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96、本心
しおりを挟むレベッカは誤魔化している風ではない。私とニチカの例の噂自体は記憶に残っている。
けれど、それを誰から聞いたのかを忘れてしまっているようだ。
遠足の時は私とニチカの悪評を振りまく相手に「忠告しても聞き入れてもらえなかった」と言っていたのに、それを誰が話していたかを忘れてしまうだなんて。
「申し訳ありません、レイシール様。私はこれで」
「ええ。引き留めてしまってごめんなさい」
その場から去るレベッカを見送って、私は首を捻った。
どういうことなんだろう。ちょっとした勘違いや記憶違いかもしれないが、何か気になる。
遠足の時、レベッカは「私と同じクラスのある方」としか言っていなかった。私はリリーナのことだと思い込んだけれど……ああ、あの時にはっきり名前を聞いておけばよかった。
その場に立ち尽くして後悔していると、下の階からアンナが私を探しに上がってきた。
「あ、お嬢様。下に若様がいらっしゃってます」
「お兄様が?」
女子寮のエントランスを訪れたお兄様に呼び出されて、私はアンナについて階段を下りた。クララの元に行くつもりだったけれど、また今度でいいか。レオナルドの方から来るかもしれないし。
「レイシール、気分はどうだ?」
私を労ってくれるお兄様に平気だと返すと、「話したいことがある」と男子寮へと案内された。
寮内にいくつか設けられている会議室の一つに通されると、そこには四大公爵家の嫡男とジェンスが揃っていた。
「よく来てくれたレイシール嬢」
代表してアルベルトが私を迎える。お兄様とジェンスの間に用意された席に着くと、難しい顔をしたガウェインが口を開いた。
「レイシール嬢に聞きたい。今回の火事、誰の仕業だと思う?」
単刀直入に尋ねられて、私は口を噤んだ。
身内であるガウェインの前で、「リリーナの仕業だと思います」なんて言っていいものか。
私がまごついていると、ガウェインは沈痛な表情で言った。
「俺はーー俺達は、リリーナ・オッサカーの仕業だと思っている」
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