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四話

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ミルセアと会った時は驚いた。ゾラによく似ていたからだ。
最初は他人の空似だと思った。黒髪黒目に褐色肌のツィゴイネルだから似ているように感じるのだと、未だ初恋の女を忘れられない、おのれの未練がましさを嘲った。
全ての始まりは地下室の戸締まりを忘れた事。荒くれものたちが小屋に雪崩れ込み、ツィゴイネルのガキを見かけなかったかと聞いてきた。ダミアンが知らないと答えると舌打ちし、さっさと帰って行った。

その後地下室へ下り、あの子を見付けた。
美しい少年だった。
天鵞絨さながら艶めく漆黒の髪、なめらかな褐色肌。長い睫毛に縁取られた御影の瞳は激情に燃え、肉感的な唇が震えている。

ダミアンは少年を匿った。
嘗て老婆がそうしたように。

怪我人を叩き出すのは論外。行き場がない孤児となれば尚更。詳しい経緯を聞かずとも、例の荒くれものたちに追われているのは明白だった。

少年はミルセアといった。
ロマには珍しくない名前。単なる偶然だと思った。
心を許してくれるまで少し時間がかかった。ツィゴイネルの境遇を思えば無理もない。
「気がすむまでいてくれよ」
ダミアンはミルセアに薬草の名前や種類、読み書きを教えた。
彼と過ごす時間は楽しかった。ゾラと睦み合った、少年時代のひとときを思い出した。
ミルセアはダミアンが成人後に得た家族だった。
血の繋がりがなくともそこには情が通い、確かな絆が育まれていった。

嘗ての過酷な体験で信仰心は打ち砕かれた。
迷えるダミアンに手をさしのべたのは神にあらず、気まぐれな魔女だった。

やがてミルセアの成長が人生の喜びとなり、彼が大人になるのをそばで見届けたいと願うようになった。


だが、そうはならなかった。
ダミアンは禁忌を冒した。


羊皮紙に向き合い、何度も何度も自問自答した。僕は間違ってないと自己暗示をかけ、されど信じきれず、最後には屈した。
僕は間違っていたかもしれない。
若い男の身でマルガレーテのお産を手伝った、陣痛を和らげる薬湯を飲ませた、産褥に弟子を立ち合わせた……どれも教会が定める禁忌に抵触する。


だからペーターが死んだのか?
マルガレーテも死んだのか?


自分が間違っていたとは認めたくない。あの場はああするしかなかった。


でも。
だけど。
ダミアンは弱い人間だ。


それまで親切だった村人たちは手のひら返し、ダミアン・カレンベルクを石もて追い立てた。
ダミアン最大の後悔は弟子を巻き込んでしまった事だ。


赤子殺しの罪を引き受けるのは自分一人でいい、ミルセアまで糾弾されるのは耐え難い。
額に接吻して瘴気を吹き込んだ?笑わせる。なんとでも言え。僕は誇り高い魔女の弟子だ、この身にうける石ころ程度痛くも痒くもない。

だけどあの子は、ミルセアは関係ない。
僕の本性など知らず、無邪気に一途に慕ってくれた。
生まれたての赤ん坊を抱いたあの子の笑顔を誰にも否定させてなるものか。
たとえ神が見放そうともこの僕、ダミアン・カレンベルクが世界ミルセアを祝福する。



固い靴音が谺し牢の閂が外れる。尋問の再開だ。
拷問吏たちが地下牢に踏み込み、床に腹這ったダミアンを蹴飛ばす。
「起きろ」
「審問官様はまだお休み中だ。あとは俺たちに任せるとさ」
屈強な男が鎖を巻き上げ、ダミアンを吊る。
「あの村にゃ他にも魔女がいるんだろ。誰だ、名前を言え」
「知らない」
背中に鞭が飛来し衝撃が爆ぜる。拷問吏は舌なめずりし、ダミアンの腿や臀を打擲する。
「ッ、ぐ」
「とっとと吐け!」
「正直に告発すりゃ楽に殺してやる、車輪に縛り付けられて四肢をのばされんのは嫌だろ」
全身に脂汗を滲ませ、一方的に与えられる苦痛をただひたすらにやり過ごす。
暴力がもたらす高揚に酔った男たちが下品に嘲笑い、交代でダミアンを鞭打ち、服をみすぼらしく引き裂いていく。
三十分ほど経った頃、一人が何かを取りだした。
「知ってるか、お前ら。悪魔と契った魔女は体の一か所に契約の印が現れるんだ」
「コイツの体にも?」
「それっぽい痣は見当たらねェな」
「見分けるコツは簡単だ。契約の印が刻まれた場所は痛みを感じねェ」
凄まじく嫌な予感に駆られ、首をねじるように振り向き、極限まで目を見開く。
男が持っていたのは男根を模した巨大な張形だった。
「先入観は禁物。何も『外』にあるとは限らねェよな」
下穿きが引きずり下ろされ、剥き出しの尻にずんぐりした張形が突き付けられる。
「よ、せ。やめてくれ」
ヒューヒューと不規則な呼気を漏らす。
ささくれた喉を唾で湿し、怯えた声で制すも、それは拷問吏の嗜虐心を煽るだけに終わる。
「魔女は胎内に契約の印を持ってるって、審問官様がおっしゃってたぜ」
「悪魔の男根が焼き鏝代わりに刻むんだな」
「たまげたなあ」
「契約の印なんて持ってない、そこだけは許してくれ、汚い、ッぁあ」
修道院で凌辱された、忌まわしい過去が甦る。
必死に懇願するダミアンの腰や尻、太腿を張形でなぞり、敏感な会陰を押し上げて拷問吏がうそぶく。
「魔女の分際で審問官様直属の部下に意見する気か?こっちは真っ赤に炙った焼き鏝突っ込んだっていいんだぜ」
「ぐっ……」
汗と動悸が止まらずめまいがする。がしゃんがしゃんと鎖が揺れ、体を雁字搦めにする。
恐怖と嫌悪に慄くダミアンの腰を掴み、後孔に先端を押し当て、拷問吏が囁く。
「リルケ村の魔女の名前を挙げろ」
「だから知らないって言ってるだろ、村の連中とは親しくないんだ!」
張形の先端がめりこむ。ダミアンが絶叫する。
「ぁっ、あ゛ぁっ、あっああ゛ああ」
「ほうら、みるみる飲み込んでいくぞ」
肛門が裂け、内腿を血が伝い落ちる。
亀頭が誇張された張形が後孔を拡張し、媚肉が蠢く直腸を押し進み、前立腺をガツガツ殴り付ける。
拷問吏が口笛を吹いてひやかし、手首に捻りを加えて抜き差しし、一方で陰茎をまさぐり育てる。
「まだ三分の一だ、音を上げるなよ」
「うっ……」
「魔女の名前を吐け」
「本当にしら、ない、たすけて」
窄めた爪先で床を探り、うなだれて呟く。涙と汗と洟汁に塗れたダミアンの顔を一瞥、張形が根元まで埋まる。
「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッぁあ」
「ふしだらな魔女め、拷問で悦んでたんじゃ世話がないな」
「張形で貫かれて絶頂したのか。てこたァ契約の印は腹ん中か、どうりで外からじゃわかんねえはずだ」
「もっと奥まで抉りこめ、だらしねえ孔に栓をするんだ」
「待、て、やめっ、ぁあっあ」
前に回った一人がダミアンの陰茎を乱暴に捏ね回し、鈴口に溢れた先走りを裏筋に塗り広げる。後ろをとった一人が張形を動かし、奥の奥まで抉り込んでは引き抜く。
「勝手によがるんじゃねえ、ちゃんと答えろ。悪魔のイチモツはこれよりでっけえのか、ええっ?」
「ぁあっ、苦ッ、もうやめ、ンぁ」
「瘤でゴツゴツしてんのか?槍みてえに尖ってんのか?猫みてえに棘が生えてんのか、豚みてえに巻いてんのか」
「違ッ、おねが、抜いて、ぁっあぐ、ぁっンあっ」
抜き差しの都度充血しきった肉襞が絡み付き、前立腺のしこりが刺激される。
拷問吏たちはダミアンの醜態に笑い、劣情し、遂には鎖を巻き落とし、膝這いの姿勢をとらせた彼の口元にペニスを突き付ける。
「淫蕩な魔女め」
「審問官様に代わって仕置きしてやる。さあ、ご奉仕しな」
尻には相変わらず張形が突き刺さっていた。ダミアンは舌を出し、這い蹲り、拷問吏たちの肉棒をしゃぶり始める。生臭い匂いが鼻孔を突き、苦い汁が口に満ちて吐き気を催す。
「ぬい、て、くださ、ぁッあンぁあっ」
一人がダミアンの髪を鷲掴み、尻に生えた張形を靴裏で蹴り込む。衝撃でペニスが痙攣、大量の白濁をしぶく。
「見ろよ、もらしちまった」
「度し難い淫乱だな」
「契約の印を突かれたんだろ」
石床に突っ伏しヒク付くダミアンの頭を踏み躙り、唾を吐き、張形をぐぷぐぷ動かす。
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