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第33話 男達の探り合い

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「ところで」

 アカリアがトリフォールド夫人に連れられて家の中に入った後で、ロベルト王子がおもむろに口を開いた。

「キースはアカリアの婚約者ではないのか?」

 水槽にポイの代わりに自分の頭を突っ込みそうになった。

「なっ……んっ……!」

「お前はゴールドフィッシュ男爵家の養子なのだろう?ということは、アカリアと結婚して跡を継ぐのかと思ったが、調べた限りでは婚約している様子はないじゃないか」

 なんで調べた……?
 そこはかとなく嫌な予感がして、俺は思わずロベルト王子を睨みつけてしまった。

「アカリアに婚約者がいないのなら……うん。父上にお願いしてみるかな」

 嫌な予感が当たった。とんでもねーことを言い出したロベルト王子に、俺は真っ青になった。
 冗談じゃない。我が儘王子に激甘な国王がそんなこと聞いたら、アカリアが無理矢理にでも召し上げられてしまう。

「わ、我が家は貧乏な男爵家であって、第三王子殿下に嫁げるような身分ではありませんっ!!」
「そうですよ、殿下」

 俺が声を荒らげると、ディオン様がのこのことやってきた。

「さすがに王族に嫁げというのは令嬢にとっても酷です。その点、伯爵家程度ならばアカリアも気軽に嫁いでこれますよね。いっそこのまま家に住み続けてくれてもいいですし」
「こらこらこらあっ!!」

 俺は思わず礼儀も忘れて突っ込んでいた。
 くそぉ、薄々感じてはいたが、ディオン様はやっぱりアカリアを狙っていやがったのか。

「問題ないだろう?アカリアのことは母上も気に入っているし」

 確かに、トリフォールド夫人はアカリアのことを可愛がっている。息子を引きこもりから救ってくれたという恩義も感じているらしい。

 王族にしろ、伯爵家にしろ、正式に申し込まれたら男爵家では断りようがない。

「お話に口を挟むようですが、失礼ながらお嬢様は王侯貴族の暮らしが向いているとは思えませんなぁ。ご本人も「金魚屋になる」と常々おっしゃっていますし」

 胡散臭い商人がにやにやしながら口を挟んでくる。

「私でしたら、商売のいろはをお教えして差し上げることも出来ますし……というか既に金魚部門では共同経営者みたいなものですし」

 こいつ……っ、平民のオッサンの癖にっ!

 俺はミッセルをぎろりと睨みつけた。

「まあ、キースが婚約者でもなんでもないんだったら、なあ?」
「ええ。僕もキースがライバルかと思っていましたが、その気がないのなら」
「アカリア様はキース様のことをどう思っていらっしゃるんでしょうねえ」

 三人揃ってちくちくと俺を攻撃してくる。なんなんだこいつら……!

「失礼!厠に!」

 俺は勢いよく立ち上がって庭から逃げ出した。


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