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百七十三話
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東京少年刑務所のなりたちは今から50年前、西暦2033年に遡る。
外国人就労者の増加による治安の悪化と犯罪発生率の高さに頭を痛めた政府が、今世紀初頭の東京大地震で誕生した砂漠に世界に類を見ない規模の刑務所を設立した。
周辺住民の抗議をおそれるように俗世間と隔絶した不毛の砂漠に設立された刑務所にはさまざまな肌とさまざまな目の色、そしてさまざまな国の人間が集められた。
人種の坩堝という表現がこれほどふさわしい環境もない。
二十一世紀前半の少年法改正により少年院から少年刑務所へと改名され、未成年の犯罪者だろうが成人と区別なく裁判で裁かれるようになった。
……が、陪審制度が導入された裁判は必ずしも公正とは言いがたく、陪審員の心証ひとつで判決が大きく左右されてしまう。
情状酌量の余地がある被告が裁判時の態度が悪くて陪審員の不興と反感を買い、重い刑罰を課されることもある。
被告が国籍を持たない日本生まれの二世だととくにこの傾向が強い。陪審員にはおもに裕福な中産階級の日本人が選ばれるからであり、中には彼らを日本を内側から食い荒らす害虫か何かのように毛嫌いしてる者もいる。
無国籍スラム化が進んだ現在でも、いや、現在だからこそ都下スラム出身者には根強い偏見がある。中にはスラムの住民を犯罪者予備軍と呼んではばからない者もいる。
実際、治安が悪いスラムでは強盗や殺人などが日常茶飯事に蔓延してる。複雑な家庭事情から逃げるように路上生活者となった少年らが徒党を組んで集団強盗を働くなど生きる為の犯罪をくり返しているのが社会の底辺の現状であり、実に東京プリズンに送られる犯罪者の八割が犯罪や暴力と隣り合わせの環境で育った若者たちだ。
東京少年刑務所は特異な構造をしている。
砂漠は足立区とほぼ同面積で52.14km2。その中心に位置する刑務所は周囲を有刺鉄線に囲まれた難攻不落の要塞の威容で、東西南北に設けられた通用門兼搬入口からは毎日のように新入りを乗せたジープが出入りしている。
有刺鉄線の向こう側、刑務所の敷地内には巨大すぎて視界に把握できないコンクリートの建造物がある。
それ自体ひとつの砦のような景観の巨大建造物は渡り廊下で繋がれているが、囚人が直接渡り廊下を通ってそれぞれの棟を行き来することはない。中央棟を核に東西南北に展開した四つの棟で現在使われている渡り廊下は中央棟に行き来する四本だけだ。それぞれの棟を直接繋ぐ渡り廊下は抗争が原因で封鎖されて久しい。
中庭も例外ではない。
東西南北の棟が面した敷地は中庭として囚人に開放されている。が、中央棟と接続した渡り廊下を中空の境界線に、「あの下をくぐったら敵の陣地」と漠然と認識されているために違う棟の囚人が活発に交わることもない。
東京プリズンの全景を俯瞰図で表せば、正方形の中に十字架がおさまっているように見えるだろう。正方形の外枠は棟と棟とを繋ぐ渡り廊下であり、中央棟を貫いて十字に交差しているのが中庭の境界線の渡り廊下。
縄張り意識が強い囚人は滅多なことでは境界線を越えず、暗黙の掟を破って越境した愚か者には容赦しない。もしバスケットボールを追いかけて他棟の囚人がうっかりこっち側にやってきたら途端に戦争が始まり、死人がでる。
ごく一部の例外を除いて。
その例外が、いた。
場所は西棟の中庭。異形のコンクリート建築を背景に、中庭の真ん中に立っているのは一人の少年。
少年は奇妙な風体をしていた。
顔の上半分を覆った暗色のゴーグルが目の表情を隠しているため、全体の造作は定かではない。が、針金のように立たせた短髪とやや大きめの口、頬から顎にかけて精悍に引き締まった線から快活な気性がうかがえる。
黒と白の格子縞、垢染みた囚人服こそ他の囚人と変わらないが、黒いゴーグルをかけた少年には他と一線を画す異質なオーラがあった。
上に立つ者特有の威圧のオーラ、とでも言えばいいだろうか。
今は深夜、視界は闇に包まれている。中庭は無人。消灯時間を過ぎて出歩いてるのが看守に見つかれば厳罰に処されてるというのに怯えた素振りとてない。
「今度のは自信作や」
だれにともなく呟き、ポケットに手を入れる。手の中に握りこんだのは黒い丸薬。東京プリズンに来て五年、現役を退いて五年だ。腕は錆びついてないだろうか?掌中の丸薬をもてあそびながら束の間回想に耽る。娯楽班の試合で腕前を発揮する以外には見せ場もなく、最近は図書室に入り浸りで研究が疎かになっていた。が、試作品の実験はしといて損がない。ぶっつけ本番で挑んで誤爆でもしたら目もあてられない。勝ち負けにはこだわらないほうだとはいえ、できることなら満場の客の前で恥をかきたくないのが本音だ。
ゴーグルの内側で目を閉じ深呼吸、集中。右手に握りこんだ丸薬は三つ。
いや、正確には丸薬ではない。
「弾けい!!」
素早く手を抜き放ち、大きく腕を振りかぶる。夜空に放物線を描いた丸薬が三つ、地面に落下時に強い衝撃を受ける。
閃光。
漂白された視界の中、大気を震わす轟音と震動のうねりが足元に突き上げてきて、危うくバランスを崩しそうになった。鼓膜が痺れるような轟音が殷殷と闇にこだまし、コンクリートの地面に走った衝撃があたり一面にたゆたう白煙に紛れて分散してゆく。
「ちと火薬が多すぎたかな?」
周囲にたちこめる白煙に咳き込みながら舌打ちする。以前なら全幅の信頼をおけた勘が少々鈍ってると認めざるをえない。以前なら目を閉じていても火薬の量を間違えるような初歩的ミスは犯さなかったはずだ。
祖父が生きていれば頭に拳骨を落とされていた。
根っからの職人気質の祖父は自分の仕事に誇りを持っていたが、娘の忘れ形見の孫におなじ道を歩ませるのを最期まで拒んだ。孫には人殺しの道具ではなく人を喜ばせる道具を生み出してほしいというのが祖父の願いだった。
祖父は口には出さなかったが、唯一の孫が両親の二の舞になるのを恐れていた。
『ごめんなじっちゃん、二の舞になってもうたわ』
反省の色もなく彼は笑う。
刑務所で獄死した両親の顔は覚えてない。母親は刑務所で臨月を迎えて彼を産んだが、刑務所を出ることなく、我が子を腕に抱くことなく死亡。父親の消息は不明だが、たぶん死んでいるだろう予感がする。刑務所で産声をあげた男児は祖父に引き取られ「龍一」と名づけられ、両親もまた与していた組織の中で育てられることになった。
そして今、彼は刑務所にいる。生きて外にでることはない。祖国からは収監五年が経過した今でも組織の活動内容と近況を知らせる手紙が届くが、殆ど義理のようなものだ。
彼の懲役は二百年、生きて刑務所をでるのは絶対に不可能だ。
だが彼は、別段その事を哀しんでるわけでもない。悲観してるわけでもない。どころか、逆に感謝している。本国政府に厄介払いされてこの刑務所に送られたからこそ、爆弾作りに代わる新たな生き甲斐を見出すことができたのだから。
「こんな夜更けに火遊びかよ、物騒だな」
からかいの声に顔を上げれば煙幕越しに人影が歩いてくる。ゴーグルを額に押し上げ、目を凝らす。外気に晒されたのはつり目がちの精悍な双眸、稚気と凄味とを均等に宿した剽悍な顔だち。ゴーグルを取り払った視線の先、白煙の筋をなびかせながら視界が晴れ、人影の素顔が暴かれる。
均整のとれた長身の男だ。いや、青年と呼ぶのが正しい年頃だ。頭の後ろで襟足にかかる髪を一本に結んだ青年はとても魅力的な容姿をしていた。
甘さと精悍さが黄金率で混ぜ合わさった野性的な美形。
「おうレイジ、夜遊びか」
「おう夜遊びだ。月が綺麗だから散歩してたら場違いな爆発音が聞こえてな、なんだろうって来てみりゃ西の道化がだれも観客いない中庭でパフォーマンスしてた」
「パフォーマンスやない、予行演習や」
「にしちゃ凄い威力だったぜ。少しは加減しろよ、寝た子が起きちまうだろが」
空には月がある。
中天に昇る満月の下、闇に沈んだ中庭で対峙する二人の少年。西棟の巨影を背景に、青白い月光を浴びた少年の名はヨンイル。中央棟を背にしたのはレイジ。ともに西棟と東棟のトップであり、常人離れした強さを誇るブラックワーク娯楽班上位者だった。
「王様も暇人やな。いくら夜やからって西棟の陣地まで出張してきて、看守にバレたら大目玉くらうで?」
「かてーこと言うな、ばれなきゃいいんだよばれなきゃ。万一ばれても黙らせりゃ問題なし」
「脅す気かい。おっかないな」
硫黄に似た火薬の臭気が鼻腔を突く。
鼻面に皺を寄せたレイジがヨンイルの横にやってくる。ヨンイルはその場に腰を下ろし、リラックスした姿勢で足を投げ出した。後ろ手をついて仰け反ったヨンイルにならい、レイジも隣に腰を下ろす。
「どないしたんや?胸に穴開いてる」
上着の胸の穴に目ざとく注目し、疑問の声をあげる。胸の穴に人さし指をひっかけたヨンイルが怪訝そうな顔をし、コンクリートの地面に尻を落としたレイジが肩を竦める。
「蛇に噛まれた。永久凍土の蛇に」
「サーシャかい」
嫌な顔をしたヨンイルの手を払いのけ、上着の胸を指で摘む。ちょうどシャツの内側にさげた十字架が穴の位置にくるために、月光を反射した金色の光がこぼれる。
「サーシャもなんでああお前にご執心なんやろな。きっと恋やな、恋。お前のことが好きで好きでもう辛抱たまらんでつい意地悪してまうんや」
「意地悪で済むか、服の内側にナイフ突っ込まれたんだぞ?いつ頚動脈かっきられるかひやひやしたぜ」
「うそつけ、顔笑ってるで」
「いやマジで怖かったって、信じろよ。サーシャの目完全にキレてたし蛇に射竦められた蛙の心地がしたよ、思い出しただけでちびりそう」
「笑いながら言っても説得力ない」
「しかたねーだろ」
月光に映える横顔に甘い笑みを浮かべたレイジが、自分の口元を指さして言う。
笑っているのに笑ってない、空っぽの笑顔。
「この顔しかできねえんだよ」
「難儀やなあ。お前の同房に同情するわ、それじゃ本音でしゃべっても冗談にしか聞こえんやろ」
「ロンにはいつも本気だよ。本気で愛を語ってるし本気で抱きたいし」
「うるさい。アホ。さらりと抱きたいとか言うな頭に白蟻沸いたバカ王。聞いてるこっちが痒うなる。あーーーーかゆいかゆい、ほら見ろお前が平然とキザな台詞吐いたせいで鳥肌が!!」
肘まで袖をめくりあげたヨンイルの腕にはなるほど鳥肌が浮いていたが、レイジは素知らぬ顔で鼻歌を奏でていた。音痴な鼻歌だ。音程がめちゃくちゃで聞くに耐えない。袖をおろし、今度は不快げに耳を塞いだヨンイルがはげしくかぶりを振る。
「へたっくそな鼻歌はやめい、気分が悪うなる。俺はおまえの音痴克服練習に付き合って中庭まで出てきたわけやないぞ」
「ひどい言いぐさだな、傷ついた。責任とって嫁にして」
片手で胸を押さえ、ショックを受けたふりをするレイジにヨンイルは完全に白けていた。レイジの意見は取り合わず、ため息を吐いて空を見上げる。コンクリートの巨大建造物が威圧的に押し迫った夜空に玲瓏と月が輝き、清浄な月光が降り注ぐ。
「お前が最後までペア戦勝ち進んだらの話やけど」
唐突にヨンイルが呟き、無意識に十字架をまさぐっていたレイジが顔を上げる。
「俺、南か北とペア組まなあかんのか?」
「ペア戦だからなあ。そうじゃねーの?」
「当事者のくせに知らんのかい、なんちゅー適当な」
「いいじゃんペア組めば。北と西だろうが南と西だろうが正々堂々相手してやるよ」
「お前がよくても俺がよくない。南はまあええとして北のトップってサーシャやろ、嫌やであんな頭イカレた奴と組むの、命がいくらあっても足らん。俺は一人のが性にあってるんや。どうせお前除いた三人でペア組むと一人あぶれるし、俺は単独で参加するわ。そっちのが色々やりやすいし上もまあ大目に見てくれるやろ」
「嫌われてるなサーシャ。可哀想に」
「そういうお前はどうなんや?サーシャに殺したいほど憎まれ愛されて嬉しいか?」
「ああ嬉しいぜ、お前が五十嵐に愛されてるくらいにゃ」
レイジをからかったヨンイルが手痛いしっぺ返しに渋面を作る。舌打ちして地面に寝そべったヨンイルが月まで届けと盛大に嘆く。
「ほんっま性格悪いなお前、なんで今五十嵐の名前だすんや!?せっかくのええ気分がぶち壊しや、キレイなお月さんに申し訳ないとは思わへんのか?謝れ、そこに手をついて謝れ!せやないと月に代わってお仕置する!」
「『性格悪い』?ありがとう最高の誉め言葉だ、女に『今夜のあなた最高だった、お返しに次は騎乗位で』って言われる次に」
煮ても焼いても食えない笑みを浮かべたレイジに怒る気も失せる。こいつの言動を真に受けるだけ馬鹿だ、長い付き合いでそんなことわかりきってたのに不覚にも一本とられたと歯噛みし、勢い良く起き上がる。
「本当に心当たりないの、五十嵐に恨まれる原因」
憮然と胡座をかいたヨンイルににやつきながらレイジが指摘する。
「漫画読みながら歩いててぶつかってそのまま謝らずに行っちまったとか、五十嵐が借りようとしてた漫画を自分が独り占めしたいばかりにどっかに隠したとか」
「……ないとは言いきれん。いや、でもそれで階段から突き落とされるのは割にあわん。ええ大人のすることか?一歩間違えれば死んどったちゅーに」
「もう死んでるようなもんじゃん」
なにを今更と鼻で笑い飛ばしたレイジが首周りの金鎖を手繰り、シャツの内側から十字架を引っ張り出す。金鎖を纏い付かせた十字架を頭上に掲げ、神聖な儀式の一幕の如く月光に翳す。青白い月光を反射した十字架が清浄に輝き、レイジの顔に十字の影が落ちる。
「俺もお前もここに放りこまれた時点で死んだようなもんだ。国でオイタが過ぎて極東の砂漠に島流しされた身だ、いい加減認めちまおうぜ兄弟。社会的には死人も同然でいまさら脱獄して国に帰ったところで戸籍も抹消されてんだから東京プリズンに骨埋める覚悟で楽しく人生送らなきゃ損ソン」
「釜山に帰ろうなんて思ったこともないわ。いまさら帰っても俺の居場所ないしじっちゃんおらんし……手紙は定期的に来るけど、それだって義理と惰性で続いてるようなもんや。いつ絶えてもおかしくない。まあそんなもんやろ人間て、薄情者て恨むんは筋違いや」
まんざら虚勢でもないのんびりした口調でヨンイルがうそぶき、意味ありげな目つきでレイジを見る。
「お前はどうや、レイジ?生まれ故郷が恋しゅうなったか。国に家族がいるんやろ。前に言うてたよな、その十字架おかんから貰ったもんやって」
好奇心旺盛に身を乗り出したヨンイルが畳みかけるように質問し、レイジは十字架をいじりながら微笑んだ。
「家族はいるけど、俺がいないほうが幸せだ」
何を思い出しているのだろう、その声は空虚に明るかった。感情を見せない微笑に当惑したのはヨンイルの方だ。しんみりした雰囲気を吹っ切るように顔を上げたレイジがシャツの内側に十字架を戻し、指の間からこぼれた金鎖が清澄な旋律を奏でる。
「俺は今幸せだよ。かわいい愛人たちからたくさん手紙が届くし図書室は本が充実してるから退屈しないし娯楽班の試合はいい運動になる」
ヨンイルに顔を近づけ、まっすぐに目を覗きこむ。
「何よりロンがいる。東京プリズンは天国だ」
強がりの嘘にしてはあまりに衒いなく、悪い冗談にするには真剣な声音だった。
月光を吸い込み、芳醇に深まった瞳に魅入られたように息を止めていたヨンイルの口元に共感の笑みが浮かぶ。
「―俺もや。好きなだけ漫画読み放題の東京プリズンは天国や、もう一生ここから出とうない。今の俺は爆弾作りより何倍も何十倍も何百倍も面白いこと見つけたんや。俺の望みはただひとつ、死ぬまで一生漫画を読み続けること。ブラックジャックも明日のジョーもカムイ伝も三国志もめぞん一刻も奇面組もがきデカもまことちゃんも絶対一生読み続けたる、だれも俺が漫画読むのを止められん、俺は漫画読むために悪魔に魂売り払ったんやんから地震がこようが天変地異が起ころうが本棚にかじりついて漫画を読み続ける」
「やっぱ似てるな、俺たち」
「王様は道化、道化は王様か。そうやな、お前お得意の笑顔七変化は道化の特徴やな」
互いによく似た経緯で東京プリズンに送られ、東京プリズンで運命の出会いを果たし。
祖国に居場所をなくし、最悪の環境で居心地良い居場所を見つけ。
共犯めいた笑みを交わす王様と道化をただ砂漠の月だけが見ていた。
外国人就労者の増加による治安の悪化と犯罪発生率の高さに頭を痛めた政府が、今世紀初頭の東京大地震で誕生した砂漠に世界に類を見ない規模の刑務所を設立した。
周辺住民の抗議をおそれるように俗世間と隔絶した不毛の砂漠に設立された刑務所にはさまざまな肌とさまざまな目の色、そしてさまざまな国の人間が集められた。
人種の坩堝という表現がこれほどふさわしい環境もない。
二十一世紀前半の少年法改正により少年院から少年刑務所へと改名され、未成年の犯罪者だろうが成人と区別なく裁判で裁かれるようになった。
……が、陪審制度が導入された裁判は必ずしも公正とは言いがたく、陪審員の心証ひとつで判決が大きく左右されてしまう。
情状酌量の余地がある被告が裁判時の態度が悪くて陪審員の不興と反感を買い、重い刑罰を課されることもある。
被告が国籍を持たない日本生まれの二世だととくにこの傾向が強い。陪審員にはおもに裕福な中産階級の日本人が選ばれるからであり、中には彼らを日本を内側から食い荒らす害虫か何かのように毛嫌いしてる者もいる。
無国籍スラム化が進んだ現在でも、いや、現在だからこそ都下スラム出身者には根強い偏見がある。中にはスラムの住民を犯罪者予備軍と呼んではばからない者もいる。
実際、治安が悪いスラムでは強盗や殺人などが日常茶飯事に蔓延してる。複雑な家庭事情から逃げるように路上生活者となった少年らが徒党を組んで集団強盗を働くなど生きる為の犯罪をくり返しているのが社会の底辺の現状であり、実に東京プリズンに送られる犯罪者の八割が犯罪や暴力と隣り合わせの環境で育った若者たちだ。
東京少年刑務所は特異な構造をしている。
砂漠は足立区とほぼ同面積で52.14km2。その中心に位置する刑務所は周囲を有刺鉄線に囲まれた難攻不落の要塞の威容で、東西南北に設けられた通用門兼搬入口からは毎日のように新入りを乗せたジープが出入りしている。
有刺鉄線の向こう側、刑務所の敷地内には巨大すぎて視界に把握できないコンクリートの建造物がある。
それ自体ひとつの砦のような景観の巨大建造物は渡り廊下で繋がれているが、囚人が直接渡り廊下を通ってそれぞれの棟を行き来することはない。中央棟を核に東西南北に展開した四つの棟で現在使われている渡り廊下は中央棟に行き来する四本だけだ。それぞれの棟を直接繋ぐ渡り廊下は抗争が原因で封鎖されて久しい。
中庭も例外ではない。
東西南北の棟が面した敷地は中庭として囚人に開放されている。が、中央棟と接続した渡り廊下を中空の境界線に、「あの下をくぐったら敵の陣地」と漠然と認識されているために違う棟の囚人が活発に交わることもない。
東京プリズンの全景を俯瞰図で表せば、正方形の中に十字架がおさまっているように見えるだろう。正方形の外枠は棟と棟とを繋ぐ渡り廊下であり、中央棟を貫いて十字に交差しているのが中庭の境界線の渡り廊下。
縄張り意識が強い囚人は滅多なことでは境界線を越えず、暗黙の掟を破って越境した愚か者には容赦しない。もしバスケットボールを追いかけて他棟の囚人がうっかりこっち側にやってきたら途端に戦争が始まり、死人がでる。
ごく一部の例外を除いて。
その例外が、いた。
場所は西棟の中庭。異形のコンクリート建築を背景に、中庭の真ん中に立っているのは一人の少年。
少年は奇妙な風体をしていた。
顔の上半分を覆った暗色のゴーグルが目の表情を隠しているため、全体の造作は定かではない。が、針金のように立たせた短髪とやや大きめの口、頬から顎にかけて精悍に引き締まった線から快活な気性がうかがえる。
黒と白の格子縞、垢染みた囚人服こそ他の囚人と変わらないが、黒いゴーグルをかけた少年には他と一線を画す異質なオーラがあった。
上に立つ者特有の威圧のオーラ、とでも言えばいいだろうか。
今は深夜、視界は闇に包まれている。中庭は無人。消灯時間を過ぎて出歩いてるのが看守に見つかれば厳罰に処されてるというのに怯えた素振りとてない。
「今度のは自信作や」
だれにともなく呟き、ポケットに手を入れる。手の中に握りこんだのは黒い丸薬。東京プリズンに来て五年、現役を退いて五年だ。腕は錆びついてないだろうか?掌中の丸薬をもてあそびながら束の間回想に耽る。娯楽班の試合で腕前を発揮する以外には見せ場もなく、最近は図書室に入り浸りで研究が疎かになっていた。が、試作品の実験はしといて損がない。ぶっつけ本番で挑んで誤爆でもしたら目もあてられない。勝ち負けにはこだわらないほうだとはいえ、できることなら満場の客の前で恥をかきたくないのが本音だ。
ゴーグルの内側で目を閉じ深呼吸、集中。右手に握りこんだ丸薬は三つ。
いや、正確には丸薬ではない。
「弾けい!!」
素早く手を抜き放ち、大きく腕を振りかぶる。夜空に放物線を描いた丸薬が三つ、地面に落下時に強い衝撃を受ける。
閃光。
漂白された視界の中、大気を震わす轟音と震動のうねりが足元に突き上げてきて、危うくバランスを崩しそうになった。鼓膜が痺れるような轟音が殷殷と闇にこだまし、コンクリートの地面に走った衝撃があたり一面にたゆたう白煙に紛れて分散してゆく。
「ちと火薬が多すぎたかな?」
周囲にたちこめる白煙に咳き込みながら舌打ちする。以前なら全幅の信頼をおけた勘が少々鈍ってると認めざるをえない。以前なら目を閉じていても火薬の量を間違えるような初歩的ミスは犯さなかったはずだ。
祖父が生きていれば頭に拳骨を落とされていた。
根っからの職人気質の祖父は自分の仕事に誇りを持っていたが、娘の忘れ形見の孫におなじ道を歩ませるのを最期まで拒んだ。孫には人殺しの道具ではなく人を喜ばせる道具を生み出してほしいというのが祖父の願いだった。
祖父は口には出さなかったが、唯一の孫が両親の二の舞になるのを恐れていた。
『ごめんなじっちゃん、二の舞になってもうたわ』
反省の色もなく彼は笑う。
刑務所で獄死した両親の顔は覚えてない。母親は刑務所で臨月を迎えて彼を産んだが、刑務所を出ることなく、我が子を腕に抱くことなく死亡。父親の消息は不明だが、たぶん死んでいるだろう予感がする。刑務所で産声をあげた男児は祖父に引き取られ「龍一」と名づけられ、両親もまた与していた組織の中で育てられることになった。
そして今、彼は刑務所にいる。生きて外にでることはない。祖国からは収監五年が経過した今でも組織の活動内容と近況を知らせる手紙が届くが、殆ど義理のようなものだ。
彼の懲役は二百年、生きて刑務所をでるのは絶対に不可能だ。
だが彼は、別段その事を哀しんでるわけでもない。悲観してるわけでもない。どころか、逆に感謝している。本国政府に厄介払いされてこの刑務所に送られたからこそ、爆弾作りに代わる新たな生き甲斐を見出すことができたのだから。
「こんな夜更けに火遊びかよ、物騒だな」
からかいの声に顔を上げれば煙幕越しに人影が歩いてくる。ゴーグルを額に押し上げ、目を凝らす。外気に晒されたのはつり目がちの精悍な双眸、稚気と凄味とを均等に宿した剽悍な顔だち。ゴーグルを取り払った視線の先、白煙の筋をなびかせながら視界が晴れ、人影の素顔が暴かれる。
均整のとれた長身の男だ。いや、青年と呼ぶのが正しい年頃だ。頭の後ろで襟足にかかる髪を一本に結んだ青年はとても魅力的な容姿をしていた。
甘さと精悍さが黄金率で混ぜ合わさった野性的な美形。
「おうレイジ、夜遊びか」
「おう夜遊びだ。月が綺麗だから散歩してたら場違いな爆発音が聞こえてな、なんだろうって来てみりゃ西の道化がだれも観客いない中庭でパフォーマンスしてた」
「パフォーマンスやない、予行演習や」
「にしちゃ凄い威力だったぜ。少しは加減しろよ、寝た子が起きちまうだろが」
空には月がある。
中天に昇る満月の下、闇に沈んだ中庭で対峙する二人の少年。西棟の巨影を背景に、青白い月光を浴びた少年の名はヨンイル。中央棟を背にしたのはレイジ。ともに西棟と東棟のトップであり、常人離れした強さを誇るブラックワーク娯楽班上位者だった。
「王様も暇人やな。いくら夜やからって西棟の陣地まで出張してきて、看守にバレたら大目玉くらうで?」
「かてーこと言うな、ばれなきゃいいんだよばれなきゃ。万一ばれても黙らせりゃ問題なし」
「脅す気かい。おっかないな」
硫黄に似た火薬の臭気が鼻腔を突く。
鼻面に皺を寄せたレイジがヨンイルの横にやってくる。ヨンイルはその場に腰を下ろし、リラックスした姿勢で足を投げ出した。後ろ手をついて仰け反ったヨンイルにならい、レイジも隣に腰を下ろす。
「どないしたんや?胸に穴開いてる」
上着の胸の穴に目ざとく注目し、疑問の声をあげる。胸の穴に人さし指をひっかけたヨンイルが怪訝そうな顔をし、コンクリートの地面に尻を落としたレイジが肩を竦める。
「蛇に噛まれた。永久凍土の蛇に」
「サーシャかい」
嫌な顔をしたヨンイルの手を払いのけ、上着の胸を指で摘む。ちょうどシャツの内側にさげた十字架が穴の位置にくるために、月光を反射した金色の光がこぼれる。
「サーシャもなんでああお前にご執心なんやろな。きっと恋やな、恋。お前のことが好きで好きでもう辛抱たまらんでつい意地悪してまうんや」
「意地悪で済むか、服の内側にナイフ突っ込まれたんだぞ?いつ頚動脈かっきられるかひやひやしたぜ」
「うそつけ、顔笑ってるで」
「いやマジで怖かったって、信じろよ。サーシャの目完全にキレてたし蛇に射竦められた蛙の心地がしたよ、思い出しただけでちびりそう」
「笑いながら言っても説得力ない」
「しかたねーだろ」
月光に映える横顔に甘い笑みを浮かべたレイジが、自分の口元を指さして言う。
笑っているのに笑ってない、空っぽの笑顔。
「この顔しかできねえんだよ」
「難儀やなあ。お前の同房に同情するわ、それじゃ本音でしゃべっても冗談にしか聞こえんやろ」
「ロンにはいつも本気だよ。本気で愛を語ってるし本気で抱きたいし」
「うるさい。アホ。さらりと抱きたいとか言うな頭に白蟻沸いたバカ王。聞いてるこっちが痒うなる。あーーーーかゆいかゆい、ほら見ろお前が平然とキザな台詞吐いたせいで鳥肌が!!」
肘まで袖をめくりあげたヨンイルの腕にはなるほど鳥肌が浮いていたが、レイジは素知らぬ顔で鼻歌を奏でていた。音痴な鼻歌だ。音程がめちゃくちゃで聞くに耐えない。袖をおろし、今度は不快げに耳を塞いだヨンイルがはげしくかぶりを振る。
「へたっくそな鼻歌はやめい、気分が悪うなる。俺はおまえの音痴克服練習に付き合って中庭まで出てきたわけやないぞ」
「ひどい言いぐさだな、傷ついた。責任とって嫁にして」
片手で胸を押さえ、ショックを受けたふりをするレイジにヨンイルは完全に白けていた。レイジの意見は取り合わず、ため息を吐いて空を見上げる。コンクリートの巨大建造物が威圧的に押し迫った夜空に玲瓏と月が輝き、清浄な月光が降り注ぐ。
「お前が最後までペア戦勝ち進んだらの話やけど」
唐突にヨンイルが呟き、無意識に十字架をまさぐっていたレイジが顔を上げる。
「俺、南か北とペア組まなあかんのか?」
「ペア戦だからなあ。そうじゃねーの?」
「当事者のくせに知らんのかい、なんちゅー適当な」
「いいじゃんペア組めば。北と西だろうが南と西だろうが正々堂々相手してやるよ」
「お前がよくても俺がよくない。南はまあええとして北のトップってサーシャやろ、嫌やであんな頭イカレた奴と組むの、命がいくらあっても足らん。俺は一人のが性にあってるんや。どうせお前除いた三人でペア組むと一人あぶれるし、俺は単独で参加するわ。そっちのが色々やりやすいし上もまあ大目に見てくれるやろ」
「嫌われてるなサーシャ。可哀想に」
「そういうお前はどうなんや?サーシャに殺したいほど憎まれ愛されて嬉しいか?」
「ああ嬉しいぜ、お前が五十嵐に愛されてるくらいにゃ」
レイジをからかったヨンイルが手痛いしっぺ返しに渋面を作る。舌打ちして地面に寝そべったヨンイルが月まで届けと盛大に嘆く。
「ほんっま性格悪いなお前、なんで今五十嵐の名前だすんや!?せっかくのええ気分がぶち壊しや、キレイなお月さんに申し訳ないとは思わへんのか?謝れ、そこに手をついて謝れ!せやないと月に代わってお仕置する!」
「『性格悪い』?ありがとう最高の誉め言葉だ、女に『今夜のあなた最高だった、お返しに次は騎乗位で』って言われる次に」
煮ても焼いても食えない笑みを浮かべたレイジに怒る気も失せる。こいつの言動を真に受けるだけ馬鹿だ、長い付き合いでそんなことわかりきってたのに不覚にも一本とられたと歯噛みし、勢い良く起き上がる。
「本当に心当たりないの、五十嵐に恨まれる原因」
憮然と胡座をかいたヨンイルににやつきながらレイジが指摘する。
「漫画読みながら歩いててぶつかってそのまま謝らずに行っちまったとか、五十嵐が借りようとしてた漫画を自分が独り占めしたいばかりにどっかに隠したとか」
「……ないとは言いきれん。いや、でもそれで階段から突き落とされるのは割にあわん。ええ大人のすることか?一歩間違えれば死んどったちゅーに」
「もう死んでるようなもんじゃん」
なにを今更と鼻で笑い飛ばしたレイジが首周りの金鎖を手繰り、シャツの内側から十字架を引っ張り出す。金鎖を纏い付かせた十字架を頭上に掲げ、神聖な儀式の一幕の如く月光に翳す。青白い月光を反射した十字架が清浄に輝き、レイジの顔に十字の影が落ちる。
「俺もお前もここに放りこまれた時点で死んだようなもんだ。国でオイタが過ぎて極東の砂漠に島流しされた身だ、いい加減認めちまおうぜ兄弟。社会的には死人も同然でいまさら脱獄して国に帰ったところで戸籍も抹消されてんだから東京プリズンに骨埋める覚悟で楽しく人生送らなきゃ損ソン」
「釜山に帰ろうなんて思ったこともないわ。いまさら帰っても俺の居場所ないしじっちゃんおらんし……手紙は定期的に来るけど、それだって義理と惰性で続いてるようなもんや。いつ絶えてもおかしくない。まあそんなもんやろ人間て、薄情者て恨むんは筋違いや」
まんざら虚勢でもないのんびりした口調でヨンイルがうそぶき、意味ありげな目つきでレイジを見る。
「お前はどうや、レイジ?生まれ故郷が恋しゅうなったか。国に家族がいるんやろ。前に言うてたよな、その十字架おかんから貰ったもんやって」
好奇心旺盛に身を乗り出したヨンイルが畳みかけるように質問し、レイジは十字架をいじりながら微笑んだ。
「家族はいるけど、俺がいないほうが幸せだ」
何を思い出しているのだろう、その声は空虚に明るかった。感情を見せない微笑に当惑したのはヨンイルの方だ。しんみりした雰囲気を吹っ切るように顔を上げたレイジがシャツの内側に十字架を戻し、指の間からこぼれた金鎖が清澄な旋律を奏でる。
「俺は今幸せだよ。かわいい愛人たちからたくさん手紙が届くし図書室は本が充実してるから退屈しないし娯楽班の試合はいい運動になる」
ヨンイルに顔を近づけ、まっすぐに目を覗きこむ。
「何よりロンがいる。東京プリズンは天国だ」
強がりの嘘にしてはあまりに衒いなく、悪い冗談にするには真剣な声音だった。
月光を吸い込み、芳醇に深まった瞳に魅入られたように息を止めていたヨンイルの口元に共感の笑みが浮かぶ。
「―俺もや。好きなだけ漫画読み放題の東京プリズンは天国や、もう一生ここから出とうない。今の俺は爆弾作りより何倍も何十倍も何百倍も面白いこと見つけたんや。俺の望みはただひとつ、死ぬまで一生漫画を読み続けること。ブラックジャックも明日のジョーもカムイ伝も三国志もめぞん一刻も奇面組もがきデカもまことちゃんも絶対一生読み続けたる、だれも俺が漫画読むのを止められん、俺は漫画読むために悪魔に魂売り払ったんやんから地震がこようが天変地異が起ころうが本棚にかじりついて漫画を読み続ける」
「やっぱ似てるな、俺たち」
「王様は道化、道化は王様か。そうやな、お前お得意の笑顔七変化は道化の特徴やな」
互いによく似た経緯で東京プリズンに送られ、東京プリズンで運命の出会いを果たし。
祖国に居場所をなくし、最悪の環境で居心地良い居場所を見つけ。
共犯めいた笑みを交わす王様と道化をただ砂漠の月だけが見ていた。
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