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第22話 魔法協会
しおりを挟む「国内では、もうこれ以上はみつからないと思います」
王都の魔法協会本部の一室で、ビクトル・ムグズは集まった幹部達の前で発言した。
「やはり、ムグズには周辺国を回ってもらわなければならないでしょう」
「そうさのう……しかし、他国から魔力の高い人間を集めて連れてくるのは掟破りじゃ。下手すれば戦争になる」
「魔王の件は、国外には漏らせませんからね……」
「数年内にヴィンドソーン王国は壊滅的な打撃を受けます、なんて知られて見ろ。嬉々として乗っ取りにやってくる国がどれだけあるか」
「そういえば、あの夢では他国の影は見えなかったな。国があんなひどい状態だったのに」
「皆、魔王を恐れたんじゃないか?誰かが魔王を倒してから、弱体化した我が国に攻めいるつもりだったんじゃあ……」
大魔法使いシャークロー・ゴドヴィンを頂点に掲げる王立魔法協会の最高幹部六部卿は来るべき魔王復活の日に向けて、戦力の増強に努めていた。
魔法協会が真っ先に行ったのは、魔力値の高い人間を捜し出すことだ。
とはいっても、ヴィンドソーン王国は他国に比べると魔力値の高い人間が多く、もともと魔法は盛んなため、大半の国民は幼い頃に魔力値を測ってしまっている。魔力値は生まれながらのもので増減はしないため、そもそも魔力値の高い人間は既に魔法協会に入ってしまっている。新たな戦力を見つけるのは難しい。
で、あるならば、ヴィンドソーン以外の国から、魔力値の高い人間を連れてくるしかない。しかし、それはそれで問題がある。
「一人二人なら問題ないが、あちこちの国から魔力値の高い人間を何人も連れ帰ってしまうと、魔法を独占しようとしていると思われるだろうな。下手をすると戦争準備をしているとでもとられかねない」
六部卿の一人が呟き、皆一様に顔を曇らせた。
自分の能力がこんな形で役に立つ日がくるとは、と、ビクトルは複雑な気分で溜め息を吐いた。
まだ若輩の彼が最高幹部の会議に招かれているのは、彼の持つ特殊な能力が理由である。
彼自身はさほど魔力値が高くなく下級魔法しか使えないのであるが、彼は他人の魔力を「視る」ことが出来る目を持っているのだ。
通常、魔力というものは目に見えない。しかし、ビクトルには魔力を持つ人間は常に体から靄のようなものを発しているように見える。
魔力値の低い人間は弱々しい靄を、魔力値の高い人間は勢いよく靄を噴き出しているのだ。
そのため、魔力値の高い人間を捜すために魔法協会は彼を各地に派遣したのだ。しかし、前述の通りめぼしい人材は既に中央に集まってしまっている。成果はほとんど得られなかった。
「やはり他の国から……」
「一国につき一人であれば、連れてきても不自然じゃありますまい。通常のスカウトの範囲です」
「同じ時期にたくさんの国から一人だけ連れてきていると気づかれれば、やはり同じことよ」
「そもそも、ムグズ一人でそんなにもたくさんの国を回ることは出来ないでしょう?」
結局、いい解決策は思い浮かばず、ビクトルは六部卿の前を辞した。
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