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廃帝はロシアの夢を見るか
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北棟の皇帝の房から打擲音が響く。
「はあっ、ァあ゛ッ!!」
革鞭が肉を打擲する音に合わせ、汚い濁音の悲鳴が上がる。
冷酷無慈悲な北の皇帝の房は、グロテスクな道具が犇めく拷問部屋の様相を呈していた。背が尖った三角木馬や黒光りするディルドの他、天井の鉄骨には滑車が取り付けられ鎖を引っ張っている。
「もっと荒ぶれよサーシャ、鞭の懐かしいだろ」
うっそり嘯くのは黒い眼帯を片目に嵌めた男。なめらかな褐色の肌に干し藁色の茶髪、茶色く澄んだ美しい虹彩をしている。美しい男だった。
東棟の王様、改め暴君。
「んァ゛っ!ィぐァっ!!」
嬉々として彼が鞭打っているのは、上半身を裸に剥かれた男だ。頭上で纏められた両手は鎖に縛られ、天井で軋む滑車に吊られている。
肩で切り揃えた銀髪が揺れ、端正な顔を苦痛と高熱に歪め、背中に鞭が爆ぜる都度に仰け反る。
もう十分も拷問が続いていた。暴君が鞭を振り抜くたび、銀髪の男は唇を噛み縛って過酷な責めを耐え凌ぐ。
「廃位された皇帝ってのは惨めなもんだな、俺に折檻されてるの知りながら周囲の誰も助けにこねえでやんの。独裁恐怖政治を敷いたツケが回ってきたな、サーシャ?」
「あ゛っ、はァっああ!!」
答える余裕などない。革鞭がもたらす痛みは強烈だ。暴君は薄ら笑いを浮かべ、いっそ無造作に見えるほど躊躇なく鞭を振り抜く。虚空で鎌首もたげた鞭がサーシャの背中に食らい付いて肉を削ぐ、皮膚が擦り剝ける。
無数の赤い蛇がのたくる背中に幾筋も汗が伝い、全体重をかけた鎖がギシリと手首に食い込む。爪先で立っている為気絶すら許さない。頭が朦朧とする中、前髪に目元を隠したサーシャは鈍重に呟く。
「……下剋上した気になるなよ、雑種」
前髪がけだるく揺れ、底冷えするような薄氷の眼光が露わになる。暴君はそれを意地悪く受け流す。
「心外だね、お前が望んだお遊戯に付き合ってやってるんじゃねェか」
暴君は片頬を皮肉っぽく歪め、サーシャの正面で腕を組む。
「全部お前が俺にした事だぜ。よく覚えてんだろ」
「有色人種の雑種風情が、粋がるなよ。貴様は私に組み敷かれて喘げばいいのだ」
「吊られといてよくそんな口利けんな、自分の立場ってもんがわかってねーの」
唄うような節回しで脅す、その姿に嘗ての王様の面影はない。褐色の掌がサーシャの片頬をひたりと包み、手懐けるようにあやす。
サーシャは身じろぎせず正面を見据えて吐き捨てる。
「汚らわしい。淫売が伝染る」
「サバーカにじゃれ付かれんのは嫌か」
暴君が器用に片眉を跳ね上げて挑発すれば、脂汗に塗れたサーシャの目に憤怒が爆ぜ、頬にあてがわれた手に噛み付こうとする。
「おっと」
それを余裕でいなして一歩引こうとすれば、すかさず暴君の顔に唾が飛んでくる。サーシャが吐いたのだ。
「躾がいるのはどっちだよ」
「はァ……はァ……」
口の中が切れたのか、唾には血が混ざり薄赤く染まっていた。鞭打ちの刑に耐え、唇を噛みすぎたのだ。サーシャはぐったりしている。
どうしてこんな事になった。私は誇り高い絶対凍土の皇帝のはず。
決して、決して毛並みの薄汚れたサバーカに劣るはずがない。コイツの血は不純に呪われている。皇帝になるべくして育てられた、純血の私とは格が違うのだ。
「俺はいいんだよ、気晴らしができりゃ。アンタはたまたま暇潰しの相手に選ばれただけ。王様に遊んでもらえるなんて光栄だろ、下品にケツ振って悦べよ」
「は……貴様が王であるものか」
喉の奥で笑いがくぐもる。サーシャはあらん限りの憎悪と侮蔑を滾らせた眼差しでレイジを睨み据え、毒突く。
「心得違いをするなよ暴君風情が。私の伽の栄誉に預かった東の王は、サバーカはサバーカでも地べたの信念を宿していたぞ。雑種も磨けば光るというが、なるほど、ベッドで見せたはしたない痴態には興がのった。対する貴様はどうだ……私を縛り上げ、鞭打って悦に入る……ただそれだけの安い男だ。東の王ならば高貴なる決闘をのぞむはず」
そうだ、サーシャの知る東の王はそういう男だ。卑劣な策は弄するのは常にサーシャの側で、レイジはそれを知恵と身体で迎え撃った。
以前の試合では敗北を喫したが、その際もサーシャを実力で圧倒した。
「レイジならば相手の抵抗を封じるようなゲスな真似はせん。アレは皇帝の認めた気骨ある雑種だ、だからこそ躾ける愉悦があった、閨で組み敷く快楽があった」
レイジは闇に堕ちた。その魂を暴君に売り渡して。
正面に佇む暴君が冷たい笑顔で呟く。
「レイジレイジてうるせーな。そんなヤツもういねーのに」
お前もアイツも誰もかも
「ぐ!?」
暴君がしなやかな大股で歩み寄り、鞭を逆手に持ちかけて、太く丸く膨らんだ柄部分でサーシャの股間を押す。ズボンに包まれた股間を柄の底部で突けば、圧迫の刺激と痛みにサーシャが呻く。
「勃ってんじゃんマゾ帝」
「こ、れは……」
「鞭打たれて反応しちまうなんて難儀な身体だな、それもサーカスで躾けられたの」
暴君が舌なめずりしサーシャの身体を裏返す。
「っあ!」
鎖を手首に巻き込んで反転、後ろを向かされたサーシャが痛みに喘ぐ。しとどに脂汗に塗れた背中には、真っ赤なみみず腫れができていた。その傷を人さし指でなぞり、血をすくって口に運ぶ。
「しょっぺえ。錆の味がする」
鞭の柄を使って器用にズボンを下ろす。下肢を剥かれたサーシャに動揺が広がる。
「色白で綺麗な肌、さすがロシア生まれ」
「私を辱める気か」
いっそ殺せ、でもいうふうに凶暴に牽制する。質問には答えず、暴君は太くなった鞭の柄にねっとりと舌を絡める。それは男根を模した形状をしていた。
黒い柄を含んで吸い立て、挑発的にフェラチオの真似事をなせば、サーシャが物欲しげに喉を鳴らす。
「!ンァぐっ」
サーシャが切ない声を出す。暴君の片手が直接臀に触れたのだ。腰のくびれを這い、尾てい骨をもみほぐし、引き締まった双丘を淫猥になでまわす。
「興奮してんの?滴ってるぜ」
「は……何を」
「変態」
耳元で囁き、サーシャの臀をねちっこくいじくり回す。
「サバーカが付け上がるなよ」
「しゃぶれよ」
暴君が鞭の柄をサーシャの口元に突き付ける。
サーシャは当然拒み、必死に顔を背けて抵抗を示すものの圧と膂力に勝てず、強引に口にねじこまれる。
「あが、ん゛っぐ」
口の中を太く丸く膨らんだ柄が圧迫する、頬の内側と舌の表面の粘膜をこそぎとる、唾液がぬる付く咽喉の奥まで出し入れされる。
「よーく濡らしとけ、じゃねーと後がキツいぜ、まーお前の尻が裂けても俺にゃ関係ねーけど」
「あうっぐっァあぐっ」
悪夢のような抑揚で響く綺麗な声。朦朧する意識と霞む視界。口からあふれた唾液が顎の端を伝い、肌へと滴っていく。
何故こんな事になった。サーシャは自問する。閉じた瞼の裏に懐かしい祖国の光景が、優しい兄の面影が甦る。忠実なる臣下……アルセニ―。
「さばーかっ、が、ん゛ァふっ、皇帝へのッんふぐっ、反逆罪で、処刑するぞ!!」
「お前は皇帝なんかじゃねーよ、俺の性奴隷だ」
喘げ。喚け。絶頂しろ。
サーシャの咽喉に柄を突っ込んだ暴君が嘲笑い、濡れそぼったそれを漸く抜く。安堵する暇もなく今度は腰を掴まれ、窄まりへ柄をあてがわれる。
「よせ……」
ぐっと圧がかかり、柄の先端が肛門にめりこむ。
「こん位余裕だろ?」
「――――――――――――――――――――――――――ッあああああああ!!!!」
身を引き裂かれる衝撃、次ぐ絶叫。鞭の柄がみちみち肉を裂いて尻へ埋まる、力ずくで異物を挿入される激痛と恥辱にサーシャは戦慄き、宙吊りにされた身体を激しく揺する。
暴君が抜き差しを始める。鞭の柄を勢いよく出し入れしてサーシャを犯し、唇を卑しく舐める。
「気持ちいいだろサーシャ、たっぷり味わえよ。この次はお前ご自慢のナイフで犯してやる、そのあとクソこびり付いたナイフを食わせてやるよ、俺の前に跪いて舌でキレイに浄めるんだぜハハッ」
「あっあっあッあぅぐっんはっ」
無機質な柄がぐちゃぐちゃと尻を犯す、粘膜を巻き返して前立腺を責め苛む。被虐の官能にそそりたち先走りが迸る、プライドを粉砕される。
「やめッろ、あァッレイっジ、よせ」
「今の姿北の下僕どもが見たら幻滅するぜ、いっそ突っこんだまま廊下歩かせるか」
おぞましい提案に身体が震える。
「やめ、ろ」
「よく聞こえねーな」
「やめ……っ、あ、よせ、それだけは」
私は北の皇帝だ。大手を振って表を歩けば、誰もが私を恐れて平伏す。私の為に道をあける。
「んッぐ、ァあっああッ、ふッああ」
柄の抽送の速まりに合わせサーシャの息が上がっていく。彼はたしかに感じている、前ははしたなく勃起して尻の中はうねっている。
「何が望みだ……臣下の座か……褒美をとらせてほしいのか……」
サーシャは惨めに口走る。
「―――――――――――――――んっァあああああっあ!?」
一気に根元まで挿入された柄が引き抜かれ、サーシャが大きく仰け反って絶頂に達する。ペニスの先端からピュッピュッと白濁が飛び散り、彼自身の顔を汚す。
「そろそろこなれた頃か」
暴君が一抹の未練なく鞭を床に放り、サーシャの腰を手で固定する。
窄まりを圧迫する肉塊が脈打ち、強烈すぎる射精の快感で白痴さながら蕩け切ったサーシャの顔が凍り付く。
「待……」
「廃帝サーシャを串刺しの刑に処す」
「------------------------------------ッが!!?」
一気に貫かれた。暴君のペニスは太く力強く、柄とは比較にならない存在感でサーシャの尻を犯す。
ぐちゃぐちゃと抜き差しされる度圧倒的な快感が巻き起こり、括約筋がペニスを締め付ける。腰と肉がぱんぱんと爆ぜる音、ぐちゃぐちゃと粘膜をかき混ぜる音。
「あっぐあっ、よせ、その愚かな物を抜け!!」
「せっかくノってきたのにか」
極限の激痛と恥辱を味あわされ、サーシャは身をよじって喘ぐ。暴君は一切手加減せず、サーシャの尻にくり返し腰を打ち付け、前立腺を叩きまくる。
「あッあッああっあっ、」
萎えた前が再びもたげて涙を流す。
弛緩しきった口から涎をまいてドライでイきまくるサーシャ、暴君は鋭く手を振り抜いて白い尻を叩く、ぱんぱんと乾いた音が爆ぜてサーシャの背が撓いペニスがびゅくびゅく育っていく。
「スパンキングに目覚めちまった?叩かれながら突っ込まれると気持ちいい?」
サバーカめ。サバーカめ。サバーカめ。
一体どっちがサバーカだ。
あらん限りの殺意と憎悪をこめた呪詛が思考を浸蝕、しかしすぐ濁った快感に圧倒される。
尻を打擲される痛みがじんと痺れる法悦にすりかわり、サーシャが淫らな雌犬の顔でねだる。
「あっ、イっくレイジはァっあもっ」
「ケツマンずこばこされてイっちまえよサーシャ、お前は俺の性奴隷だ。北の皇帝は東の王に下るんだ、それを東京プリズン中にわからせてやる」
「んはっあァっやっ奥ぐっ、ァあァッっあ」
堕ちたサーシャが狂ったように腰を振る。
鎖が巻き付く手を揺すり立て、暴君のペニスを咥えこんだ尻を突きだし、残る目をぎらぎら光らせる。
「私は屈しない、ぞ、北の皇帝の威光は、必ずやよみがえるっ!!」
「そうかよ」
無造作にサーシャの眼帯を取り払い、傷痕が塞ぐ瞼を暴く。
サーシャの顎を持ち、首をねじらせて傷痕におざなりなキスをし、体奥へペニスを突き立てる。
「あァっあッあぁ――――――――――――――――――――!!!」
連続絶頂の痙攣が襲い、サーシャのペニスから大量の白濁が飛び散る。
ぐったりしたサーシャをよそにベッドに向かい、そこへ放られたナイフを手にとり、刃の鏡面に自分の顔を移す。
サーシャとおそろいの隻眼。残虐性を剥きだした暴君の笑顔。
手に持ったナイフをなめて濡らし、サーシャのもとへ引き返しながら、暴君は飄々と言ってのける。
「先にイくのはナシだぜ、飽きるまで遊ばせてくれよ」
「私……は……偉大なるロシアの皇帝……高貴なるロマノフの裔……」
青褪めた唇がブツブツと妄言を紡ぐ。
「まだンなこと言ってんの?むかえなんてこねーよ、いい加減わかれって」
暴君がいっそ同情するように、限りなく優しい声音を吹き込む。
「お前は極東のゴミ溜めに捨てられた廃帝だ」
可哀想になサーシャ。
可哀想に。
「捨てられたもの同士仲良くしようぜ、なあ」
暴君の声が遠く近く撓んで響く。瞬きするのも億劫だ。サーシャの目は殺風景な房の壁を映し、さらにその向こうの砂漠を飛び越え、遥かロシアの凍て付く大地を幻視する。
一面の銀雪を冠した平原と伝統感じる街並み、石畳の広場に張られたサーカスのテントは豪奢な宮殿へすりかわる。
「ツァーウーラ……ツァーウーラ……」
鼓膜の裏側で民草の歓呼が聞こえる。皇帝の凱旋を祝す大衆の声だ。
まどろみに目を瞑り、意識を手放す寸前にサーシャはうっすら微笑んだ。
「はあっ、ァあ゛ッ!!」
革鞭が肉を打擲する音に合わせ、汚い濁音の悲鳴が上がる。
冷酷無慈悲な北の皇帝の房は、グロテスクな道具が犇めく拷問部屋の様相を呈していた。背が尖った三角木馬や黒光りするディルドの他、天井の鉄骨には滑車が取り付けられ鎖を引っ張っている。
「もっと荒ぶれよサーシャ、鞭の懐かしいだろ」
うっそり嘯くのは黒い眼帯を片目に嵌めた男。なめらかな褐色の肌に干し藁色の茶髪、茶色く澄んだ美しい虹彩をしている。美しい男だった。
東棟の王様、改め暴君。
「んァ゛っ!ィぐァっ!!」
嬉々として彼が鞭打っているのは、上半身を裸に剥かれた男だ。頭上で纏められた両手は鎖に縛られ、天井で軋む滑車に吊られている。
肩で切り揃えた銀髪が揺れ、端正な顔を苦痛と高熱に歪め、背中に鞭が爆ぜる都度に仰け反る。
もう十分も拷問が続いていた。暴君が鞭を振り抜くたび、銀髪の男は唇を噛み縛って過酷な責めを耐え凌ぐ。
「廃位された皇帝ってのは惨めなもんだな、俺に折檻されてるの知りながら周囲の誰も助けにこねえでやんの。独裁恐怖政治を敷いたツケが回ってきたな、サーシャ?」
「あ゛っ、はァっああ!!」
答える余裕などない。革鞭がもたらす痛みは強烈だ。暴君は薄ら笑いを浮かべ、いっそ無造作に見えるほど躊躇なく鞭を振り抜く。虚空で鎌首もたげた鞭がサーシャの背中に食らい付いて肉を削ぐ、皮膚が擦り剝ける。
無数の赤い蛇がのたくる背中に幾筋も汗が伝い、全体重をかけた鎖がギシリと手首に食い込む。爪先で立っている為気絶すら許さない。頭が朦朧とする中、前髪に目元を隠したサーシャは鈍重に呟く。
「……下剋上した気になるなよ、雑種」
前髪がけだるく揺れ、底冷えするような薄氷の眼光が露わになる。暴君はそれを意地悪く受け流す。
「心外だね、お前が望んだお遊戯に付き合ってやってるんじゃねェか」
暴君は片頬を皮肉っぽく歪め、サーシャの正面で腕を組む。
「全部お前が俺にした事だぜ。よく覚えてんだろ」
「有色人種の雑種風情が、粋がるなよ。貴様は私に組み敷かれて喘げばいいのだ」
「吊られといてよくそんな口利けんな、自分の立場ってもんがわかってねーの」
唄うような節回しで脅す、その姿に嘗ての王様の面影はない。褐色の掌がサーシャの片頬をひたりと包み、手懐けるようにあやす。
サーシャは身じろぎせず正面を見据えて吐き捨てる。
「汚らわしい。淫売が伝染る」
「サバーカにじゃれ付かれんのは嫌か」
暴君が器用に片眉を跳ね上げて挑発すれば、脂汗に塗れたサーシャの目に憤怒が爆ぜ、頬にあてがわれた手に噛み付こうとする。
「おっと」
それを余裕でいなして一歩引こうとすれば、すかさず暴君の顔に唾が飛んでくる。サーシャが吐いたのだ。
「躾がいるのはどっちだよ」
「はァ……はァ……」
口の中が切れたのか、唾には血が混ざり薄赤く染まっていた。鞭打ちの刑に耐え、唇を噛みすぎたのだ。サーシャはぐったりしている。
どうしてこんな事になった。私は誇り高い絶対凍土の皇帝のはず。
決して、決して毛並みの薄汚れたサバーカに劣るはずがない。コイツの血は不純に呪われている。皇帝になるべくして育てられた、純血の私とは格が違うのだ。
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「は……貴様が王であるものか」
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「心得違いをするなよ暴君風情が。私の伽の栄誉に預かった東の王は、サバーカはサバーカでも地べたの信念を宿していたぞ。雑種も磨けば光るというが、なるほど、ベッドで見せたはしたない痴態には興がのった。対する貴様はどうだ……私を縛り上げ、鞭打って悦に入る……ただそれだけの安い男だ。東の王ならば高貴なる決闘をのぞむはず」
そうだ、サーシャの知る東の王はそういう男だ。卑劣な策は弄するのは常にサーシャの側で、レイジはそれを知恵と身体で迎え撃った。
以前の試合では敗北を喫したが、その際もサーシャを実力で圧倒した。
「レイジならば相手の抵抗を封じるようなゲスな真似はせん。アレは皇帝の認めた気骨ある雑種だ、だからこそ躾ける愉悦があった、閨で組み敷く快楽があった」
レイジは闇に堕ちた。その魂を暴君に売り渡して。
正面に佇む暴君が冷たい笑顔で呟く。
「レイジレイジてうるせーな。そんなヤツもういねーのに」
お前もアイツも誰もかも
「ぐ!?」
暴君がしなやかな大股で歩み寄り、鞭を逆手に持ちかけて、太く丸く膨らんだ柄部分でサーシャの股間を押す。ズボンに包まれた股間を柄の底部で突けば、圧迫の刺激と痛みにサーシャが呻く。
「勃ってんじゃんマゾ帝」
「こ、れは……」
「鞭打たれて反応しちまうなんて難儀な身体だな、それもサーカスで躾けられたの」
暴君が舌なめずりしサーシャの身体を裏返す。
「っあ!」
鎖を手首に巻き込んで反転、後ろを向かされたサーシャが痛みに喘ぐ。しとどに脂汗に塗れた背中には、真っ赤なみみず腫れができていた。その傷を人さし指でなぞり、血をすくって口に運ぶ。
「しょっぺえ。錆の味がする」
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「私を辱める気か」
いっそ殺せ、でもいうふうに凶暴に牽制する。質問には答えず、暴君は太くなった鞭の柄にねっとりと舌を絡める。それは男根を模した形状をしていた。
黒い柄を含んで吸い立て、挑発的にフェラチオの真似事をなせば、サーシャが物欲しげに喉を鳴らす。
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堕ちたサーシャが狂ったように腰を振る。
鎖が巻き付く手を揺すり立て、暴君のペニスを咥えこんだ尻を突きだし、残る目をぎらぎら光らせる。
「私は屈しない、ぞ、北の皇帝の威光は、必ずやよみがえるっ!!」
「そうかよ」
無造作にサーシャの眼帯を取り払い、傷痕が塞ぐ瞼を暴く。
サーシャの顎を持ち、首をねじらせて傷痕におざなりなキスをし、体奥へペニスを突き立てる。
「あァっあッあぁ――――――――――――――――――――!!!」
連続絶頂の痙攣が襲い、サーシャのペニスから大量の白濁が飛び散る。
ぐったりしたサーシャをよそにベッドに向かい、そこへ放られたナイフを手にとり、刃の鏡面に自分の顔を移す。
サーシャとおそろいの隻眼。残虐性を剥きだした暴君の笑顔。
手に持ったナイフをなめて濡らし、サーシャのもとへ引き返しながら、暴君は飄々と言ってのける。
「先にイくのはナシだぜ、飽きるまで遊ばせてくれよ」
「私……は……偉大なるロシアの皇帝……高貴なるロマノフの裔……」
青褪めた唇がブツブツと妄言を紡ぐ。
「まだンなこと言ってんの?むかえなんてこねーよ、いい加減わかれって」
暴君がいっそ同情するように、限りなく優しい声音を吹き込む。
「お前は極東のゴミ溜めに捨てられた廃帝だ」
可哀想になサーシャ。
可哀想に。
「捨てられたもの同士仲良くしようぜ、なあ」
暴君の声が遠く近く撓んで響く。瞬きするのも億劫だ。サーシャの目は殺風景な房の壁を映し、さらにその向こうの砂漠を飛び越え、遥かロシアの凍て付く大地を幻視する。
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「ツァーウーラ……ツァーウーラ……」
鼓膜の裏側で民草の歓呼が聞こえる。皇帝の凱旋を祝す大衆の声だ。
まどろみに目を瞑り、意識を手放す寸前にサーシャはうっすら微笑んだ。
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大衆娯楽
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しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
【完結】聖アベニール学園
野咲
BL
[注意!]エロばっかしです。イマラチオ、陵辱、拘束、スパンキング、射精禁止、鞭打ちなど。設定もエグいので、ダメな人は開かないでください。また、これがエロに特化した創作であり、現実ではあり得ないことが理解できない人は読まないでください。
学校の寄付金集めのために偉いさんの夜のお相手をさせられる特殊奨学生のお話。
初めての鬼畜緊縛・第一章
拷鬼ヨシオ
BL
※実話です。
バイでドMの私は、平凡で在り来たりなSM生活を送ってました。
平凡すぎる縛りや責めに正直いつも満足してませんでした。
動けば縄が緩む・痛がれば相手は止めてしまう、、、
いつか麻縄で息をすることさえ出来ない、関節が悲鳴を上げるくらいの鬼畜かつ
拷問的な緊縛をされたい、私の人格・人権など無視して拷問されたい、と思ってました。
意を決してとある掲示板に私の思いを書き込みました。
「鬼畜な緊縛を施して私の人権を無視して拷問にかけてください」と。
すると、ある男性から返事がありました。
「私はドS拷問マニアです。縛りも縄師の方に数年ついていたので大丈夫です。
逆海老吊り縛り等で緊縛して、貴方を徹底的に拷問にかけたい。耐えれますか?」
私はすごく悩みましたが、下半身の答えは1つでした(笑)
日時やNGプレイ等のやり取りをしばらく行った上でいよいよお相手の方とプレイする事に。
それは私の想像をはるかに超えた鬼畜緊縛拷問プレイでした。
私は今後、どうなってしまうんだろうか・・・
公開凌辱される話まとめ
たみしげ
BL
BLすけべ小説です。
・性奴隷を飼う街
元敵兵を性奴隷として飼っている街の話です。
・玩具でアナルを焦らされる話
猫じゃらし型の玩具を開発済アナルに挿れられて啼かされる話です。
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