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追ってきたのは

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ある日の事。レンとアオイが2人でドラマを見ていた時だった。
ピンポーン
「あれ、誰だろ・・・ちょっと行ってくる」
レンは席を立った。
「えっと・・・どちら様?」
そこにいたのは、小さな子ぎつね2人だった。一方は白い髪、もう一方はアオイによく似たキツネ色の髪をしていた。見るからに子供であり、2人の見た目はそっくりであった。
「アオイお兄ちゃん・・・」
「いますか?」
2人は可愛らしい声でそう言った。
「アオイ?もしかしてアオイの知り合い?」
「うん!」
「僕らは」
「「アオイお兄ちゃんの同僚です」」
2人は声をそろえて言った。
「同僚・・・って、アオイと同じ家政婦って事か?」
レンはアオイが元家政婦で、新しい家政婦が来たことにより捨てられた事を思い出した。そうだとしたら、彼らも捨てられたのだろうか。
「そうだよ!」
「でも僕ら、捨てられたわけじゃありません」
「じゃあ、どうしたの?・・・まさか、アオイを連れ去りに・・・!?」
「違~う!」
「僕ら辞めたんです」
2人の言葉や行動は、普通の子供にはない何とも言えない雰囲気を醸し出していた。
「・・・・辞めた?家政婦を・・・って事?」
「「はい」」
その時だった。帰りの遅いレンを心配したアオイが、玄関へ来た。
「レンさん大丈夫ですか・・・って!コユリ!コムギ!」
アオイがそう声を荒げると、2人の顔は少し明るくなった。
「お久しぶりです!コユリで~す」
「コムギです」
白髪の子供はコユリ、キツネ色の髪の子供はコムギと名乗った。2人は明るく接しているのだが、その目は淀んでいた。ただ、様子からして精神的に何かあるわけではなく、生まれつきなものの様だった。
「ど、どうしたの!?ご主人のところで働いてたんじゃ・・・」
「「辞めました」」
「何で!?」
「だって・・・」
「あのクソじじい気持ち悪いんですよ。僕らの事キモイ目で見てくるんです」
2人は淡々と話している。
「・・・つまり、ここで暮らさせてほしいと?」
レンはなんとなく察し、先にそう言った。
「話が早くて助かります」
「僕ね、アオイお兄ちゃんと一緒がいいの!」
「・・・兄がこう言って聞かないんですよ・・・」
コムギがため息をついた。2人は双子らしい。
「・・・レンさん・・・」
「・・・分かった。いいよ」
そういうと、3人は喜んだ。話を聞くと、元は3人で家政婦をやっていたらしく、その中で最年長のアオイだけ捨てられたそうだ。しかし、アオイにとても懐いていたコユリとコムギは、アオイの後を追い、退職したのだとか。
「まぁ、にぎやかなのはいいことだしな」
「ありがとうございます、レンさん」
アオイがそう笑うと、レンは照れ臭そうにそっぽを向いた。
「ねぇコムギ」
「なに、コユリ」
「あれってさぁ・・・」
「付き合ってるだろうな」
2人はひそひそと喋り、幸せそうな2人を見て笑った。
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