少年プリズン

まさみ

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九十六話

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 「土下座させたことなら謝る、調子に乗りすぎたことも認める……メ、ガネにやったことも謝るよ。でも、俺のせいじゃないぜ?メガネを人質にしてお前おびきだそうって入れ知恵したのはリョウなんだから恨むんならリョウを恨めよ」
 「きみだって乗り気だったじゃん、『親殺しの口とケツでかわるがわる楽しんだって他の連中に自慢してやる』ってさ」
 参ったねこりゃ。
 木刀をつきつけられて身動きできない状態のユアンが目で助けを乞うてくるのに知らぬ存ぜぬ、気付かぬふりで無視を決め込む。腕組みしてさてと考えこむ。鍵屋崎を嵌めようという僕の作戦は裏目にでた。途中までは順調だった、笑いがとまらないほどに。なにもかも僕の想像通りに事が運んだ、鍵屋崎はまんまと僕の罠にひっかかった。サムライの本名をエサにすれば鍵屋崎が釣れるだろうという僕の思惑はそりゃもう見事に的中した、鍵屋崎と来たらのこのこ手ぶらで―あの時はそう見えた―下水道にでむいてきて、僕の姿が見えないことを訝りながらものこのこ奥まで進んできた。それもすべてサムライの過去が知りたい一念でだ。
 好奇心ひとを殺す。
 鍵屋崎は下水道で待ち伏せしてたユアンたちにたやすく押さえ込まれねじ伏せられた。ユアン達の本命はサムライ、鍵屋崎はサムライをおびきだすエサ、人質にすぎなかったけど僕の本命は鍵屋崎。僕は手紙を破かれたことを根に持ってる、おおいに恨んでもいる。ユアンたちに押さえこまれて身動きとれない状態のやつに復讐してなにが悪いの?
 自業自得だよ。
 それなのに鍵屋崎ときたら自分がおかれた状況も顧みず、天然の毒舌を遺憾なく発揮して僕を罵倒してくれた。鍵屋崎に言わせれば僕は復讐の対象を無抵抗の弱者に転化して私怨を晴らそうとしている最低の人間で、自分より弱く無力な状態の人間、無抵抗な人間にしか暴力を行使することができない腰抜けだそうだ。 
 僕を殴りながらイッた客と同じく。
 そんなこと言われたらだれだって頭にくる、でしょ?頭にきてちょっとやりすぎちゃった僕の気持もわかってほしい。まあいじめすぎたのは認めるけど、鍵屋崎があれくらいで参るタマだとは思えない。あいつはああ見えて打たれ強い、なんたって異常にプライドの高い天才サマだから。それにこの四ヶ月でだいぶ逞しくなった、というか神経が図太くなった。ゴキブリとフェラチオ、どちらを選んでも最悪の結果しか待ってない究極の二者択一を迫られても精神崩壊起こさなかったのがいい証拠だ。さすがにユアンたちの小便くさいペニスを生でくわえさせられそうになったときは弱ってたけど寸前で持ち直して「洗ってこい」とか命じるくらいだからね。
 何様だ。
 すべては順調に行った、気分は上々だった。いじめられる鍵屋崎を見物できれば僕は満足、さんざん嬲られて弱り果てた鍵屋崎を足蹴にすることができれば僕は満足だったのにちょうどいいところに邪魔が入った。サムライだ。ちぇ。そりゃユアンたちが用があるのはサムライで鍵屋崎はおまけだろうけど僕的にはもっとメガネくんで遊んでいたかったのにおもちゃを取り上げられた気分だ。
 で、現在。
 サムライと鍵屋崎のさすが連携プレイというか、阿吽の呼吸がなせる技というか、サムライの手の中には鉄パイプがある。木刀より硬度と殺傷力に優れた一振りの武器で頭蓋骨を陥没させることくらいわけない。刀を持ったサムライは最強だ、ユアンたち群れるしか能のない口先だけの馬鹿が何人寄り集まったところでかなうはずがない。勝敗はサムライが鉄パイプを握った時すでに決まっていた。
 てなわけで、僕がこれ以上下水道にとどまってる理由もなくなった。
 勝敗を見届けるまでもなくユアンの命運は決している、だいたい僕がユアンを助ける理由もない。今回の件を持ち込んできたのはユアンだけどユアンとは一・二回体の関係があるだけで特別思い入れはない、僕とサムライが顔見知りだと小耳にはさんだユアンがサムライをブラックワークに引き込むいい知恵はないかとベッドの中で聞いてきたから「サムライの女をオトリにしなよ」と囁いてやっただけだ。ユアンの馬鹿がドジ踏んで不利な状況になろうが僕には関係ない、興味もない。こういう場合はさっさと逃げるに限る。こんなこともあろうかと一番乗りで下水道に降りたとき前もってマンホールの蓋を開けて逃走路を確保しておいた、鍵屋崎が入ってきたのとは別の、もっと奥の人目につかない場所のマンホールの蓋を。こうしておけばユアンがサムライの注意をひきつけてる間に僕ひとりいつでも逃げ出せるというわけだ。
 たじたじのユアンと全身に殺気をみなぎらせたサムライ、息を呑んでふたりを見守っている鍵屋崎の視界に入らないよう頭を屈めて移動。三人の背後に抜けると同時に小走りになり、あらかじめ開けておいたマンホールを目指す。10メートル15メートル20メートル……頭上からまるい明かりがもれてくる。駐車場の赤いランプの光だ。地上へと続く梯子、その最下段に足をかけ……
 「ん?」
 音。
 地鳴りに似た重低音が耳朶にふれる。なんだろうこの音は、地震?ちがう、もっとなにかべつの……
 爆音。
 梯子に手をかけた姿勢できょろきょろ下水道を見回していた僕は危うく足を滑らせ転落しそうになる。それも無理ない、下水道の奥の奥、一際濃く闇がわだかまった空洞から耳を聾する轟音とともに雪崩れてきたのは濁流。泥濘の飛沫をはね散らかし、怒涛を打って攻めてきた濁流に目を疑う。なにこれ聞いてないよちょっと!?僕が下水道を待ち合わせ場所に選んだのは監視カメラがないからで、ここならひとりふたり人が死のうが水路に沈めちゃえばすぐには発見されないだろうってそんだけ……
 御託はおいといて、今は逃げるっきゃない。
 素早く梯子をよじのぼった僕の足もとで「なんだよこれ、聞いてねえぞ!?」「リョウ、あのクソガキャどこ行ったんだ、俺たち見捨てて自分だけ逃げたのかよっ」「くそっ、あとで殺っ……」と声がしたが、振り返ってもなにも見えなかった。足もとを席巻するのは白濁して渦巻く濁流。ユアンたちはどうしたんだろう、運がよければ途中の梯子にひっかかってるだろうけど……無難に死ぬな、これは。いや待て、ぼくも他人事みたいに言ってる場合じゃない。速く上までのぼらないと水に呑まれてユアンたちの二の舞になる、溺死はごめんだ。もはや一刻の猶予もない、一秒でもはやく地上に出ようと一目散に梯子をのぼる。光がどんどん近付いてくる、下水道の黴臭い臭気が薄れ空洞から新鮮な外気が流れ込んでくる。あともう少し―
 「!?わっ、」
 手が滑った。
 バランスを失った体が後ろ向きに倒れてゆく。やばい、すぐ背後では凄まじい勢いの濁流が荒れ狂っている。落ちたらひとたまりもない、骨を砕かれ肉を砕かれ――――溺死。ユアンたちのように?いやだ、ママ、たすけてママ……
 宙をかきむしっていた手ががしりと掴まれる。
 水に落下する衝撃を予期し、固く閉じていた目を開く。薄目を開いた視界に映ったのはおぼろげに歪む光景。丸く切り抜かれたマンホールの上から下水道を覗きこんでいるのは見覚えのある顔。いつも驚いたようなまるい目をさらにまんまるくしたその顔は……
 「ビバリー!?」
 なんでここに?
 「掴まってくださいリョウさん!」
 顔面に水飛沫を浴びながらビバリーが叫び、足腰を踏ん張り両手に力をこめる。顔を赤くし、脱臼せんばかりに腕の関節を伸縮させて僕を引き上げたビバリーが「ぶはあっ」と息を吐き、崩れるようにその場に膝をつく。駐車場の地面に尻餅ついた僕はあ然としてビバリーを見つめる。鉄蓋をどけられたマンホールの下ではさらに速さと勢いを増した濁流が轟々と唸りをあげている。
 堰から解き放たれた濁流がコンクリートの岸壁を容赦なく削る轟音と振動を聞きながら、ぽかんとしてビバリーに尋ねる。
 「なんでここにいるのさ?」
 「リョウさん」
 肩で息をしながら恨めしげな上目遣いで僕をねめつけるビバリー。
 「殴っていいスか?」
 「へ?」
 有言実行。
 ビバリーはおもいっきり、容赦加減なく僕の頬を殴り飛ばした。あんまり容赦がなかったんで僕は軽々と吹っ飛んだ、もとから体重が軽いのだ。バキッと、いっそ爽快なくらいいい音が鳴った。コンクリートの地面にひっくりかえり、腫れた頬に手をやり、放心状態でビバリーを仰ぎ見る。体の脇で拳を握り締めて仁王立ちしたビバリーの顔からは軽薄スマイルが消し飛んでいた、こんなおっかない顔のビバリーは見たことない。
 ついさっき、下水道でユアンに木刀をつきつけていたサムライを思い出す。
 サムライと同じ、怖い顔。
 怒りで頬を朱に染めたビバリーは浅く肩を上下させて立ち竦んでいたが、深く息を吸い、駐車場中に響く大声で絶叫。
 「あんまり心配させんな!!」
 耳が麻痺するような怒声を至近距離で浴びせられ、僕は完全に面食らっていた。
 「……………………………ごめん」
 びっくりしすぎて、つい謝ってしまう。
 言いたいだけ言ってスッとしたのだろう、脱力したようにその場にへたりこんだビバリーが抱え込んだ膝の間に頭をたらす。
 「僕がここにいるのはリョウさん追ってきたからに決まってるじゃないスか。今日食堂で妙なこと言ってたからまたよからぬこと企んでるんじゃないかな~と気になってたんスけど、案の定夜中にコソコソ出てくし……もしやと後つけてみたらこんな、」
 ビバリーが口を噤み、心なし青ざめた顔で空恐ろしそうにマンホールを覗きこむ。濁流渦巻くマンホール。ビバリーにつられて下方を見れば今頃になって、安全圏に引き上げられた今頃になって体の芯から懇々と恐怖が湧いてくる。
 正面に向き直り、ビバリーが声をひそめる。
 「リョウさんイエローワークっしょ?気付かなかったんすか、今日都心に大雨が降ったんすよ、酷い大荒れの天気で……都心を網羅した雨水管が途中で下水道に合流して東京プリズンの浄水施設に集められてるって聞いたことあります?今日の天気でわかりそうなもんじゃないっすか、下水道の状況が」
 「わかんないよ、ずっと温室からでなかったし」
 腫れて熱をおびた頬をさすりながら口を尖らす。同じイエローワークでも温室組と砂漠組は待遇から境遇からちがうのだ、一日中温室でイチゴに水をやってた僕に外の天気がわかるはずない。ビバリーも無茶を言う。反省の色がない僕をビバリーはしばらく恨めしげにねめつけていたがやがて馬鹿馬鹿しくなったのだろう、うんざり気味に首を振って愚痴をこぼす。
 「どうせまたメガネくんをいじめてたんでしょう」
 ぎくりとした。
 考えていることが顔にでたのだろう、疑惑に満ちた目でジッと僕の表情を探っていたビバリーがため息をつく。
 「リョウさんがなんでメガネくん目の敵にすんのか知りませんけど、もういい加減にしてくださいっス。リョウさん前にぼくに言いましたよね?自分は笑顔でひとを殺せるレイジさんみたいな悪魔じゃない、せいぜい小悪魔だって」
 説教臭い口ぶりが不愉快だけど、なにも言い返せない。悔しくて、唇を噛む。唇を噛んだぼくはそれなりに反省してるような、殊勝な面持ちをしてるように見えないこともなかったのだろう。少しだけ声音を柔らかにしたビバリーが哀しげに呟く。
 「今のリョウさん、本当に悪魔っスよ」
 「……………………」
 頬をさすっていた手を力なくおろし、膝の上に置く。 
 「ママさんが哀しみます」
 「わかってるよ」
 そんなことビバリーに言われなくてもわかってる。
 目が熱っぽく潤んでるのは頬が痛いからだ、泣いてるからじゃない。膝の上の手を拳にしてにぎりしめ、吐き捨てるように言う。
 「だってアイツ、手紙破いたんだもん」
 東京プリズンでただひとつたのしみにしてたママからの手紙。 
 大好きなママからの手紙。
 視界がぼやけ、目に大粒の涙が盛り上がる。目尻からあふれた涙が頬を伝い、顎先で透明な玉を結び、膝に滴る。滴った涙がズボンの膝に染みてゆく。あとから、あとから。涙が染みた膝が熱い、涙腺が熱い。悔しいけど、嗚咽がこらえきれない。
 今でも忘れられない。夢に見る。
 無慈悲に手紙を破り捨てた鍵屋崎の背中、風に舞う無数の紙片、僕の手の中に残された手紙の断片。
 「だってずるいじゃんか、アイツはなんでも持ってるのに、なんでも持ってる日本人のくせに。生まれたときからなんでも持ってるくせに、ママもパパもいたくせに、欲しいもん全部もってたくせに僕の手紙まで横取りして破いて捨てて。僕にはあれっきゃなかったのに、ママがすべてだったのに。ここに来てからママに会えなくて、外でどうしてるか全然わかんなくて、三ヶ月に一回の手紙だけをたのしみに過ごしてたのにそれをアイツ、」
 声が詰まる。鼻水がたれる。ママ、ママ。せっかくママが書いてくれたのに、僕の為に書いてくれたのに、それをアイツは。そりゃ僕は鍵屋崎にひどいことをした、しかもそれをたのしんでた、おもいっきり。苦痛に歪む顔を見てスッとしたのも認める、だって気味がよかったんだ、ざまあみろって思ったんだ。
 ああそうだよ、僕はサディストで変態で腰抜けでひとが苦しむ姿に快感をおぼえる性的異常者だよ。9歳のぼくを買っておなかを殴りながらレイプしたアメリカ人の客とおなじか、それ以上の。
 「いいじゃないか、ちょっとくらいいじめたって。アイツむかつくんだもん」
 「『ちょっと』で済むうちはね」
 疲れたように首を振りながらビバリーが立ち上がり、「よいしょ」と腰を曲げてマンホールの蓋を戻す。
 「もう帰りましょう。次からはせめて僕を起こさないようベッド抜け出してくださいよ」
 さしだされた手を掴んで立ち上がる。僕を助け起こしたビバリーが目に隈を作っていることに、間近で顔をつき合わせ、初めて気付く。僕がベッドを抜け出す気配で安眠妨害されたのは事実なんだろう、疲労と焦燥が滲んだ冴えない顔色をしている。
 ビバリーはなんで僕をつけてきたんだろう、放っておけばいいのに。
 ロンとおなじ放っておけない体質なんだろうか?損な性分だ。ビバリーはもっと要領よく立ち回るやつだと思ってたのに、同房の相方がだれとなにをしようが自己保身を優先した放任主義をきめこんでるやつだったのに、どんな心境の変化?
 おもいきり殴られた頬が熱をもって疼きだす。ひとに殴られるのは初めてじゃない。子供の頃からいろんな人間に殴られてきた、大半は客だったけど。客を選り好みできない子供の頃は暴力的な男に何度となく殴られてきた、涙と鼻水をたれながして、顔をくしゃくしゃにして泣き叫ぶさまが面白いからって。 
 けど、だれかに心配されて殴られたのは生まれて初めてだ。
 ママは絶対にぼくを殴らなかった、僕がママの目を盗んで覚醒剤に手を出してるのが発覚したときはぐすぐす泣いてたけど僕に手を上げて咎めようとはしなかった。ママは僕を抱っこしながら言ったんだ、「なんでリョウちゃんそんな悪い子になっちゃったの」って子守唄の嗚咽を聞かせるように。そんなママを嫌いになることはできなかった、たとえ覚醒剤に手をだしたのがママの影響でも、客をとりはじめたのがママの影響でも。
 片手で頬をかばい、先に歩き出したビバリーの背中をじっと見送る。 
 ビバリーはビバリーなりに僕のことを心配してくれたんだろうか?現在進行形で心配してくれてるのだろうか?くすぐったいような居心地が悪いような、変な気持だ。ママ以外の人間に心配されるのに慣れてないからだろうか?ぼんやりそんなことを考えながらビバリーを眺めているうちに、ポケットがやけに軽くなってることに気付く。
 まさか……おそるおそるポケットを裏返し、
 「あ――――――――――――!」
 「どうしたんすかリョウさん!?」
 血相変えたビバリーが寄ってくるのに泣きぬれた顔を上げ、ポケットの裏地をつまむ。
 「クスリが溶けてる!!」
 ビバリーがこけた。
 勢いよくつんのめったビバリーをよそに、水に粉末が溶けて薄平べったくなった覚醒剤のパックを両手に掲げる。
 「うあああああん僕の大事な売り物でクスリが全部水に溶けちゃってる、どうしようビバリー!?」
 「知りません」
 びしょぬれの僕につめたく吐き捨てて、二度と振り返ることなくすたこらさっさと歩き去るビバリー。憤然とした大股で駐車場をでてゆくビバリーを追って駆け出しかけ、後ろ髪をひかれる思いで足もとのマンホールを一瞥する。
 『どうすれば、鍵屋崎を放してくれるんだ』
 『顔を上げろサムライ。こんな奴ら、きみが頭を下げる価値もない』
 あの霜が張りそうに寒くて暗い下水道で、サムライは言った。鍵屋崎は言った。サムライは鍵屋崎をかばおうとして、鍵屋崎はサムライをかばおうとした。
 友情?美しいね、何の役にも立たないけど。
 偽善と欺瞞が手をつないだ茶番を鼻で笑う。ここじゃ友情なんて何の役にもたたない、何の役にも立たない自己犠牲精神を発揮して他人のためになにかしようなんて本気で考えるやつはどうかしてる―いかれてる。悪意に包囲された世界で生き残るために必要なのは頭の回転と腕力だけだ、他者を蹴落とし他者を利用し、なにがあっても自分だけは絶対に生き残ってやるぞという目的のためなら手段を選ばない野心。鍵屋崎とサムライは友情ごっこしてればいい、絆とか友情とか互いを思いやる心とかそんな物は何の役にも立たないと、役に立たないどころか自分の足を引っ張るお荷物にしかならないと思い知らされるまでは。
 それまではせいぜい東京プリズンで初めてできた「お友達」とやらを大事にするがいいさ。ふたりの仲を割くのに僕が手を下すまでもないだろう。
 予感がするんだ。鍵屋崎はきっと近いうちにもっと深い地獄を見ることになる、半生で地獄を見てきた僕が断言するんだから間違いない。
 口元に笑みが浮かぶ。
 「なにもおかしくないのに笑い出すのも禁断症状の一種っスか?」
 にんまりほくそえんだ僕に薄気味悪そうに眉をひそめるビバリーのもとへ駆け寄りながら心の中でつけくわえる。
 どうせ僕が手を下さなくても鍵屋崎は地獄に落ちる、サムライを道連れに。
 だからそれまでは大人しくしてよう、これ以上ビバリーを心配させるといけないしね。
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