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第16話 ついに、お披露目展示会!

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「すっかり空になりましたなぁ」

 ミッセル氏が頭を掻いて言う。水槽もほとんど買われていき、残っているのはわずかな和金だけだった。

「では、お嬢様と次期様を宿までお送り致しますよ」
「いえ、私も片づけの手伝いを……」

「あのぅ……」

 後片づけを始めようとした時、入り口の方からか細い女性の声がかけられた。
 振り向くと、見るからに上品な婦人が佇んでいた。

「本日、こちらで何か珍しい生き物を売られていたとか……招待も受けずに不躾ですが、是非、見せてはいただけないでしょうか」

 丁寧ではあるが、威厳を含んだ声音だ。高位の貴族に違いないと考えた私の横で、ミッセル氏が声を上げた。

「これはこれは、失礼ながら、トリフォールド伯爵婦人とお見受けいたします」

 ミッセル氏が挨拶したので、私とキース様も慌てて前に歩み出た。

「貴方達は?」
「ゴールドフィッシュ男爵家のキースと申します。お初にお目にかかりますトリフォールド元伯爵夫人」
「キースの妹、アカリアと申します」

 頭の中で懸命に記憶を手繰る。トリフォールド伯爵は、確か昨年お亡くなりになって、嫡男が跡を継いでいたはず。

「貴方達も、生き物を見に来たのですか?」
「今日展示した生き物は、ゴールドフィッシュ男爵の領地から寄越して貰ったのです。彼らは取引相手ですよ」

 ミッセル氏は残っていた和金の入った水槽を持ち上げて、夫人に見せた。数匹だけ残った金魚が泳ぐのを、夫人は目を丸くして見つめた。

「赤い魚……これはなんという生き物なのですか?」
「金魚です」
「金魚」

 夫人がごくりと息を飲む音が聞こえた。

「こちらをいただきますわ。よろしいかしら?」

 残りの金魚を全て購入して、夫人は帰って行った。

 かくして、金魚のお披露目展示会は大成功のうちに幕を閉じたのだった。


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