ボロボロの狐を拾ったら母性強めだった

アントロ

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この気持ち

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「ふぁ・・・」
朝か。ここ最近は自分、アオイが朝ごはんを作っている。
今日は何にしよう。そんなことを考えながらコンロに火をつける。
チチチチチ・・・
今日は目玉焼きにしよう。冷蔵庫から卵を取り出す。その時、アオイは昨日の出来事を思い出した。



「あ、レンさん、ケチャップ取ってくれますか?」
「えっと・・・どこだっけ?」
レンは冷蔵庫の中を漁ったが、中々見つからない。しょうがないので、アオイもそばに行き、冷蔵庫を漁った。その時。
「あっ」
「お」
同じ方向に手を出してしまい、指先が触れた。恋愛漫画のような展開に、2人はぎこちなくなった。


あの時の感触が、いまだに残っている。思い出すだけで、心がギューッと締め付けられる。アオイは、この気持ちの名前を知っていた。

恋。

「・・・好き」

そう呟いただけで、胸が苦しく、甘酸っぱくなる。いつも、ふとした時にレンの事を考えている。
「はぁ・・・」
でも、この気持ちを伝えた時の事を考えると、口になんてできない。もし拒絶されたら?もし気持ち悪がってこの家を追い出されたら?それよりかは、このまま、傍にいたい。
そんな事を、最近はグルグル考えていた。
「おはよう・・・」
「おはようございます」
寝室から降りてきたレンは、眠そうにあくびをした。
「今日は・・・目玉焼きかぁ」
「はい!卵が余っていたので・・・」
「俺さ、好きなんだよね」
「へ・・・?」
アオイは混乱した。好き!?好きって、好き!?
「目玉焼き」
「・・・・・・・」
「私も・・・好きですよ、目玉焼き」
アオイは唇を嚙み締めた。馬鹿だ。そんなわけないのに。期待して、喜んで。とてつもなく、馬鹿だな。自分の不甲斐なさに腹が立つ。何で・・・こんなにも苦しいのだろう。気づけば、足元に水が零れていた。
「あれ・・・なんか、視界が・・・」
「アオイ・・・?」
アオイは泣いていた。何に対しての涙なのか分からなかった。自分への怒り?それとも、届かない想いへの悲しみ?
「どうしたんだ?」
「すみませ・・・っ、なんでも・・・ないですから・・・」
「なわけないだろ・・・あぁ、取り合えず、目玉焼き火から降ろさないと・・・」
フライパンを移動してもらっている間も、アオイは「すみません」と謝っていた。
「・・・で、どうしたの?大丈夫だから、言ってみて」
「いや・・・ほんとに何でもないんです・・・ほんとだから・・・」
どう見ても何でもない訳がないアオイを見て、レンは苦悩した。少し経つと、レンはあることを思いついた。
「よしよし・・・」
「!?!?!?!?!?」
レンは、アオイの頭を優しくなでた。いつもレンの頭を撫でる側のアオイは、頭を撫でられ安心した。その後も言うまで撫でられ続け、最後にはアオイが折れた。
アオイは、想いを伝えることにした。
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