐息が上擦り始める。腕力なら弟の方が上だ、ピジョンを振りほどくのは造作もない。それをしないのは歪んだ意地のせいか、一瞬でも兄に怯んだ既成事実を作りたくないのか。変な所で強情なのは誰に似たのか。
「ざけんな……」
「無口になってきたな。余裕がないのか?」
受け身に回ったスワローが新鮮で、吐息を上擦らせ赤らむ顔に嗜虐と紙一重の愛おしさが溢れる。
こんな風にしおらしければ可愛げあるのにと心の片隅で嘆き、スナイパーライフルの扱いに長けた繊細な指遣いで乳首をまめに可愛がる。
「してもらうばかりでいじってやれなかったもんな」
「!ッあ、んぅッく」
チュッ、チュッとわざと音をたてる。
唇で柔く食んで舌を絡め、その間も指で擦り立て刺激を送り続ける。
スワローの肌はしょっぱい汗の味がした。ピジョンより少し健康的に日焼けしてなめらかな張りがある。
スワローの舌遣いはよく覚えている、目を閉じていても思い出せる。何年もかけ徹底的に教え込まれたテクニックを逐一反芻、僅かに膨らみを増した乳首を舌でねぶり、吐息を荒げて囁く。
「軽く噛んだあとすぐ離して慰める……好きだろ、お前」
「調子のりくさりやがって……ぶっ殺すぞ」
殺したそうな目で睨まれても不思議と怖くない。
土壇場で踏ん張って感じないように見せている強がりが、かえって可愛い。いじらしいとさえ思ってしまうんだから重症だ。
「ッ、ぅッうく」
「赤ん坊みたいだぞスワロー」
「るっせ……ぬりぃ舌遣いで勘違いしてドヤんな」
乳首責めだけで勃たせる、それがピジョンへの要求。
股間に浮気するのは反則だ。
ピジョンは生真面目にルールを守り、乳首へのひたむきな刺激だけで感じやすい弟を高めていく。
快感を堪えて唇を噛むスワローに欲情し、その身体に溺れ、罰当たりな行為にのめりこんでいく。
どうやればいいか全部スワローが教えてくれた、捏ね回す指遣いもねぶり絡める舌遣いも精通をむかえる前からたっぷり仕込んでくれた。
弟をかわいがるのは悪い事じゃない、気持ちよくさせてやるのは悪い事じゃないとゲームの建前に甘え背徳を犯す自分に言い訳をし、唾液に濡れ光りしこる乳首を指圧がてら、ジーンズに包まれた股間に目をやる。
「どっちも膨らんできた」
「いちいち報告すンじゃねーよ……」
無意識だろうか、張り詰めた股間をさわってほしそうに腰を揺する。ピジョンは生唾を飲み、再び弟の身体にしゃぶり付く。
「あッあッ」
スワローが切ない声を上げる。
椅子を蹴立て逃げ出すのは時間の問題に思われたが、断固としてピジョンに白旗上げる弱みを作りたくないのか、凄まじい忍耐力と自制心を発揮して執拗な乳首責めを忍ぶ。
「声、我慢しなくていいよ」
「だッ、れがッ、」
「知ってるんだぞ、お前の弱点は俺と同じだ。乳首、感じやすいくせに……親指と人さし指で挟んでコリコリされるの好きだろ」
しきりに嫌がるスワローをなだめるように耳元で繰り返す。
神様は見ていない。
ポケットの中で眠ってる。
なら遠慮はいらない。
博愛なんてクソくらえだ、生まれてこのかたさんざん俺をコケにしてきたやんちゃなツバメさんを見返してやれ。
保身と衝動、理性と欲望のはざまで押さえこまれた嗜虐心が疼き、ピジョンを攻めの一手に駆り立てる。
「ッは、ふ」
ピンクゴールドの前髪をしどけなく額に纏わり付かせ、発情した小鳩が啄むような初々しいフラチさで、ピンクの突起を吸い転がし育てていく。
指と唇と舌による絶え間ない責めが甘美な痺れと疼きを生み、イエローゴールドの前髪に隠れた目尻が火照る。
「ッ、誰がテメェのテクでィくかのぼせあがんな駄バト」
「痛くされる方が好きなのか。悪い子だな」
スワローが喧嘩腰で叫ぶが、余裕を削られて覇気がない。
硬度と感度を増した乳首をいじくり回し、勃起した先端を舌で包み、唾液にぬかるんだ口腔で愛撫する。
「ッあ、くッぅ、ィ、しツっけ」
自分がされてきたこと言われてきたこと、味あわされた屈辱や馴らされた快楽、それを今この瞬間余さず仕返す覚悟で注ぎこみ、さんざんにじらされて切なく尖りきった弟の乳首を甘噛み。
「~~~~~~~~~~~~ッ!!」
ほんの少し強く噛まれた痛みにスワローが震え、ピジョンを引きはがそうと、あるいは縋り付こうと前のめりにその肩を掴む。
「―――勃ってる」
汗でしっとり濡れたイエローゴールドの髪の奥、やや虚ろな赤錆の目が瞬く。
物問いたげな弟の視線を受けたピジョンは、ジーンズのデニム地を押し上げる膨らみにあえて手も触れず、固くしこった乳首をタンクトップで隠してやる。
「第一ラウンドは俺の勝ちだな」
黒いタンクトップにくっきり形を浮かせる乳首の位置にじわりと唾液が染み、一段と色が濃くなった。
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