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第27話 白い炎
しおりを挟む王立魔法協会は二棟の巨大な建物から成る。
一棟は既に魔法使いの称号を得た者達と幹部達の使う総務棟、一棟は見習いが修行する訓練棟だ。
訓練棟に案内されたハルベリーは職員に案内されながら廊下を進んだ。
「まずは、簡単な魔法を使ってみてもらい、魔法に対する耐性を調べます」
「耐性?魔力値とは違いますの?」
「はい。魔力値が高くとも、実際に魔法を使った後に体調に変化をきたす場合があるんです。魔法を使った後、何も変化がない人もいれば、倒れ込んでしまう人もいる。これは体力の如何に関わらず、体質の問題のようです。お酒を飲める人と飲めない人がいるようなものですね」
「そうなんですのね。でも、倒れ込んでしまうのでは戦えないのではなくて?」
「そういう場合は、軽い魔法を繰り返し使って体を慣れさせていくしかないです。時間はかかりますが、努力次第で強力な魔法を使えるようになります」
ふむふむと頷いていると、廊下の向こうから幼い少年を連れた若い魔法使いがやってきた。
「やあ、今日は入会がもう一人居ると聞いていたが、キミかい?」
ハルベリーを案内していた職員が声をかけると、幼い少年はおどおどと頷いた。
「では、魔法を使ってみてもらおう」
何もないただっ広い部屋に入り、職員はハルベリーと少年に説明した。
「魔力があればだれでも使える簡単な魔法を使ってもらいます。私が手本を見せますので、呪文の言葉を覚えてください――エル・カロ」
職員の手のひらに、卵くらいの大きさの光の玉が出現した。
「実はこれはその人間の魔力の量で大きさが変わります。私ので平均ですね。では、モガレア君からやってみてください」
ハルベリーは頷いて、手のひらを上に向けた。
「エル・カロ」
手のひらよりも大きい光の玉が出現した。
「おお、これは素晴らしい。モガレア君の魔力値は六部卿に匹敵しますよ」
職員が興奮気味に叫んだ。
「体調に変化は?」
「特には」
「素晴らしい。モガレア君は偉大な魔法使いに成る可能性がありますね」
職員は次に、少年に向き合った。
「では、次はキミだ」
少年は頷いて、手のひらを上に向けた。
「エル・カロ!」
ぶぅん、と、音がした。
次の瞬間、景色が消えた。
「え?」
職員が戸惑いの声を漏らした。
少年の手のひらに光の玉は出現しなかった。
ただ、少年の手のひらが白く淡く輝き、その輝きが部屋中に満ちる。優しい白い光が壁を覆い床を覆いすべてを覆い、広い部屋だった場所がただの真っ白な空間に変わった。
「やっぱり……」
少年を連れてきた若い魔法使いが呆然と呟いた。
どたどたどた!と激しい足音が響いて、真っ白い空間に血相を変えた男が飛び込んできた。
「誰だーっ!!んな強大な魔力垂れ流しにしてる奴はーっ!!今すぐやめろっ!!訓練棟も総務棟も真っ白になっちまって、皆大混乱してんぞ!!」
少年はぱちくりと目を瞬いた。
その日、突然魔法協会の建物が白い光に覆われ、その白い光が空に向かって立ち昇るのを王国の民は目にした。
まるで、魔法協会が白い炎に包まれて燃えているようだったという。
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