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第39話 いざ、学園へ
しおりを挟むいよいよ学園の入学日。
私はヒューと一緒に馬車に乗って登園した。
ヒューは緊張しているのか、少し表情が硬かった。真剣な顔つきがかっこよすぎて眼福だわ。
ああ、今日からヒューと一緒の学園生活が始まるのね。前回は見られなかったヒューのあんな姿やこんな姿が見られるのね。はあはあ。
「そうだ、ステラ。もしかしたら王子はまだお前に気があるかもしれないからな。気をつけろよ」
ヒューが思い出したようにそう言った。
そうよね。汚い手でヒューを辺境送りにした生ゴミどもが、またなにかやらかすかもしれないのだわ。気をつけなくちゃ。
ヒューが通う学園にあんな生ゴミどもが存在するだなんて許せないけれど、光あるところに影も生まれるって言うものね。ヒューの輝きがまばゆすぎて影が濃くなるのよね。仕方がないわ。
ヒューとふたり並んで学園の門をくぐると、早速目に飛び込んできた光景があった。
「ほほほほほ! この程度の問題もわからずに「自分は聡明だ」なんて、思い上がりも甚だしくてよ!」
「くっ……!」
「覚悟ぉっ!!」
「甘い!! 背中ががら空きでしてよ!!」
「ぐわあっ!!」
地面に這いつくばったバーナード・ホルムズ侯爵令息を高笑いしながら見下すフアナ・ワトソニア伯爵令嬢。
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……えーっと?
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「イベリス嬢の技には一段と磨きがかかったようだ!」
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周りのみんなの反応を見る限り、これが当たり前みたいな感じだけど、いつからこの光景が新常識になったの?
「なんかすげえな」
ヒューが感心したように呟いた。
そこへ、
「ステラ!」
聞きたくない雑音が聞こえて、私はヒューの腕にがしりとしがみついた。
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