少年プリズン

まさみ

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百六十九話

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 むかつく。
 いくら僕がちびだからってこの仕打ちはないんじゃない?頭くるよまったく。
ペア戦二週目にして50組100人抜きの14組目。今戦ってるのは先鋒サムライ、右手のハンデは技量と度量で克服。ヌンチャクやらナイフやら釘バッドやら、殺傷目的の凶器をひっさげて襲いかかってきたガキどもと木刀一本で互角以上に立ち回ってる……らしい。「らしい」と仮定するしかないのはリングが見えないからだ。
 先週とおなじ過ちは犯さないとはりきって早めに来たのに、試合が始まってみれば我先にフェンスに殺到した人波に押し流され後方へと追いやられ、どんだけ背伸びしたってリングの様子が見えない始末。そりゃ確かに僕は140センチ台のちびだけどこれはちょっとあんまりだ。ま、僕が同年代平均を遥かに下回る小柄で貧弱な体躯なのは幼少期からクスリをやってたせいでもあるんだけど。いつまでたっても第二次成長期がこなくて声変わりもしてなくて、まだ脛毛だって薄いもんだからちょっと見女の子みたいに可愛い男の子を犯したいって親父にはウケがいいんだ。
 東京プリズンにくる前、渋谷の売春組織をしきってた頃は小動物系の容姿と天使のボーイソプラノで変態親父をたぶらかしてたけどぺドフィリアに好評な半面世知辛い苦労も多いのだ。
 「ちょっとどいてよ見えないよ、痛っ、押さないでよつぶれるっ!髪の毛引っ張るなよおい!」人ごみを掻き分け、少しでも前にでようと犬掻きしても無駄。試合に熱中した観客は僕のことなど目に入ってないらしい。ああもう、むさ苦しい。人いきれで窒息しそう。暑苦しく蒸した背中と背中に挟まれ、「サンドイッチにしても美味しくないよっ」ともがいてたら運良く人垣の綻びから抜け出ることができた。
 「あー、ひどい目にあった……」
 放心状態で額の汗を拭う。悔しいけど今日の試合観戦はあきらめたほうがいいかもしれない。今からじゃとてもリングが見える位置に陣取れないだろうし、ちびでやせっぽちの僕は力づくで場所をぶんどることもできない。最前列で幅を利かせてる凱たちが羨ましい、一等席を陣取るためによっぽど悪どい手を使ったんだろう。歓声飛び交うリングに背を向け、すごすごと退散しかけた視界の端を人影が過ぎる。
 「ん?」
 今まさに人垣を割り、歩み出してきたのは光の加減で金にも見える茶髪の男。傍らには肩で切り揃えた銀髪の男がいる。
 レイジとサーシャだ。
 「意外な組み合わせだ」
 軽く口笛を吹く。檻の入り口脇じゃロンと鍵屋崎がサムライの勝利を信じて声援をとばしてるだろうに、肝心の交代要員がそしらぬふりで抜け出てきていいのだろうか。レイジもいい加減だな、と呆れたが人垣の外に出たふたりを見比べ様子がおかしいことに気付く。気配を消してレイジに接近、何事か耳打ちしてリングを囲む人の輪の外に連れ出したらしいサーシャが横柄に顎をしゃくる。サーシャが顎を振った方角には人けのない通路が延びていた。先に歩き出したサーシャに促されてレイジも歩き出す。サーシャに従って通路へと吸い込まれたレイジの後ろ姿に好奇心が疼きだす。
 ふたりしてどこへ行く気だろう?
 試合中のサムライを放っぽって誘いに応じたのだからそれなりのワケがあるんだろう。茶髪の王様と銀髪の皇帝、東と北の二大トップの内密のやりとりが気になり、通路に吸い込まれたふたりを追って駆け出す。
 トンネルみたいに狭苦しい通路だった。
 通路に足を踏み入れてしばらくすると潮が引くように歓声が遠のき、地下空間の熱狂が異世界の出来事のように感じられる。開放的な空間から閉塞的な空間へ、天井に設置された蛍光灯がちかちか瞬く通路を歩いてると一枚のドアが見えてきた。
 サーシャがノブを捻り、先に中に入るようレイジを促す。とくに逆らうでもなく無防備に足を踏み入れたレイジに続いて扉を閉める。レイジとサーシャが入室したのを確認し、急ぎ足で駈け付ける。音がしないよう慎重にノブを捻り、わずかな隙間を開けて中を覗きこむ。どうやらボイラー室のようだ。四面の壁を埋めているのは間欠的に蒸気を噴出する大小無数の配管だ。幾何学的に交差した配管から噴き出された水蒸気がたちこめてるせいで中はサウナのように蒸し暑く、とてもじゃないが長時間いられそうにない。
 気密性の高いボイラー室は人に聞かれたくない話にもってこいだ。
 レイジとサーシャは右手の壁にいた。
 壁に背中を凭れ、両手をポケットに突っ込んだ姿勢のレイジの正面に立っているのはサーシャ。
 沈黙を破ったのはレイジだ。
 「で?内緒話ってなに。今相棒が試合中なんだけど」
 「相棒だと?は、諍いの最中のくせによく言う」
 「北棟にまで噂出回ってんのかよ」
 レイジがばつ悪げに舌打ち。が、すぐに表情を切り替える。
 「こんな人目のないとこに俺連れ込んでなにする気だよ、おまえ。北の皇帝様ともあろうお方が東のイエローモンキーにデートに誘うなんてどういう風の吹き回し?お前を崇拝してる北のガキどもが知ったらがっかりだな、皇帝の威厳大暴落だ」
 「貴様のように東の人間に忌み嫌われてる人望なき王と一緒にするな。私の家臣は皆忠実で従順だ、主への反逆などという愚かしいことをするはずがない。万一飼い主の手に噛みつけばどうなるか文字通り体に刻み付けてあるからな」 
 繊手を一閃、ポケットから抜き放ったのは銀光閃くナイフ。繊細かつ華麗な紋様が柄に彫られた見るからに高価そうな品で、無粋な武器というより好事家が収集する調度品の風格があった。目にもとまらぬ早さで鞘を振り捨て、レイジの顎に切っ先を擬したサーシャが微笑む。
 「……なあ。世の中には聞かないほうが幸せなことがたくさんあるってわかっちゃいるんだけど、気になるからひとつ質問させて」
 顎先に擬されたナイフに怯える素振りも見せず、切れ味鋭いナイフの重圧など微塵も感じてないさりげなさでレイジが口を開く。
 「こないだ俺とやった北棟のガキいたじゃん。ほら、お前にナイフ貸してもらった」
 「ああ」
 「試合後、あいつどうなった」
 「両足の親指と中指と小指を切り刻んだ」 
 「……やっぱ聞くんじゃなかった。もう一生まともに歩けないだろ、それ」
 顔をしかめたレイジの顎先にナイフの切っ先が食いこむ。ナイフの刃に映ったのは人間らしさなど欠片もないアイスブルーの双眸。
 「だからどうした?お前風情を倒せなかったのだから当然の処置だろう。獲物を狩れない猟犬は去勢される運命だ。切り刻まれたのが足の指で感謝されこそすれ恨まれる筋合いはない。奴も私の寛大さに恐れ入って歓喜の涙を滂沱と流していた」
 「痛かったんだろ単純に。なんでも自分に都合いいよう解釈するのは誇大妄想の特徴だ、エセ皇帝の悪趣味に付き合わされる北のガキどもはたまったもんじゃねえ」
 「偉そうに意見する気か?雑種が」
 口汚く吐き捨てたサーシャが、レイジの顎にナイフの切っ先を沈めたまま視線をおろす。憎憎しげにレイジをねめつけていた視線が頬の輪郭をすべり、よく引き締まった首筋を舐め、シャツの襟ぐりから覗く鎖骨へと辿り着く。獲物を味見する蛇のように粘着質な視線に自分が観察されてるわけでもないのに鳥肌が立つ。
 アイスブルーの双眸で青く燃える狂熱。
 興奮に乾いた唇を湿らし、ともすれば手元が狂って頚動脈を切り裂きそうな危うさでレイジの顎先にナイフを向けたサーシャが呟く。
 「……ああ、貴様は本当に汚い。その髪も目も肌もすべてが汚い。外見だけではなく品性と言動も卑しい、見てるだけで吐き気がする。何故貴様のように汚らわしい男が平然と王を名乗れる?東棟の頂点に君臨していられる?貴様に相応しい扱いは奴隷か家畜だ。奴隷に生まれついた者は死ぬまで奴隷、家畜に生まれついた者は死ぬまで家畜。お前の運命は生まれ落ちたときから決定していた、混血が雑種が、淫売の股から生まれた毛並みの茶色い犬が。なにを勘違いして王座にふんぞりかえっている?なにを勘違いしてブラックワークの王冠を戴いてる?貴様に相応しい装身具は黄金の王冠ではなく鉄の鎖、噛み癖を矯正する猿轡と首輪だろう」
 無抵抗のレイジを言葉でいたぶってるあいだじゅうサーシャの目は炯炯と輝いていた。ナイフを顎先に突きつけられたレイジは終始醒めた目で悦に入るサーシャを眺めていたが、これ以上支離滅裂な誇大妄想に付き合わされるのに飽いたかため息まじりに両手を挙げる。
 「そんなに王冠ほしけりゃ実力でぶんどってみろよ、相手してやるからさ」
 「本当だな」
 「しつこい男は嫌われるぜ」
 うんざり気味に肩を竦めたレイジの顎からゆっくりとナイフがはなれてゆく。沈黙。絹糸の前髪が紗を落とす眼窩に氷の瞳が輝いている。ナイフの銀光に魅入られるが如く緩慢な動きで腕を振り上げるサーシャ。右手に握り締めたナイフの先端で巧みに上着の裾をはだけシャツの内側にもぐりこませる。シャツの内側を這いのぼってくるナイフを見下ろし、レイジが微笑する。
 「なんのつもりだ」
 「命令だ。相手になれ」
 シャツの内側に片腕を突っ込まれてもなお動じないレイジの問いにサーシャが答える。
 「売春班が受け持つ客は代わりに自分が引き受けると愚民どもの前で宣言しただろう?その場に居合わせた家臣に聞いた。なら相手になってもらおうではないか」
 執拗に唇を舐めつつ、熱に浮かされたように呟いたサーシャがナイフを横に寝かせて素肌に密着させる。ナイフの刃から伝わったひんやりした感触に「つめて」と笑うレイジには怖気づいた様子など微塵もない。壁際に追い詰められ、服にナイフを突っ込まれてもまだ余裕ありげな物腰のレイジに嗜虐心をかきたてられたサーシャが刃を手前に引く。乾いた音をたてて生地の繊維が裂け、上着の胸から銀の先端がとびでる。
 「私は女の体を切り刻みながら抱くのを好む。ナイフの刃が血に濡れるさまと苦痛と快楽のあいだで歪む顔とを見比べながら絶頂を迎えるのを好む。お前は聞いたことがあるか、火で熱したナイフでゆっくりと生皮剥がされる男の悲鳴を。お前は見たことがあるか、ナイフを口に入れられ閉じるに閉じられず涙を流す女の顔を」
 「変態の寝言を通訳すると『たまってたまってはちきれそうだからヌかせてください』ってか」
 胸の裂け目からこぼれたのは金色の光、シャツの内側に下げていた十字架だ。上着を破かれてもレイジはまったく動じずに笑みを浮かべている。すごい度胸だ、とあきれる。神経が図太いにも程がある。レイジには恐怖心がないのだろうか?今自分にナイフを突きつけてるのはその狂気では他の追随を許さない北の皇帝サーシャだ。いつナイフが翻って頚動脈を裂くかもわからない状況下で下ネタを口にできるなんてどうかしてる、命が惜しくないのだろうか。
 突然、シャツの内側からナイフが引きぬかれる。
 十字架の鎖を鳴らし、上着の裾をはためかせて素早く引きぬかれたナイフを鞘に納めたサーシャがレイジの襟首を掴む。いや、正確には襟首ではなく首元の金鎖だ。痩せた腕で毟り取るように金鎖を掴み、忌々しげに唸る。
 「雑種の分際で私を愚弄するか?」
 「サーシャ。痛いよ」 
 「随分と洒落た首輪じゃないか。穢れた混血のくせにキリストを崇拝してるのか?」
 「苦しい」
 「もっと苦しめ、泣け、喚け。そうだその顔だ、その顔が見たかったんだ。いいざまだ、いつもひとを小馬鹿にした笑みを浮かべてる東の王が私に膝を屈する日をどれほど待ち望んだことか。貴様のような雑種が極北の皇帝の末裔、純血ロシア人たるこの私をさしおいて頂点に君臨していいはずがない。いいかよく聞け、私の夢はこの極東の地に第二のロシア帝国を築くことだ。斜陽の祖国から独立し、第二のロシア帝国をこの地に打ちたてることで私は真の皇帝になる。手始めにまずこの刑務所を支配して囚人どもを征服する、侵略には手駒の軍勢が不可欠だからな。それには貴様が邪魔だ、目障りだ。貴様がいるかぎり私は頂点に立てない、東京プリズンを支配することができない。まったく忌々しい男だ、貴様さえいなければ万事うまくいったのだ。黄色い淫売の股から生まれた下賎な雑種は私の靴でも舐めていればいいものを」
 嗜虐心に火がついたサーシャが力一杯鎖を引く。窒息の苦しみにレイジの顔が歪み、喉仏の上に食い込んだ鎖を掻き毟る。
 レイジがよわよわしく苦痛を訴えたところでサーシャが手を緩めることはなく、もっと苦しめといわんばかりにますます力をこめてくる。壁に背をつけ、酸素が回らない頭でもがき苦しむレイジにサーシャが欲情してるのは一目瞭然。

 汗にまみれて額にはりついた前髪。
 薄らと上気した目尻。
 熱っぽく潤んだ双眸。
 酸素を欲して緩慢に開閉される唇。

 苦痛の表情さえ淫らなレイジに我慢できなくなり鎖を掴んだ前傾姿勢から首筋に顔を埋める。
 レイジの息遣いが次第に荒くなる。息の通り道を圧迫され満足に呼吸できない苦しみに溺れているのか、サーシャの舌が与える快楽に身を委ねはじめているのか傍目にはわからない。鎖を引く握力が緩む、と同時に首筋の性感帯を舌で探られる。寄せては返す波のように苦痛と快楽が交互に訪れるせいで、完全には理性を捨て去ることができない生殺しの状態が続く。苦鳴なのか喘ぎ声なのか判別しがたい低いうめきが漏れ、鎖をもてあそんでいた手が十字架に伸びる。
 「淫売の雑種が、この程度で興奮しているのか?口ほどにもない王だ。今この場で跪いて私のものをくわえればこれまでの無礼は許してやってもいい。リングでの一騎打ちで四肢を切り刻まれるより恥をかかずにすむだろう?どうだ、半年前も言ったが私の愛玩犬にならないか。今ならまだ許してやる、半年前お前が私にしたことも独居房での屈辱の日々も全部水に流して可愛がってやる。こんな似合わない首輪など外してもっとふさわしい首輪をつけてやる」
 サーシャの指が十字架に触れると同時にレイジの手から力がぬけ、だらりと垂れ下がる。もはや完全に抵抗を止めたレイジが緩慢な動作で腕を掲げ、そっとサーシャの頬に触れる。突然頬に触れられ動揺したサーシャをよそに、頬からすべりおちた手が首の後ろに回り、襟ぐりを広げるように内側へともぐりこむ。
 伸びた襟ぐりから覗いたのは数えきれないほどの傷跡が浮いた胸板。
 鎖骨の下辺にある傷跡を人さし指でたどり、浅い呼吸の間から哀れみ深く呟く。
 「……可哀想に。痛かったろ」
 サーシャが狼狽する気配が伝わってきた。
 「なぐさめてやるよ」
 頬にそえられた両手が顔を導いてゆく。壁際に追い詰められ身動きとれず、それまでサーシャの愛撫を一身に受けて呼吸を追い上げられていたレイジが一瞬で優位を奪い、先導する側に回った。
 一瞬だけ顔と顔が重なり、唇と唇が触れ合う。
 千回のキスを交わした恋人にするように手馴れてて、ひょっとしたら愛情を注がれているのではないかと錯覚させる仕草だった。
 とんだ誤解だった。
 「!!―っ、」
 唇をおさえてあとじさるサーシャ。突き飛ばされ、だらしない姿勢で壁に凭れかかったレイジがぺろりと唇を舐める。
 レイジの唇には血が付着していた。キスに見せかけてサーシャの唇を噛みちぎった返り血。
 「なあ、元気でたろ?感謝しろよ、特別大サービスだ」
 「貴様………、」
 「たしかに俺は言ったよ、売春班のガキどもの代わりに抱かれてやるって。けどな、俺にも好みってもんがあるんだ。サーシャ、おまえキス下手すぎ。その程度のテクでイかせられるとでも思ってんのか、王様もなめられたもんだぜ。まあ首締めながら愛撫ってのはなかなか良かったよ、苦しいのと気持ちいいのとで長く続けられたら頭が変になっちまいそうだったし。女悦ばせる素質はあるよ、誉めてやるから有難く思え。あとはまあ、ナイフで切り刻みながらじゃねーと興奮しない変態性なおしてこい。俺を抱くのはそれからだ」
 親指で唇の血を拭い、好戦的にレイジが笑う。  
 「『逆』ならいいぜ。今この場で抱いてやろうか?」
 「後悔するぞ東の王」
 唇の血を拭い、ゆらりと立ち上がったサーシャが冷たい声で言う。もうすっかり氷のポーカーフェイスを取り戻したらしい、壁に凭れたレイジの方は見向きもせずドアへと向かう。       
 やばい、こっち来る!
 「貴様はリングで倒す。私の氷が溶ける前に勝ちあがって来い」 
 冷え冷えと宣言したサーシャがノブを捻り、ドアを開ける。危なかった。サーシャと入れ違いに曲がり角に身を隠した僕の視線の先、銀髪を振り乱したサーシャの後姿が遠ざかってゆく。サーシャの靴音が廊下に反響して消える頃、ポケットに両手をつっこんでボイラー室からでてきたレイジが虚空に声をかける。
 「そこに隠れてる奴、十秒以内に出て来い」
 嘘、なんでばれたんだ?
 知らぬ存ぜぬでやりすごそうとしたが、どのみちレイジをどかさないかぎり廊下を通ることはできない。廊下の真ん中に陣取ったレイジが動く気配は微塵もない。根比べに音をあげたのは僕の方だ。「ワン、ツー、スリー……」と間の抜けたカウントが響く中、おとなしく両手を挙げて歩み出る。
 「いつからわかってたの、隠れてるって」
 「おまえがドア開けた時。地獄耳なんだよ」
 自分の耳を指さしながらレイジが笑い、八秒数え終わった時点で廊下にでてきた僕と向き合う。ドアを開けたときから第三者の存在に気付いてたというが終始そんな素振りは見せなかった。
 とことん食えない奴だ。
 あきれ顔でレイジを眺めれば、サーシャにナイフを突きつけられたときもサーシャの唇を噛みちぎった瞬間も変わらず笑みを浮かべていた顔がふと曇る。
 「今見たことロンに言うなよ」
 「王様と皇帝が試合ほっぽらかしていちゃついてたって?バラしたら殺される?」
 茶化して聞き返せば、首周りの痣を撫でながらレイジが肩を竦める。 
 「人聞き悪いこと言うな。せいぜい半殺しだよ」
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