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第51話 病への対策
しおりを挟むルナマリアの魔女化阻止計画は早くも暗礁に乗り上げていた。
だって、病が流行るのを防ぐ方法なんてわからないんだもの。
これは私ひとりで悩んでいても埒が明かないわ。誰かに聞いてみよう。
「病の流行を防ぐ方法?」
私が尋ねると、ヒューは少し首を傾げた。
傾く角度も完璧だわ! どの方向から見てもかっこいいわ、ヒュー!
「治し方じゃなくて、防ぐ方法か……さあ。考えたことがなかったな」
ヒューの住む離れの一室で、課題を片づけてからふたりで話し合った。私は書斎から持ってきた感染症について書かれた本を開いた。
病を引き起こす原因の主たるものは不潔と栄養不足とある。
ということは、清潔にして食事をきちんととっていれば感染症にはかからないということよね。
平民居住区は馬車で通り過ぎることはあるけれど、降りたことはないわ。
一度行ってみようかしら。見てみないとわからないものね。
「ねえ、ヒュー。私、平民居住区に行ってみようと思うの」
「ええ? なんでまた。公爵令嬢が平民居住区に行ったりしたら目立つだろう」
ヒューは目を丸くするが、質素なワンピースを着れば平民に紛れられると思う。
もちろん、ひとりではなく護衛についてきてもらうけれど。
前回の時、病は平民の間だけで流行って、貴族にまでは広がらなかった。
ということは、貴族は病を防ぐ方法をとれたということよね。その方法を探って、平民居住区でも実践できるか確かめたいわ。
「ちょっと見学するだけだから心配しないで」
「なに言ってるんだ。お前が行くなら俺も一緒に行くぞ」
「え?」
ヒューが呆れたように眉をひそめた。
「お前をひとりで行かせるわけがないだろう。心配で待ってられるか」
ヒュー! はあーっ! やっぱりヒューは素敵!! 好き!!
こんなにかっこいいヒューが存在して世界は大丈夫なのかしら? ヒューのかっこよさに耐えかねて地面がひび割れたり、ヒューのまぶしさに照らされて海が干上がったりしないかしら?
ヒューがこんなにもかっこいいんだもの、なにが起きても不思議じゃないわ。
たとえなにが起きても私のヒューへの想いは変わらない。平民居住区でなにがあろうと、私はヒューを守ってみせるわ。
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