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第47話 無駄な抵抗
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しおりを挟む顔を覆面で覆った三人の男達が、俺を担ぎ上げて何故かアカリア達の方へ走り出す。
「頭!捕まえやしたぜ!!」
いや、ディオン様の声だし。
「へっへっへ。なかなかの上物じゃねぇですかい」
お前はミッセルだろ!
「活きのいい獲物は大好物だぜ、ヒャッハーッ!」
まさかのロベルト王子!どんなキャラだ!?
イカレた三人は俺をアカリアの前に連れて行くとそのまま馬車に詰め込もうとする。
もちろん、俺は暴れて抵抗した。
「なんのつもりだ!?」
「誘拐です!」
俺の声に答えたのはアカリアだった。
「キース様は私に誘拐されたのです!観念してください!」
「何を……」
胸を張るアカリアは、戸惑う俺に言った。
「だって!キース様は私が誘拐されたのは自分のせいだと思ってるんでしょう?」
俺は息を飲んだ。
その通りだ。俺がもっとしっかりしていれば、アカリアはあんな恐ろしい目に遭わなくてすんだはずだ。
だから、俺は……
「だから!私のせいでキース様が誘拐されれば、おあいこです!!」
ん?
アカリアの言葉に首を傾げる俺の耳に「きゃーだれかー」とやる気のない叫びが届いた。
「たいへん、ゆうかいよー」
「おそろしいですわねー」
「だれかー」
トリフォールド夫人とクルトの母親が囁きあい、クルトがこちらを指さしている。
めちゃくちゃ棒読みだよ!なんだこの茶番!
「おおアカリア、なんとつみぶかいことを」
アンタも棒読みだよ男爵!
「無駄な抵抗はやめろ!このままゴールドフィッシュ男爵領まで連行する!」
アカリアが一番生き生きしている。
俺はディオン様とミッセルとロベルト王子を振り払ってアカリアの前に立った。
「アカリア……俺は」
アカリアは、きっと俺を睨みつけた。
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