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第13話 ヒューイット様がやってきた!
しおりを挟むいよいよ今日! ヒューイット様が我が家にいらっしゃるわ!
「アニー、どこかおかしなところはないかしら?」
「バッチリです、お嬢様! 大変に愛らしいです!」
何故かお母様とアニーの力の入れようがすごくて、私が口出しするまでもなくお茶会の準備が完璧に整えられていた。お茶会用の新しいドレスまで用意してもらえて、私は薄緑色のふわふわしたドレスに身を包んでいる。
緊張するけれどしっかりしなくちゃ。我が家にヒューイット様を招くのだから、決して失礼があってはならないわ。
今日のところはヒューイット様に、なにか困ったことがあったら私がなんとかするので相談してください、と伝えるだけにしておこうと思っている。下僕とか召使いとか言うとヒューイット様が戸惑ってしまうだろうから。
内心は今すぐにでも平伏したいんだけれど、公爵令嬢がいきなり足下にひざまずくのは不味いわよね。
もちろん、「頭が高い!」とか言われたらいつでも地面に頭をこすりつける覚悟はできているけれど。
少しずつ一緒にいる時間を増やして、ヒューイット様が自然に私を顎で使えるようになるのが理想だ。頑張る。
侯爵家の馬車が到着して、侯爵夫人とヒューイット様が降りてきた。
「本日は、お招きに預かりましてありがとうございます」
「いいえ。ようこそおいでくださいました」
お母様と侯爵夫人が挨拶を交わす横で、私はヒューイット様に微笑みかけた。
「ようこそいらっしゃいませ! お会いできてうれしですわ、ヒューイット様!」
ヒューイット様はそっぽを向いていたが、私は気にせず庭に案内した。
「なんでも、気分が優れない娘をご子息が馬車まで送ってくださったとか」
「私はなにも知りませんで……驚きましたが、ステラ様がお元気になられてなによりですわ」
お母様と侯爵夫人が微笑み合う。
ヒューイット様を我が家に招くために適当な口実が必要だと相談したら、お母様が『気分が悪いところを助けてくれたことにしましょう!』とノリノリで提案してくださった。
なんでも、お父様とお母様の出会いがそんな感じだったらしい。
その後に続いた『当時のお父様がどれだけ素敵だったか』というおのろけは聞き流したので詳しくは知らないが。
侯爵夫人はまったく疑っていないようだけれど、和やかに会話する母達の横でヒューイット様はひたすら居心地悪そうにしている。
お茶を一杯飲み干したところで、私は提案した。
「あの、ヒューイット様に庭をご案内させていただいてもよろしいですか?」
侯爵夫人のお許しを得ると、ヒューイット様も黙ったまま立ち上がった。
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