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秋と月とキツネ

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今日は月見の日。レン達は、月見団子を作っていた。レンの家は一軒家で、縁側からは丁度月が見えるので、毎年月見をしていたのだ。今年はよく晴れるようで、皆は待ちきれなかった。
「もう夕方・・・急がないとですね!」
アオイは茹で上がった団子を冷蔵庫に入れ、そう言った。空はもう夕日色だ。

少しして、辺りはすっかり暗くなった。空には、綺麗な満月。皆は、空を見上げた。
「綺麗だね、コムギ」
「だね、コユリ」
双子2人も、団子を口いっぱいに頬張りながら月を眺めた。穏やかな時間の中、レンはそっとアオイの手を握った。アオイは何も言わずに握り返した。
秋の夜長。双子がスヤスヤと眠る中、月の灯りに照らされた二人は微笑んだ。
「ねぇ、レンさん」
「なに、アオイ」
「世界で一番大好きです」
その言葉に、レンは返事の代わりに口づけをした。アオイは、幸せそうに笑い、それにつられてレンも笑った。それから少しいちゃいちゃした後、双子を布団に移動し、レン達もベッドへ向かった。
「レンさん、まだ私眠くないです」
「奇遇だな。俺も」
2人はこれから何が起こるのか理解していた。アオイはレンを抱きしめた。
それからも、2人の夜は続いた。

朝、キッチンから味噌のいい香りが漂っていた。朝一番に起きたアオイが朝食を作っているのだ。
アオイが家に来てからずっと変わらない日常、秋になっても変わらない日常。
これからも、ずっと。
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