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第55話 秋の訪れ
しおりを挟むどうやって平民居住区をきれいにするか考えていたら、何故か殿下達がいろんな施策を始めて、私がなにもしないうちに平民達の衛生状態と栄養状態が改善していた。
殿下の発案で公衆浴場の利用が推進され、ゴミ捨て場が整備され不法投棄には罰金が科されることになった。
さらに十歳以下の子供か八十才以上の老人がいる家庭には月に一度、小麦一袋が配給されることになった。この小麦は前年度の備蓄から放出されるらしい。これにより、捨て子と物乞いの数が減ったと言われている。
「殿下達、やるじゃないか」
ジュリエットは普通に感心していたけれど、私は前回の記憶があるのであんまり彼らを褒める気にならない。私怨だけどね。
前回の記憶があっても、フアナとイベリスはバーナードとアダムを褒めていた。フアナに「偉いですね~」と褒められて「えへん」と言いたげに胸を張るバーナードはおだてられた子供みたいだし、イベリスに「よしよし」と頭を撫でられるアダムは尻尾を振る犬にしか見えなかった。
フアナとイベリスは偉いなあ。自分の婚約者を見捨てずに真人間に育てようとしている。私は殿下にそんなことまでしてあげる気にならなかった。
結局、私も殿下を愛していなかったのよね。「王子様との結婚」にあこがれていただけで。
前回もルナマリアが現れるまでは「仲の良い友達」って感じの付き合いだったし。
それにしても、何故殿下は平民居住区に興味を持ったのかしら。前回は特にそんな様子なかったのに。
あと、「君のおかげだ」と言われて黒い石鹸を渡されたんだけど、どういう意味かしら?
石鹸はメイドに渡しおこう。洗濯で使うかもしれない。
そうこうしているうちにあっという間に夏の休暇が終わり、収穫祭が近づいてきた。
冬の訪れを前に一年の恵みに感謝する収穫祭は一年で一番大きなお祭りだ。成人した貴族は城へ集まって夜会に参加するが、学生は学園でパーティーを行う。
そういえば、サリーナ様から夜会で羽目を外しすぎた貴族はお父様の鉄槌を食らって退場処分になるという話を聞かされたけど、本当なのかしら。収穫祭が終わったらお母様に聞いてみよう。
収穫祭は文字通り恵みに感謝してひたすら食べるお祭りだから、太らないように気をつけなくちゃ。でも、一年で一番食べ物が美味しい時期だから、毎年ついつい食べ過ぎちゃうのよねえ……
美味しい食べ物は至福の喜びであり、危険な誘惑でもあるのだ。女の子ならわかってくれるわよね。
今回は前回とは違う。すらりとしたジュリエットが隣にいるから、太ったらたぶん目立っちゃう。
まあでも、ヒューと一緒に美味しいものを食べるのは楽しみだけどね。
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