少年プリズン

まさみ

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百四話

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 「はだしで嫌味言われても説得力ねえ」
 あきれたように指摘され、コンクリートの中庭に裸足で立ち尽くしている自分というこの上なく間抜けな状況を思い知らされる。失態を繕おうと手に持ったスニーカーを地面に投げ落とし踵をくぐらせる。摩滅したゴム底でコンクリートの地面を叩き、有無を言わさず五十嵐へと片手を突き出す。
 「返してください」
 無言で自分の手元を見下ろした五十嵐がまじまじと僕の顔を見る。
 「おまえのか?」
 「この状況下で僕以外の私物と断定する根拠はないはずですが」
 「上から降ってきたんだよ」
 「干してたんです」
 「ああ」
 つられるように展望台を仰いだ五十嵐が僕へと向き直り、しみじみと呟く。
 「イエローワークの砂漠に井戸沸いたんだってな。……ってことは井戸掘り当てた六班の親殺しってのはお前か、やっぱり」
 「正確には僕じゃありません、井戸を掘り当てたのはロンです」
 「ロン?ダチか」
 僕の片手にスニーカーを預けながらさして興味もなさそうな口ぶりで訊いてきた五十嵐の前で生渇きのスニーカーを履き、そっけない横顔で応じる。
 「どこからそんな発想がわいてくるか理解しがたいですね」 
 スニーカーに踵をもぐりこませて顔をしかめる。水を吸って膨張したスニーカーの内側が白くふやけた足全体を陰湿に圧迫してくる。大量の水分を吸収したせいでぐっしょり重くなったスニーカーの底を二度三度、苛立ち紛れに地面に叩き付ける。明日の強制労働までには乾くといいのだが……悲観的な未来予想にうんざりした僕を現実に戻したのは五十嵐の声。
 「ひさしぶりだな」  
 顔を上げる。疎遠になっていた十年来の友人に同窓会で再会し、その変貌ぶりに絶句したように五十嵐は言う。不器用な口調にもましてその心中を代弁していたのは表情。四十路にかかるか否かという男盛りの年齢で早くも生活に疲れ始め、やさぐれた哀愁をただよわせている横顔におそらくは彼本来の資質なのだろう、看守が囚人に対する態度には不似合いな親身な同情の念を湛えている。
 「半年も経つのによく覚えてたな」
 「僕は天才ですよ。一度聞いた名前を忘れるわけがない」
 そうだ、完全に思い出した。
 僕と対峙した男の名前は五十嵐、僕とリュウホウとダイスケを護送車の荷台に乗せ、丸一昼夜をかけて東京プリズンに連れてきた運転手だ。下の名前は省略されたからわからないが、珍しい苗字だなと妙に関心したから初対面の印象は強かった。護送中に五十嵐と交わした言葉は数えるほどしかないが、囚人の監視目的で荷台に同乗した看守が横暴かつ粗暴なタイプで道中たびたび僕らに暴力をふるっていた。気まぐれに警棒で殴打されても僕を含む囚人は反抗しなかった、そんなことをしても無駄だという諦観が痣が増えるごとに皮膚に馴染んでいったから。
 殴打された皮膚が鬱血し青黒い斑点にむしばまれてゆくように、ひとつ痣が増えるごとに皮膚の下を絶望の皮膜が覆っていった。その皮膜は強力な弾性があって、警棒で一回殴打される毎にさらに厚みと弾力をまして全身を覆っていき、今や僕の体の一部として吸収されてしまった。
 だが、五十嵐は違った。逆上した看守が十何回目に警棒を振り上げて僕を殴打しようとした瞬間に口を開き、
 『そのへんにしておけよ』
 あくびまじりの皮肉げな口調でやんわりと制止したのだ。
 そのことを感謝してるわけではないが、半年が経過した今、弱肉強食が至上の掟として認知された東京プリズンの過酷な環境にある程度順応した半年後の今になって当時の運転手と再会を果たしたことに悪趣味な皮肉を感じずにはいられない。
 「元気だったか?」
 他に気の効いた台詞を思い付かないから無難に常套句を吐いた、といったなげやりな風情で五十嵐が水をむけてくる。看守の世間話に付き合う趣味もなければそんなおおらかな気分でもないが、一方的に僕ら囚人に同情を寄せてるらしい看守を無視するのも大人げない。仕方なく、口を開く。
 「元気に見えますか?僕が」
 「まあまあ、な」
 「東京プリズンじゃ現在進行形で生きているだけで元気な部類に入るんでしょうね」
 五十嵐が少し笑う。僕は無表情。
 「一緒に来たふたりはどうした?」
 僕と一緒にジープの荷台に乗せられていた囚人ふたりの現在に関心を持ったのだろう、回顧的な郷愁を伴う世間話の延長、なにげない調子で消息を問うてきた五十嵐をまっすぐに見る。
 眼鏡越しの視線の透徹した硬度に気圧されたか、上下関係の距離が存在しない笑みを浮かべた五十嵐の表情が動揺に崩れる。
 「死にました」
 眼鏡のブリッジを押し上げ、無感動に答える。五十嵐の顔が驚愕に強張り、救い難く痛々しいまなざしが僕へと注がれる。同情のまなざしを避けて顔を背け、努めて無表情に、何の感情も窺い知れない平板な声を出す。
 「リュウホウは自殺です。房で首を吊りました。ダイスケはリンチで……」
 「そうか」
 深々とため息をつき、五十嵐が首を振る。
 「生き残ったのはひとりだけか」
 『生き残り』。好きになれそうにない呼称だ。さりげなさを装って話題を変える。
 「ここでなにをしてるんですか?」
 「バスケットボールの審判を頼まれてな」
 五十嵐が顎をしゃくった方角をつられて見れば、過酷な強制労働でも搾取できない体力を持て余した囚人がはげしくぶつかりあい、両陣営の間をめまぐるしく行き来するバスケットボールをめぐって熾烈な争奪戦を展開していた。
 驚いた。
 東京プリズンにバスケットボールの審判を頼まれるような、また、囚人の頼みを気安く引き受けてくれるような看守がいたなんて。
 驚きに打たれた立ち尽くした僕が横顔に視線を感じて振り向けば五十嵐が妙な顔をしていた。動揺を見抜かれたようでばつが悪い。咳払いして五十嵐に向き直り、会話の軌道修正を図る。
 「前述の質問に対する答えがまだです」  
 西空を染める茜色の夕日がコンクリートの地面に長々と影を刷き、中庭に面して聳え立つ東棟の威容を際立たせる。
 収容人数増加の一途に伴い拡張と増築を繰り返し年々巨大化して行った東棟は内外問わず複雑な構造をしている。コンクリートの無機質かつ殺風景な外観を印象付けているのは階層毎に外壁に並んだ窓だが、粗暴な囚人が窓ガラスを破損したり発狂した囚人が高層階の窓から飛び下り自殺を計ったこともあるため、今ではその全てが手榴弾程度の衝撃では壊れない強化ガラスに交換された。
 展望台への唯一の出入り口として役目を果たす素通しの窓は東京プリズンの窓ガラスが特殊仕様に更新される以前の名残りだが、新たに窓ガラスを嵌め直すことなく放置されてる現況を鑑みれば、展望台が貴重な息抜きの場として機能しているのを知った「上」が故意に見て見ぬふりをしてる可能性が高い。万一展望台の出入り口に強化ガラスを嵌めて封鎖してしまえば暴動が発生するおそれもある、それを忌避した苦肉の策として囚人が展望台に出入りするのを黙認してるのだろう。

 しかし、窓は片側、すなわち廊下の側にしかない。

 囚人の居住房が位置する側には一つの例外もなく窓が存在せず、日常房で過ごす囚人は四囲のコンクリ壁が与えてくる閉塞感に押し潰されそうになりながら生活するしかない。
 凹凸が目立つ起伏に富んだ外観と陰鬱な要塞の威容、夕空を背景に屹立するグロテスクな輪郭の陰影も今では見慣れた日常風景の一部と化している。東棟の建造物が面した中庭を横断して宙空に架かっているのは中央棟へと続く渡り廊下で、僕と五十嵐が立ち話している地点から上空二十メートルほどの場所に在る。
 他に視線のやり場もなし、コンクリートの渡り廊下を眺めながら話を続ける。
 「なぜ護送車の運転手だった貴方が看守の制服に身を包んでるんですか?護送ジープの運転手が看守を兼任するほどこの刑務所の人材不足は深刻なんですか」
 「おれはもとから看守だよ」
 「参った」と言うように五十嵐が両手を挙げる。降伏の意を表明したわけではなく親愛の裏返しのポーズだろう。 
 「ただ、刑務所内でちょっとヘマやらかして謹慎処分をくらってたんだ。それじゃ体面悪いってんで何でもいいから仕事をくれ、雑用でもなんでもいいからココで働かせてくれって副所長にかけあってみたらちょうど護送車の運転手に欠員がでたことも幸いして、三ヶ月間だけ運転手の代役をしてたんだ。免許は持ってるしな、ほら」
 制服の襟元に手をもぐらせた五十嵐が黒皮の免許証入れを取り出し開いて眼前に掲げる。五十嵐に目配せで許可を得て免許証入れを受け取る。くたびれた黒皮の外装、中に入れられていたのは免許証ほかプラスチック製の各種カード類。五十嵐の証言に嘘はないようだ、三ヶ月間の期間限定で護送車の運転手として就任する旨をしるした許可証もあった。
 「無用心ですね」 
 許可証に添付された五十嵐の顔写真を見下ろし、呟く。
 「囚人にこんな貴重品を預けていいんですか?盗まないとも限りませんよ」
 「看守が見てるまえで堂々ネコババ働くような囚人いねえよ」
 とはいえ、不安になったのだろう。一介の囚人に私物を閲覧させている現場を同僚に見咎められてはまずいと、妙によそよそしい素振りで免許証入れを取り返そうとした五十嵐の手に黒皮の外装をのせかけ、止まる。
 写真だ。
 免許証入れをめくっていちばん最初に目に入るところに一枚の写真が挟まれていた。
 女の子の写真だ。
 季節は夏だろう、新緑の若葉茂る公園かどこかで撮られたとおぼしき一枚で、健康的な小麦色の素足にぴったり密着したスパッツを穿き、露出度の高いキャミソールから肩と二の腕をむきだしにしたショートヘアの少女が白い歯を覗かせて活発に笑っている。男の子のように短く切った前髪の下、凛々しい弧を描く眉は若干太く、少しきつめの印象のアーモンド型の目が気が強そうな顔だちに拍車をかけている。溌剌と日焼けした肢体を惜しげもなく晒したボーイッシュな少女の笑顔は、燦々と降り注ぐ夏の陽射しの中、大輪の向日葵のように生き生きと輝いていた。
 「娘さんですか?」
 恵の方が可愛い。
 本音は伏せ、五十嵐の手に免許証入れをのせる。 
 五十嵐の年齢から考えればそれがいちばん妥当だろう、少女愛好趣味の変態性欲者でもないかぎりは。注意してよく見れば口元が少し五十嵐に似ていた。他人に無関心な僕が期せずしてそんな質問をしてしまったのは、写真の女の子がちょうど恵と同じ位だったからだ。
 「ああ。かわいいだろ、カミさん似だ」
 僕から免許証を受け取った五十嵐が愛情深い父親の目で写真を凝視する。かけがえのない大事なものを手中で愛でる、包容力にあふれた優しい眼差し。
 僕の父親を名乗っていた男とは大違いだ。
 ただ、その眼差しの中に一抹の悲哀が、救い難く痛々しい悲哀の色が宿っているように見えたのは錯覚だろうか?
 「何歳ですか?」
 恵は今月で11歳になった。
 写真の女の子に恵の面影を重ね、遠く離れた仙台の小児精神病棟で11歳を迎えた妹の境遇に思い馳せるとやりきれなさで胸が疼く。だから本当に他意はなかったのだ、この質問に。
 免許証入れを手にした五十嵐がゆるやかに顔を上げ、何とも言い難い複雑な色に染め上げられた眼差しで正面のぼくを凝視する。
 「『生きていれば』お前と同じ位だ」
 「………、」
 免許証入れを握り締めた手が白く強張っていた。それでわかった、五十嵐のまなざしを翳らせていた一抹の悲哀の正体が。詳細は知らないが五十嵐は娘を亡くしているのだ、生きていれば僕と同じ年頃の最愛の娘を。
 言葉を喪失し無力に立ち尽くす僕、免許証入れを握り締めて所在なげに立ち竦む五十嵐。一面コンクリートで覆われた黄昏の中庭に大小の影が落ちる。煌煌と西空を染める残照を浴びながら重苦しい沈黙を共有していた僕らを同時に振り向かせたのは。
 爆笑。

 ―「あははははははっははははっははははっ、じゃりん子チエや!!」―

 「「!?」」
 五十嵐と同時に渡り廊下を振り仰ぐ。
 中庭に平行な影を落とす渡り廊下、その半ばの距離から笑い声は聞こえてきた。常識外れにけたたましい笑い声にそれまで試合に熱中していた囚人も手を止めて一斉に同じ方向を見る。敵から奪い取ったボールを中腰の姿勢で抱えた少年の手からボールが転げ落ち、トントンと軽く弾みながら僕と五十嵐の足もとに転がってくる。
 中庭に居合わせた全員が度肝を抜かれて注視している前で渡り廊下の窓がガラガラと音荒く開け放たれ、僕が見知った顔が出現する。
 ヨンイルだ。
 針金のような短髪を立たせ、稚気と凄味とを均等に宿した精悍な双眸をゴーグルで覆った西棟の少年が背骨が折れるんじゃないかと危ぶまれるほど上体をのけ反らせて爆笑している。そして、ヨンイルに肩を抱かれて甚だ当惑しているのは―
 レイジ。東棟の王様。
 「ちょうどええ、ギャラリー揃っとるな。中庭に散ってる連中全員集合、はいこっちに注目!!」
 「んだよヨンイル、肩抱くなよ気色わりいな。俺これから図書室行くんだよ、京極借りるんだから邪魔すんなよ」
 いやがるレイジの肩を抱いて窓枠に片足乗せたヨンイルが笑いの発作で肩を痙攣させながら召集をかけ、異変を察した囚人たちが「なんだ」「なんだ」とざわめきながら渡り廊下の下に群れ集まってくる。中庭の四方から砂糖水の匂いを嗅ぎ付けた蟻のように群れ集まり、小山の人だかりを成した囚人を傲然と顎を引いて睥睨、窓枠に片足かけた姿勢でレイジをギャラリーの眼前に押し出す。
 「コイツ、今俺の腕の中でブスッとふてくされとる東棟の王様の頭に注目!!」
 「なんだよヨンイル、注目させるなら頭よか顔だろ?俺が老若男女問わずモテるからってやっかんで進路妨害すんのもいい加減にしろ」
 涙を流して笑い転げるヨンイルが指さしたのはレイジの頭。
 それを見た囚人は一瞬硬直し、そして。

 地鳴りのような笑い声が大気を震撼させ、物理的な波動に変じてコンクリートの地面を震わせた。
 
 「ぶはははははははっ、あははははははは!」
 「なに、なにあれあの頭!?なにかのギャグ!?」
 「洒落がきついぜ王様」
 「あれ東棟のトップだろ、王様のレイジだろ、ブラックワークの無敵の覇者だろ?」
 「なのになにあの頭、おもしろすぎるぜオイ!!」
 腹を抱えて地面に倒れ陸揚げされた魚のように四肢をばたつかせてのたうちまわる囚人たち、大気を攪拌させ理性を蒸発させる爆笑の渦に包まれた中庭でただふたり平常心を保っていたのは僕と五十嵐のみ。
 ヨンイルに肩を抱かれ、何が何だかわからず当惑しているレイジを一直線に仰ぎ、長い長い沈黙と逡巡の末に疑問を述べる。
 「……………………………………………髪形を変えたのは心境の変化か?」
 食事中は本に夢中になってて気付かなかった。
 「?」
 指摘され、ヨンイルの腕を肩に回した姿勢から片手を掲げたレイジがそっと頭に触れ、異変を悟る。おそるおそる頭を巡っていた手が頭皮をよじのぼり、頭の斜め上で結わえられた髪の一房を掴み。
 「なんじゃこりゃあああああああああ!!!」
 レイジの絶叫が黄昏の中庭に響き渡った。 
 「ひっひっひっ、なんじゃこりゃってそ、ソレじゃりん子チエやろ?似てる似てるそっくりや、小鉄捜してもうたもん」
 「小鉄ってなんだよ、てゆーかじゃりん子チエってだれだよ!?ごく一部の人間にしかわかんねえコアな比喩使うな!!」
 「小鉄は猫や。ええでー小鉄、ええ味だしとる。でもなあ、じゃりん子チエ読むとむしょーに切なくなるんや、テツがじっちゃんと重なってどうにも他人と思えんで……」
 ヨンイルの襟首を掴んで窓枠から突き落としかねない形相で迫るレイジの剣幕から察するに、中庭に居合わせた囚人全員の前で見せ物にされて前代未聞の失笑を買った今の今まで、自分が頭の斜め上で髪を一つに結わえた状態で出歩いてたことにも気付かなかったらしい。 
 お転婆な女の子のような一つ結いを軽快に揺らして出歩いてたレイジに今の今までだれも声をかけられなかったのは頷ける、相手は無敵の強さを誇る東棟の王様だ。どんな奇矯なふるまいをしたところで王様に意見できるはずもない。
 「怒るなレイジ、ほんの冗談や。ジブンだってつっこんで欲しくてネタ仕込んだんやろ」「ネタじゃねえっつの、今気付いたっつの!」と喧喧諤諤、上空の渡り廊下で不毛な口論を繰り広げるレイジとヨンイルをあきれ顔で眺めていた僕はふと空気の変容を感じ、横を向く。

 刹那、戦慄が走った。

 隣の五十嵐が食い入るように渡り廊下を見つめている。
 その横顔に息を呑む。今まさに大気に溶けようとしている残照に禍々しく隈取られ、高濃度で煮詰められた殺意が顔の皮膚の下で沸騰してるのが透けて見えるような凄まじい形相。表情筋は不自然に強張り、唇は一文字に引き結ばれ、忘我の境地で渡り廊下を仰ぐ目には純粋な憎悪が結晶していた。
 まじりけない憎しみ。
 瞬間凍結された殺意。
 五十嵐の視線を辿り、渡り廊下を仰ぐ。開け放たれた窓の向こうに垣間見えた渡り廊下でじゃれあっているのはふたり、レイジとヨンイル。「この漫画オタク、王様を見せ物にしてくれた貸しは高くつくぜ!」「裸の王様がでかい口叩くな、お前はなるほど東の王様かもしれんけど俺は図書室のヌシ、東京プリズンの漫画王やで!!」と五十歩百歩、進歩ない自己主張をしながら取っ組み合っているふたりのうち、どちらを見ているのだろうかと眼鏡をとり、上着の裾で拭ってかけ直し、目を凝らす。
 
 レイジ……………ちがう、ヨンイルだ。 

 五十嵐に凝視されてるヨンイルはそのことにも気付かずゴーグルを奪い取ろうと仕掛けてくるレイジの手をあざやかにかわしながら笑っている。
 何故五十嵐はこんな恐ろしい顔でヨンイルを睨んでいるんだ?
 まるで、これから今まさにヨンイルを殺しに行こうとしてるみたいじゃないか。
 五十嵐の指が軋み、免許証入れを握る手に異常な力がこめられた。
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