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第42話
しおりを挟む人気者の公爵令息が、成績優秀な男爵令嬢に嘘の告白をして気持ちをもてあそぼうとした。
その事実はあっという間に広まり、ロージスと、彼をそそのかし協力したダイアンとティオーナも針もむしろで過ごしていた。
「自業自得とわかっているが、きついな」
「なんで、あんなことしちゃったのかしら……」
ダイアンが苦い顔で笑い、ティオーナはぐったりと机に突っ伏す。
今となってみては何故嘘告などけしかけてしまったのか、後悔しかない。相手が目立たない男爵令嬢だから大事にはならないだろうと甘く見ていた。浅はかだった。
「レミントン嬢にはすっかり嫌われてしまったな……いや、最初から嫌われていたのか」
「傷つけたことを謝ろうにも、近寄ることもできないわ」
すっかり人望を失った彼らがハリィメルに近寄ろうとすると、周りの人間がさりげなくハリィメルに話しかけたりして邪魔をするのだ。
放課後の教室でこうして三人で話していても、時折冷たい視線を感じる。
「ほとぼりがさめてから真摯に謝罪するしかないな」
「もうお友達にはなってもらえないわよね……馬鹿だったわ、本当に」
ダイアンとティオーナがひたすら反省する傍らで、ロージスは黙りこくって考え込んでいた。
(……ハリィメルは、あの男と会っているのだろうか?)
あの日、街中のカフェで見かけた、ハリィメルに笑顔を向けられていた男の存在が、気にかかって仕方がなかった。
(あいつが本命だったのか? もう恋人になっているのか? 気になる……)
眉間にしわを刻んで悩んでいると、ダイアンがばしばしと背中を叩いてきた。
「もうすぐ中間テストだ。一位はレミントン嬢だろうが、俺達もこれまで以上に頑張ろう。そして、テストが終わったら、彼女のたゆまぬ努力を心から称えて、改めて謝罪をしよう」
「……そうだな」
ロージスはテストまでの日数を思い浮かべて決意した。
(テストが終わるまで、ハリィメルの邪魔はいっさいしない! テストが終わったら、もう一度謝って、それから……友達になってくれ、と言う?)
謝って、もしも、もしも許されたら、自分達はどんな関係になるのだろう。
友達になることができれば、また図書室で一緒に勉強することも可能だ。だけど……
(俺とは、図書室で勉強するだけで、街へ遊びに行ったりするのは他の男と……)
考えると何故か胸苦しくなって、ロージスは喉元に手を当てて首を傾げた。
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