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第14話 商人は空気でも売る

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「まあ、お嬢様。先日はありがとうございます。綺麗な魚をいただいて……」

 家の中から出てきたエリサさんは、前に見た時より調子が良さそうだった。

「母さん、こいつら、母さんの『スキル』が見たいんだって」
「はあ……」

 見知らぬ商人の男達に、エリサさんは目を白黒させた。私は事情を説明して、エリサさんに空気玉を創ってくれるよう頼んだ。

「こ、こんなものが売り物になるんですか……?」

 俄には信じられなさそうに、おずおずと手のひらに空気玉を創り出すエリザさん。クルトは窓辺に置いた水槽の中を泳ぐ金魚を眺めていた。

 ミッセル氏が連れてきた部下がエリサさんから空気玉を受け取ると、手のひらに乗せて軽く握るようにした。
 すると、空気玉が薄赤い膜のような物に包まれた。

「どうです?」

 膜に包まれた空気玉をミッセル氏がこつこつと叩いてみせた。

「こいつの「強化」は三日ほど保ちます。これなら王都まで運べるし、店に並べることも出来ますよ」

 得意そうに言って、エリサさんに迫る。

「とりあえず二十個ほど預からせてもらえますか?値段は決めていますか?」
「ね、値段なんて、ただの空気ですし、そんな……」

 ぎらぎらした商人に詰め寄られて、エリサさんはたじたじになっていた。

 結局、和金と同じく一つ40セニということにした。エリサさんは「ただの空気ですのに」と最後まで恐縮していたが、40セニの半分をミッセル商会の利益にということで話はまとまった。
 20セニを二十個分で4ディルクだ。ミッセル商会にとっては利益になるかもわからない些細な金額だが、エリサさんの家計の足しにはなる。

「まったく、お嬢様が平民にも気軽に買えるようにしたいなんておっしゃらなければ、もっと儲けられるんですがね」

 そんな風に言いながら、ミッセル氏もなんだか楽しそうに見えた。

『みんな、しあわせ』
『ぼくたちも嬉しい!』

 きんちゃんとぎょっくんも楽しそうにくるくると飛び回っていた。


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