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第9話 真夜中の侵入者

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「誰かいるの?」

 思わず室内に向かって声をかけると、部屋の隅で何かが動いた。
 強盗だったらどうしようと、今さらになってヒヤリとする。だが、テーブルの下から飛び出してきた影は私より小さかった。

「子供?え?」

 七、八歳ぐらいの男の子が、室内を横切って窓に取り付いた。強引に窓をこじ開けて、僅かに出来た隙間から抜け出していく。
 そういえば、あそこの窓は壊れていたんだった。直すお金がないから放置していたことを思い出して、私は窓に駆け寄った。
 壊れた隙間から、夜の庭を駆けていく小さな後ろ姿が見える。

「アカリア!?何事だ?」

 キース様が駆けつけてきた。

「誰かいたんだな?無事か!?」
「は、はい……」

 キース様は壊れた窓を見ると顔を真っ青にして、私の無事を確認した。

「良かった……アカリアはここにいろ」

 キース様はさっと厳しい顔つきになって、屋敷の外へ出て行った。

『びっくりしたね』
『だいじょうぶ?』

 きんちゃんとぎょっくんが私の肩の辺りで心配そうに跳ねる。私はまだどきどきしている胸を押さえて窓の外を見やった。キース様とお父様が庭を見回っている姿が見える。子供は行方をくらましたようで、数分後、憤りを抱えたキース様とお父様が戻ってきた。

「領主の館に侵入するとは、何が目的か知らないが捨て置けない!必ず見つけだしてやる!」
「あ、あのぅお兄様……」
「アカリア!どんな奴だった?」

 激しい怒りを露わにするキース様に圧倒されて、私は何故か本当のことが言えなかった。

「わかりません。よく、見えなくて……」

 かすれた声で言うと、キース様は少し肩の力を抜いて私の背中に手を回した。

「そうか。怖かっただろう。アカリア、異変に気づいても一人で見に来たりしちゃいけないぞ。今度からは必ず俺に言うんだ」
「はい……」
「部屋に戻って寝なさい。大丈夫、窓は俺が直しておくから」

 キース様にいたわられて、私は不安な気持ちを抱えたまま部屋に戻った。




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