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第1話 貧乏男爵令嬢、前世を思い出し和金に励まされる。

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 めまいがしたのだ。お腹がすきすぎて。

 私、アカリア・ゴールドフィッシュは男爵令嬢だ、一応。

 一応、と付けたのは、我が家は貴族なんて名ばかりのド貧乏だからだ。領地は小さくて特に名産品もないし、何より曾祖父が相当な放蕩者だったらしく先祖伝来の資産を食い潰したという。
 そんな訳で、我が家は使用人を雇うことすら出来ないし、王都にタウンハウスを持つなんて夢のまた夢、私も年頃だけどドレスがないから夜会にも出られないし持参金が払えないから嫁の貰い手もない。貴族令嬢としてはわりとお先真っ暗な感じがある。

 ふらふらとベッドに倒れこんだ私は、暗くなっていく視界がまるで自分の未来の暗示のように思えて、閉じた目から一筋の涙を流した。

 その時、暗い視界に、不思議な光景が浮かび上がった。

 今の私と同じくらいの歳の少女が、見たこともない道を歩く姿。
 そして、――――


「……っ、思い出したぁぁぁっ!!」

 私は思わず叫んで起き上がった。


 私、アカリア・ゴールドフィッシュは日本人だった。
 そう、そうだ。あの日は確か、町内で行われた祭りの帰りで、信号無視のトラックに突っ込まれて……

「わ、私……死んだんだ。それじゃあ、これってもしかして、転生ってやつ……?」

 私は自分の頬を押さえてきょろきょろ辺りを見回した。
 見慣れた自分の部屋は隙間風の吹き込むオンボロだ。うう……転生するならもうちょっとお金持ちに生まれたかった。

 ……ん?

 何か見慣れない……いや、嫌というほど見慣れているけれど、転生してからは一度も見たことがないはずのものが、目に入った気がする。

 いや、気のせいよね。見間違いだわ。

 そう自分に言い聞かせるが、それはひらひらと空中を漂っていて、私の視界にちらちら入る。

 小さくて赤くて、空中を水の中のように泳ぐ、

 二匹の、金魚が。



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