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五話
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翌日の明け方、貴方とマルズークはムスタファ率いるジャイラの兵に警護され都を発ちました。一行の先頭には神輿に乗った王の姿が。
奥津城に近付くほど周囲の光景は荒れ果て、草木は奇怪にねじくれ枯れ落ち、空には暗雲と雷鳴が轟きます。
砂漠の砂は黒く不浄に穢れ、白骨化した人や獣の骸が砂に埋もれていました。
「ジブリール……」
不安げに呟く貴方の手を、隣を歩くマルズークがギュッと握ります。
「片割れなんだろ。話が通じるさ」
遺跡に到着したのは昼でした。しかし空は暗く、新月の夜と区別が付きません。遺跡のすぐ横には断崖絶壁があり、びゅうびゅう颶風が荒れ狂っていました。
「ここから先はお供できません。舞い手様お一人で行ってください」
ムスタファが厳かに頭を下げ。
「俺は」
マルズークが異を唱えると同時、剣が振り上げられました。
「え?」
びちゃり、顔に血糊が飛びます。
「ご、ぷ」
ムスタファに斬られたマルズークがよろめき、振り返りざま貴方に手を伸ばすも届かず、愛用のシャムシールもろとも断崖の底に墜落。
「マルズーク!!」
遺跡の闇から湧き出た二本の腕が貴方をとらえ、引きずり込み、哄笑します。
「よくやった人間ども」
「約束は守ったぞ、未来永劫ジャイラに手出しはせんと誓え」
剣を鞘に納めたムスタファが尊大に宣し、神輿に担がれた老王が、悦に入って微笑みます。
「まだ足りん。加護もよこせ。黒き奈落のジブリールが後ろ盾に付いたとあらばジャイラは無敵、魔法を修めた最強の軍勢が完成する」
「心得た」
貴方の眼前でマルズークは死んだ。ムスタファに斬られ、崖から落とされた。
「久しいな」
「どうしてジブリール……用があるのは僕だけだろ、何故マルズークを殺した!?」
「俺からお前を奪った罰だ」
人間は愚かだ。精霊もまた愚かだ。
「お前とあの男の道行きをずっと見ていた。随分睦まじくしていたじゃないか」
ジブリールの千里眼は貴方とマルズークの旅路を見通し、絶対に知られたくない初夜の秘密まで暴き立てます。
「何故なにも言わずに消えた?お前がいなくなり数百年、想わぬ日は一度もなかった!」
力ずくで連れ戻さなかったのは、片割れの心が人間にある以上、馬鹿げた未練ごと断ち切らねば意味ないから。
「さあその目に焼き付けろ、これがお前が愛した人間の本性だ!お前を騙し討ちで贄に捧げ口封じに友を殺し俺の援助を求める、愚かな人間の真実を目に焼き付けるがいい!」
「ぁ、ぐっ、ぁあ゛ッ」
黒き奈落のジブリールが貴方の首を絞め、口付け、猛り狂った男根を押し込みます。
地獄がはじまりました。
貴方は地下迷宮の奥深く、一条の光も射さない闇の祭壇に縛され、ジブリールに凌辱され続けます。
「愚かな人間に唆されたとはいえ、俺を裏切った罪は重いぞ」
「っぐ、は」
闇から生まれた狼の群れが肉を食いちぎり、獣のペニスでかわるがわる貫きます。霊体に変じて逃げようにも、ジブリールがそれを許さず呪縛します。
数百年間降り積もった怒りや憎しみ、あらゆる負の感情が混沌の坩堝と化し、魔力を増幅したのです。
ジブリールはあらゆる手段を用いて貴方を辱め、貶め、嬲り、地獄の責め苦を与えます。
「宝石をくれてやる。お前はこれが好きだったな」
闇の化身の狼に貪られ、息も絶え絶えな貴方の鼻先に真珠のネックレスをぶら下げ、ジブリールがそこはかとなく邪悪に嗤います。
「!ぁっ、ぐ、ぁあっ」
丸くなめらかな真珠がツプリとめりこみ、次々沈んで。
「何、を、やめ」
「小僧に純潔を捧げる所を見たぞ」
「ぅぐ、あうっ、ンあッあぁ、かはっ」
「なんと愚かで嘆かわしい、我が運命の片割れは人に毒されてしまった」
「やめ、ぁあぁッ、ぁンあふあぁっ」
「二度と俺から離れられぬように躾け直してやる」
赤い媚肉が淫らにうねり、貪欲に真珠を飲み込んでいきます。ジブリールは貴方の腰を引き立て、尻を平手で叩き、胎内に衝撃を響かせました。
「ジブリール、どうして君はそこまで人を憎む!彼等はけっして君が言うような、ッあぐ、愚かなだけの存在じゃない!」
「わかっているのか、小僧が死んだのはお前のせいだぞ」
「はアんっ、ぁあっやッ、抜いてッ、ぁあっあぁッおかしくなるッ」
来る日も来る日も凌辱と拷問は続きます。ジブリールは貴方を跪かせて奉仕を強制し、大量の白濁を顔に浴びせ、気まぐれに狼に与え、闇から生じた無数の触手で責め苛みました。
一体何年経ったのか。次第に意識は朦朧とし、快楽以外は何も考えられなくなります。
すまないマルズーク。僕が殺した。
「ジブリ、ル。僕の、運命」
貴方は全裸に剥かれ、闇の触手に後ろ手に縛りあげられ、ジブリールの男根をなめていました。赤く腫れた後孔からは真珠を連ねた飾りが垂れています。
「どこへも行かないと誓うか」
「は、い」
「二度と逃げないと誓うか」
「……」
「答えは」
「あぁっやッ、そこっ、引っ張らないで!」
ジブリールが意地悪く笑い、貴方の肛門に栓をした真珠をいじります。ツプ、と粘膜を巻き返し、腸液に濡れそぼる真珠が一粒排泄されました。
「~~~~~~~~~~~ぁあぁあ」
貴方はジブリールの腹の上で痙攣し、卑しい人間のように射精に至りました。
あるいは此処で終わっていれば、ただの愚かな精霊の喜劇として物語を結べたかもしれません。
マルズークの死と同時に生きる希望を失い、貴方はジブリールの慰み者と成り果てました。
そんな日々に終わりを告げたのは、一匹の蛇でした。
地下迷宮の底にて。その日も貴方はジブリールに犯され、不浄に塗れて横たわっていました。
しゅるしゅると音がします。無気力に顔を上げ、闇の奥から這い出た大蛇を見付けました。
「……やあ。元気かい」
大蛇は答えません。
無意味な問いかけに力なく苦笑し、再び意識を手放す間際、大蛇があぎとに咥えた鞘に気付きました。
ジブリールが貴方に贈り、貴方がマルズークに与えたシャムシールの鞘。
「どこからこれを」
脳裏にある可能性が閃きます。もし地下迷宮と谷底が繋がっていたら……絶望している場合ではありません。貴方にはまだやる事が残っています。
「みすぼらしい鞘だな」
ジブリールが蛇を叩き殺して鞘を奪い、片手に力を込めます。
「やめろ!」
「小僧の形見か。余計な事を」
マルズークの骸が暗く冷たい谷底で朽ち果てるなど耐えられません、彼は人として葬られなければいけません。
なりふりかまわず縋り付く貴方を振りほどき、残忍な笑みを浮かべ、ジブリールが鞘を破壊しました。
絶叫。
次の瞬間、世界が反転します。
ジブリールの力の源が怒りと憎しみなら、それが今、貴方の真の力を覚醒させたのです。
即座にジブリールが吹っ飛び、彼方の岩壁に叩き付けられ、激突の衝撃で地下迷宮が崩落を始めます。
即ち、暴走。
「マルズークを二度殺したな」
貴方は怒り狂い、運命の片割れに焦点を絞り、持てる魔法の全てを撃ち放ちました。
結界を張る暇もない早業。
「ぐっ……そこまであの小僧、を?何故だ……俺にはお前しか……」
震える手を伸ばし哀訴するジブリールの前に立ち、その首を掴み、貴方は言いました。
「君の気持ちにはこたえられない。僕の王は一人だけだ」
ジブリールの魂に亀裂が生じ、砕け散り、貴方の体に吸収されていきます。
まず前提からして間違っていました。
貴方はジブリールの運命ですが、ジブリールは貴方の運命ではなかったのです。
顔をお上げなさい、白き舞い手のイルファーン。今漸く貴方がおかした罪がわかりました。
それは共食いの禁忌。
およそ人外の価値観において、精霊が人を殺すのは罪にあたりません。しかしねえ、共食いとなるとさすがに……悪魔だってしませんよ、そんなおぞましいこと。
話を戻しましょうか。
片割れを食らったら、その魂は完全になるのでしょうか?
貴方はジブリールを貪り食らい、地下迷宮からさまよい出て、千尋の谷底に至りました。
一帯には毒霧が立ち込め、夥しい骸骨が転がっています。
貴方は谷底に這い蹲り、生前の装備を頼りに、マルズークとおぼしき骸をあらためていきました。
奥津城に近付くほど周囲の光景は荒れ果て、草木は奇怪にねじくれ枯れ落ち、空には暗雲と雷鳴が轟きます。
砂漠の砂は黒く不浄に穢れ、白骨化した人や獣の骸が砂に埋もれていました。
「ジブリール……」
不安げに呟く貴方の手を、隣を歩くマルズークがギュッと握ります。
「片割れなんだろ。話が通じるさ」
遺跡に到着したのは昼でした。しかし空は暗く、新月の夜と区別が付きません。遺跡のすぐ横には断崖絶壁があり、びゅうびゅう颶風が荒れ狂っていました。
「ここから先はお供できません。舞い手様お一人で行ってください」
ムスタファが厳かに頭を下げ。
「俺は」
マルズークが異を唱えると同時、剣が振り上げられました。
「え?」
びちゃり、顔に血糊が飛びます。
「ご、ぷ」
ムスタファに斬られたマルズークがよろめき、振り返りざま貴方に手を伸ばすも届かず、愛用のシャムシールもろとも断崖の底に墜落。
「マルズーク!!」
遺跡の闇から湧き出た二本の腕が貴方をとらえ、引きずり込み、哄笑します。
「よくやった人間ども」
「約束は守ったぞ、未来永劫ジャイラに手出しはせんと誓え」
剣を鞘に納めたムスタファが尊大に宣し、神輿に担がれた老王が、悦に入って微笑みます。
「まだ足りん。加護もよこせ。黒き奈落のジブリールが後ろ盾に付いたとあらばジャイラは無敵、魔法を修めた最強の軍勢が完成する」
「心得た」
貴方の眼前でマルズークは死んだ。ムスタファに斬られ、崖から落とされた。
「久しいな」
「どうしてジブリール……用があるのは僕だけだろ、何故マルズークを殺した!?」
「俺からお前を奪った罰だ」
人間は愚かだ。精霊もまた愚かだ。
「お前とあの男の道行きをずっと見ていた。随分睦まじくしていたじゃないか」
ジブリールの千里眼は貴方とマルズークの旅路を見通し、絶対に知られたくない初夜の秘密まで暴き立てます。
「何故なにも言わずに消えた?お前がいなくなり数百年、想わぬ日は一度もなかった!」
力ずくで連れ戻さなかったのは、片割れの心が人間にある以上、馬鹿げた未練ごと断ち切らねば意味ないから。
「さあその目に焼き付けろ、これがお前が愛した人間の本性だ!お前を騙し討ちで贄に捧げ口封じに友を殺し俺の援助を求める、愚かな人間の真実を目に焼き付けるがいい!」
「ぁ、ぐっ、ぁあ゛ッ」
黒き奈落のジブリールが貴方の首を絞め、口付け、猛り狂った男根を押し込みます。
地獄がはじまりました。
貴方は地下迷宮の奥深く、一条の光も射さない闇の祭壇に縛され、ジブリールに凌辱され続けます。
「愚かな人間に唆されたとはいえ、俺を裏切った罪は重いぞ」
「っぐ、は」
闇から生まれた狼の群れが肉を食いちぎり、獣のペニスでかわるがわる貫きます。霊体に変じて逃げようにも、ジブリールがそれを許さず呪縛します。
数百年間降り積もった怒りや憎しみ、あらゆる負の感情が混沌の坩堝と化し、魔力を増幅したのです。
ジブリールはあらゆる手段を用いて貴方を辱め、貶め、嬲り、地獄の責め苦を与えます。
「宝石をくれてやる。お前はこれが好きだったな」
闇の化身の狼に貪られ、息も絶え絶えな貴方の鼻先に真珠のネックレスをぶら下げ、ジブリールがそこはかとなく邪悪に嗤います。
「!ぁっ、ぐ、ぁあっ」
丸くなめらかな真珠がツプリとめりこみ、次々沈んで。
「何、を、やめ」
「小僧に純潔を捧げる所を見たぞ」
「ぅぐ、あうっ、ンあッあぁ、かはっ」
「なんと愚かで嘆かわしい、我が運命の片割れは人に毒されてしまった」
「やめ、ぁあぁッ、ぁンあふあぁっ」
「二度と俺から離れられぬように躾け直してやる」
赤い媚肉が淫らにうねり、貪欲に真珠を飲み込んでいきます。ジブリールは貴方の腰を引き立て、尻を平手で叩き、胎内に衝撃を響かせました。
「ジブリール、どうして君はそこまで人を憎む!彼等はけっして君が言うような、ッあぐ、愚かなだけの存在じゃない!」
「わかっているのか、小僧が死んだのはお前のせいだぞ」
「はアんっ、ぁあっやッ、抜いてッ、ぁあっあぁッおかしくなるッ」
来る日も来る日も凌辱と拷問は続きます。ジブリールは貴方を跪かせて奉仕を強制し、大量の白濁を顔に浴びせ、気まぐれに狼に与え、闇から生じた無数の触手で責め苛みました。
一体何年経ったのか。次第に意識は朦朧とし、快楽以外は何も考えられなくなります。
すまないマルズーク。僕が殺した。
「ジブリ、ル。僕の、運命」
貴方は全裸に剥かれ、闇の触手に後ろ手に縛りあげられ、ジブリールの男根をなめていました。赤く腫れた後孔からは真珠を連ねた飾りが垂れています。
「どこへも行かないと誓うか」
「は、い」
「二度と逃げないと誓うか」
「……」
「答えは」
「あぁっやッ、そこっ、引っ張らないで!」
ジブリールが意地悪く笑い、貴方の肛門に栓をした真珠をいじります。ツプ、と粘膜を巻き返し、腸液に濡れそぼる真珠が一粒排泄されました。
「~~~~~~~~~~~ぁあぁあ」
貴方はジブリールの腹の上で痙攣し、卑しい人間のように射精に至りました。
あるいは此処で終わっていれば、ただの愚かな精霊の喜劇として物語を結べたかもしれません。
マルズークの死と同時に生きる希望を失い、貴方はジブリールの慰み者と成り果てました。
そんな日々に終わりを告げたのは、一匹の蛇でした。
地下迷宮の底にて。その日も貴方はジブリールに犯され、不浄に塗れて横たわっていました。
しゅるしゅると音がします。無気力に顔を上げ、闇の奥から這い出た大蛇を見付けました。
「……やあ。元気かい」
大蛇は答えません。
無意味な問いかけに力なく苦笑し、再び意識を手放す間際、大蛇があぎとに咥えた鞘に気付きました。
ジブリールが貴方に贈り、貴方がマルズークに与えたシャムシールの鞘。
「どこからこれを」
脳裏にある可能性が閃きます。もし地下迷宮と谷底が繋がっていたら……絶望している場合ではありません。貴方にはまだやる事が残っています。
「みすぼらしい鞘だな」
ジブリールが蛇を叩き殺して鞘を奪い、片手に力を込めます。
「やめろ!」
「小僧の形見か。余計な事を」
マルズークの骸が暗く冷たい谷底で朽ち果てるなど耐えられません、彼は人として葬られなければいけません。
なりふりかまわず縋り付く貴方を振りほどき、残忍な笑みを浮かべ、ジブリールが鞘を破壊しました。
絶叫。
次の瞬間、世界が反転します。
ジブリールの力の源が怒りと憎しみなら、それが今、貴方の真の力を覚醒させたのです。
即座にジブリールが吹っ飛び、彼方の岩壁に叩き付けられ、激突の衝撃で地下迷宮が崩落を始めます。
即ち、暴走。
「マルズークを二度殺したな」
貴方は怒り狂い、運命の片割れに焦点を絞り、持てる魔法の全てを撃ち放ちました。
結界を張る暇もない早業。
「ぐっ……そこまであの小僧、を?何故だ……俺にはお前しか……」
震える手を伸ばし哀訴するジブリールの前に立ち、その首を掴み、貴方は言いました。
「君の気持ちにはこたえられない。僕の王は一人だけだ」
ジブリールの魂に亀裂が生じ、砕け散り、貴方の体に吸収されていきます。
まず前提からして間違っていました。
貴方はジブリールの運命ですが、ジブリールは貴方の運命ではなかったのです。
顔をお上げなさい、白き舞い手のイルファーン。今漸く貴方がおかした罪がわかりました。
それは共食いの禁忌。
およそ人外の価値観において、精霊が人を殺すのは罪にあたりません。しかしねえ、共食いとなるとさすがに……悪魔だってしませんよ、そんなおぞましいこと。
話を戻しましょうか。
片割れを食らったら、その魂は完全になるのでしょうか?
貴方はジブリールを貪り食らい、地下迷宮からさまよい出て、千尋の谷底に至りました。
一帯には毒霧が立ち込め、夥しい骸骨が転がっています。
貴方は谷底に這い蹲り、生前の装備を頼りに、マルズークとおぼしき骸をあらためていきました。
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