少年プリズン

まさみ

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百十五話

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 受刑者が日常生活の大半を送る房には陽がさしこまない。
 当たり前だ、房には窓がないのだから物理的に陽射しがさしこむことなどありえない。分厚く厳重なコンクリート壁で四囲を塞がれた息苦しい空間には見えざる手により始終頭を押さえ込まれているような閉塞感が陰鬱によどんでいる。殺風景な壁はむきだしの灰色で所々しみが浮かび、錆びた配管が幾何学的に交差した天井は仰向けになればすぐ視界に迫るほど低い。
 無機質で無機的で機能性はおろか居住性も十全に行き届いてるとはいえない不衛生な房だ。配管の接合部から滴った水滴がコンクリ床を穿つ単調な旋律も耳に馴染んでしまえばとるにたらない雑音にひとしい。無防備に床に座ればドブネズミやゴキブリなどがすぐ横を駆け抜けてゆく全く油断ならない環境だ。
 だが、それも一旦慣れてしまえば取り乱すには及ばない。 
 僕は時間の経過に伴いさまざまなことに順応していった。非日常に順応してしまえば日常になるように環境に対応して性格も変わるように、反射神経を磨いてシャベルを避けられるようになるまで半年かかった。客観的に長いか短いかの判断は保留するが僕にしてはよくやったほうだと自負する、自慢ではないが僕の運動神経の鈍さは天性の資質なのだ。おそらくは頭脳が人類の最終進化段階まで発達したのと反比例して跳んだり跳ねたりといった基礎的な運動能力が退化したのだろう、たとえば僕は日常生活に支障がでるほど視力が悪く裸眼では3センチ先の人間すら識別できない体たらくだがその欠陥を補うが如く聴覚の性能は鋭敏だ。
 だからこの朝、僕の眠りを妨げたのは断じて朝の陽射しなどではなく耳障りな音だった。
 紙が擦れる乾いた音だ。聴覚に侵入してきた音に連動して視覚が目覚め、薄く瞼を開ける。最初に目に映ったのは見慣れた天井だ。これが半年前なら自分が今いる場所がどこかもわからない錯覚に陥って混乱していたところだが今はそんなこともない、自分がいる場所がどこかちゃんとわかる。
 東京プリズンだ。
 二十一世紀初頭の相次ぐ地震により砂漠化した東京の中心に設立された悪名高い少年刑務所。そして僕が横たわっているのは寝返りを打つたびに尾てい骨をしたたかに打ちつけて悶絶する羽目になる固いベッドの上だ。
 「………」
 毛布をはだけ、半睡状態の頭を気だるげに巡らす。寝起き故か頭に霞がかったような倦怠感が一挙手一投足に付き纏う。ただ頭を半周させるだけの動作が密度の濃い霧の中をたゆたってるかのように億劫だった。横を向いた僕の目にとびこんできたのは一冊の本。
 昨夜レイジから借り受けた麻雀のルールブックだ。
 東京プリズンの図書室は蔵書が充実してる。ノンフィクション・ミステリー・古典文学に至るまで硬軟問わずさまざまな本が揃えられているというのにその内容に目を向ける囚人は少ない、とかく東京プリズンの囚人には読書という高尚な趣味を解さずに図書室を談話室と勘違いしてだべりにくる輩が多いのだ。憂うべき事態だ、嘆かわしい現状だと僕がしたり顔でかぶりを振ってみたところで何も改善されないが、趣味が高じてもはや習慣となった読書家としては苦言を呈したくもなる。
 そうか。僕の耳朶にふれたかすかな音は毛布と本のページとが擦れ合う音だったのだ。 
 耳が敏感にできすぎてるのも考え物だ。日常とるにたらないほんのささいな音にも好悪の判断を下す前に過敏に反応してしまうのだから。苦笑したい気持ちをおさえ、改めて枕元の本を見下ろす。あれから一応目を通した、図解が多かったせいで完読するのにそう時間はかからなかった。麻雀のルールは完璧に暗記した、実線に応用できるかはわからないが理論は完璧に記憶したのだから僕の天才的頭脳を持ってすれば容易に勝ちをおさめることができるだろう。
 相手がいれば、の話だが。
 むなしい仮定だ。ふと我に返り、自分がなにをやってるのか訝しむ。バスケットボールのルールも麻雀のルールも僕にはまるで関係ない世界の出来事ではないか、円周率や相対性理論ならともかくバスケットボールのルールなど覚えても僕には何の利益もない、麻雀のルールだって本来必要ないことのはずなのだ。
 僕が本を読んで頭で覚えたルールを友人と遊びながら体得してゆくのが「正しい子供」なんだろう。大人がそうあるべきだと望んで定義づけた本来あるべきすがたの子供、「無邪気」「無垢」と定型句で括られ語られる大人から庇護されるべき対象なんだろう。
 もしそうなら、僕には子供時代が存在しなかった。いや、この表現は正しくない。「鍵屋崎 直」という一個人の人生から「子供時代」が欠落している、とでも言えばいいのだろうか。僕は無邪気でもなければ無垢でもない、知識だけが異常に豊富な子供だった。大人の庇護欲をかきたてるような愛くるしさもなければ素直さも持ち合わせてない、どちらかといえば奇異の目で見られてけむたがれるタイプの子供だ。
 無口で無愛想。
 同年代の子供が興味を示すあらゆる事柄に無関心な姿勢を貫き、クレヨンを握って画用紙に落書きするよりも父の書斎に入り浸って本を読むことを好む変わり者の子供。僕に対する伯母夫婦の評価は手に取るように伝わってきた。彼らにとって僕はほとほと扱いにくい存在だったんだろう、僕自身はべつに伯母夫婦に敬遠されようがどうでもよかった、年に数回の頻度で対面した時に露骨に戸惑ったような目で見られるのは煩わしかったがそれだけだ。鍵屋崎優の長男に対するどこかぎこちない態度とは一転して彼らは恵を可愛がっていた、恵こそ彼らがそうあるべきだと望んだ子供、身の丈に合った心を宿した理想の子供だったんだろう。実子同然に恵を可愛がる伯母夫婦のことを僕は全面的に信頼さえしていた、彼らなら大丈夫だろうと、たとえ何かの事故に遭遇して僕と両親が一度に死亡するようなことがあっても彼らになら安心して恵を託すことができると楽観していたのだ。
 
 馬鹿だった。
 その結果が、これだ。

 あんなに恵を可愛がってくれたのだから大丈夫だろうと信頼したのに、ひとたび自分たちの手に余る事態が起きれば狼狽して責任放棄してしまう。伯母夫婦ばかり責められないのはわかってる、彼らは凡庸だが善良な人間だ、鍵屋崎優と由佳利のような非凡な資質にこそ恵まれなかったがどんな変化や事件も柔軟に受け止めて対応していける小市民の包容力を有していた。
 そう、彼らはよくも悪くも普通の人間だった。だから恵のことを庇護してくれるとおもったのだ、理解してくれるとおもったのだ、僕の両親がそうしたように決して恵を見下したりはしないと、広い家の中で恵をひとりぼっちにしたりしないと信用できたのだ。
 僕は普通じゃないから、普通の人間の気持ちがよくわからない。
 鍵屋崎優と由佳利は「普通」の価値観から逸脱していた。彼らを見本に育った僕も「普通」の基準がよく判らないままに成長した、そうして恵だけが異分子として取り残された。恵。至って平凡な僕の妹、普通の、だからこそかけがえのない妹。
 本当に、本当に恵のことが好きだった。大事だった。守りたかった。守り抜きたかった。
 必要とされたかった。
 だから、刺した。両親を刺殺した。正確に急所を突いて人体の奥深くへとナイフを押しこんだのだ。あの時の判断には何も間違いはなかったと自信をもって断言できる、もしあのまま看過していれば恵の生涯は台無しになっていた、恵の将来は台無しになっていた。
 妹を守る為なら両親だって殺す。躊躇なく、狼狽せず、確実に。あの小さな手からナイフを奪うことに何の良心の痛痒も感じなかった、恵の手を血で汚す位なら、あの強欲な男の血で汚す位なら自分の手を汚したほうがマシだと本気で思い込んでいたのだから。
 小さな手だった。ナイフを奪うのなんてあっけないくらい簡単だった。 
 恵を守るためなら、恵がいてくれるならなんだってできた。僕には惠以外の誰も要らない、他の人間なんて要らない。惠さえいればそれでいいと頑なに思い込んでいた心が溶け始めたのはいつ頃だろう。信頼には至らないまでも信用には足る同房の男を自分でも無意識のうちに頼り始めた。得体の知れない、胡散臭い男だ。口数は僕よりさらに少なく、会話を成立させるのにこれ程忍耐を要する相手もめずらしいとあきれることもしばしばだが実際僕は彼の存在に助けられている。
 でも、これでいいのか?
 一方的に助けられるばかりでいいのか?
 あの時サムライは「俺を頼れ」と言った。生き残るためには時にプライドを挫いて他人を頼ることも大切だとしずかに、だが力強く説いた。正論だ。いまや僕は自分が無力だと認めざるをえない、だが無力ゆえに貪欲に成長することができた、周囲の状況を冷静に分析し瞬時に利害を汲み取る能力を身に付けることができたのだ。
 効率論を重視する僕から言わせてもらえばロンがやってることは滑稽としか言いようがない。どうしてああも他人の為に一生懸命になれるのか、自分が不利な状況に陥ってまで他人を気にかけることができるのか理解しがたい。彼の行動原理は甚だ非効率で不可解きわまりない、僕とは相容れない価値観の下に行動するロンを斜に構えて冷笑してなかったとは言えない。
 でも、彼がやってることは本当に無駄なのか?
 偽善者気取りの自己満足なのか?その一言で斬り捨てられ片付けられてしまうようなことなのか?
 偽善者?ちがう。彼は善を偽れるほど器用な人間じゃない。
 自己満足?ちがう。彼は自己に満ち足りてなどいない。
 
 僕はサムライからもロンからも借りっ放しで、助けてもらうばかりで、それで本当にいいのか?

 「…………」
 思考の助走を終え目を開ける。
 このさき使うこともないだろうが麻雀のルールは完璧に頭に入力した。たとえそれがどんな些末な雑学でも知識を吸収するのは無駄なことではない、と思いたい。毛布をはだけ、ベッドに腰掛ける。素足の裏が床に接触すると氷柱をさしこまれたようにひやりとした冷気が立ち昇ってくる。ベッドの横にそろえて脱いだスニーカーに踵をもぐりこませようとして眉をひそめる。半年間の酷使に耐え抜いたスニーカーは泥にまみれてくたびれている、入所半年が経過したから今月中には新品が支給されるはずだがイエローワークを除名された僕には余り必要ないかもしれない。
 ブラックワーク二班の仕事内容から推察するに、足で地を踏んでいる時間よりベッドに横たわっている時間のほうが長いからだ。
 汚れたスニーカーをじっくりと観察し、ふと靴底のゴムが剥がれかけているのに気付く。靴の裏面から前部が剥離しかけたゴム底を見下ろし思案を巡らす。ズボンのポケットに手をあて、まさぐる。昨夜レイジが投げ捨てたのを回収した針金がポケットにおさまっている。
 窮屈な前屈姿勢をとってスニーカーの靴紐を結びなおしていると隣のベッドで起き出す気配。衣擦れの音に反応して即座に顔を上げればサムライが上体を起こしていた。寝起きだというのにサムライの背筋はしゃんとのびている、サムライの姿勢のよさは習慣が習性となった人間特有の潔癖さの表れなのだろう。
 「………今日からだな」
 「ああ」
 何を指してるかは理解できた。サムライも十分に理解した上で露骨な呼称を避けたのだろう。確かに積極的に口にしたい部署ではない。
 「いいのか?」
 なにかを探るように、確かめるように、凄味さえ孕んだ低い声が大気を震わせて響く。何故だかいつにも増して陰鬱な面持ちのサムライを見据え、できるだけ無表情に端的に心情を伝える。
 「僕に決定権はない。拒否権もない。あるのはただ、」
 「ただ?」
 「義務感と諦観だ」 
 実際「上」の通達を拒否できるわけがない。僕は囚人なのだ、両親を殺害して服役中の徹底的に自由と選択権を剥奪された身の受刑者なのだ。就労通知を受け取った時点で僕の運命は決定した、おそらくは最悪の方向へ、もう二度と這い上がれないだろう底の底へ。
 僕はブラックワークの実態を知らない。
 娯楽班の実態は週末限定で闘技場と化した駐車場に自発的に赴かないかぎり目にする機会はないし、処理班にしても作業は専ら人目のない深夜に極秘裏に行われる。中でいちばんおぞましく生々しい売春班の実態も謎に包まれている、積極的に知りたいことでもなし今の今まで無関心故の無知を決めこんできたのがこんな痛烈なかたちで報われるとは皮肉なものだ。
 「百聞は一見にしかずと言うだろう。実際体験してみたほうが早、」
 「俺が聞いているのはお前の『考え』じゃない、お前の『想い』だ。直」
 不意打ちのように名を呼ばれて機械的に靴紐を結ぶ手が止まる。靴紐にふれたまま、視線だけ上げてサムライを仰ぐ。背格子にもたれることなく、背筋を凛々しくのばした端正な姿勢で上体を起こしたサムライが喩えようもなく深い目で僕を見つめている。
 清冽な水のような、清澄な泉のような、あまりに底知れず深すぎて冥府に繋がるような不安さえおぼえる黄泉の目。
 「………いやに決まっているだろう」
 愚直に覗きこんだ漆黒の目に魂を奪われかけ、強引に顔を背ける。
 「だから?僕の快不快なんて問題じゃない。たとえ不感症の僕が他人にさらわれるのを極度に嫌がろうが許してくれるはずがない、ここの連中がきみみたいな紳士ばかりだと安穏と信じてるほど僕は楽観主義者じゃない。それとも武士、と言い換えたほうがいいか?」
 耳によみがえるのはロンの言葉。不感症は便利だな、と吐き捨てるように揶揄する口調。
 「心配には及ばない。遺伝子をいじくった後遺症だか何だか知らないが僕は性的快感に反応しないようにできてるんだ、自分より知力も品性も劣る客の下でみっともなく喘いで一生の汚点を残すこともない。ああ、今思い付いたが」
 自虐的なまでに痛々しい、わざとらしい口調で付け足す。靴紐に手をかけた姿勢から上目遣いにサムライを仰ぎ、挑発。
 「僕を組み敷いて征服した気になってる客の下で快感に喘ぐ演技で君の名前でも呼んでやれば面白い反応が見れるだろうな」
 鼻梁に落ちた眼鏡を押し上げ、今度はきっかりと、水平方向からサムライを直視する。
 何か返してみろ、と眼力の気迫をこめて。
 ベッドに上体を起こして物言いたげに僕を見返していたサムライの目に複雑そうな色が過ぎる。僕の身を一途に案じている真摯な色と揶揄されたことに戸惑いをおぼえて困惑する色、そして一抹の反感とが混沌と溶け合った悲哀にも通じる色。
 「皮肉を言う元気があるなら大丈夫そうだな」
 複雑な陰影をおびた眼差しをわずかに伏せ、サムライが呟く。自己嫌悪に苛まれて視線を背け、立ち上がる。かすかに異物感の残る靴底で二度三度床を叩き接着させてから鉄扉へ歩く。一歩足を踏み出すごとに、距離が離れるごとにサムライの視線を強く意識して肌に感じてしまう。神経が過剰に苛立っているのが自分でもわかる、今声をかけられたらプライドを要になんとか塞き止めている堰が決壊してしまう、堰が決壊してさまざまな感情が一気にあふれだしてしまう。このまま振り返らずに出て行くのがいちばんだと自分に言い聞かせ、深呼吸してノブを握り―
 「戻って来い」
 背後で声。
 ノブを握り締め、肩を、背中を強張らせる。僕の背後でベッドに腰掛けたサムライが至極淡々と言葉を紡ぐ。その言葉は透き通った水の如く心の表層に沈殿した澱を洗い流し、もっとも柔らかで繊細な奥底へと染みこんでいった。
 「待っているぞ」
 だれでもないだれかに祈るような切実な響き。
 たった一言。その一言で、危うく振り向いてしまいそうになった。惰弱な本音を吐露してしまいそうになった。
 「言われなくても、」
 ノブを捻り、背中で答える。突き放すように、すがるように、矛盾する感情を研ぎ澄ました硬度の言葉の刃に変えて。
 「僕が帰る場所はここしかない」
 そうだ。
 僕が帰る場所も居場所も、もうここにしかないんだ。
 サムライの隣以外には、もう。
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