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第63話 女子会
しおりを挟む冬期休暇の間、ヒューは二週間ほど実家の侯爵家で過ごすことになった。
グレイ侯爵夫妻からの申し出だ。
私は不満だったけれど、長期休暇の時くらい実家に帰さないと世間体がよくないとお父様に説得されて不承不承うなずいた。
「そんなに心配すんなよ」
ヒューはふくれっ面の私を笑って、「大丈夫だから待ってろ」と言い置いて実家へ帰っていった。
グレイ侯爵夫妻のことはあんまり好きになれないけれど、ヒューの両親でこの国の歴とした侯爵家だ。
私がヒューと結婚すれば親戚になるのだし、あまり喧嘩腰でいるのもよくないかもしれない。
仲良く、とまではいかなくとも、普通に友好的な態度で接するように心がけよう。
そしてそれは、彼女達に対しても言えることだ。
カナリア・ザフィリとマーゴット・シャイデン。
前回の記憶があるために、ついつい彼女達を避けてしまっていたが、ルナマリアに操られる前の彼女達にはなにもされていないのだ。たぶん親からは私と仲良くするように言われているだろうし、私は公爵令嬢として常識的な社交をしなければならない。
なので、ヒューのいない寂しさをまぎらわせるためにも、彼女達をお茶に招くことにした。同じクラスという理由でフアナとイベリスも。それからエリーナは私の親戚なので招いてもおかしくない。
ジュリエットも呼べればよかったのだけれど、彼女は辺境へ帰ってしまっている。
「ステラ様」
「お招きありがとうございます」
やってきたカナリアとマーゴットはどこかほっとした表情をしていた。やはり、私と交流しないといけないんだろうな。
カナリアとマーゴットがいるので前回に関する話はできないため、お茶のお供は学園の話題が多くなる。
「エリーナ様は来年にご入学なのですね」
「なにかあったら遠慮なく聞いてくださいませ」
カナリアとマーゴットは唯一の年下であるエリーナに優しく声をかけていた。
実際には、エリーナは前回の記憶があるので学園のことは彼女らより知っているだろうが、にこにこと微笑み「ありがとうございます」とお礼を述べている。
「あのぅ、ステラ様。皆様も」
最初の緊張がほぐれて落ち着いてきた頃合いで、エリーナがおずおずと切り出した。
「我が家のシェフの手製のお菓子を持ってきましたの。ご迷惑でなければ、どうか召し上がってください」
おとなしそうなエリーナが一生懸命箱入りのお菓子を差し出してくれば、一つ年上の私達は妹を見ているような気分になって顔がほころぶ。
前回のエリーナはコリンの婚約者だったのだから、私にとっては正真正銘未来の義妹だったしね。
「まあ、美味しそう」
「いただきますわ」
一応の礼儀としてエリーナが一つ食べてみせた後で、私達はお菓子に手を伸ばした。
この時のことを、私は後にひどく後悔した。
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