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第60話 拒絶
しおりを挟む「ガルヴィード!?」
扉を幾度もノックするが、扉の向こうからの反応はない。
(まさか――)
ルティアは冷たい汗が背を流れるのを感じた。
(私にパンツを脱がされたのがショックで……っ!)
「……たぶん、ルティア嬢の考えていることとは違うと思う。昨日は普通に我々と話していたし、元気だった」
ルティアの心を読んだかのように、ルートヴィッヒが言う。
「でもっ、他に原因が……」
「わからない。でも、たぶんパンツのことは関係ないと思う」
ルートヴィッヒは否定するが、ルティアは他に心当たりなど思い浮かばなかった。
「ガルヴィード、ごめんなさい。私が馬鹿だったの、許して」
ルティアは扉に縋りついて許しを講うた。
「昨日、すぐに謝りにこなくてごめんなさい。合わせる顔がなくて……ねぇ、出てきてよ。ちゃんと顔見て謝るから」
ルティアがどれだけ呼びかけても、扉が開く気配はない。
ルートヴィッヒは意外に思って扉をみつめた。
これまで、ガルヴィードがルティアが居るのに姿を現さないなんてことはなかった。ルティアまっしぐら、それが王太子の習性だと呆れられるぐらい、ルティアの傍に自ら走り寄っていたのに。
ルティアも動揺していた。ルティアが城に来ているのに、ガルヴィードが部屋から出てきもしないだなんて。
(なんで――)
ルティアはじわりと涙がこみ上げてきた。
ガルヴィードが、自分に会おうとしない。
その事実が、ルティアの胸にずっしりと沈み込んできた。
「ガルヴィード!」
握った拳でどんどん扉を叩くが、やはり扉が開くことはなかった。
手が痛むとルートヴィッヒに止められて、とりあえず今日は帰った方がいいと勧められてルティアは泣きそうになった。
「申し訳ない。俺達がなんとか理由を聞き出して説得するから」
ルートヴィッヒが代わりに頭を下げてくれたが、ルティアはガルヴィードに拒絶されたという衝撃でふらふらしながら馬車に乗り込んだ。
城に入っていくらもしないうちに真っ青な顔で戻ってきたルティアに、御者は何があったのかと心配した。それはルティアを迎えた伯爵家の使用人も同様で、皆「何があったのか」と尋ねてきたがルティアは何も答えられなかった。
(ガルヴィード……)
拒絶された。
そう思うと、胸が破れそうなほどの痛みを感じた。
自分の部屋に入ってすぐに、ルティアは胸を抑えて壁にもたれ掛かった。
苦しい。痛い。視界がゆらゆらと揺らいで、立っているのも辛かった。
床にへたり込みそうになるのを必死に踏ん張って、ルティアはぶるぶると頭を振った。
(明日!明日、また会いにいこう!今日は会えなかったけれど、明日はきっと会える!明日、理由を聞いて、それからちゃんと謝るんだ!)
ルティアはそう言い聞かせて自分を励ました。
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