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第58話 冬が始まる
しおりを挟む謎の栗勝負が繰り広げられたものの、収穫祭は無事に終わり、学園は冬期休暇に入る前のテスト期間に入った。
なにせやり直しているわけだから、前回よりはいい成績をとらないとね……
「フアナ! 今度こそ必ず貴様に勝つ!!」
「ほほほ! 望むところですわ!」
前回の時は常に一位だったバーナードは、今回はフアナに負けているのが悔しくてならないらしく敵対心をむき出しにしている。
「では、次の問題です。ハルゲンロッズの戦いで敵軍に寝返ってモンヴェール将軍の首を斬った騎士の名前は?」
「ふぐぅ……ふ、ふえれる・べれぽーろ……すぅはぁ
」
「正解は「フェレール・ベレフォード」ですわ! 名前は正確に覚えねばなりませんよ!」
イベリスは脳筋のアダムに足技をかけて押さえ込み、身動きできないようにしつつ勉強を教えているようだ。
……精神が大人のイベリスからしたら、十二歳のアダムは子供にしか思えないのかもしれないけれど、そろそろ太股で顔面を挟むのはやめた方がいいのではないかしら?
たまに無関係な男子がちょっとうらやましそうに見ているし、アダム本人もちょっと幸せそうな感じに見えるから。なんか息づかいもあれだし。
私は家ではヒューと一緒に勉強をしている。テスト期間中はさすがに第一甘栗殿下も忙しいのか絡んでこなくて静かだ。
「テストの点数で勝負だ、とか言い出されたらどうしようかと心配していたんだが、なにも言ってこないなあ」
勉強中に、ヒューがふと呟く。
ヒューがちょっと殿下のこと気になっちゃってるじゃないのよ!
あんな第一マロン殿下のことなんか気にしなくていいわよ! あんな奴より私を見て!
そういえば、なんだかんだで学園の一年目が終わりに近づいているのね。
第一栗マロン殿下がなにかと突っかかってくる以外は概ね平和に過ごせたし、いついかなる時もヒューがかっこいい一年だったわ。来年のヒューも確実にかっこいいわ。
あ。でも、来年はコリンが入学してくるのよね。
第一栗の甘露煮殿下に加えてコリンまで突っかかってきたら面倒くさいわ。でも、一応は従兄弟だからなあ。完全に関わらないのは不可能だわ。
どうやら殿下達のおかげで平民達の環境は良くなっていっているらしいけれど、ルナマリアについてもまだまだ油断はできないし。
ううん。来年も気は抜けないわ。
でも、どんな苦難からもヒューだけは守ってみせる!
そして、お父様を「血まみれ公爵」にはさせずに、平和に卒業を迎えるのよ!
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