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第41話 キースの決意
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しおりを挟む夜明けの工場地帯を走り抜けていると、向こうから数人の男達が駆けてくるのが見えた。
さては誘拐犯の一味かと一瞬身を固くしたが、「おーい」と言って手を振る声は聞き覚えのあるものだった。
「お嬢様!ご無事ですか?」
「ミッセルさん!」
ミッセルと彼の部下達はアカリアの姿を見ると、立ち止まってはーっと息を吐き出した。
「クルトの奴が、次期様がとんでもねえ形相で走ってったって心配してましてね。もしかしてなんかあったんじゃあ、と思ってたところにお二人を乗せた馬車が戻ってきてお嬢様がさらわれたって言うじゃありませんか。次期様は犯人のところに乗り込んでいったけど場所がわからないって言うし」
「ああ。一人で来いと書いてあったので、呼び出された場所の手前で降ろしてもらったからな」
キースが言うと、ミッセルはがりがり頭をかきむしった。
「そういう時は一人で行っちゃいけませんよ。まったく、肝が冷えました……」
「すいません。心配かけて」
「それで、お前達はどうやってここがわかったんだ?」
キースが尋ねると、ミッセルは顔をしかめてみせた。
「このところ、うちの店の周りをうろちょろしてた輩がいましてね。そいつをとっ捕まえてかまかけてみたらあっさり白状しましたよ。ナリキンヌ商会の仕業です」
「そうか……」
ナリキンヌ商会、と聞いて、キースはぎゅっと目をすがめた。
「まったく、強引な商売をする連中だとは知っていましたが、まさかお嬢様をさらうとまでは……私がもう少し気をつけるべきでした。申し訳ない」
「いえいえ、そんな。こうして無事ですし!」
「そういや、どうやって助かったんです?」
「キースお兄様が助けに来てくれて……」
キースはミッセルに向かって捕まった時のことを説明するアカリアの背中をじっと見つめた。
そして、明るくなった空を見つけて、決意した。
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