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83、邂逅
しおりを挟む収穫祭も終えて、秋も終わりに近づいている。収穫祭のせいか、最近は我が領地の鮭がよく売れているそうだ。
皆そろそろ期末テストの準備を始めており、私も寮に帰る前に少し勉強していこうと図書室を目指して歩いていた。
すると、人気のない大階段を上がり始めたところで、踊り場にうずくまっていたらしき人物がすっと立ち上がった。
私は階段の中腹で思わず足を止めた。リリーナ・オッサカーがこちらを見下ろしていた。
「しばらく様子を見ていたけれど」
リリーナはじっとりと暗い声で呟いた。
「やっぱり、アンタも転送者よね。一つの世界に一人じゃなかったの? やっぱり、実験データだからかしら。未使用データにアクセスできなかったせいで、めちゃくちゃな世界に来てしまったわ」
「……なに?」
私は眉をひそめた。リリーナは戸惑う私には構わず、ぶつぶつと一人ことを吐いている。
「ちきしょう……なんでうまく行かないのよ。……やっぱり、こいつらがいるせいよね。チヤホヤされていい気になって……ふざけんなよっ」
いきなり駆け下りてきたリリーナが、私の胸を強く突き飛ばした。
咄嗟のことで抵抗も出来ず、私はそのまま階段から転がり落ちた。
床に頭を打って、ぐらりと視界が揺らぐ。強い痛みに呻くと、バラバラと足音が聞こえた。
「なんだ、今の音……たいへんだっ」
「誰か倒れてるぞ!」
階段を駆け下りてきた生徒達が、踊り場から叫んでいる。
私は痛む頭を何とか持ち上げて踊り場を見上げた。こちらへ駆け寄ってこようとする生徒達のすぐ側に、私を突き落としたリリーナがにやにやと笑って立っている。
私は、捕まえて、と言う代わりにリリーナを指さした。
だが、誰もリリーナを捕まえないどころか、そこにいるのが目に入っていないかのように素通りして私の元へ駆けてくる。
(なんで……?)
リリーナは私に嘲るような笑みを向けると、悠々と身を翻して階段を昇っていった。それを、誰も止めない。
視界がくらっと回って、私の意識はそこで途切れた。
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