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第16話 ついに、お披露目展示会!
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しおりを挟む「ミッセル殿、招待した貴族は伯爵以下だそうですね」
「ええ。私の商会は残念ながら侯爵家とは繋がりがなく」
キース様の質問に、ミッセル氏が肩をすくめる。
「それはいいのですが、誰も見たことがない珍しいものが手に入ったというのに、貴方は商人として王家へ金魚を献上しなくて良いのですか?」
キース様の言葉に、私もはっとミッセル氏を見た。
王家に金魚を献上して喜ばれれば、ミッセル商会は一気に権威を増す。他の商会より一歩抜きんでることが出来る。
王家が金魚を手にすれば、当然貴族達はそれと同じものを欲するだろう。商売のことを考えれば、王家に献上するのが最も早道だ。
だが、ミッセル氏は曖昧な笑みを浮かべて視線を斜めに向けた。
「噂によると、王家にはとっても新し物好きの方がいらっしゃるらしくてね」
ミッセル氏がそう言う。
私は首を傾げた。
新し物好きなら、なおのこと金魚を献上すれば喜ぶのでは?
「喜んでくださるだけならいいのだが、その方はどうにも悪い癖がおありらしくてね」
「悪い癖?」
ミッセル氏はふふん、と鼻を鳴らした。
「その方にバレないうちに、王都中に金魚を広めてしまおうと思うのですよ。ご協力ください、お嬢様」
ミッセル氏が私の肩を抱いて不敵に笑った。キース様が「気安く触るな!」と言って飛んでくる。
『金魚のお家だ!』
『わーい』
きんちゃんとぎょっくんが水槽の上を飛び回ってはしゃいでいる。
私は室内を見渡して、ここで金魚すくいがやれればいいのに、と思った。
でも、今回は貴族しか紹介されていない。ドレスを濡らして金魚すくいはしてくれないだろう。
残念だが、金魚すくいを披露するのはまだ先になりそうだ。
***
準備に費やした二日間はあっという間に過ぎ、いよいよ展示会当日がやってきた。お客様の相手をするのはミッセル氏と彼の部下達だが、私とキース様もお客の反応を見るために客の振りして紛れ込むことにした。
「まあぁ……なんて綺麗なの……」
「なんだこれは、こんなもの見たことがないぞ」
「まるで宝石が泳いでいるようだ……」
「これは夢か……」
訪れた貴族達は透明なガラスの中を泳ぎ回る金魚達を見て、夢見心地になっているようだった。
「私の部屋にこの美しい魚を置きたいわ……」
「すぐにでも、我が家に金魚のための部屋を用意しよう!」
「40セニだと!?なんの間違いだ?」
「では、こちらの紅白の金魚はいくらだ?」
貴族達は皆例外なく金魚を購入して帰って行った。
大成功だ。
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