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第4話 ガラスの少年 と、うっかり出しちゃった少女
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しおりを挟むガラス水槽を手に入れることに熱中しすぎて、ついつい無理を言ってお父様についてきてしまった。
グラスイズ男爵家は我が家のボロ屋敷とは正反対の、大きくて立派な――成金屋敷だった。
いや、成金屋敷は言い過ぎだわ。えーと、悪趣味ハウス……
馬鹿にしたい訳じゃないんだけど、なんていうか、キラキラ過ぎて目が痛い。外観もめちゃくちゃキラキラしていたけど、招き入れられた屋敷の中はさらにキラキラしていた。
屋敷のそこここに色とりどりのガラスの置物が飾ってあるせいで、窓から陽が射し込む度にキラキラキラキラすんのよ!落ち着かない!
「初めまして。私がゴールドフィッシュ男爵だ」
やっぱり眩しいのか、若干目を細めながらお父様が目の前の少年に挨拶した。
「お初にお目にかかります。グラスイズ家の六男、キースと申します」
我が家の養子となるのは十七歳の六男だそうだ。
礼儀正しく挨拶するものの、表情は暗く目も伏せがちで、喜んで我が家に養子入りするようには見えない。
うん。確かに、養子先としては全然魅力のない貧乏領地だけどもさ。
「こちらのお嬢さんはゴールドフィッシュ男爵令嬢ですかな?」
キース様の父親の目がこちらへ向いたので、私も慌てて挨拶する。
「初めまして。アカリアと申します」
「いやはや、可愛らしいお嬢さんだ。すると、キースの婚約者になるのですかな?」
「は?」
「あー、いやいや。この子は貴族令嬢の教育など何も出来ていませんので、平民相手であっても恋愛結婚してくれたらと……」
そうよね。普通は娘しかいない場合は婿をとるものだもの。
でも、お父様は昔から私には好きな人と結婚して良いからね。と言ってくれている。その為に、婿ではなく養子を迎えてくれるのだ。
お父様、頼りないけど優しいのよね。
私が感じ入っていると、不意に意地悪げな声が響いた。
「父さん、そりゃその女の子にかわいそうだろう。能なしと結婚しろだなんてさ」
話に割り込んできたのは私と同い年くらいの少年だった。
「グレン。口を慎みなさい」
「ごめんごめん。でも真実だろう」
グレンとかいう少年はニヤニヤと下卑た笑みを浮かべてキース様を見る。キース様は無視しているが、顔色が良くない。
よくわからないけれど、いじめっ子といじめられっこを見ているようで気分が悪い。
「あの!お父様、私、お庭を拝見させていただきたいわ!」
私はわざと空気を読まずに明るい声で言った。
「それに、キース様とお話してみたいわ!だってこれから家族になるんですもの!」
「ん?ああ、そうだね」
「まあ、でしたら、キース。お庭を案内して差し上げなさい」
グラスイズ男爵夫人がそう言ってくれたので、私はわざとらしくはしゃいだ振りでキース様を連れて屋敷の外に出た。
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